ジョー君が飲み物を買いに売店に行くと、売店近くの通路にヒカルさんを見つけました。
いつもなら彼の所有するメダロットとか、元気いっぱいな女の子と一緒に居るのに 見渡す範囲には居ません。
(・・・☆)
ジョー君は何かを思いついた表情になるとこっちに気づかれないようにしてこっそりと近寄っていき、 足音を忍ばせて近づくと後ろからぎゅっと抱きつきました。
「ヒーカールッ」
けっこう不意打ちだったらしく驚いたヒカルさんは結構大きな声をあげていました。
「うわあぁっ!・・・ってジョー君か・・・ビックリしたぁ・・・」
ヒカルさんは後ろから抱きすくめられた状態なので首だけひねって見上げました。
「珍シイネ、一人ナンテ」
「一人じゃないよ?メタビー達は今売店に行ってるんだ・・・もうすぐ戻ってくると思うよ。」
「ソウナンダ・・・」
あの二人が一緒なら戻って来る前に離れておいた方がいいかな、とジョー君が考えていると。
背中にぞくっとしたものを感じ、視界の隅に幾分小さめな影を二つみとめたその時でした。

ぎゅううっ

足をぎゅっと踏みつけられて思わずジョー君は声をあげそうになってしまいましたが、 側にヒカルさんがいるのでなんとかこらえることに成功しました。
手に飲み物を持って影で足を踏んでいるメダロット・・・KWG型ロクショウは ジョー君のことなど視界に入っていないようにヒカルに話しかけました。
「お待たせしました、ヒカル殿。売店が混んでいたので遅くなりました。」
そう言いながらもロクショウさんの足はぐりぐりとジョー君の足を踏みつけていました。
(・・・・・!)
あまりの痛さにジョー君はヒカルさんから手を離してしまいました。
それと同時に踏んでいた足が離れたかと思うと、待っていたかのようにもう一つの影がジョー君をげいんと蹴り飛ばしました。
「ウ・・ワッ!!」
「なんだよ、いきなりだからってそんなに驚くことはねぇだろ?」
今の言葉の主は彼の持ちメダロットKBT型メタビー、手にはポップコーンの入ったカップを持っています。
「あ、お帰り二人とも。ごめんね、買ってきてもらっちゃってさ。」
さっきの二人の行動には気づかなかったらしく、ヒカルさんはいつもと変わらぬ笑顔を浮かべてお礼を言っていました。
「いえ、全員で動くよりかはこちらの方が早いですから。」
ロクショウさんはそう答え
「気にすんなよ。さ、行こうぜ。」
メタビーさんはそう言いながら先に立って歩き出しました。
「ちょっと待ってよ。ジョー君も暇だったら一緒に来ない?」
ヒカルさんのその言葉にジョー君は嬉しそうに笑い、メタビーさんとロクショウさんはちょっとむっとしていました。
「イイノ?ジャア少シ待ッテイテ。ボクモ買ッテクルヨ。」
そう言うと売店の方へ走って行きました。

日当たりが良く、人通りの少ない芝生の生えた裏庭で四人・・・もといメダロッター二人と メダロット二人は仲良く談笑しておりました。話題はやっぱりメダロットのこと。
次の試合のことや今までに戦ったメダロッターのこと、たまに違う話題になることも有りましたが 大本の話題はそれでした。
「どうかしたジョー君?」
ひとしきり話しが盛り上がったあと、飲み物を飲んで一息ついているジョー君にヒカルさんは話しかけました。
会話が切れたときとかに少し落ちこんだ表情を見せるジョー君をヒカルさんは気づいていたのでした。
「寂シクナルナッテ・・・チョット、思ッチャッテ。」
少し覗き込むような格好でヒカルさんは聞き返しました。
「寂しくなる?」
「大会ガ終ワッテシマウト、ナカナカ会エナクナッテシマウ・・・ソレガ寂シイ。」
目をぱちくりさせてヒカルさんは答えました。
「次の大会とかで会えるんじゃない?」
その言葉にジョー君は苦笑しながら言いました。
「次ノ大会マデガ・・・トテモ長イ。今ミタイニ一緒ニ話セナイ。」
「メールとかじゃ駄目なんだ?」
「エ?」
きょとんとしているジョー君にヒカルさんは笑いかけました。
「連絡先教えてくれたら、僕メール書くよ。・・・英語は書けないけれど。」
「ボク日本語読メル、練習モスル。後デ連絡先教エルヨ。」
とっても嬉しそうに笑うとヒカルさんに顔を寄せました。
「Thanks、ヒカル」
チュッ、っと軽い音をたててジョー君の唇はヒカルさんの頬っぺたから離れました。
『・・・!?』
「えっ?」
キスされた方の頬に手を当て驚いているヒカルさんを見てジョー君はにっこりと笑いました。
「友達ノアイサツダヨ。」
「そ、そうなの・・・?」
変わった挨拶もあるものだなぁとヒカルさんは思いました。
「ソウソウ」

ひゅんっ!

にこにことしているジョー君頭のすぐ側を一筋の銀光が通りすぎました。
通りすぎた後を数本の黒髪が追いかけていきます。

どんっ!

そしてその反対側を一発の弾丸が掠め飛んでいきました。
同じく後を追うように黒髪が数本宙に舞っています。
「・・・・・・。」
笑顔のまま固まっているジョー君に向かいメタビーさん達は言いました。
「悪りぃな、すぐ側を虫が飛んでいたから。ついな」
「申し訳ない、毒虫だったら危ないと思いましたので。」
言葉の上では謝っていますが二人とも目が笑っていませんでした。
「そうなの?でも、虫相手に武器なんかふるわないでよ・・・当たったら危ないだろ?」
それぞれの攻撃がジョー君をかすめていったのを見ていなかったようです。
「ごめん、もうしねぇよ。」
「以後そのような事があった場合は・・・叩き潰すことにいたします。」
それを聞いたヒカルさんは苦笑して言いました。
「武器攻撃は駄目だってば。」
首を傾げて少し考えていたロクショウさんは真面目な顔をして言いました。
「では、素手で。」
「・・・ま、いいけど。」
ふいとロクショウさんはジョー君の方を向きました。なんとなく不思議な迫力を漂わせています。
「・・・ナッ、何?」
ジョー君は迫力に押されて心持ち後ろに引いています。
「日本でそういった挨拶はしない・・・あまりヒカル殿に偏った事を教えないでもらえるだろうか。」
メタビーさんも同じような雰囲気でこちらを見ています。
「ワ、ワカッタ・・・以後気ヲツケルヨ。」
ヒカルさんは判ったような判らないような顔をしています。
「と、言うことであのような挨拶は今後しなくて良いですから。」
「う、うん。」
「ジャア、ソロソロ僕ハ戻ルヨ。後デ連絡先教エルカラ。」
そう言ってひょこんと立ちあがりズボンについた草や砂をぱんぱんとはたいて払い落とすと、 ジョー君は建物内に向かって歩き出しました。
「またね、ジョー君。」
ひらひらと手を振るヒカルさんに笑って手を振り返しながらジョー君は建物内に消えていきました。
「我々もそろそろ戻ることに致しましょう。」
「そーだな、日も落ちてきたし。」
そう言いながら二人は立ちあがりそれぞれ飲み物とポップコーンの入っていた器を拾うと、 ヒカルさんに向かって手を差し伸べました。
「そうだね、帰ろうか。」
ヒカルさんがその手を取ると二人はくいっと引っ張って引き起こし、 何となくそのまま三人で手を繋いで戻って行ったのでした。

「おはようございます、起きてくださいヒカル殿。」
翌朝も前日にまけないくらいとても良い天気でした。
カーテンを開けながらロクショウさんはヒカルさんを起こしにかかりました。
ちなみにメタビーさんも一緒になってまだ寝ています。
「・・・ヒカル殿。」
ゆさゆさと揺さぶっていると、布団の中からもぞもぞとヒカルさんが起きてきました。
まだ少し寝ぼけ気味なようです。それにつられるようにしてメタビーさんも起きてきました。
「ロクショウ・・・おはよう。」
ヒカルさんはそう言いながら側に引き寄せるとロクショウさんの頬に口付けました。
「!?」
驚きで動きが止まってしまったロクショウさんには気づかず、次にメタビーさんの側によると同じように口付けました。
「おはよう、メタビー。」
「・・・おはよー・・って、何、してんだ?」
平常そうにしていますが、やっぱり何処か動揺しているメタビーさんの問いにヒカルさんは答えました。
「朝のご挨拶。友達だし、誰も見てないからいいかなって。」
じいっとこちらを見つめているメタビーさんを見て慌ててヒカルさんは言いました。
「・・・やっぱり駄目かな?」
メタビーさんはにこっと笑うと言いました。
「いーんじゃねーの?その代わり俺達だけにと他に誰もいないときな。なぁ、ロクショウ」
「あ、ああ。」
メタビーさんがロクショウさんをふりかえると、ようやく硬直から開放されたロクショウさんも頷きました。
「良かった。」
ヒカルさんは勢いをつけてベットから降りると二人を振りかえって笑いながら言いました。
「今日も試合、頑張ろうねっ」
メタビーさんとロクショウさんはちらりと二人で視線を交わしてから言いました。
「ああ、頑張ろうなっ」
「ええ、負けません。」
ヒカルさんは服を着替え、そして三人は笑顔のまま部屋を出ていったのでした。






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