いんたーみっしょん 〜敵の出ない平日〜



北斗は一人でとても広いGEAR本部内を歩き回っていた。

「う〜ん、何処へいったんだろ…。」

結構捜し歩いている所為か、つい独り言が口をついて出る。
現在北斗の隣にはいつも一緒にいる銀河の姿はない。
―――と言うより現在行っている探索の対象は出雲銀河その人である。
今日は学校で用事が有った為に、銀河には先に本部へ行ってもらったのだ。
用事を済ませてから本部へ到着して、真っ先に司令室に顔を出すとそこには銀河の姿は無くて。
その場の人達に聞いてみたけど、本日はまだここに顔を見せていないと言う。
最初は待っていようかと思ったけれど探しに行った方が早そうなので、銀河を探しにその場を出た。
私用で通信を使ってまで呼び出すのもどうかと思うし。
探すと言っても普段入らないような所へは行かないだろうから、 銀河の良く居る場所やお気に入りの場所など数ヶ所を中心に聞き込みをしつつ歩いている訳だ。
とにかく本部は広い。
格納庫だけでも電童やセルファイターだけでなく、戦艦ナデシコ、フリーデン、その他にもいろいろなモビルスーツ。
一斉に全てのロボットがと言うのは無理だが、それでも数体ずつ整備を受けている様はとても壮観だ。
さらに各種の研究施設や隊員達の滞在する為の区域も多少ある。
かなりの大所帯が昼夜時間を問わず活動していても、あまり狭いとは感じさせない程の広さを持つ。
GEAR本部は現在そんな場所となっていた。


時間は少し戻って、銀河を探し始めた頃。
司令室から出てきた時、数冊のファイルケースを抱えたアムロ・レイとすれ違った。

「お帰り、北斗君。」

「ただいまー、アムロさん。銀河見ませんでしたか?」

ニュータイプである彼は軍隊にはもう属していないが、ラウンドナイツにパイロットとして参戦している。

「いや、格納庫からきたけれど、通路では見てないよ。」

「そうですか、有難う御座います。」

「お役に立てなくて悪いね、それじゃ。」

両腕にファイルケースを抱え直し、司令室に入って行くアムロとわかれて歩く事しばし。

「よぉ、北斗。学校終わったのか?」

ポケットに両手を突っ込んだまま歩くロアビィ・ロイに遭遇。
賞金稼ぎだった彼もやはりモビルスーツ載りとしてラウンドナイツに参戦中だ。

「ロアビィさん、ただいま。」

「どう、ヒマならビリヤードでもやんない?」

「ごめんなさい、今銀河探しているんです。知りませんか?」

「銀河ねぇ……今日は見てないな。俺さっきまでレクリエーションルームに居たけど来てないよ。」

「居ないのか…何処行ったのかなぁ…。あ、有難う御座います。」

どーいたしまして、と言うとロアビィは片手をひらひらとさせて歩いていった。

こんな会話を他の人とも繰り返す事十数回。
途中ですれ違ったオペレーターの人達や他のパイロット達にも聞いてみてはいるが、今だ収穫は無かった。
思い当たる場所の殆どを探し尽くして、可能性の有る場所は後数ヶ所。

(……実は本部内に居なかったりして……)

何て考えが少々頭のはしっこを掠めるが、いやそんな事は無いハズと思い直す。
いつ何時ガルファが現れるかもしれないし、それ以外にも敵は増えている。
出来るだけ用事の無い日は本部に居るようにしている。一応居て欲しいとも言われてはいるが。
………いろいろな人が増えたので、用が無ければ相手してもらえる人には事欠かない。

(後探していない所は…えーと…)

ぼんやり考え事をしながら歩いていると、通路の曲がり角で何かに衝突した。


ぼふ。


「うわっ。」

「きゃ。」

ぶつかった対象があまり固くなかったのと、声がしたと言うことは『誰か』だったと言うこと。
幸い勢いはついていなかったのと相手がとっさに支えてくれたので北斗は転倒するのは免れた。
ぶつかった相手に向かい慌てて謝る。

「ご、ごめんなさい!」

「大丈夫?って…お帰りなさい、北斗君。ぼんやりしてると危ないわよ?」

かけられた声に急いで見上げた先には面白そうに目を細めた顔。

「フィオナさん…」

彼女の名前はフィオナ・グレーデン。
ラウンドナイツに属している数少ない女性パイロットの一人、フレーム換装型マシン『エクサランス』の専用パイロット。
ラウンドナイツとは現在GEAR本部に滞在している地球圏統一国家防衛隊――地球外の侵略者から 地球を護る為のメンバー――の属している集団の事である。
最初は一応そう呼ばれていたのだが、次々と参戦者が増えた辺りで吉良国が『長くて呼びにくいし、カッコ悪い』 と言い出した為に急遽命名された。
因みに、新名称決定まで八時間を要している。
総纏めの立場に居るのは渋谷長官で、緊急の国家の指導者クラスからの要請に応対などもしていたりする。
それぞれの集団のリーダー格は自分の所を纏めたり、他のメンバーと連携を取ったりと中々チームワークはとれていた。

「えーと、ただいま帰りました。」

とりあえず、ただいまのご挨拶はちゃんと言っておいて。
律儀にもおかえり、ともう一度言ってくれたフィオナは笑顔のままでもう一度口を開く。

「どうしたの、ぼんやりしちゃって。」

「あの…銀河を探してるんですけど。」

「銀河君?あの子なら…さっき見かけたわよ。」

ちょっと首を傾げるようにして思い出そうとするフィオナに、すがりつくような勢いで北斗は問い掛ける。

「――何処にいました?」

「少し前、ドモンさんとチボデーさんと一緒にトレーニングルームへ行くのを見たわ。」

フィオナは銀河君ってシャッフル同盟さん達と仲良いわねと笑っている。
探しまわってようやくもたらされた情報にかくん、と北斗の首が前倒しになった。
うなだれた頭がフィオナの身体に触れる。

「……宿題、先に始めててって言っといたのにい……。」

「銀河君って身体を動かす方が好きそうだもんね…。」

「うう、素直に大人しく宿題やってくれるかなぁ……。」

後で!の一言で切り捨てられたらやだなぁと北斗はぶつぶつ呟く。
そんな北斗の様子を見ると苦笑を収めて、フィオナは言った。

「それなら私も一緒に行ってあげるわ。そういうヤツに言う事聞かせるの慣れてるから。」

「有難う御座います…でも、良いんですか?」

用事とかあったんじゃあ、と続ける北斗の言葉にフィオナはまたも苦笑する。

「ミズホの手伝いしていたらね、ベガさんに『手伝いも良いけど、パイロットでもあるんだから 少しは息抜きしてきなさい』って……追い出されちゃった。」

しかもにっこり笑顔付きでね……綺麗な人ほど何故か迫力があるものなのね……。
フィオナは遠くを見るような目つきで、すぐ傍の北斗がようやく聞こえるような小声で呟く。
北斗はあいまいな笑顔を浮かべたまま黙っている。

「ラージの方はエネルギー研究の方に没頭しちゃってるから、私じゃ役に立てないし。…そうだ、後でさし入れ持っていかないと。」

フィオナの言葉の後半はちょっと小声になった。
ラージ・モントーヤはフィオナの幼馴染でエクサランスの使う特殊なエンジンとオペレーションシステムを担当、 ミズホ・サイキはフレーム開発・作成とメカニック担当だ。

「と、いう訳で今空いているのよ。敵が出るまでの間だけどね。」

「そうですか…じゃあ、お願いします。」

副指令って本当に強いよね、などと語り合いながら二人は並んで歩き出した。






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