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call my name 窓の外青空が広がるその下を、元気の良い幼馴染に引っ張られて校庭を走って良く姿を見た。 開け放してあった窓から二人の遣り取りが聞こえる。 「ほら、飛鳥!もたもたすんなよ!」 「何処行くんだよ、伽月っ…引っ張るなって!」 とりあえず長年の経験でこの状態の幼馴染を止められはしない事をすでに了承しているらしい彼は ぶつぶつと一、二言呟くとそのまま後を付いて走っていった。 次に見かけたのは渡り廊下。 折角なので声をかけて通り過ぎようかと思っていたのだが。 「あ〜、飛鳥ちゃんだ、飛鳥ちゃんだ、飛鳥ちゃんだ〜。突撃〜!」 「ワンワンッ!」 「うわ!こ、琴ちゃん……。」 傘をさした女の子と子犬にじゃれ付かれその場に足を止めていた。 用事も有った事なので、気付かれ巻きこまれる前にこっそりとその場を離れた。 ある日、息抜きの散歩を兼ねて気まぐれに武道館を覗いてみる。 中では鎮守行脚の為いまだこの学院に留まり続ける先輩と、最近稽古をつけてもらっているらしい 新戦力の執行部員。そしてその日は珍しく元気な幼馴染の姿も無く一人で彼も居た。 校内での稽古にて流石に使用しているのはそれぞれの武器ではなく、長さをあわせた木刀や棒だ。 勢い良く繰り出される棒を僅かな動きでかわし、鋭い踏みこみで間合いを詰め、胴をなぎ払う直前で止めた。 「それまで!」 その言葉に二人は手にした武器を下ろす。互いに礼を交し合った後、わいわいと先ほどの仕合いについて話し合っている。 踏みこみが甘かったとか振りが大きすぎたとか最後の付きをかわしたのは見事だったとか。 開いたままの入り口に背を預け無言でそれを眺めていると、ふいと振り向いた彼と目が合った。 「……総代。」 ちょっと驚いたような声音に、周りの二人も振り向いた。 「見ていらしたなら声を掛けてくだされば良いのに……。」 「皆の邪魔をしたくなかったからな。」 邪魔では有りませんと口々に言い出す後輩二人の間から先輩がぬっと進み出る。 「うむ、どうだ綾人もやって行かんか?」 「物凄く心引かれる申し出ですが今回は止めておきましょう……まだ『表』の仕事がありますので。」 本当に残念そうに首を振ると先輩は明るく言った。 「そうか……ならばまた次回機会があれば手合せしよう。」 「……総代、何かお手伝いできる事があるなら手伝いますが。」 「僕も、お手伝いしましょうか?」 後輩二人はそろってそう言ってきてくれたが、そこまでは忙しくなかった為礼を言って丁重にお断りをした。 そのまま手合せを続けてくれるよう言い残し、自分は執行部室へと戻ろうとする。 「では次は宝蔵院先輩と若林とでやりますか?」 「そうじゃのう、その後はお主等でやるとよかろう。」 「もう少ししたら始めましょうか。」 背後で続く会話に頼もしさと羨ましさと、そして僅かながら何か判らない感情を覚えていた。 とりあえず考えるのは後回しにして執行部室へと足を速めた。 それから数日後の放課後。 九条綾人は執行部室にて多数有る書類と格闘していた。 「紫上、入ります。」 一声掛けられたその後に続けて扉が開く。手を休めてそちらを向けば二人の生徒が入ってくるところだった。 「失礼します。」 「……失礼します。」 執行部の副部長である紫上結奈に重そうなダンボールを持った伊波飛鳥だ。 「よう、二人揃ってとは珍しいな。……いや最近はそうでもないか?」 「総代……からかわないで下さい。」 少々困ったような表情のまま入り口で止まってしまった紫上に、笑いながら九条は後ろを指してやった。 前に居る自分が止まってしまった所為でそこに立ち止まったままの伊波の存在を思い出す。 ごめんなさいっ、の一言と共に慌てて場所を開けた。 「有難う、伊波君重かったでしょう?そこに置いて下さい。」 「どう致しまして。空いているからこの後も手伝うよ、紫上さん。」 人手は有ったほうが良いんでしょう? 優しげに表情を緩めながらの伊波の提案に紫上は僅かな逡巡の後、頷いた。 執行部の『裏』業務も増えてきた今、滞りがちな通常業務に手を貸してもらえるのは凄く有りがたい。 「じゃあ、そのプリントの仕分けお願いします。内容は一番上の紙に書いてありますのでその通りに。 後そのファイル。薄い物2冊は宗家に渡して戴いて、残りはファイルの入っている戸棚に並べておいてください。」 私はもう一度出てきますので、戻ったらお茶にしましょう。と室内に残る二人に声をかけると静かに執行部室内から出ていった。 「………学友の前で宗家と呼ぶなとあれほど言っているのに………結のヤツめ……」 ぼそりと呟いた九条の言葉に伊波はこっそりと笑いをかみ殺していた。 長机の下にダンボールを下ろすとまずは言われたファイルを取り出した。 笑いを収めて真面目な表情を作り、言われたファイルを九条に渡す。 「総代、どうぞ。」 「ああ、有難う。」 九条はちろりと視線を向けてそれを受け取ると机の端に置く。中身は後で見るのだろう書類に目を通し、何か書きつけている。 伊波は気にせず中からプリントを種類毎に取りだし長机の端に積み上げた。 残った厚いファイルを戸棚へと持っていって空いている隙間に並べる。 戻ると手書きらしいメモに目を通し全種類あるのを確認し、更に箱の中を覗いてみてごそごそとあさっていた。 だが目当ての物が見つからなかったらしく書き物をしていた九条に声をかけた。 「総代、ここにホッチキスかクリップって有りますか?」 「そこの棚、右側の引出しに入っているぞ。」 礼を言って席を立ち言われた場所を探すと、目的の物が見つかったらしく戻ってプリントを分け始めた。 しばらくは紙どうしが擦れる音とペンが紙面を滑る音だけがその場を支配していた。 |