『激闘!クラッシュギアターボ』のギアマスター・迅キョウスケ。
……ふ、ふふ。何かいてるんでしょうね私(笑)






Works



地下にある所為だけでは無いが、全体的に薄暗く日の光も殆ど差さない室内。
時間を表示するものもパソコンのディスプレイに有るものくらい。
そんな事も作業に没頭してしまうと時間の経つのもあっと言う間と言うことが良くあるので特に気にはならない。
前までは一緒にいた奴もいたけれど、最近は一人でいるほうが多かった。
―――――そう、今までは。
ごく最近になって自分の周りも色々変わってきたものだと思う。
自分も含めて、かもしれないが。
ずっと手元に固定していた視線を上げてディスプレイの時刻表示を確認する。
練習の時間までにはまだ間がある。
続きをしようとメガネを押し上げてまた視線を手元に落とす。
すると間もなく誰かが入って来たらしく、複数の足音が聞こえてきた。
静かなこの場所では普通に歩いていても良く響く為に余計に騒がしく感じる。
足音はもはや慣れたものでまっすぐ自分の所へ向かってきている。
部屋の主、迅キョウスケは作業を終了させるために手早く片付けはじめた。
しかし、それが終わる前に騒がしさの元凶は一度チームを組んでいた事の有る人物と共にやって来てしまった。
「キョウスケー、居る〜?」
入り口からひょこんと顔を出した元気一杯な少年が現在同じチーム、トビタクラブの真理野コウヤ。
その後から入って来た金髪碧眼の少年が丸目クロウドだ。
ふう、と溜息をついて外していたパーツをすばやく組み上げる。
「喧しいな、一体何なんだよ。」
メンテナンスをしていたマシンのシャーシとボディをきちんとはめなおしてから顔だけ向ける。
「外!外行こうぜっ。いーい天気だから!」
桜も綺麗だしっ、と喜色満面で語るコウヤ。
ばたばたとオーバーアクション気味に腕を振ると、白っぽく見える欠片が宙に舞った。
……部屋を汚すな、と思いながらも口から出たのは違う言葉で。
「…はぁ?」
キョウスケはコウヤの言ったことが理解できずに今度はきちんと体ごと向き直った。
確か今日は練習があるんじゃなかったろうか……もうすぐその時間のはずだと思ったが。
「コウヤ、いきなりそんな事言ってもキョウスケが困るだろう?」
疑問で頭が一杯のキョウスケの内心を読んだかのようにクロウドが説明を入れる。
「コウヤの提案でね…連日の良い天気で桜が満開だから、皆で見に行こうと言う話になったんだ。」
それで、お前を誘いに来たんだと言う。
クロウドのお蔭でとりあえず先のコウヤの発言は理解できた、なので次に気にかかっていたことを聞いてみた。
「今日は練習じゃなかったか?」
「リリカさんには連絡済!んでもって、許可もちゃんと貰ったもんねっ」
ぬかりなーし、とコウヤは無意味に胸を張る。
「1時間くらい遅らせても良いそうだ…と、言うよりリリカさん達も参加だよ。」
どうやら先にみんなの所に寄ってきたらしく、きちんと話もついているようだ。
いきあたりばったりの多いコイツにしては珍しい、ちゃんと準備しているななどと考えてしまう。
今回の花見のきっかけはどうも思いつきのようだが。
ぼんやりとそんな事を思っていたら返事が貰えないのに耐えられなくなったのかコウヤはばたばたと暴れ始めた。
「なー、行こうよキョウスケー!」
いこーよいこーよと同じ事を繰り返す。
落ちつけようとするクロウドの言葉も耳に入っていないようだ。
(子供かコイツは……いや俺等も子供だけどな。)
騒がしさに耐えかねて、キョウスケが了解の意を伝えようとした時コウヤは言った。
「こんな所に篭ってばかりだとそのうちウドになっちゃうぞ?」
「なんでウドなんだ!?普通こう言う時はモヤシだろう!」
―――つい、間髪入れずに切り返してしまった。
キョウスケのそんな反論にもコウヤはしれっと一言。
「日にあたらなきゃ成長が追いつかないかもしれないじゃん。」
「………。」
いやだから普通は体だけ大きく育った時とかにその言葉は使うのであって――― この場合は逆なような気がする。
二人の漫才じみた遣り取りに笑いを堪えきれずにクロウドは小さく吹き出した。
それを見られてしまい横目で睨まれたクロウドはそれを軽い咳で誤魔化そうとするが、緩む頬は隠しきれていない。
キョウスケは片手を額に当てて盛大な溜息をついてしまった。
何が起きているのか理解できていないコウヤは二人の間できょときょとと視線をさ迷わせている。
更にそれを見て笑いを復活させてしまったクロウドは言った。
「君の負けだな、キョウスケ。あきらめて一緒に来る事をお勧めするが?」
それに本当に良い天気だしね、と笑みを浮かべたまま付け加える。
ま、これ以上ここで騒がれるのも面倒だし……出かけるのも別に構わないと思っていた所だし。
だが素直に行ってやるのも癪なので、ちょっとイジワルしてやろう。
「……まったく…この俺を連れ出すんだ、なんか奢ってくれるんだろうな?」
「ジュ、ジュースで良い?」
本当に奢ってくれるらしい、やったね。
しかし―――冗談で言ってみたのだが、本気にされるとは思わなかった。
後日、クロウドにそう言ってみたらコウヤはキョウスケの冗談にまだ慣れていないからねと 言われてしまいちょっと腐ったものだが。
今はそんな事は気づきもせずに、キョウスケは腕を引っ張って先を行くコウヤについていくのに精一杯で。
クロウドは二人が先に行くのを見送って部屋の照明の電源を落としてから外へ出た。

静けさを取り戻した部屋の中に、春を示す花びらを残して。