月 と 甘 い 涙
波打ち際に立って、ひとり海と月を眺めていた。
ここ数日、満足に食事も摂っていない。酸素不足のような頭はしかし、かえって冴え渡っていた。五感は鋭敏さを増してすらいるようだ。海の遠くまで見渡せそうだし、どんな遠くで響く音でも聞き分けることができるような気がしている。
ルーザーは不思議な感覚の中、少しも動かずに突っ立っていた。
自然と、涙が頬を伝う。
知らなかった。罪とはこんなに痛いもの。涙はこんなに切ないもの。
月と海は、そんな心ですら甘く包んでくれているけれど。
自らの眼をえぐった、弟を想った。
かつてこの海で涙していた母を想った。
そして、妻を想った。
かけがえのないものを。失いたくないものを。
愛するものを・・・。
(サービス・・・ナナ・・・)
嗚咽と共に息を吸い込む。涙はとめどもなかった。
(・・・母さん・・・)
ずっとずっとそばにいて欲しいと。
願っていたのは、母も自分も同じだったはずなのに。
傷つけるまで気付かなかったなんて。
そしてこんな方法しか見つからなかったなんて。
明日、戦場へ赴く・・・。裁きが欲しかった。この戸惑いに、罰という形の決着が必要だった。
心も涙で濡れていた。
ゆっくりとルーザーは歩き出す。
妻には会わないで行こうと思っていたけれど、この気持ちを、できるだけ伝えなければならないと気付いた。
どこまでも広がる海に、あるのは月と甘い涙だけ−。
甘い涙と 恋の話ね
あるだけ そこにだいて あたしとなえた。ハートがつめたいときは、目をとじてきけば・・・うたが、
『羽をかしてよ』 そのかかとにつけて
(キスでうごくのよ)
あたしには、そのまけないゆめが、あるの。どうしたいの? 雨よにがしてよ 2人を
本当のゆめよ、おねがいよ
あるのは 月と甘い涙だけ
『いつだってあえるよ・・・』とないた。・・・いらないわ
赤いくつはぬげた甘い涙だして こころへ
あなたが笑う前に あたしわかるわひろがる海のこころ・・・
『なぜ、うつすけれど とれないの?』『月にロケットを!』 海は考えてた。
(橋をかけてよ)
想い出が今はねない月は
泣いたりしないでどうしたいの? 雨よにがしてよ 2人を
本当のゆめよ、おねがいよ
あるのは 月と甘い涙だけ
『いつだってあえるよ・・・』とないた。どうしたいの? 雨よにがしてよ 2人を
本当のゆめよ、おねがいよ
あるのは 月と甘い涙だけ
『いつだってあえるよ・・・』とないた。赤いくつはぬげた
いらないわ
あとがき
夕月もみじさんのリクエストは、「双子が生まれるころと、小鳥事件」とのことでした。
ルーザーファンクラブ会員一号のもみじさんだから、ここはやはりルーザー中心で行くしかないでしょう!
タイトルはCHARAの歌。最近の歌ですよ。シングル買ったらすごく気に入って、それから毎日毎日聴いておりました。
泣きたくなるような曲ですー。
本文も、少し泣きたくなるような話を書きたかった。また短編で。第三話なんて、短すぎですね。
第一話はルーザーというよりは、両親のシルバーとジュエルが主役かな。「どこに行ったんだろう?あのバカは」に続きます。
四兄弟の名前の由来も明らかに(笑)。子供と同じ、無邪気なジュエルだから、もう何でもアリって感じで。
ジュエルだけじゃなくてシルバーもかなり甘い人だと思うけどね・・・。甘々夫婦だ。四兄弟がしっかり育ったのは、ひとえにゴルドーさんのお陰か?
第二話は小鳥事件。事件そのものについては書かなかったけど・・・。あれ? 私またリクエストにちゃんとお応えしてませんか?(汗)
海に浮かぶ小舟で、まだ幼いルーザーを抱きしめるジュエル、という図が浮かんだもので、それを書いてみました。
シルバーの死という哀しみは自分なりに乗り越えたジュエルだけど、月の中では甘く切なく思い出してしまうのね。
ルーザーはシルバーに一番よく似ているから、ジュエルとしても特別に思っていたらしいです。
ちなみにマジックはゴルドーによく似ているらしい。
「大きくなったら、お嫁さんにして」なんて本気で言っているジュエル。普通子供がそういうの言うものじゃないのか・・・?
親子の役割が逆転してるんですよね。
「どこに行ったんだろう?あのバカは」において「二度目の花嫁さんを待ってるよ」と言っていたシルバーの立場がないよ(笑)。
大好きな曲「Still for your love」の歌詞もちょっと持ってきました。
第三話は短かったですが、亡くなる直前のルーザーを。弟が傷ついたことにより、罪の意識を知ったルーザーですね。
これは「ラストダンス」に続く話です。あの話も、月が出てきましたね。
大好きなルーザーを書けて、私も楽しかった。
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H12.10.15