葵さんカウンタ10005ゲット記念小説
 
 

 その部屋の中はいつでも心地よい温度に保たれていた。外がどんなにふぶいていたとしても、ここだけは温かい。まるで永遠の春のように。

「・・・ナオミ」
 愛しい名を、何度だって。
「ナオミ」
 呼ぶよ。何度だって・・・。
 それでも、彼女は目覚めない。きれいなベッドの中で、ずっと、長いこと眠っている。わずか乱れた金の髪、瞳を閉じた美しさはまるでこの世のものではないような。
「まだ起きないんだね」
 いつものように枕元で、シンタローは囁きかけていた。パプワ島で力を使い果たし、それ以来眠り続けている恋人に向け、いつか答えてくれることを願って。
 金の髪を撫でる。頬にもぬくもりがあった。今にも何かおしゃべりを始めそうな唇を、最上の慈しみをもって見つめる。
−お姫さまは、王子さまのキスで目覚めるもの−。
 ふと浮かんだフレーズに、我ながら少女趣味だと苦笑をこぼす。
−でも、もしも、伝説が現実になったら?−
「・・・・」
 そっと、顔を近づける。
 柔らかい唇まで、あと一ミリ・・・。

 ガチャッ。
「ナオちゃーん」
 いつものようにはじけんばかりの明るさで姪に会いにきたマジックは、そこに覆いかぶさっている男の姿を目撃して危うく手にした花瓶を取り落とすところだった。
「シ、シンちゃん・・・」
 はらはら。涙流している。
「おっ、親父ィ!」
 がばっと身を起こして、シンタローは真っ赤な顔をそらした。
「いきなり入ってくんなよ」
「おまえこそ、眠っているナオミに不埒なことを」
 コホンと咳払いをして、花瓶を窓際に置く。ナオミの好きな花をとりどりいけた花瓶は、差し込む太陽の光にきらきらとした輝きを与えられた。
「・・・してねーよ」
 あと一ミリ。たった一ミリのところで止められたんだから。
「それは良かった」
 口をとがらすシンタローの肩に手を置きつつ、にこにこしながらかわいい姪を覗き込む。
「ナオちゃーん、まだおねむかい?」
「赤ん坊じゃねーんだから」
「ナオちゃん」
 そっ、とひざまづいて、枕のそばに両肘をつく。まるで祈るようなポーズで、マジックは優しく見つめていた。
「・・・済まなかったね」
 何度ここで繰り返された懺悔だろう。
 シンタローの心も、痛くなる。
「許してくれるなら、目覚めておくれ。いつまででも待っているよ・・・そのときを」
 例えどんなに時間が流れたとしても。ここでこうして待っているから。
「親父」
 シンタローは光の中の花を見ていた。
「ナオミが目覚めて、そしてもし承諾してくれたら、結婚したいんだ」
「・・・・」
 シンタローの想いは分かっている。そしてナオミの気持ちも。
 ナオミがこのままずっと目覚めなければいい、と一瞬でも考えてしまった自分を責めた。息子はもはや父親の手を離れ、自らの道を進み始めているのに。
 祝福してやらなくてはならない。
 それでも今は胸に何かがつかえて、言葉を出せなかった。

「そろそろ時間だな、シンタロー」
「ああ」
 ブレザーの襟を正して、シンタローは最後にナオミの前に立った。
「ナオミ、オレは今日からガンマ団の総帥になるよ。親父の跡を継ぐんだ」
 そしてガンマ団は生まれ変わる。今までのような殺し屋集団ではなくなるのだ。
 もう決して傷つけない。悲しませないから・・・。
 花の香りの中で、ナオミの口もとが微笑んだ、ような気がした。

「くーッ・・・やっぱまだ制服に慣れんべ!」
「何着ても似合ってるっちゃよ」
「島生活が長かったけん、肩がこるのォ」
「ヨロイよりましでっしゃろ」
 ネクタイとブレザーというガンマ団の制服に、島で伸び伸びとしていた四肢は納まり切れないらしい。
「ブツブツ文句言ってんじゃねーよ! おめェら」
 ビシッと注意したところが、すぐさま茶々を入れられた。
「すまんっちゃねー、新総帥!」
「よッ、ガンマ団総帥!!」
「うっせーよ。ったく・・・」
 四人の団員と一緒に廊下を歩く。引継の式典がまもなく始まろうとしていた。
「気合い入れろよ。これからが大変なんだぜ」
 パプワのことを考えていた。彼が残していったあの島の未来がどう変わるか。それはこれからの自分たち次第。
 そう・・・。

−俺達がこれからしなければならないことは−
 
 
 
 
 

 −恋人と親子・おわり−



あとがき

記念すべきカウンタ一万! さあどなたがゲット!? ・・・って、名乗りがない・・・(涙)。
でも、葵さんが10005ゲットしたよって知らせてくださいました。そこで早速リクエストをお願いする私。
最初は「ガンマ団の面々と特戦部隊の、その後の関係」ということでリクエストいただいたのですが、どうも考えつかなくて・・・。見かねた(?)葵さんが結局リクエストを変更してくださいました。「四人のその後」ということで。四人というのはミヤギ、トットリ、アラシヤマ、コージのことですね。
リクエストのメールが届いたその日の朝に、仕事始まる前職場でストーリー考えました。数分ですぐ決まったよ。
最初、みんなが出てくる話を考えようかとも思ったけど、それだと誰かが主役になって他の人が目立たないという事態が起こる可能性があるので、ここはオムニバス形式にしようと。

そういうわけで第一話はミヤギとトットリ。一番書きやすそうなネタだったので最初に持ってきました。この二人の友情物語も、ひそかにずっと書きたかったんだよね。同人誌を見るとそういうのがあるので(友情じゃなくて愛情っぽいのが多いけど(笑))、私も書きたくなったの。
ほのぼのしてるでしょ。一番問題だったのは宮城県にそんなに雪が降るものなのか、ということだけど、まあ降ることにしておいてください(笑)。
大の男二人で甘味屋さんに行くというのも、想像すると楽しいね。

第二話はアラシヤマです。最初のリクエストにあった「ガンマ団の面々と特戦部隊」ができるのはアラシヤマしかないかなと思って。マーカーとは師弟関係にあるから、その辺を書いてみました。
「木枯らしに抱かれて」で出てきたマフィンが再登場。彼女が占い師になっている、というのは、これもまた少し前から考えていたネタです。
私がタロット占い好きだから、タロット占い師にしてみました。
また彼女が登場する日がくればいいね(笑)。
マーカーとアラシヤマ、あんまり甘くない師弟関係というのもちょっといいよね。

第三話はコージですが、コージってミヤギやトットリ、アラシヤマと同等の立場じゃないんですよ、実は私の中では。
だって他の三人ほどいっぱい出てこなかったもの。最後の方で出てただけだもの・・・。
だから単独での話は作れなくて、皆と飲みに行くというのにしました。
私がいつも友達と飲んでいるような感じで書いた。あ、別に記憶なくして朝目覚めたときに隣に知らない人がいたってことはないけど。
白木屋のメニューとかね。
何を書きたかったかというと、大人の遊びというものを少々。彼らの年頃だと、こうやって飲んで歩くのが楽しいんでしょ。私も同じ年頃だからそう思うよ。
気がついたら裸の女性が隣にいても、必要以上にうろたえない。そういうコージの磊落なところを書きたかったというのもあります。おおらかな人って好きです。

第四話はオマケです。シンタローをあんまり書いていないということに気付いたので。眠っているナオミも。
ラストはコミックスのラストで締め! いかがでしょう。

タイトルはGLAYの歌から。彼らの歌はあまり聴かないんだけど、これだけはすごく気に入って。
私の大好きな歌ランキングを作ったなら、上位に食い込むことは間違いない。それほど好きな歌です。
披露宴のとき、メモリアルキャンドル点火の時に使っちゃいました。
私の友達でも、この歌のファンは多いみたい。よく皆でカラオケで歌うんだよ。
「どんなに〜でも」という意味なので、そのフレーズを文章中何度か使ってみました。
 
 



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