Sweet 2

堂々とお目見えしたスウィート・シュガー特製の豪華三段重ねケーキに5本と5本で10本のロウソクを立て、火をつける。
昼間なので電気を消して、とはいかないが、可愛い双子がせーの、で息を吹きかける姿を見れば、ママも大喜びだ。
「かわいいーっ! ハーレム、サービスっ!」
究極の親ばかというよりは、お人形を愛でる女の子の気持ちで後ろに駆け寄ると、二人をいっぺんに抱き寄せる。
抱え込むようにされて面食らうが、いつものことなのでハーレムもサービスも声を上げて笑っていた。
「ハーレム、お誕生日おめでとう!」
ちゅっ。
「サービス、お誕生日おめでとう!」
ちゅっ!
ほっぺにキスを。
母の言葉といつもの甘いにおいに包まれる瞬間が、坊やたちは何より好きだった。
「さあ、ケーキを切るよ」
ここでもやはりマジックがナイフを持つ。ルーザーも立ちあがって、お皿を用意し始めた。
母のジュエルが何もしない分、兄たちは何でも一通りのことはこなせるようになっていた。
「あっそうだ、チョコレートもあるの!」
部屋の隅に置いていた紙袋から、赤と金のペーパーで包まれた箱をいくつか取り出す。
「今日はバレンタインデーでしょ。愛情こめた手作りチョコよ!」
「わあ、てづくりなの? すごい」
感心しているナナだが、手作りしたのはガナッシュとダクワーズである。
「うふふ。ナナちゃんの分もあるわ。ナナちゃんは女の子だけど、特別よ」
「うれしい! おばさま、ありがとう!」
平たいチョコレートの箱をもらって、小躍りしている。
「キャンキャン」
ハッピーもそんなナナの足元にじゃれた。
ガナッシュたちがレシピ片手に、チョコをテンパリングして型に流して、という慣れない作業をこなしていたことなど、知るよしもない。
所詮世話係の苦労など、誰にも分かっちゃもらえないのだ。
「ケーキとチョコレート、どっちを先に食べようかしら」
楽しく悩むジュエルの手にも、しっかりとみんなと同じ箱が握られている。
スウィート・シュガーのデコレーションケーキと、愛情たっぷり手作りチョコ。どちらも極上の甘さに違いない。
「ほらハーレム、サービス」
今日の主役たちに最初にケーキを分けてあげると、双子たちは歓声を上げた。たっぷりの生クリームと切り口のふわふわスポンジ、それに間にはさまれたイチゴや他のフルーツ。何より上に飾られたきらきらイチゴとチョコのプレートが、とってもおいしそう!
ハーレムは嬉しくて、弟のほっぺにほっぺがくっつくくらい近寄った。間近で目が合うと、サービスもくすくすくす、笑い出す。
「はい、ナナ。大きいのあげる」
お客さんのナナに渡るケーキを、ジュエルが指をくわえてじーっと見ている。
「・・・いいな大きいの」
「あ、どうぞ、これ」
本気で譲ろうとするのを、ルーザーがやんわり止めた。
「いいんだよナナ」
いつもの母のワガママだ。もちろんマジックも分かっている。
「母さんにも大きいのあげるから」
本当はもちろん、均等にカットしたんだけど。
「うわあー、おいしそう!」
ハーレムたちに負けないくらい瞳を輝かせ、ジュエルはケーキとチョコを並べて置いた。『どちらにしようかな』と指差し始める。
「もうたべていい?」
「いい?」
「ああ、いいよ」
ルーザーのと自分のと、最後にハッピーにも分けてやると、マジックはようやく椅子に戻った。
「やったー。いただきまーす」
「いただきまーす」
双子たちは早速ハート柄のフォーク片手に、ケーキに取りかかる。たちまち口の周りはクリームだらけで、少し遅いサンタさんみたいな顔になった。
「あたしも、いただきまーす」
『どちらにしようかな』の結果、ケーキに決定したらしい。ジュエルもぱくっと口に入れた。
「おいしい!」
「おいしい! さすがはキャラのケーキだわ!」
「うん」
ナナもルーザーも、マジックもハッピーも。みんなふっくらほっぺになって。
甘いケーキはみんなを幸せ顔にする。
今日はバースディ&バレンタイン。年に一度の、ダブルスウィートの日だ。
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H13.2.13