葵さんカウンタ14008ゲット記念小説

 
 
 
6.即興曲−アンプロンプチュなお茶会
 竜人界の中心部に位置する、竜王の城−。巨大な玉座にかけた、これもまた超巨大な竜王の前に、今七世界の英雄たちが集っていた。
「竜王様。今回の招集は、一体・・・」
 イヤな予感ビンビンなんだけど、一応シンタローが最初に尋ねた。竜王が個人的に皆を呼びつけるなんて、言っちゃあ悪いがろくでもない用事に決まっている。
「うむ、実は・・・、クーちゃんのことで相談があってな」
 やっぱり。と思う暇もなく、衝撃と冷気が部屋中を走った。クラーケンが竜王に手加減ナシのアイスボンバーを放ったのだ。
「その名で呼ぶなと言っているだろう」
 竜王の額から血がだーらだら。それでもパパは懲りない。
「クーちゃん、お友達の前でみっともないよ」
 ドウッ。二発目のアイスボンバーが炸裂する。竜王の流血も五割り増しになる。
「クーちゃん、やめないとパパまた変身するぞ!」
 アンギャオ・・! 大きな龍が出現し、ほえ立てた。クラーケンも負けない。
 突如出現した二匹の聖龍が、遠慮なく城をぶち壊してゆく。
「あーあ、また竜人界の恥が・・・」
「城、メチャメチャだぜ」
「進歩ないッすねー」
 ナンバーワンたちはいつものように始まった親子ゲンカを、遠巻きにして見守っていた。

「で、結局んとこ竜王様の相談って何なんだよ」
 バードが聞くと、リュウはニヤッと意味ありげに笑ってみせる。リュウだけは先にこのことについて話を聞いていた。
「それがな・・・おっと」
 ドオォオオ・・・! 部屋の壁が揺れる。皆はそれぞれ自分の湯飲みを持ち上げたり支えたりして守った。
 英雄たちだけで別室に移り、一服というところだったが、クラーケンと竜王の親子ゲンカはまだ尾を引いているようだ。
「ま、アレは放っておこう」
 自国の王を「アレ」呼ばわりして、リュウはクラーケンの最近の悩みについて、皆に語り始めた。

「えーっ!」
「ホントかよ!」
 衝撃の事実に、皆はどよめいたり驚きの声をあげたりと思い思いのリアクションを示す。その内容とは、何と、クラーケンに気になる女の子が出来た、というものだったから無理もない。
 およそそんなガラじゃないのに。
 しかもそのお相手が人魚のマーメイと知ると、バードは何だかフクザツな気分になる。もちろん今はちゃんと彼女がいて、ケンカばかりとはいえ結構うまくやっている。だけど、以前本気で好きになって貢いで、あげく玉砕した相手の名前には、さすがに古傷が痛むのだった。
 いや、しかし。
(ま、失恋でもすりゃアイツにはいいクスリになるかも)
 意地悪に思い直して、ひそかにニヤリとほくそ笑む。
 一度は殺されかけたし、未だに「殺す」が挨拶がわりのハーフ龍人には、いっぺん恋して失恋も経験して、更生してもらうというのもいいことだ。
「それで、オレたちにどうしろと・・・」
「まさか、キューピッド役かァ?」
「金にならないんなら、オレやんないよッ」
 皆はブツクサ言い始めた。竜王の命には逆らえないのをいいことに、こんな個人的な用事で呼びつけられたんだからたまらない。
 リュウは一応龍人ナンバーワンの立場なので、困ってしまう。
「んー、まァ、どうしろってこともないんだろうが、竜王様見ての通り子ぼんのうでなァ」
 いい年した息子に対して、それはもう異常なくらいである。
「どうすればいいかって相談なんだろ? いい考えがあるぜ」
 即座に反応したのはバードで、彼の真意を知らない英雄たちはいつにない張り切りように首をかしげた。
「考えって」
「どーするんだ?」
 人差し指をぴっと立てて、バードは上手なウインクをしてみせる。
「・・・女の子の気持ちは、女の子に聞けってことだヨ」

 次の日。
 クラーケンは父王に来客だと告げられ、客間に向かっていた。
 足取りは軽い。人魚を見てから変にモヤモヤしていた気分が、昨日の大ゲンカでだいぶすっきりしたお陰だ。
 が、ドアを開けたとたん、流れてきた匂いと色に息を呑み込む。目も点になった。
 コロンや果物のブレンドされた香り、きゃらきゃらの笑い声、華やかな色合い。
「こんにちはー」
 女の子が、いっぱいいる・・・!?

 つまりはこういうことだった。
 女の子の気持ちは女の子に聞けばいい、ということで、英雄たちの知り合いの女の子たちを呼び、クラーケンを囲んでのお茶会を催すことにしたのである。
 よってメンバーはおなじみの娘たちばかり。ぷるるに、ミイちゃんに、マリィ、モモカ、ヒヨ、そしてサクラ(ん?)。
「いらっしゃーい。待ってたわよ!」
 中でもひときわデカくてゴツイ奴に出迎えられた瞬間、反射的にアイスボンバーを食らわしていた。何だ、今のバケモノは。
「ひどいじゃないのッ、クラさんったら!」
 クラさんって。
 氷のかけらを払い落としながら、リュウ子がムクッと立ち上がる。ゴワゴワの黒髪をムリヤリ三つ編みにして、ひらひらスカートをはいた姿は不気味以外の何物でもない。
「・・・やめてって言ったでしょ、だから」
 モモカに腕を引かれ、強制退室となってしまった。
「仲間に入りたかっただけなのに・・・しくしく」
 泣き崩れる姿も女らしい(?)リュウ子に、シンタローが近付く。微妙に視線をそらしながらいかり肩に手を置いた。
「まァ、後のことは女の子たちに任せよう。本物の、な」
 本物じゃないのも混じっていたような気がするが・・・。

「簡ーッ単だヨ、そんなの!」
 本物じゃないのが、早速口火を切っている。
「貢ぐんだよ、貢ぐの。ありったけの富と財宝をオレに捧げな!!」
 何故「オレに」なのか。熱弁をふるうサクラ・・・。
 確かに以前のマーメイだったら、それが最も有効な方法ではある。ただ、気持ちまで向けさせることができるかどうかの保証がないってだけで。
「サクラったら」
 さっきのリュウといい、モモカの肩身は狭くなりっぱなしだ。
「どうぞクラーケンさん」
 蟲人の女の子がいれたてのお茶を持ってきてくれる。湯気がほわほわと、紅茶の香りを立ち上らせていた。
「これもどーぞ」
 可愛らしいラッピングのお菓子を勧めてくれた娘は、背に翼があるところを見れば鳥人なのだろう。
 クラーケンはほぼ女の子ばかりの中で、かなり居心地が悪い気持ちだったが、周りはそんなことお構いなしに勝手に自己紹介を始めて勝手にしゃべり続けた。
「貢がれるより、やっぱり気持ちをそのまま伝えてもらった方が嬉しいかも」
「いや、やっぱりモノだよ、モノ!」
「黙ってなさいよサクラ」
「何だよモモ、タダでこんなことさせといて」
「あんたは参加しなくていいんだってば!」
「ケンカはやめましょうよ、サクラさん、モモカさん」
 マリィにやんわりとたしなめられて、二人の花人ははたと我に返った。
「えーと・・・マリィちゃんなら、どう?」
「私ですか? そうですねェ・・・」
 目をふせ、はにかむようにして、マリィは小さな声で言った。
「どこかに・・・例えばお花畑なんかに、一緒に行けたら、嬉しいわ・・・」
 タイガーに連れて行ってもらったことでも思い出しているのだろうか、頬がピンクに色付いている。
「ミイもヒーローといろんなところに行くのが好きですわー!」
 ノロケられているよ。
 いろんなところに? しかし相手は人魚だ。連れていける場所の制限はあるかも知れない。
 気が付けば真剣に考え始めているクラーケンなのだった。
「二人で空の散歩ってのも、サイコーに気持ちいいよ!」
 残念ながらそれは鳥人カップルでなければできないデートだ。
「花束プレゼントされたら、クラッとくるかも」
 これはモモカの、単なる希望。実際にリュウに花束なんか差し出されても、何だか笑ってしまいそうだけど。
「ぷるるちゃんは?」
 蝶の羽を持ったぷるるは、笑って答えた。
「やっぱり、一緒にいられればそれで!」
 大胆な茶目っ気に、みんなからも笑いがこぼれた。やっぱりそーよね、と頷く女の子たちは、この時点で何のために集まったのかを忘れかけている。
 その、一緒にいられる前の段階だから何とかしたいというのに。
「私なんか遠距離だから、羨ましいなー」
「私も。ミイちゃんはいつも一緒でいいねー」
 モモカとヒヨは、恋人と文字通り住む世界が違うのだった。しょっちゅう行き来しているとはいえ、やはり一緒に住んでいるミイちゃんが羨ましい。
「だって結婚してるんですもの! おねえちゃんたちも、結婚すればいいんですわ!」
 明快な返事に苦笑い。ミイは最年少でありながら唯一の既婚者だ。
 賑やかな女の子たちのノロケ話をぼんやり聞きながら、クラーケンは少しの疲れを感じていた。
 


 
 
−つづく−

 


 

7.子守歌−ロスト・ララバイ
 
 


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