サトシさんカウンタ11110ゲット記念企画小説
7.デート日和
 
 暖かい風が吹いている。ビルの間を吹き抜けて、風はアキラの頬にも届いた。
「いー天気だなー。デート日和ってやつですか」
 とうとうオレにも生身の女の子とデートする日がやってきたか・・・。にやにやにや。
 今日はいつもより気合を入れてオシャレしてきた。待ち合わせ場所にもちょっと早く着いてしまったし。
 アルタ前なんて、ありきたりすぎたかな? 周りにも待ち合わせかナンパ目当てかよく分からないが人がたくさんいる。
 ヒトミに見つけてもらえないとマズイ。かけていたサングラスを外したそのとき。
「アキラせーんせ!」
 そんな元気いっぱいの声と共に、待ち人がやってきた。ショートカットのぴょんぴょん髪にカラフルな髪留めをつけて、ミニスカートにGジャンといういでたちは、本当に高校生みたいだけどよく似合っていた。
 見回せば棒みたいな女の子ばかりうじゃうじゃいる中、全身ちょうどいいくらいぽっちゃりしているヒトミは、そんな細いだけの子たちよりずっとカワイイ。
「カワイイなーお前!」
「え、そ、そんな・・・」
 男の人にほめられるのには慣れていなくて、ヒトミは困ってしまうが、アキラには思わず本心から出た言葉だった。そのため言った本人も後から照れてしまう。
「厚底とかはいてくるかと思ったよ」
「あたしあれ苦手なの。転んじゃうもん」
 ハイソックスにスニーカーだから、背が低いままだ。ちゃんと立っているところをそういえば初めて見たような気がする。
「お前ちっちゃいね。何センチ?」
「悪かったねーちっちゃくて。150センチに届いてるよ!」
 ようやく150なのだろう。
「さてアキラ先生、どこ行く?」
「そうだなー、見たい映画があるんだけどなー」
「却下」
 即座に言い捨てられて、切ない気持ちになってしまう。
「じゃ、とりあえずお茶でもしよう。・・・デートってだいたいそういうモンだよな?」
 そうか?
「そう言われても、あたしはデート初心者だから・・・。って、これデートなの!?」
 ボッ、といっきに赤くなる。
 アキラもついでに赤くなる。先走ったことを口走ったか。
「あ、ご、ごめんなさい・・・」
「い、いや」
 とりあえず連れ立ってコーヒーショップへ向かった。
「体の方はどう?」
 ここのコーヒーショップはセルフサービスになっている。湯気の立つコーヒーをテーブルに置いて、ヒトミに向かい合うように座った。
 手術は大成功に終わったいうのは聞いていた。手術の後一度見舞って、今日会うことを約束していたのだから。
 カップを傾け、一口飲んでからヒトミはニッ、と笑う。
「元気。この通り」
「良かったな。なんか、病院にいるときと印象が全然違うな」
 こんなに元気で明るい子だとは思わなかった。屈託もなくなっている。
 ヒトミはコーヒーカップを両手で包むようにして、目を伏せた。
「だって・・・虹を見てたとき、思ったんだもの。もし手術が成功したら、あたしも生まれ変わりたいなって。自信を持って、言いたいことを言えるようになりたいなって」
 本当はずっと、なりたかった自分に近付きたくて。
「急に全部変えるのは難しいけど、アキラ先生には何故か何でも言えるから、まずはそこからって」
「なあ、その「先生」ってのやっぱやめねえ? アキラでいいよアキラで」
「・・・うん」
『ねーねーあのヒト、カッコよくない?』
『どれどれ、どの人? あーホントー。でも女連れじゃん』
 ヒトミが背を向けている席から女の子同士のひそひそ声が聞こえてきた。
(気にしない、気にしない・・・)
「どーした?」
「ううん・・・それより、動物キャラ描いてみたんだけど、見る?」
「え、マジ? 今持ってきてんの? 見てえ!」
「うん。待って」
 空いた椅子に置いているリュックから何枚かの白い紙を取り出して、アキラに手渡す。色まで付けて特別に丁寧に描いたイラストだ。パンダ、ラッコ、何故か人魚・・・などなど、可愛らしく描かれた動物たちにアキラはもうデレデレのメロメロ。
「キャワイイー、これもスッゲーカワイイ!」
 今にもチューしそうな勢いだ。
 こんな反応は描き手のヒトミには嬉しいものだったが、カッコイイ男だと思ってアキラを見つめていた女性たちには不評だったらしい。
『なぁに、アレ』
『変態じゃない・・・』
 ヒトミは笑いをこらえた。ザマアミロ、ってな気分でめちゃくちゃ愉快だ。
「よし、これ即採用。またゲームボーイ用のゲーム作るからな」
「わーい。楽しみにしてるね」
 外見がカッコイイかどうかはよく分からない。雹さま並みにカッコイイ男なんているわけはないし。
 だから外見なんて問題じゃなくて。こんなアキラだからこそ、一緒にいて楽しいんだ。

 その後はゲーセンに行ってアキラのゲームの腕を見せてもらったが、腕は十分分かったと言っているのになかなかやめてくれない格闘ゲームを無理矢理終わらせるのに骨を折った。全く、デートとか言ってゲームに夢中になってるんだから。
 二人でやれるゲームをやろうということになって、銃を持って画面に出てくる敵を打ったり、ボートに乗り込んで力一杯オールを漕いだりした。また「サンバDEアミーゴ!」というゲームではマラカスを振って途中でポーズ取ったりするのが面白かった。
 UFOキャッチャーで「どこでもいっしょ」のロボットのぬいぐるみを取ってもらう。ネコが良かったが、どうにも取りづらい所にあったので無理だったのだ。ロボットは四角い頭の四面それぞれに表情がついていて、それはそれで面白いキャラだ。
 ヒトミはコンビニキャッチャーでキーホルダーを取ってみせた。「ジバクくん」のキーホルダーがコンビニキャッチャーにあったら、絶対欲しいと常日頃思っている。
 そんなこんなで楽しく遊んでいるうちに、お腹が空いてきた。ヒトミの腹時計はかなり正確だ。お昼時間になったのに違いない。
 学生同士なのであまりお金をかけずに、お昼はファーストフードにした。ここならずっとおしゃべりしてても平気だし。
 午後はショッピング。途中でアキラ行きつけのお店にも入った。そんなに広いお店ではないが、流行りの服や小物が置いてあり、レディス用もある。
「こんちは、サトシさん」
「おー、アキラくん」
 お店のおにーさんとは仲良しだった。20代半ばくらいのサトシさんはすっきり短髪をツンツンさせてて、いっぱいピアスもしている。ブレスレットや銀の指輪も光らせているが男っぽくおしゃれな感じの人だった。
「この間話してた彼女? カワイーね」
「だろ」
 やっぱり「カワイイ」と言われるのには抵抗がある。ヒトミはまた黙ってしまった。
「レディス物も置いてるよ。見ていって」
「は、はい・・・」
 促されて店の中に入る。どれから見たものか迷っていると、サトシさんが棚からシャツを取って広げてみせた。
「これ、どう? こんなのもかわいいよ」
 次々出されても・・・。
「アキラくんと同い年だったよね? ちょっと大人っぽいのもいいかも。こんなのとか」
 黒いロングのワンピースを出してきて、体に当ててくれる。鏡の中にしっとりめの自分がいた。
「いいじゃん。試着してみたら?」
 横からアキラが口を出す。あまり着たことがないタイプの服なので、ヒトミも着てみたくなった。
「いいですか? 試着」
「もちろん。どうぞどうぞ」
 試着室で着ている服を脱いで畳んで、黒いワンピースに袖を通す。半袖で、全体に模様が入っていた。
「おー」
「いい、いい」
 男二人からの賛辞に頬を染める。今までとは全く違うイメージだけれど、着てみるとそんなに違和感はなかった。
 案外そんなものかも。似合わないなんて思っているのは、自分だけだったりして。
 色々試してみれば、また新しい自分が見つかるよね。

 街をあちこち見て、買い物もして、お茶もして。いつの間にか夕方になっていたから、一緒にご飯も食べて。
 いっぱい遊んだらもう夜になってしまった。
「じゃそろそろ帰るか。送ってくよ」
「駅まででいいよ」
 二人並んで歩くのも、もう慣れた位置で。まだまだ賑やかな街の中をくぐり抜けてゆく。
「なー、今日のって・・・」
「んー?」
「デート、だよなー」
 恥ずかしいのか、振り向こうともしないアキラの黒髪を見て、笑いたい気持ちになってしまう。
 それからかなりの勇気を持って、ヒトミは手を伸ばした。先を行く相手の手をつかむ。
「・・・うん!」
 それなら、手をつないで歩こう。

 あの虹からもらった、たくさんの力。
 なりたい自分になれること。
 信じる夢はかなうこと。
 きっと・・・きっとね!
 
 
 

  
 
 
 

 −おわり−



あとがき

カウンタ11111ゲットの名乗りがまたまたなくて。一番近い11110を教えてくださったサトシさんからリクエストいただきました。
いろいろあったようですが、私が「ムリ」と言ったのを省いていただいて(本気でリクエストに応えていないと言われそうだ・・・)、「アキラくんに彼女ができる話」ということでいただきました。
しかし・・・「マーガレット」で、ドリームネットPAPAネタは手こずるぞ、というのが分かっていたのでドキドキものでした。結果的にはそれほど手こずりはしなかったけど。
本当は心の中でちょっぴりだけど、「ヒデハルとアキラとコユキで三角関係にしよう」などとヨコシマなことを思ってもいたのですが、そこは割り切って新キャラを作りました。
あの目玉落ちモノゲームといい、恋愛シュミレーションゲーム「凝視」といい、アキラくんの作るゲームはどうも瞳に関係深いようなので名前はすぐ「ヒトミ」に決定しました。当初高校生の設定だったけど「同い年くらいがいい」ということでしたので大学生に。いや、短大生かもしれないし専門学校生かもしれないのですが・・・。

話は戻って、何故ドリームネットPAPAネタは手こずるかということですが、パプワとかHEROと違って、すっごく現実味があるんですよね。時代とか文化とかの背景が。だから話にも現実味を持たせてしまいたくなる。そうすると、おのずと自分の考え方とか入っちゃうんですよ。
何て言えばいいんだろう。
いつもだったらコンプレックスのこととか書かないのに、そんなの出してしまう。
そう、コユキもヒトミも私自身。
だから書きにくい・・・。
私もコンプレックスは強いんです。今はコユキの考え方にかなり近いんですが、それでも時々「やっぱり美人は得だよなー」とか思ってしまう。
学生時代はもっとすごいコンプレックスに悩んでいたような・・・。まあ暗くなるからそういう話はやめよう。
でも笑顔と自信と少しの努力ってのは本当だと思うよ。

ヒトミをちょっとふっくら体型にしたのは、痩せている子がキレイ、みたいな現代の考え方が嫌いだから。
女性はいくらでも痩せたがる(私も含めて)けど、実際男の人に聞くとみんなちょっとぽっちゃりしている方が好みって言うんだよね。痩せてれば痩せているほどいい、って答えたのはたった一人だけだったよ(一人でもいるという事実にびっくりした私)。
もちろん体質とかあるから、もともと痩せ気味の人もいるけれど、普通の体型の人でも無理して痩せたくなるような今の風潮がなくなればいいなーって思ってる。

ゲームを出会いのきっかけにして欲しいとのリクエストでしたが、私ゲームってあんまり知らないんですよね。入院先で出会うというシチュエーションもいただいたのですが病気のこともさっぱり知識ないし。一体ヒトミの病気って何だったんだろう? 元気になったからいいけど。
ゲームのことについては、自分の知っている数少ないゲーム「テトリス」と「どこでもいっしょ」、あとはアキラくん自作のゲームでごまかしてしまいました。
どこでもいっしょは大好き。めちゃくちゃカワイイ!

んーと、好きなモノは好きって言っていいんだ、ってのも割と最近、知りました。
学生時代はマンガやアニメが好き、ってのも、趣味として小説を書いている、ということすらも、恥ずかしくて誰にも言えなかった。
けど今の同僚のおにーさんもアニメ好きで、それ別に隠してないのね。あ、そっか、別に言っていいんだって思った。
昔よりはそういうのが認められる時代になったってのもあるし。
今では机の上に車田マンガのしおりなど挟んでいます(笑)。
そして例え初対面の人にでも、趣味を聞かれたら胸張って答えられます。「小説を書くことです」って。
それが私の自信にもなっているよ。

タイトルは今回も遊佐未森の歌からです。
いつものようにモチーフが欲しくて、CD見ながら決めました。
虹はまだモチーフに使ってなかったなということで。
虹の七色に合わせて7話にまとめました。それぞれのバックの色も虹の七色(紫・藍・青・緑・黄・橙・赤)のイメージで。
 
 


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