突発企画 愉之さんリクエスト小説  第4話・Still for your love

 ガタンッ。
「・・ちッ、もう来たのか」
 ゆっくり身を起こして、つまらなそうにビールの缶に手を伸ばす。
 ナオミは夢から醒めたような心地で、機械的にジュースを手にした。ドアが開いて、人が部屋の中に入ってくるのが缶越しに見える。
「ナオミ」
 ナオミはびっくりして、缶を慌てて置いた。金のまっすぐな髪と、青の左眼、そして冴えるような美貌。
「サービスおじ様!」
 せき込むようなナオミに、叔父は安心させるような笑顔をくれる。後から入ってきたシンタローが、ナオミのもとに駆けた。
「ナオちゃん」
「シンちゃん・・・」
 嬉しかった。安堵の吐息が洩れる。
「久しぶりだな、サービス」
「どういうつもりだ、ハーレム」
 ハーレムははぐらかすように立ち上がり、弟に近付いた。
「相変わらず美人だなァ。どうすりゃそんな色白でいられるんだ」
「おかげさまでね・・・」
 面白くもなさそうに、サービスはおまえも相変わらずだな、と付け加える。
 やはりこの人は自分のもう一人の叔父だった。ナオミは納得しながら、改めてハーレムの横顔を見上げる。話に聞いたことはあったが見るのは初めてだ。サービスの双子の兄というが、全然似てはいなかった。一族に共通の、金の髪と青の瞳の他は、何一つ。
「なぜ、ナオミを」
「マジック兄貴がお怒りか?」
「兄さんには言ってない」
 シンタローが途方に暮れていたところに、本当に偶然、サービスが来たのだった。
 サービスらしい冷静な口調の裏に、本気の怒りが潜んでいた。双子だけにダイレクトに感情は伝わる。ハーレムは肩を上げた。茶化すような仕草で。
「そりゃあよかった。マジック兄貴は怖いからなァ。ナオミと、シンタローのことに関してはな」
「とにかく、ナオミは連れて帰る」
「残念だな。せっかくここで、俺ごのみの女に育て上げようと思ったのに」
「ハーレム!」
 色めき立つ弟に、マジになんなよ、と軽くあごをしゃくってみせる。
 ナオミは兄弟ゲンカのような様相になってきたことにハラハラしていた。
「サービスおじ様、ハーレムおじ様、やめて。ケンカしないで」
「ナオミ・・・」
 優しい娘だ。サービスは体の力が柔らかく抜けてゆくのを感じた。
 ナオミは椅子からおりて、二人のもとに歩く。
 双子は思わず目を奪われる。子供らしいあどけなさの同居している、ナオミの整った顔立ちに。青い瞳に今宿るのは、争いを止めたいという真摯な願いだけだった。
 さすがにハーレムの唇からもふざけたような笑みが消えた。圧倒される。こんな小さな姪に。
「ハーレムおじ様、私、帰るわ」
 にこっ。完璧な笑顔。
 大した娘だ。ハーレムもつられて表情がやわらぐ。
「俺の嫁になりたくなったら、いつでも言いな」
 からかいを復活させたハーレムだったが、鋭く射るような視線を背後に感じ、ふと振り向く。まっすぐに立って挑むようににらみつけているのは、これもまだ幼いシンタローだった。
 一族の者にはなかったはずの、黒い瞳で、臆することなく見上げている。
 ハーレムは直感的に思うところがあった。それは生来の鋭さのなせるわざに他ならない。
(シンタロー、か)
 サービスは、この甥に過剰とも思えるほどの期待を寄せている。今、その意味も少し分かった気がした。
 もしかしたら、本当にこの子が一族の運命を変えるかもしれない。その力があるとしたら、導くのは、将来美しく成長するであろうイトコの役目か。
 ほとんど考える隙はなかった。そこまでハーレムは無意識のうちに感じ取ったのだった。
「シンタロー」
 甥の方へ上半身を傾ける。まだ成長はこれからだ。数年かけて、ぐんぐん背も伸びるだろう。
「ナオミを守りたかったら、強くなるんだな」
 囁いた。
 シンタローは無言ののち、しっかりと頷いてみせた。

「大丈夫だったかい、ナオミ。ハーレムに何もされなかっただろうね」
 帰り道の車の中でハンドルを握りながら、しきりに心配そうに聞くサービスに、ナオミは笑って答えた。
「うん。ジュースくれたりしたもん」
 あんなに大泣きしていたことは、忘れてしまったらしい。
「今日のことは、親父にはナイショだぜ、ナオちゃん」
 口の前に人差し指を立てるシンタローにも、ナオミは頷いた。こんなことがバレたら、ひどく叱られてしまうだろう。
「それにしてもハーレムおじさん、本当にナオちゃんをお嫁にしたかったのかな」
「ただの冗談だろう・・・」
 と言いながらも、もしかして10%以上の本気が混じっていたかも、とサービスは心配する。
「そうよ。だってナオミ、サービスおじ様のお嫁さんになることに決まってるんだもの」
 屈託のないナオミの言葉に、シンタローは一瞬固まってしまった。脳裏に浮かぶ、ハーレムの顔と声。
 強く、なるんだな。ナオミを守りたかったら、強く・・・・。
 握った拳を見下ろす。強くなる。表情が自然に引き締まった。
「さあ、もうすぐ着くぞ」
「サービスおじ様、今日は泊まって行くんでしょ? 後でナオミの部屋に来てね」
「ああ、分かったよ」
「わあ、嬉しいわ」
 三人を乗せた車は、ガンマ団に到着した。

「さァ・・・今回のはまた上手くできたぞ」
 一人部屋にこもって、完成した「シンちゃん人形」を抱き上げる。飽きるまで眺めると、スリスリ頬ずりし始めた。すでに鼻血が流れている。
 何も知らないマジックだけが、こうして平和な一日を過ごしていた。
 

 
 

 END
 
 

あとがき
最近、どうも、リクエストによりおはなしを書くことの快感に目覚めたらしい(笑)。
今までカウンタの1000、2036、3000ゲットの方からリクエストをいただいて書いたんだけど、これもまた結構楽しいんですよ。
自分のためだけにしかおはなしを書いたことがなかったのにね。
というわけで、今回、何でもないのに突発企画で伝言板にてリクエスト募集をしてみました。
そして、それに応えてくださったのが愉之さん。
・ナオミちゃんの10才前後の話
・ハーレムvsサービス
・マジックのシンタローに対する溺愛
・ハーレムの、シンタローやナオミに対する感情
というのがリクエスト内容でした。
時期は10年前。ナオミは11才、シンタローが14才、ハーレムたちは33才。うわ、33才だって。若いね。
第1話「そして全てはからまわり」で、まずはマジックパパの溺愛を。思春期のシンタローは、そろそろ父親に不審を抱き始めた頃ではなかろうか。マンガでもパパはさりげなくシンタローに触れてたりしてますね。そういうの、書きたかったの。
第2話「裸足になって」では、イトコ同士の仲の良さ。この頃まだナオミは幽閉まではされていなかったんだよね。いきなりハーレムにはバイクで登場してもらいました。でも、メットしないと危険だよ、ハーレム。
第3話「I wish」。ハーレムのあやしさ大爆発(笑)。何で私が書くと、いつもこうなっちゃうんだ。これではハーレム、ただのロリコン兄ちゃんだよ。「お兄さん」と呼ばせているし。まー、おおかたナオミの秘石眼を利用しよう、とでも思ったんでしょうかね。しかしあの別荘風の建物は何だったのだろう?
第4話「Still for your love」まとめです。リクエストのハーレムvsサービス・・は、あんまり書ききれなかったね。私はハーレムって鋭い人だと信じているので、感じていただきましたよ。シンタローのこと。

のちのおはなしでは、21才になって初めてナオミはハーレムと対面する、ってことになっていたけど、まあ気にしないでください。私のおはなしに矛盾はつきもの。

ハーレム、最初は苦手なタイプだったんだけど、最近ちょっと好きになりました。やっぱり自分で書くと、愛着がわくからかな?
しっかりしていて、実は優しいイイヤツなのが好き。
4兄弟はみんな好きだなあ。パプワくんは、まずアニメでサービスを見てホレたのがのめりこむきっかけだったし。マジックも、声も良いし大好き。ルーザーは最近とても好きになった。
それぞれみんないいですね。ああ、4兄弟の妹になりたい・・・・。

タイトルは、「rumania montevideo」の曲からそのままもらいました。
アニメ「名探偵コナン」のエンディング曲で、とても気に入って、何度も繰り返して聴いていたの。あんまり意味を考えないで、そのまま使っちゃった。
おのおのの小タイトルも、歌詞の中から全部つけたんだよ。
 


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