冬の太陽は気が早く、せかせかとその姿を隠そうとする。
赤い大地に長い影を落とし、ティラミスは校舎裏にて一心にトレーニングをしていた。
強くなりたい、と思っているだけでは、強くなれない。自主トレは日課になっている。
体つきは仕方がない。小柄で線の細い体格は、いくら鍛えてもシンタローのようにはなれないだろう。だけど、力はつくはずだ。マジック総帥の近くで働けるくらいの力は・・・。
「熱心だなー」
ふっと顔を上げると、久しぶりに見る笑顔があった。ティラミスは拳を下ろす。
「済まん、邪魔して」
すこしバツ悪そうに頭に手をやって、チョコレートロマンスが進み出てきた。他意はなさそうだが、その態度に戸惑ってしまう。この間、あんなにひどい言葉を投げつけたのに、どうして笑っているんだろう。
「謝りに来たんだ。この間、悪かったと思って」
あのときはカッとなったけれど、チョコレートロマンスも自分なりに反省して、今日ティラミスに会いに来たのだった。
「君が、そんなに甘い物が嫌いだとは知らなかったからさ。だから、これ」
と、スナック菓子の袋を手渡す。赤いパッケージには、派手な字体で“激辛スナック”の文字が印刷されていた。
ティラミスは受け取ってから、小首をかしげて相手を見上げる。
「おわびだよ。すっげえ辛くて、うまいから、食べてみな」
甘い物が嫌いなら、と、彼なりの考えで辛いお菓子を持ってきたというわけだ。
ティラミスは心の中だけで笑ってしまう。そんなことで怒ったわけではないのに。何て素直で単純な男なんだろう、このチョコレートロマンスという奴は。
「・・・許してくれるか?」
そして、何て真っ直ぐな目でこちらを見るのだろう。どきっとするくらいに。
「・・・ああ」
うなずくので、精一杯だった。
他人にどう思われても構わない。嫌われても、無視されても。
だけど、この男は不思議だった。心の垣根を乗り越えて、自然な仕草で踏み込んでくる。しかもそれはティラミスにとって不快なものではない。かたくなな気持ちが融けかかってくるのを、無意識のうちに感じ始めていたのだから。
「一緒に、食べようか。部屋に戻って」
夜の闇が寒気を連れて迫ってくる。
最後の夕陽を体にいっぱい浴びながら、二人は並んで宿舎に帰った。
H11.2.14