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足元のホットカーペットと壁際のストーブが、部屋の中を暖かく居心地の良いものとしている。結露によって曇った窓。
大きなクリスマスツリーのライトが点滅している明るい室内は、笑い声で満ちていた。
「はーい、ハーレム」
ホットカーペットの上にぺたんと座った母が、黄色い風船を手で軽く打つ。波打つ豊かな金髪とレースのリボンが、さらりと揺れた。
「わーい」
4才の息子が、風船の落下地点まで歩き、きゃっきゃと笑いながら今度は弟の方に打ってやる。
ハーレムの双子の弟であるサービスも、楽しそうに風船を追いかけた。
「あはは・・上手ねえ、二人とも」
母のジュエルは心から楽しそうに手を叩く。息子たちと遊んでやっているというよりは、自分も一緒になって遊んでいるかのようだった。
「ママ!」
サービスが返した風船は、座っているジュエルの位置から大きくそれた。力を入れすぎたらしい。ドアの前で落ち、跳ね返る。
「あらあら」
立ち上がろうとしたとき、ちょうどドアが開いた。
「ただいまー」
「ただいま」
上の二人の息子たちだ。学校から帰ってきたのだ。
「おかえり! 寒かったでしょう」
ジュエルは座ったままでにっこりと二人に笑いかけた。
「うん。雪が降ってきたよ」
ドアを閉めて、カバンを置く。
長男のマジックは風船に気付き、ハーレムに投げてやった。次男のルーザーは、冷えた体を暖めようとストーブの前に座り込む。
「ゆき!?」
双子の声が重なった。きらきらした瞳を、兄に向ける。
「ああ。外を見てごらん」
ルーザーが言うと、ハーレムとサービスは先を争うように窓に走った。
「ゆきー」
背伸びをしても、届かない。
「だっこー」
窓枠にようやく手をかけて、サービスは振り返った。
「はいはい」
母が立ち上がり、サービスを抱き上げる。マジックもハーレムをだっこしてやった。
曇った窓を手でぬぐうと、白い大粒の雪が舞っているのが見える。薄い雲越しの太陽が注ぐ弱い光の中で、ふわふわと風に遊ぶ雪はとてもきれい。
「わー、ゆきだー」
「ゆきだー」
二人は大はしゃぎ。
「本当、雪だわ。きれい!」
ママも負けずに大はしゃぎだ。
「ママ、そとにいっていい?」
「そとであそびたーい」
「うーん、でも、寒いのよ」
「あそびたーい」
かわいい息子たちに言われると、何でも聞いてあげたくなるけれど、ジュエルは心配そうな顔をして口ごもった。
「母さん、いいじゃないか。外で遊ばないと、体が強くならないよ」
双子を大事にするあまり過保護になりがちな母だったが、マジックに言われるとしぶしぶ頷かざるを得ない。
「じゃあ、気を付けて遊ぶのよ。あんまり遠くに行かないでね」
サービスの柔らかな金の髪をなでて、念を押した。
「うん!」
「やったあ!」
喜ぶ双子たちにオーバーを着せ、マフラーと手袋と毛糸の帽子で身支度を整えてやる。これらは全て、マジックとルーザーの仕事だった。ジュエルはその間、子供のように熱心に窓から雪を眺めていた。
「いってきまーす」
「気を付けるのよ!」
母の言葉が聞こえているのか、ハーレムとサービスは転がるようにして外に飛び出して行った。
「大丈夫かしら・・・」
「心配しすぎだよ、母さんは」
「もっと外に出して、体を鍛えさせないと。母さんはあの二人にも、強くなって欲しいんだろう」
「うん」
マジックの言葉に、強く頷く。
「弱い人はダメよ。だって死んじゃうもの」
目をそらして、ジュエルはうつむいた。瞳に哀しみの色がにじむ。
「シルバーみたいに・・・」
「母さん」
シルバーとは、今は亡きマジックたちの父親の名だ。ジュエルの夫であり、叔父だった男。
“青の一族”であるジュエルは、身内のシルバーと結婚し、四人の男の子をもうけた。しかしシルバーは、末のハーレムとサービスが生まれた頃に、戦場に命を散らしてしまったのだった。
とはいえ、世界最強の殺し屋軍団であるガンマ団にいるジュエルだ。生活に困ることもなくほとんど子供たちと遊んで暮らしてきたから、女手一つで育て上げている、というほどの苦労もないのだが。
「だからマジックはもっともっと強くなってね」
顔を上げて、ジュエルは笑った。
まだ11才になったばかりの子供だが、マジックは既にガンマ団の時期総帥と自他共に認めており、実際に今の総帥の手伝いをしながら勉強を重ねているのだった。
「ルーザーも、もっともっと賢くなってね」
兄と二つ違いの次男は、戦闘向きではなかったが、頭が良く将来は参謀として有望視されている。
そしてかわいい双子の息子たち。ジュエルにとっては四人とも、自慢の子供たちだった。
「分かってるよ、母さん」
子供がそのまま大きくなったみたいだ、と思う。
ジュエルはガンマ団の中で大切に育てられてきた人だから、それも無理はないのかも知れない。
父が亡くなってから、マジックとルーザーはある意味父親代わりだった。ハーレムとサービスにとってというだけではなく、ジュエルにとっても、二人は大きな支えになっていた。
「母さん、何か温かい飲み物を持ってくるよ」
ルーザーが部屋を出ていく。母は黄色い風船でひとり遊び始めていた。
マジックは窓の外に視線を戻す。雪がちらちら舞っている。
なんだか、ほっと安らぐ気持ちになった。
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