光夢さんカウンタ1000ゲットおめでとう企画

  Yellow Yellow Happy 2

 
 

「ゆーきやこんこん」
「あーられーやこんこん」
 降っても降ってもまだ降り止まぬ・・・。
 ハーレムとサービス、仲良しの兄弟は、手をつないで雪の中をスキップしていた。
 大粒の雪が、どんどんどんどん降ってくる。空を見上げると自分たちを包むようにたくさんの白い雪たちが舞い降りきて、危うく目に入りそうになった。
「つめたーい」
「あははは・・・」
 頬に落ちた粒を手袋の指先でぬぐう。サービスはハーレムと顔を見合わせて、笑った。
 ガンマ団の敷地を抜け、原っぱを横切り、土手に向かう。雪の中、二人のスキップならどこまでも行けそうだ。
「いーぬはよろこび」
「にわかけまわり」
「キャンキャン」
 犬の鳴き声が、タイミング良く聞こえたので、双子は一瞬目と目を合わすと、駆け出した。土手を上がると川原に出る。
「キャンキャン」
「わあ!」
 二人は手をつないだままで、川の側へ走り降りた。小さな黄色い犬が、元気よく走り回っているそばまで。
「いぬだー」
「かわいい!」
 かがみ込んで、両手を伸ばす。子犬は歌の通り、喜んで駆け回り、子供たちの方へ寄ってきた。
「きいろいいぬだ」
「よしよし・・・」
 二人の小さな手が、子犬をなで回す。キューンと鳴いて、気持ちよさそうに目をつぶるさまが、またサービスとハーレムを喜ばせた。
「くびわ、してないね」
 首のまわりをなでていたサービスが、顔を上げて言う。ハーレムも確認して、うなずいた。
「かいいぬじゃないのかな」
 短い毛にじかに触れたくて、ハーレムは手袋を取った。子犬の毛についた雪が一瞬ひやりと冷たかったけれども、それはすぐに溶け、かわりにふわっとした感触とぬくもりが伝わってくる。
「あったかいよ」
 サービスもまねをして、手袋を膝の上に置き、手を伸ばした。
「ほんとだー」
 夢中でなで回す子供たちをうっとおしがる様子もなく、犬は嬉しそうに身をゆだねている。
「かわいいなー」
「すていぬなのかな」
 頬ずりするハーレムに顔を寄せ、サービスは遠慮がちに囁いた。
「ねぇ、ハーレム。うちで、かえないかなあ」
「・・・」
 身を起こして弟の方に向き、ハーレムは少し黙った。首をかしげる。
「・・むりだよ、きっと」
「どうして」
 サービスは子犬をつかまえたまま、同じように首をかしげた。
「マジックおにいちゃんは、どうぶつがすきだし、いいんじゃないかなあ」
「でも・・・」
 言いかけて、ハーレムは言葉を泳がす。これは末っ子は知らなくていいことだし、第一、自分の思っていることを正確に表現できる自信はなかった。
 確かに長兄のマジックは動物好きだし、母も、自分たちの言うことなら反対はしないと思う。
 だけどハーレムは、大好きだった小鳥をなくしてから、もう、ペットなど欲しくはなかった。
 ルーザーは、優しい兄だ。サービスは心からそう信じて疑っていない。ハーレムだって、あのときのことは夢だったのかと思うくらい、ルーザーは普段は穏やかで、よく面倒を見てくれていた。
 それでも、この黄色い子犬を家で飼うことを考えると、ルーザーの残酷なくらいに綺麗な笑顔がいやでも頭に浮かんでくる。
 双子の弟にも言えない、形になる以前の恐怖感が幼いハーレムの心に根を下ろすのだ。
「とにかく、うちでは、かえないよ」
「ハーレム・・・」
 サービスがまだ何か言おうとしたとき、ハーレムは土手を駆け下りてくる人の姿に気が付き、立ち上がった。サービスも振り返って、同じように立ち上がる。子犬は解放されてもその場を動かず、嬉しそうにしっぽを振り続けていた。
 女の子は二人と一匹のそばまで駆け、笑顔で立ち止まった。ハーレムたちよりお姉さんだが、ルーザーよりは年下だろう。ショートカットの髪と瞳は、濃いブラウン。セーラー服の上にカーディガンをはおって、手にソーセージを持っている。ふっくらした頬と大きな瞳が印象的な少女だ。
「その子、あなたたちのペットだったの?」
 快活な様子につられて、ハーレムとサービスは大きく首を振った。
「ううん、ちがうよ」
「おねえちゃんの?」
「あたしのでもないけど」
 スカートに手をそえながらかがみ込み、少女はソーセージを差し出した。子犬はちぎれんばかりにしっぽを振って、早速かぶりつく。
「あはは・・。見て、かわいいね!」
「うん!」
「かわいい!」
 双子も、さっきのようにしゃがんで、喜んで食事にありつく子犬を見守った。
「おなかがすいていたみたいだから、家から食べものを持ってきたの。すて犬だよ、きっと」
 そっと手を出し、頭をなでる。
「おねえちゃんのおうちで、かえないの?」
「あたしもできればかいたいけど、お母さんがダメって言ったの」
「そっかー」
 残念そうにうつむく子供たちを見て、女の子はぽん、と手を打った。
「あたしたち三人でかおうか。ナイショで!」
 ハーレムとサービスはそっくりの表情で、同時にうなずいた。
「うん!」
 こんなかわいい子犬を飼える。しかも、みんなには秘密で。なんだかわくわくしてくる。
 きらきら輝く二人の瞳を見て、女の子も嬉しそうに微笑んだ。
 子犬は、すっかりごちそうを平らげて、きょとんと三人を見上げている。
「あなたたち、おともだち?」
 黄色い子犬を抱き上げて、軽い調子でハーレムとサービスに問いかける。
「ちがうよ」
「ふたご」
「え!?」
 大げさなくらい大きな声を上げて、彼女は二人を交互に見た。ブラウンの目はまんまる。子犬の目も、同じようにまんまるだ。
「・・・にてないねえ」
 双子は、どう答えてよいのか分からない。
 女の子はごめんごめん、と笑った。
「名前は?」
「ハーレム」
「サービス」
 しっかりと答える似てない双子に好感を抱く。頭の良い子供たちだと感じた。
「あたしは、ナナっていうの」
 犬の背中に降りかかった雪を優しく払って、ナナは立ち上がった。自分の髪の雪も手で落とす。
「さあ、この子の隠れ家を作ってあげよう。名前も決めなきゃね」
 早くも歩き出すナナに、双子も子犬も急いでついてゆく。みんな、わくわくしていた。ハーレムとサービスは、“隠れ家”という響きに。捨てられた子犬は、名前をもらえる嬉しさに。足取りも軽く、スキップを始める。
「ゆーきやこんこん」
「あーられーやこんこん」
「ふってもふってもまだふりやまぬ・・・」
「キャンキャン」
 同じ秘密を共有する子供たちを、雪が優しく包み込んでいた。
 
 
 
 
 

 つづく

 

 
 
 

Yellow Yellow Happy 3
 
 
 


 
 
 

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