光夢さんカウンタ1000ゲットおめでとう企画
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今年の冬は、とても寒い。
吐息が白くなるのがおもしろくて、ルーザーはまた大きく息を吐いた。
カバンの中の通信簿のことを考えて、つい頬がゆるむ。体技はいつも通りあまりよい成績ではないが、他の勉強の科目はトップだ。母もほめてくれるに違いない。
今日は終業式で、明日から冬休みに入る。兄のマジックはガンマ団総帥に呼ばれて直接そちらへ向かったので、ルーザーは一人で家に帰った。
「ただいま」
母はホットカーペットに座っていたが、弟たちの姿が見えない。
「・・・おかえり」
浮かない顔をしている。
「どうしたの、母さん」
ジュエルはルーザーを見上げていたが、突然立ち上がり、ルーザーの手を取った。
「母さん」
どうも、通信簿どころではないらしい。
「ハーレムとサービスがね・・・」
顔をふせて、今にも泣きそうな声で訴える。
「二人が、どうかしたの!?」
一瞬青ざめるルーザーだったが、
「最近、遊んでくれないの・・・」
母の小さな声に、ガクッと肩を落とした。
「なんだ・・・」
「なんだ、じゃないのッ!!」
いきなり顔を上げて、母は声を荒らげた。
「ハーレムとサービスが、ここ数日、いつも外に行きたがるの。今日もそうなのよ。あたし、退屈で死にそうだわ!」
「母さん、まあ、落ち着いて」
ぽんぽん、肩を叩いてあげる。わがままな母なのだ。
もとのように床に座らせて、ルーザーは部屋の隅にあった風船を投げてあげた。ジュエルはつまらなそうな顔のままで、打ち返す。
「外で遊びたがるのは、いいことだよ。兄さんだってそう言っていただろう」
もう一度風船を返して、正面にルーザーも座り込む。
「でも、あたし、退屈!」
パシッ、と力任せに打った風船は、とんでもない方向へ飛んでいく。ルーザーはまた立ち上がって、ふわり跳ね返ってきた黄色の風船を拾った。
「そうよ。マジックだってルーザーだって、そうだったわ」
「母さん」
「あなたたちだって、大きくなって、遊んでくれなくなったもの」
ぷーっ、風船みたいに頬をふくらまして、ジュエルはばたん、と後ろに倒れ込んだ。だだっこみたいに天井を仰いでばたばたする。
「赤ちゃん欲しくても、シルバーがいないからもうできないし! あーっもー、つまんなーい!!」
「母さんってば・・・」
どうも、不思議だ。こんな少女みたいな人が、子供を産めるというのが。
「ルーザー!」
また強い口調になって、母は両手で体を支え、起きあがった。金の髪が乱れている。つい、ルーザーは笑ってしまうのだった。
「ルーザーっ!」
「はい、母さん」
笑いが残った声に、母はまだ不満そう。
「何よ」
「何でもないよ」
しっかり起きあがって、ジュエルは髪に手をやる。
「ルーザー、ハーレムとサービスを捜してきてよ。急に外ばかりに行きたがるなんて、なんかおかしいわ」
「分かったよ」
寒い外に出るのは正直いやだが、母の頼みなら、聞かないわけにはいかない。どうせ今の状態だと、通信簿を見てもほめてくれなさそうだし。
ルーザーはマフラーを巻き直して、外に出た。
ガンマ団の敷地外で遊んでいるのだろうと考え、ルーザーは門をくぐって、歩いていった。
今日の天気は上々。冬の淡い色の晴れ空も、きれいだと思う。雲が少しある低い位置から、太陽が弱い光を投げかけていた。
雪は、今足元にはない。この辺りは、雪が降ってもそうそう積もらないのだった。
白い息を吐いて、ルーザーは川原に降りた。川を流れる水は、いかにも冷たそうで、つい身震いをする。
辺りを見回すが、遊んでいる子供や散歩をする人たちはいるものの、弟たちの姿は見えない。
「どこで遊んでるんだ、あの双子は」
ひとりごちたとき、女の子が手前の方に駆けてくるのが見えた。
「あははは・・待ってってば」
「キャンキャン」
黄色い子犬を連れている。子犬は女の子の足元にじゃれついたり、前を転がるように走ったりしていた。
ルーザーは目をひかれ、立ち止まる。
ブラウンの濃い髪、瞳。ピンク色の頬。
冷たい風の向こうで、明るい輝きを放っている少女・・・・。
まるで空間が止まってしまったような錯覚。不思議な感覚。
(なんだ・・・? これは)
動き出した。
女の子が、すぐそばに来ている。
「あの・・・」
考える間もなく発した声は、自分のものではないような感じだった。
だから、
「はい?」
女の子が顔を上げたとき、我に返り、ルーザーは困惑した。
なぜ、声なんてかけてしまったのだろう。初めて見た人なのに。
「なにか・・・?」
「い、いや、あの」
頬を指でかいて、ルーザーは立ち尽くす。寒いのに、汗をかきそうだった。
とにかく何か、話をしたい。不思議な気持ちは、まだ続いている。
「あ、か、かわいい犬ですね」
なんだか、とっても間抜けで、自分らしくもないと思ったが、それが精一杯だった。
それでも、女の子はにっこりと笑ってくれた。きれいな笑顔だ。
「かわいいでしょう。ハッピーって名前なの」
「ハッピー・・・ですか・・」
「犬はすきですか?」
「ああ・・まあ・・・」
調子が狂いっぱなしだ。どきまぎしていたから、ルーザーは、自分の弟たちがそばまで来ていたのにも気付かなかった。
「ルーザーおにいちゃん!」
「え・・・」
振り返る。ハーレムとサービスが、きょとんとした目で見上げていた。
「ハ、ハーレム、サービス・・・・ここにいたのか」
意味もなく慌て、双子の前にかがみ込む。
「あら、あなたはハーレムたちのお兄さんなの!?」
「え・・・」
しゃがんだままで見上げた。ハッピーを抱き上げて、彼女は笑っている。
「・・・なんで、知って・・・?」
弟たちと少女の顔を交互に見比べ、ルーザーは更に混乱してしまった。
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