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「ナナちゃん、紅茶のおかわりいかが?」
母は遊び相手が増えたことで、上機嫌だった。
ナナも思いがけない歓迎を、はにかみながらも嬉しそうに受けている。
「本当に、ハッピーをうちで飼ってもいいの?」
「はい。おばさまさえ、よければ・・・」
「やった!」
ジュエルは黄色い子犬を、いたく気に入ったらしい。さっきから膝の上に抱きかかえて、放そうとしない。ハッピーも新しいご主人を好きになったのか、キューンと鳴いたり頬をなめたりして、じゃれついている。
「本当にかわいいワンちゃんだね」
動物好きのマジックも、目を細めている。本当は抱き上げたり撫でたりしたいのだが、母から奪い取るわけにもいかないので、後にすることにした。
「ナナちゃんも、うちに時々遊びに来てください。ハッピーの顔を見に・・」
そう言うルーザーの口調は、どことなく硬い。理由が唯一分かるマジックは、密かに笑っていた。
「ありがとう!」
「ナナ、あそびにきてね」
「ぼくたちともあそんでね」
双子が両側からくっついてくる。まるで子犬と同じ動作をナナはおもしろがって、わきをくすぐったりしてやった。
「きゃはは・・」
もだえて、サービスはホットカーペットの上に転がる。ハーレムも隣に転がって、更に弟をくすぐり続けた。
「あはは・・やだよ、ハーレム・・」
「あははは・・・」
「こらこら。ちゃんと起きなさい」
やんわりと、マジックは双子をいさめた。弟たちも長兄の言うことはよく聞くので、笑いが落ち着くとちゃんと起きあがって並んで座るのだった。
「ナナちゃんは、何年生?」
「一ねんせいです」
「そう。しっかりしてるね」
マジックの笑顔を受けて、ナナは少しうつむいた。素敵な人だな、と思い、どきどきする。
ルーザーはナナに一目惚れをしたわけだが、そのナナは、兄のマジックにときめきを感じたようだ。
何年かにわたる長い三角関係は、ここがスタート地点だった。
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色とりどりの光が点滅する、クリスマスツリー。大きなケーキ、七面鳥。テーブルにはキャンドルと、食べきれないくらいのごちそう。
三角のぼうしと、クラッカーと、明るい笑い声。
楽しいクリスマスパーティーが始まっていた。
「ナナちゃんも来ればよかったのにね」
「ナナちゃんだって、今頃自分の家でパーティーしてるんだよ、母さん」
マジックは、ケーキを上手に切り分けながら答えた。
「あたし、サンタさんのお家がついたとこね」
「ぼく、チョコレート!」
「ぼくも!」
「分かった分かった」
ケーキの上の飾りを、言われたとおりに載せてやる。食べられる飾りは三つだけだったので、ルーザーには小さなクリスマスツリーをさしてやり、自分のには、トナカイの飾りをのっけた。ハッピーの分には何もないが、イチゴもちゃんとついているので、許してもらおう。
「ナナちゃんって、かわいい子よねえ。あたし、娘も欲しかったわ。あんな娘だったら、よかったのに」
「お嫁さんにするってテもあるよ、母さん」
いたずらっぽく言って、マジックはルーザーを見た。げほげほと、急にむせたルーザーがおもしろい。こんなに単純な弟だとは思わなかったので、マジックは楽しくてしょうがなかった。
「誰のお嫁さんにする?」
「ぼく!」
二つの声が重なった。ハーレムとサービスが一緒に名乗りを上げたので、ジュエルは慌てて止めに入る。
「だーめ! ハーレムとサービスは、だめーっ!」
「キャンキャン」
「ハッピーも、だめー!」
かなり本気の母に、みんなの笑い声がかぶさる。
今年は家族が一人・・いや、一匹増えて、更に賑やかなパーティーになった。
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