光夢さんカウンタ1000ゲットおめでとう企画

  Yellow Yellow Happy 5

 
 

「疲れたみたいだね」
 マジックはすっかり眠りこけた末っ子たちをベッドに運び、布団をかけてやった。
「よく寝てるわ・・・」
 ベッドの端にひじをついて、ジュエルは子供たちのかわいい寝顔を見つめる。
「サンタさん、来てくれるわよね」
 枕元には二つ、靴下をぶら下げてあった。
「母さん、サンタさんなんて・・・」
 ルーザーは途中で言葉を切った。兄に、肩をつかまれたのだ。
 マジックは、首を左右に振って、“何も言うな”と伝える。ルーザーはおとなしく従い、口を閉ざした。
「・・・幸せだわ」
 独り言のような小声で、母はつぶやく。その横顔は、言葉通り恍惚と幸せそうだった。
「クリスマスの夜って、すごく、すごく幸せな気分になるわよね」
 サイドテーブルに置いたキャンドルの灯が、母の瞳をゆらめかす。マジックとルーザーは黙ったままだった。何となく引き込まれて、言葉を失ってしまったから。
「キューン」
 寝室までついて来ていたハッピーが、ジュエルの右足にすり寄って鳴いた。
「ハッピー。おまえも眠いの?」
「母さん、もう寝たら? ハッピーと一緒に」
「そうね。サンタさんが来なくなったら困るもんね」
 ジュエルはゆっくりと立ち上がり、ハッピーを抱き上げた。二人の息子に、にっこり笑いかける。
「おやすみ、マジック。ルーザー」
「おやすみなさい、母さん」
 小柄なジュエルは、小学校も高学年のマジックに背丈をとっくに越されていた。マジックの鼻先を母の金髪がかすめ、なじみの甘い匂いを残して部屋を出ていく。
「・・・兄さん」
 扉がぱたんと閉じられた後に、そっと、ルーザーは兄を仰ぎ見た。
「母さんは、サンタクロースを信じているのかな」
 マジックは母の出ていったドアを見つめたまま、無表情で答える。
「信じているよ」
「・・本気で?」
「ああ」
 少し下を向いて、弟を見る。
「もう少したってから、準備をするぞ。ルーザー」
「はい」
 兄の後をついて、双子たちの寝室を出た。

 プレゼントは、きれいにラッピングしてリボンをかけたものを隠してあった。
 あとは、万が一子供たちが目を覚ましたときのために、サンタクロースに変装すればいい。
 小さな子供が二人。体だけが大人の少女が、一人。
「母さんのサンタクロースは、父さんだったんだ。ずっと」
 赤い服に袖を通しながら、そっとマジックが教えてくれた。
「父さんは、母さんの叔父さんだったろう。生まれたときから、母さんのサンタクロースは父さんだったんだよ」
 クリスマスの夜。
 ジュエルが寝静まる頃を見計らい、シルバーはそっとその枕元にプレゼントを置いた。
「兄さんは、それを知ってたの」
 ルーザーもズボンを赤いものにはきかえる。
「ああ。・・・だから、父さんが死んだとき、決めたんだ」
 黒いベルトをきゅっと締め、白いふさふさしたひげを手に取った。
「僕が、母さんのサンタクロースになろうって」
「兄さん・・・」
 何も聞かされないままにサンタクロースの手伝いをしていたが、兄のそういう気持ちが隠されていたとは。ルーザーは、今年初めて全てを知った。
 母が本当にサンタクロースの存在を信じていること。
 父が守ったサンタクロースの存在を、兄が引き継ごうと決心していたこと。
「母さんは、弱い人だから。守ってあげないとな。兄弟みんなで」
「そうだね」
 理屈なんてなくても、あの母の姿を見たら、守ってあげたくなるだろう。
 一族に生まれてきた、ただそれだけのことが、ジュエルの運命を決めたのだから。子供のままで成長するという運命。近親の者と結ばれるという罪。
「さあ、行くか」
 赤に白いふちどりのある帽子と洋服。白いひげで覆われた顔。大きなプレゼントの袋。どこから見ても立派なサンタクロースが二人、出来上がっていた。
 そーっと、抜き足差し足で、まずは末っ子たちの部屋に入る。
 ルーザーは、プレゼントの袋を持たない代わりに、ロウソクの燭台を手にしていた。黄色い光の輪の中に、双子たちの寝顔が浮かび上がる。
 物言わず、微笑み合うと、マジックは音を立てないように袋からプレゼントを取り出した。枕元の大きな靴下に、ひとつずつ入れてやる。靴下がこすれる小さな音にも、弟たちが起きはしないかとハラハラしっぱなしだ。
 幸いにもハーレムとサービスは起きることはなく、相変わらず静かな寝息を立てていた。金の髪を少し乱して、二人寄り添うように眠っている。キャンドルをかざしながら、小さな弟たちの寝顔はまるで天使のようだ、とルーザーは思う。
 兄が「行こう」と合図しているのに気付き、ルーザーはそっと燭台を離して、二人に背を向けた。

 続いては、母の寝室だった。さっきと同じようにそっと入り込むと、ラベンダーの良い香りに出迎えられる。母は、リラックスしたいときにはよく部屋でお香を焚いているが、今日はラベンダーの香りの中で眠りに入ったようだ。
 燭台をベッドサイドに置いて、ルーザーは母の寝顔を覗き込む。本当に幼女のようで、今見てきた弟たちの寝顔にもどことなく似たところがあった。乱れた金髪と、白くふっくらした頬と。ハッピーも母の腕の中で、何かいい夢をみているのかおとなしく目を閉じていた。
 マジックもあどけない母の寝顔を見守ってから、仕事にかかる。袋から小さなプレゼントの箱を取り出して、靴下の中に入れてやるのだ。そっと、音を立てないように・・・。
「・・・ん・・・」
 ハッと、二人は身を硬くする。母が、目を覚ましそうだ。
「・・・・」
 ゆっくり・・・ふうっと、ジュエルは目を開けた。眩しいのか、細く。
 マジックとルーザーは、どうしたらいいのか分からなくて、ただ立ち尽くすだけ。
「ああ・・・来て、くれたのね」
 マジックを見て、ジュエルは、笑っていた。本当に穏やかに、幸せそうに笑っていた。
「・・シルバー・・・・」
 愛しい者の名を呼ぶ。優しく、大切に。
 そうして、また目を閉じ、眠りの海へ沈み込む。微笑んだままで。
 キャンドルの炎が揺れて、母の目からこぼれた光をきらめかせていた。

 パジャマに着替えると、ほうっと大きな息をついて、二人はストーブの前で座り込んでしまった。
 大役を務め終えた後のように、安心感と脱力感に同時に襲われて、動きたくない。
 ルーザーは背筋を伸ばして、兄の方を見た。
「兄さん、母さんは知っていたじゃないか。サンタクロースの正体」
 マジックは背を屈めたままで、ちらっと弟を見上げる。
「僕も分からなくなったよ。ただ単にねぼけていただけかも知れないし」
「・・・うーん」
「まあ、いいじゃないか」
 ぐっと伸びをして立ち上がり、マジックは大きなあくびをした。
「母さん、幸せそうだったから」
 あくび混じりの声に、ルーザーは小さく笑い、自分も立ち上がる。
「もう寝ようか」
「そうだな」
 ストーブのスイッチを切り、マジックとルーザーはそれぞれ自室に引き上げた。

 やわらかな星の光に包まれて、クリスマスの夜は更けてゆく。
 まだ幼く、幸せだった頃の、四兄弟とその母の物語。
 
 
 
 
 

 おわり



 
 

これは、カウンタ1000を見事にゲットした光夢さんから、リクエストをいただいて書いたプレゼント小説です。
光夢さんはマジックたち四兄弟のファンということで、「四兄弟の幼い頃」とリクエストいただきました。
細かい設定やストーリーはお任せ、と言われまして、こんな話になったのでした(笑)。
書き始めた時期がちょうどクリスマスに近かったので、クリスマスにからめたほのぼのにしようと。
最初私が考えた設定では、双子が4才で、ルーザーが16才でマジックが17才というものだったけど、四兄弟はもっと年が近いということを聞いたので、ルーザー10才、マジックは12才になったばかり、というふうに変えました。

今回一番困ったのは、ルーザーの性格。
ルーザーって、生きている人間として本編にあんまり登場しなかったじゃないですか。
しかも、善とか悪って感情自体がない、なんて、特殊な性格だし。
私には理解が出来なかった・・・。善とか悪の感情がないって、どういう意味なんだろう。きっと、私にぴったり来る(というか私でも分かる)表現があるんだろうけれど、見つけることができなかった。
なので、ルーザーも普通のお兄ちゃんにしちゃいました。
オイオイ、ルーザーが女の子に一目惚れするかあ? でもって、しどろもどろに話しかけるかあ?
って、私も思いましたが(笑)、まあご愛敬ということで。

オリキャラについてお話します。
まず、四兄弟の両親。ジュエルとシルバーは、このおはなしを企画する少し前に考えていたキャラです。あの四兄弟の両親って、どんなんかなーと思いながら、何となくね。
最初、ジュエルはワガママで気の強いお嬢ちゃんって感じで考えたんだけど、なんかただの子供になってしまいました。
ガンマ団という、男ばっかりの中で何も知らずに育てられたお嬢ちゃん。これは、私が当初考えていたナオミのことです。
でも、ナオミは私も知らないうちにどんどんいろんなことを知って強くなっちゃったので、ジュエルにその役を譲っちゃいました。
シルバーは出てこなかったけど、のんびり、おっとりした男の人ってことで考えていた。

それで、ナナですね。
これは、光夢さんから名前もらいました。まあ、せっかくの1000ゲット記念ですからね。
で、4を書きながらハッと気付いた。私、ナナを8才で設定してた。8才って、小学二年生じゃないか。(注:後に7才、一年生に修正しました)
・・・随分、お姉さんらしいしっかりした受け答えするよなあ・・・。
まあ、いっか(笑)。
どうやら、この後マジックとルーザーとで三角関係になっちゃって、結局ルーザーと結婚することになり、グンマを産んですぐ亡くなる。というのがナナの運命らしいです。
この辺りの話も、時間があったら是非書いてみたいですね。
あと、ドクター高松登場編なんてのも楽しそうですね。

このおはなしは、「ジムノペディ」の第三番と同じく、直接パソコンに向かって書きました。
いつもだったらノートにシャープペンで下書きして、それをパソコンで清書するという形を取っているので、ある意味新しいチャレンジ(笑)。
だから一章一章が短いんです。

タイトルは、言わずもがな、ポケットビスケッツ。
結構、好きなんです。声も、近いって言われたことがあるので、よくカラオケで歌います。
でも、しんみりと終わったので、あんまりタイトルと合ってないかも。
四兄弟シリーズの小説は、ポケビのタイトルで全部統一しようかな。(って、また書く予定あるのか!?)

それでは、またお会いしましょう。
 







 
 

H13.2.11修正を入れました。
年齢設定にちょっと矛盾があったので。
双子4才、ルーザー9才、マジック11才、ナナ7才。ジュエルは29才かな。
それからジュエルの髪型も、最初はストレートで肩くらいまでにしていたけど、長いウェーブヘアを貫くこととしました。
 
 


 
 
 

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 H11.1.2
H13.1.11修正