DEPARTURES 3
70% −夕暮れのうた
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第3話・ふたりのさなぎ
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赤一色だった視界に、やっと他の色が割り込んできた。強い光もおさまり、目を開けることができる。
「シンタロー・・・」
そっと見回したが、シンタローとジャンの姿はどこにもなかった。ただそこには、不思議な球体があるばかりで。
「なんじゃあ、こりゃあ?」
「シンタローはどげしちまっただっちゃわいや!」
ガンマ団員も、パプワやチャッピーも、みんながその球体を見上げる。
それは大きなもので、まるで風船のように中空に浮かんでおり、その表面を赤を基調としたさまざまな色がマーブルのように混じり合い流れていた。
ナオミは、直感的に「さなぎ」を連想した。
この中に、ジャンとシンタローがいる。二人は完璧に合体するまでここで眠りに入るつもりだ。
涙の残った瞳で、ナオミはじっと見つめていた。ここでシンタローは、再び肉体を手に入れる。そして、目覚めたとき・・・。
「わうッ! わうッ!」
「おお! 奴等が来たか、チャッピー!!」
ハーレムと特戦部隊が、もうそこまで来ているようだった。パプワは脱出するために、友達の名を呼ぶ。
「モッくーん」
「はーい」
と朗らかに応え、すぐに土の中から出てきたのは、大きなモグラだった。グンマは単純に「モグタン、モグタン」と喜んでいるが、他のみんなはひいてしまっている。しゃべる巨大モグラがいきなり穴を掘って顔を出したのだから、無理もない。
「何をしている、行くぞ!」
「ああ、サービス様がすでにモグラに乗ってるぺ!」
モッくんの頭の上で、足を組んでいる。何事にも動じないサービスなのだった。
「それでは皆さん、レッツゴー!」
「何言うてはりますん! わての親友のシンタローはんを、置いていかはるつもりでっか!!」
マントを羽織った京都弁のガンマ団員を、ナオミはつい鋭く見返してしまった。「親友」という単語に込められた妙な力強さに、何か別のモノを感じてしまったためだ。
もしかして、この人はライバル?
女のカンだった。
「だったらアラシヤマは残るといいだっちゃ」
トットリにあっさりと、どちらかというと楽しそうに言われて、アラシヤマは言葉に詰まる。ナオミはすかさず、割って入った。
「私、残るわ! こんなところにシンタローを置いていけないもの!」
別にアラシヤマに対抗してというだけではない。本心だった。こんな状態のシンタローを置いて、自分だけ逃げるなんてとてもできそうになかったから。
「ナオミ」
優雅な物腰でモッくんから降りて、サービスがナオミに近付く。
「サービスおじ様・・・」
ここに来て初めて、言葉を交わした。目をまっすぐ見るのも久しぶりだ。
叔父は相変わらずきれいで、その青い左眼は前にも増して深くなったような気がする。ジャンに会ったせいかもしれない。
「ここに残るのは危険だ。分かるだろう」
「でも、私!」
そばにいたい。自分はどうなっても構わないから、シンタローのそばにいたい!
あふれんばかりの思いを、しかし口にはできなかった。胸からこぼれ落ちそうで、ナオミは息を呑み込んだ。うるんだ碧眼をサービスに向ける。
「私・・・」
ぽん、と優しく髪に手を置かれた。
「ナオミの気持ちは、分かるよ」
そのなぐさめに似た言葉は、ナオミだけに向けられたものではなかった。同じなんだ・・・。不意に感じて、赤い球体を目の端にとらえる。あの中には、サービスの親友だっているのだから。
「心配はいらない。あの球体は、すさまじいエネルギーを持っている。滅多なことでは近付けないよ。たとえハーレムでもな」
ナオミにはそのエネルギーを感じることはできないが、そうと言われて静かに頷いた。サービスに手を引かれ、この場を去ることに決めた。
赤い秘石は、パプワが持ち、みんなでホコラを脱出する。
いろいろな気持ちが混じり合い、整理できなくて、ナオミはそれらを持て余したまま最後に見つめた。シンタローとジャンの赤いさなぎを。
ここから生まれるのは、一体誰なんだろう・・・。
つづく
第4話・南国美人
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