ほなかに立ちて問ひし君はも

 

あれが一番初め。

自分は麻痺してるかもしれない、どんな理由であれ命をたつという事に対して。 けれど...それは、独りではなく。


今だ、うつつよとの境はない。                    外にでて自分の普段いる場所が見えない程遠くに来たのは初めてであったし見下ろすと賑やかな風景があり、初めてみるそれは、彼女にとって悪意を持ったものではなかったから、あそこにいる人達と似たような格好をして見に行く、小さい群ならいったことがある。                自分をちょっとみなおしてみて彼女は小道を駆けて行った。


闇の中を走る。その足取りに何ら迷いはなかった、風が道を示してくれる。それに加えてこの、必要以上に臭う、これは、「血」。         森の中のことだ、弱肉強食の掟あれば血の匂いぐらいはと思うかもしれないが、この匂いをさせている者は自分の糧として他人の血を流しているのではなかった。                             それは許されないことだと彼は思う、自分がそれらの者に対して手を下す、これはとうの昔に割り切った。一時は迷いもあった。しかし、ただ受け入れ見ているだけの傍観者にもなれなかったのだ。

そういう行動をとっていれば当然自分も狙われるであろうし命を落すかもしれないこともわかっている けれど、そこまで考えて我に返る、そういう思考はとめどないものだ、もう何度も同じ事を考えている、女々しい事だと思う反面、もしかしたら自分は、誰かに認めて欲しいのかもしれないとも思う。

自分ではない誰かに間違っていないと言って欲しいのかもしれない。   そこまで考えて彼は考えを止める、今悩む事ではない、目の前に対象となる存在がいる今は。


村に入ってすぐに処せましと行商人達が色々な品物を広げていた。どうやら市であるらしかった、なんとはなしに覗いてみる。見た事の無い衣や、食べ物、を覗きながら歩く。と、きれいな小箱を見つけた。手に取って見たいが持ち合わせがない、買う気が無いのに手に持って嫌な顔もされたくはなかった、それでも目を離せずにいると。露天商の方が話し掛けて来る。    「お嬢、見るだけでもいいよ?」笑ってそう言うので手をのばす、両手で包めそうなその箱は細かな模様がまるで万華鏡のように外側に広がっていた。

感心して眺めているとその様子がおもしろかったのか話し掛けて来た   「お嬢はここの村のこかい」少し考えて「違う」というと「じゃあ何処から来たのだい?」自分の来た海の方角を指さす、「名前は?」はっとした。

問われて答えられるような名を彼女は持っていない。人に自分の名前を教えてよいのか判断に悩む。困った顔をしていると「すまんすまん、私にもお嬢ぐらいの子どもがいてね」故郷に置いて来た子と同じぐらいなので会話がしてみたかったと言った。                       「その箱が気に入ったのか」「模様が光の反射のようでとても奇麗」そういうと箱は西にある自分の故郷で作られたということ、自分の娘のねい(娘の名前らしい)も、この模様が好きなのだと言い             「あれこれ聞いたお礼にお前にあげよう」と言った。          別に会話をすることが嫌だったわけでもないので遠慮すると「気にせずおもらい」と箱をさしだしてくれた、箱をもらったというより人に向けられた好意が嬉しくて彼女は久しぶりに心からの笑顔を向けながら「ありがとう、」そう言った。

言って、箱を受け取った瞬間目の前は紅く染まった。


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