書様(七夕)
 

チャイムが鳴る、来訪者はこの暑い中黒一色だ大変に暑苦しい、

「焔くんさー暑く無いの?」第一声がこれである。

なんで俺がこんな事をせねばならんのかと我が身を振り返ろうとするも実際に使いっぱをしている身には空しくなるだけだと思い直し用事をかたずけることとする。                            「ひな乃から、」言葉を続けさせず繭里はくるりときびすを返す     「上がって上がって!今冷たいモノもってきたげるから、座敷ね、」人の話聞いちゃいねぇ。

がさがさがさ座敷から見える庭の一角に七夕用であろう笹が飾ってあった、よくもまぁというぐらい短冊と飾り物が付いている、おそらくは自分の住む場所にも今頃は同じ物が出来ているだろう、毎年の行事だ、焔は願いを書いた事はないが、自分が書か無くても女性陣(得にひな乃)が大量に願い事を書いているだろう。

よくもまぁ同じ事を毎年くり返すものだと焔などは思うのだが、

「おまたせ〜」からからと氷のグラスに当る音が心地よいぺこりと無言のまま会釈をしグラスが置かれるのを待つと                「これを、ひな乃から預かって来た」ずいっと持って来た紙袋を差し出す。「何かな〜♪わお!地酒だ〜わーいありがとう〜ひな乃さんにありがとうって言ってね?」それにうなずきグラスに手をのばそうとすると座卓の上にはグラスと共に短冊と筆が乗っている

「?」不信気に目線で問えば

「願いごと書いてね!?」ああ、この人もイベント好きか、がっくり頭をたれる焔であった。

「どれどれどれ?」焔が帰った後である。                見ないから飾って行ってねーという繭里の言葉を信じたらしく、しかし目に尽きにくい所に焔の短冊はあった、コロボックルに目をつけておいてもらわねばおいそれとは分らない場所だ。

「焔にいちゃんてシャイだよなぁ」『ドーナツいっぱい食べたい』と表の目立つ所に短冊を飾ったヒカルにはどうやら焔の心境は理解してもらえなかったようである

「なんて書いたのかな〜」焔が苦労して人目のつかぬ場所に隠して飾ったのをひっぱりだす繭里 「どれどれ」ぺらり、そこにはかろうじて読める字でこうあった

『家内安全』「焔くんて家族思いだねぇ」違うと思うぞ繭里。


 

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