お土産一波乱3
 


「いちご、おいしいかも。桃姫、同じ色だけど食う?」 「ご主人、色で私を識別してるの?」  「いや、そーゆー訳じゃないけど。」 桃姫は、その名の通りどこから見ても桃色である。遠くから見るとぴんくの球体だね、とひな乃が言ったら機嫌を損ねた過去がある。何か嫌な思い出でもあるのだろうか。
 

「これなんだろ。色が焔っぽいなー。焔、これはどう?あんま甘くなさそうだよー。」 ひな乃は色で味を判別しているのだろうか。それは実は結構危険だ。
いらん。」 その危険性は焔にでも分かるらしい。
「お前はご主人様の勧めた物が食えんちゅーのか。」
「そんな得体の知れないもの食えるか。」 あぁまた始まった、とばかりに桃姫はため息をつく。そして一言。「意気地なし。」
自分の食べた「いちご味」が案外美味しかったらこそ、言えるセリフである。しかし焔の場合は何の根拠も無 い、味すら分からないものなので、同じ尺度で計っていいかどうかは、実は微妙な所なのである。その辺は少し考えれば分かることなのだが、単純で負けず嫌いの焔にはそんな思考的余裕は無かったらしい。(ああ、焔はいつからそんなキャラに・・・←己のせい)
 

ここまで言われては食べるしかない。男として後に引けないとでも思ったのだろうか。 しかし、そんな彼の意気込みに反して、表情こそ変わらないが顔色はみるみる変わっていった。
「……ひなの……なんだこれは。」 買ってきた袋の中から取り出したリーフレットを確認しながら、ひな乃は棒読みに答える。 「えーとー、『梅干し』。だってさ。」
焔の顔色は更に悪くなり、桃姫は見ないふりをすることにした。多少なりとも責任を感じたのであろうか。
 

最初に勧めたのはご主人だしねー。 持ち主に似る。

「梅干し?そんなのまであるの?」 なにか嫌な予感がしたらしい、俊香の顔色も変わる。
 


ぱたり。
 


音自体は大きくはないが、明らかに周波の違う音なので耳に付いた。 「今の音は?」 俊香とひな乃は顔を見合わせる。
 

「うわーどーしよー!アヤが倒れたー!!」叫ぶ赤護法に血相変えて駆け寄る俊香。彼女のお気に入りだと言うこともあるが、それだけではない理由もあるのだった。今回その理由は関係なさそうだが。
 

「アヤ、どうしたの?」心配そうに覗き込む俊香にうめくように青護法は答える。 

「・・・まずい・・・。」 

「は?」 無言で赤護法を指差す青護法。 その場にいる全員が赤護法に注目した。
「え、これ、アヤに、おいしいよって、あげたんだけど・・・」 いきなり振られて、赤護法はいつもの元気もどこかへふっ飛び、しどろもどろに経過報告をする。
その言葉を聞いて俊香は静かにひな乃の方に向き直る。背後に青い炎が見えたような気がするのは気のせいだろうか。
「…ひな乃さん?、これは?」
「ええっとぉー『ワサビ』だね。」 先ほど焔に答えた時と同じ口調で彼女は答えたが、それもまた俊香の怒りに油を注ぐ結果となってしまうのである。
 

「アヤっちに刺激物は厳禁なのよ!!」 ああ、やっぱり気のせいじゃなかった。
「これ以上たっちゃんにトラウマを増やさすなー!」 これが本音であろう。怒られつつもちょいと引いて現状を分析してしまうのは、ひな乃の常であった。しかしこ こで「親ばか」若しくは類似の単語を口にしようものなら、更に余計な怒りまで買う羽目になってしまうので、 ひな乃は黙っていることにした。それでももちろん、謝罪の言葉は別である。
「あわわわわ、ごめんなさいー。」 相変わらず緊張感の無いセリフだが、本人は精一杯らしい。しかし怒り心頭の俊香にそんなものは通用しなかっ た。心配そうに青護法を見つめる赤護法と、見つめられる彼をしっかりと抱えながら、俊香は玄関戸を指差し言った。 
 

「退場。」
 
 

 

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