それだけのこと
 

「ひな乃、お年玉、よこせ。」

季節は冬。
確かに冬だが、1月の半ばだ。届く葉書きも年賀状ではなく寒中見舞いである。ひな乃は少々面食らいつつも。「焔(ほむら)、あんたその単語、どこで覚えてきたの?」彼の主人は、なるたけ馬鹿にしないように恐る恐る聞いてみる。年の始めからいざこざはごめんだと思ったのだ。1月も半ばだけどな。

「赤童子が自慢気に教えてくれたのよね。」くすっと笑いながら、事態の全てを知っている風に桃姫(ももひめ)が答えた。ので、ひな乃も大体飲み込めた。

「ああ、それで。」


真実はどうか知らないが、たっちゃん(赤童子)と青童子(アヤっち)は恐らく彼らの主人・俊香(としか)からお年玉を貰って、悪気無く報告でもしてくれたんだろう。そして多少ひがみっぽい焔のことだからなぁ。だけどたっちゃん達のことを悪く思う気にはなれない。あの子らはあの子らなりに護法通しの仲が良くなることを望んでやったことだろうしな。かわいいかわいい。(ひな乃、たっちゃんお気に入り)


「で、焔っちも欲しくなったんだぁ、お年玉。」ニヤニヤと笑うひな乃の頭からは先ほどの「年の始めからいざこざはごめん」と言う考えは消えていた。そんなひな乃の皮肉をかわしつつ、焔は腕を組みながら、やはり偉そうに答える。「たまにはいい目見せろ。」「ほほぉぉん、いぃつ、あったしがあんたに、そぉんなにひどい仕打ちをしたぁ?」言うが速いか、ひな乃のぐーが焔の両のこめかみに入る。ええもう、ぐりぐりと。「御主人、いつもです。」間髪入れず桃姫からの突っ込みも入る。

「しょうがないね。じゃ、はい。手ぇ出して。姫もね。」やれやれ、手のかかるお子だこと。聞こえないように彼女は毒づいた。

ぽん、ぽん。

どう見ても飴玉。普通のよりちょっと大き目だけどやっぱり飴玉。「ひな乃・・・?」表情は変わらないけどお怒りマークが見えるようだの焔。やはり多少なりとも期待してたんだろうか、しかし桃姫はそうではなかったらしく特にどうとも思っていない風だった。

そんな2人には目もくれず、彼らの主人は言い放つ。
「何もせず、年の始めから金が貰えると思うな。」



そうでした、ひな乃は小銭大好きお金に厳しい人でした。基本的にお代(「お題」では無い。それでは笑点である。)が無ければ何もしない、良く言えば「ブラックジャック」悪く言えば「守銭奴」。


「どうせまだ半人前なんだから、飴玉で充分。お金が欲しかったら、キリキリ働く。」「御主人、それはお年玉と言わないと思います・・・。」桃姫に再度突っ込まれて、残念そうにひな乃はつぶやいた。「えぇー、ちゃんと姫は姫っぽい、焔は焔らしい飴玉を上げたのになーぁ。」見ると、桃姫にはいちごみるくと甘露飴(商品名ですか?)の2つ。焔には同じく甘露飴とコーラ飴がそれぞれの手に置かれていた。

「・・・色・・・?」
 
 
 

終 
 
護法が一人前になったら護法じゃない気もするが、どうでしょう。

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