梅雨入り<関東地方>

雨なので。

「わーいわーい、お師さまーぁ、雨でぇーす。」
「おう、雨だな。」
雨が降ったと言えば騒ぎ、窓を開けては騒ぎ、雨水が自分に跳ね返ったと言えば騒ぐ。きゃっきゃ。朝から朝から朝から。きゃーきゃーきゃー。そして今はもう陽もすっかり落ちて月も見えそうな頃である。

「…黙れ…」

いくら半分以上死んだ状態で取り憑かれたように仕事をし続けている舞とは言え、いいかげんウンザリと言うものだ。

もちろんはしゃぎっぱなしの2匹には自分らの主人の声なんか聞こえるはずもなく。
「お師さまーぁ、見てくださーい、てるてるぼーずもびしょびしょです!」
「あーこりゃ、しばらくやまねーな。?つーか、いつ作ったんだ?てるてる坊主なんて。」
「さっきです!」
どうやら雨にぬれてはしゃぎながら作ったらしい。そりゃーびしょびしょです。

そんなお気楽童子2匹と自分の仕事の進み具合の悪さに、(自称)温厚な舞の堪忍袋の緒が切れるのは時間の問題だった。

「舞さぁぁん、てるてる坊主って濡れても効果あるんだっけか?」



ぷっちん


切れました。弾け飛びました。

舞の後ろに筆舌に尽くし難い暗雲が見えたその刹那、黄童子は思い出した。舞が朝から(正確には昨晩から)ずっとずぅーっと机に向かったままだと言うこと、仕事の納期が近いということ、ここ数日雨で出かけてもいないこと、、、。「うわ、やべっ。」すべては遅かった。

その後、雨が上がるまで黄童子は行方不明となり、緑童子は泣きながら彼を捜し、いつしか泣き疲れて長い睡眠期にと。

「あーあ、繭里ちゃんとこに送っとけば良かったかな。ま、いいか。」

紙と紙がくっついて扱いにくいのも、インクの乾きが遅いのも、護法2匹がやたら勘に障るのも、全部雨のせいだと、彼女は思った。
 
 

 
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