|
色とりどりに、はじけて、ころがって。 ひとつひとつが、世界を持ってる。 「―――何、コレ」 床に散らばる、色とりどりの玉。 「・・・ビー玉、かも。」 いや、そこに『かも』はいらねえだろ・・・ そう思いながらも口には出さず、 世界を反射するビー玉の一つを指で弾いた。 カチン、コロコロコロ・・・ 乾いた、或いは澄んだ音を立てて他のビー玉にぶつかり、転がっていく。 「なあ、なんでビー玉なんか出てるんだ?」 相変わらず世界を映しながら転がるそれを目でボンヤリと追いながら、 最初に浮かんだ疑問を、言葉を変えて再び口にした。 「机のお掃除してたら、見つかったの・・・」 同じ様に転がるビー玉を目で追いながら、檜はそう答えた。 しかしその視線は俺みたいに意思を持たないものではなく、 ある種の愛しささえ籠もっていた。 それが俺には余り面白くなかったが、大方子供の頃 (まあ今でも高校生には見えねえけど)でも思い出しているのだろう、 と思うことにした。 床にばら撒かれていたビー玉のひとつを手に取り、 窓から差し込む光に透かす。 途端に、世界が歪んでひっくり返った。 「・・・俺みてえ」 ぽつりと、言葉が落ちた。 何故かは分らないが、無性にそう思った。 そう思って、また何故か無性に寂しくなった。 ビー玉を見て寂しいなんて、思うはずがないのに。 全てを歪んだ見方でしか見れない俺に、似てると思ってしまったんだ。 「うん・・・芭唐君に似てる、かも」 ひくり、と自分の体が震えたのが分った。 檜にも・・・俺が思ってるのと同じ様に思われてるのだろうか。 「透明で、表面は滑らかで。 でも中にいっぱい色んな気持ちとか、傷を持ってて」 「それで、とっても綺麗なの・・・」 檜の言葉に、思わず目を見開く。 檜が言った事は何一つとして俺に当てはまらないはずだ。 そのはずなのに、どうしてこんなにさざめいていた心が 落ち着いていくんだろう。 「ばぁか。そんなん、全然俺と似てねぇじゃん・・・」 照れ隠しに、吐き捨てる様呟いて手に持っていたビー玉を床に落とした。 コトリ、と乾いた音を立てて落ちたビー玉は、 少しだけ転がってすぐに止まった。 そこには相変わらず、逆さまになった世界が映っていた。 |
illustration by [ ふわふわ。り ]