しゃぼん玉のように、この気持ちだっていつかは消えてしまうんだ。








隣を歩く小さな体。
空色のゆるくウエーブがかかった髪を揺らしながら
小さな歩幅をめいっぱい大きくして歩く。
それでも、二人のコンパスの差なんて歴然で。
あっという間に二人の差は広がってしまう。
少し速度を緩めて追いつくのを待ってみる。

とたとたとた・・・

小走りの軽い足音が近づいてくる。
足音の主を顧みて、親鴨の後を付いて歩く小鴨みたいだ、
なんてことを考える。

「ひーのきーー」

ちょっと拗ねた様に言ってみた。

「ご、ごめんなさい・・・かも・・・・・・

追いついて、隣から上目遣いで見上げて謝られる。
途端に愛しい気持ちが込み上げてきて、思わず手をぎゅっと握った。

「ん、いいって。つーか怒ってねーし?行こうぜ。」

そのまま手を引っ張って歩いてゆく。

「あ、あの・・・

真っ赤になってる相手は、とりあえず無視。
目的地へ着くまでそのまま手を離さなかった。





「・・・・・・・すっっごく、恥ずかしかったかも・・・

珍しく力の篭った、しかし語尾は何時も通り弱弱しい言葉を檜が呟いた。
反対に芭唐はと言えば、何食わぬ顔で鼻歌なんぞ歌っている。
憎らし気に睨んでも、全く効果なし。

「にしても、最近の100均って何でも置いてんなあ。
 しかもめっちゃくちゃ広いし」

思わず感嘆の声が出る。

二人は、ビル丸々1つが100円均一ショップ、という所に来ていた。
本音を言えばもっと良い店で買い物をしたかったのだが、
お互い学生で金もなし、ということでデート代わりに100均に来たのだった。

「んじゃあ、まあ買い物するか」

そう言って再び手を握ろうとすると、今度は流石に振り払われてしまった。



しばらく二人でふらふらと物色し、目当てのものを籠へ放り込んで行く。
ふと、檜が芭唐の隣を離れ別の方へ足を向けた。

「?おい、檜?」

追いかけ、何かを見つけたらしい檜の手中を見やる。

「・・・しゃぼん玉」

そう言って、檜はふわりと笑った。

「ふぅん・・・好きなんか?」

何故か、妙な気分が広がる。

「うん・・・。芭唐くんは・・・嫌?」

僅かに眉をしかめた芭唐に、檜は不安そうに問うた。
いくら自分が好きでも、芭唐が嫌いと言うなら買うのもどうかと思ったのだ。

「いや、いんじゃね?」

一転、にかっ、と音でも出そうなくらいの笑顔を浮かべて答える。
先刻の、じわじわと侵食されそうな、
しかし正体はわからない気持ちを振り払う様に。

「じゃあ、買おうか・・・」

「おう、買え買え」

しゃぼん玉のセットを籠に放り入れ、レジへと向かった。





「あ、早速やってんのか、それ」

ベランダに出てしゃぼん玉を吹いていた檜に、後ろから芭唐が声をかけた。

「うん・・・」

答えながら、しゃぼん液をつけたストローを吹く。
途端、無数のしゃぼん玉が、空へと放たれた。

ふわりふわりと光を反射しながら宙を漂うしゃぼん玉をぼんやりと眺める。
ひとつ、またひとつと儚く割れてゆくしゃぼん玉の姿を見て、
心が妙に沈んでいった。

(俺が、檜を好きだと思う気持ちも
 いつかこうやって消えていくんかな・・・)

突然生じたその考えに、ずしり、と鉛を飲み込んだ様な気分が広がる。
先刻、ショップで感じたものの正体。

不安。

そうだ。人の気持ちなんて永遠じゃない。
永遠なんて、有り得ない。

『永遠に続く気持ちなんて、ないじゃないっすか』

『だから、俺は本命なんていなくて良いんすよ』

かつての自分が吐いた言葉が脳裏に浮かぶ。

嗚呼、俺は―――

「・・・くん?・・芭唐くん?!」

顔を上げると、不安そうな檜の顔。
反射的に、その小さな体を抱きしめた。
腕の中に収まってしまう小さな体が、只々愛しくなる。

この愛しささえも、しゃぼん玉のように消えてしまうのだとしても。
それでも、俺はお前を手放せないんだ。

しゃぼん玉のようにこの気持ちがいつか消えてしまうまで
せめてそれまでずっと一緒にいさせてくれ。









相も変わらず尻切れトンボ。なんじゃこりゃぁああ。
え?何?この二人同棲してんの??
最初は微妙なほのぼの系で終わるはずだったのが(スタート部分は名残)
見事変なシリアスに(滅)