秋が過ぎ去り、既に冬がしんしんと世界を包み始めていた。
吐く息の白さに冬を感じ、寒さにふるりと身を震わせる。
檜はふと、横をゆっくりと歩く恋人の顔を見上げた。
長いマフラーをたなびかせながら歩いている恋人の顔は、
吐く息とは対照的に寒さで赤くなっていた。
恐らく自分も同じ顔をしているのだろう、と
檜は冷たくなった両手で頬を覆った。
そのまま手を口にあてて息を吐くと、
かじかんだ指に一瞬ではあるが熱が戻る。

「・・・寒い゛か?」

じ、と寒さで潤んだ目を向けて問われた。
思わず込み上げて来る笑いを苦笑に代え、
檜は首をゆっくり横に振った。

「大丈夫・・・かも。
 それに、白春さんの方がとっても寒そうなの・・・

「う゛う・・否定はしね゛えけど。俺は寒いングのは苦手だからな゛ぁ・・・」

ずず、と上を向いて鼻をすする白春に檜は思わずくすくすと笑みを零した。
それに気づき、白春はわずかに不機嫌になる。

「笑う゛なよ゛ぉ、年がら年中鼻水ばっがで大変なんだべ。
 特に冬は寒いがら酷くなる゛し」

むすっと膨れてしまった白春に、檜は慌てて顔を上げ弁明しようとする。

「別に今のはっ・・・――!!!」

しかし、その後の言葉が紡がれる事はなく。
白春が不思議に思い檜に目をやると、
檜の視線は自分ではなく空に注がれていた。

「流れ星・・・!」

白春が問うより先に、檜の口から感嘆を含んだ声が漏れた。

「すごい・・・すごい綺麗だったかも・・・!」

珍しくはしゃいでいる様な声音に、白春も気分が高揚してくる。
檜と一緒に冬の澄んだ空を見上げ、煌めく星々を見つめた。
しかし、残念ながら流れ星は檜が見たたった1回きりだったようで。

「白春さんにも、見せてあげたかったかも・・・
 お願いごとも出来なかったし・・・

と檜はいささかしょんぼりとしていた。
そんな檜に白春は愛しさを覚えて、思わず抱きしめた。

「きゃっ・・・」

檜は恥ずかしさからか、或いは驚きからか、僅かに声を上げた。
しかしそんな檜の様子にも構わず、
白春は檜を抱きしめる腕の力を弱めようとはしなかった。

「俺は、檜が『俺に゛見せたがった』って言っでぐれた事の方が
ずっと嬉しかったべ。
それ゛に、檜の願いなら゛俺が叶えてや゛るっで!」

一旦体を離し、任せとけ!とでも言う様に胸を叩く白春に
檜は微笑んだ。

「ありがと、白春さん・・・」

「ん゛で、檜のお願いって何だべ?」

「それは・・・ひ、秘密かも・・・・・・」

檜は顔を真っ赤にして俯いた。


『白春さんとずっと一緒に居れますように・・・
 なんて、恥ずかしくて言えないかも・・・』


「・・・檜っ」

心に浮かんだ願いを思い、俯いたまま歩みを進めていると、
名前を呼ばれ、ぐいっと白春に腕を捉まれた。

「前見で歩かね゛えと、危ねえぞ」

顔を上げると、眼前に電柱が飛び込んできた。

「ご、ごめんなさい・・・

「い゛いって。けど、俺の寿命が縮まるべ」

やんわりと微笑まれて、檜は再度申し訳ない気持ちになる。
それが顔にも出てしまったのか、白春が少し慌てた様子を見せた。

「そ、そん゛な顔すんなよぅ。俺の寿命が縮まるっつっだのは例えで・・・
 それに゛、今日はこんな゛に星が綺麗なんだがら、下向いてんの゛は
 勿体ないべ?」

そう言ってうろたえる様子が少し可笑しくて、嬉しかった。

「ありがと、白春さん・・・」

檜がそう言うと、白春は安心したように笑った。
暖かさが伝わってくるような白春の笑みに、
檜もまた自然と笑みを零していた。


どちらからともなく手を繋ぎ、空を見上げる。

繋いだ手から伝わる互いの温もりと、夜空に瞬く星々。
流れ星に願いを伝えることが出来なくとも、
二人はきっと一緒に居られる。
檜はそう信じて夜空の星を見上げ続けた。









もっと短くなる予定だったんですがえらいだらだら書いてしまいました。
なんだかとっても尻切れトンボ。
なんでこの二人は当然のように一緒に帰ってるんだとかつっこんじゃいけません。
本文に書いたら蛇足になっちゃうので書けなかったんです(人はそれを言い訳という)
というかこの二人はどこにいるんでしょうか・・・

「あ゛の一番明るいのがシリウス、その上にあ゛んのがプロキオン、
 んであの赤い゛のがベテルギウス・・・3つ繋げる゛と冬の大三角形だべ」
本文中に書けなかった白春の台詞。どうでも良い台詞ですが。


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