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鶴、だまし舟、やっこさん、金魚、風車、はこ、 コップ、菖蒲、ピアノ、かぶと、風船、カメラ・・・ 色とりどりの折り紙が、床を彩る。 ひとつ折っては床に置き、を繰り返していたらいつの間にか、 自分の周りは足の踏み場もないほど折り紙が散らばっていた。 気づけば、購入してきた折り紙も随分と減っている。 『金と銀は一番最後まで使わない』 脳裏を、かつて彼が言った言葉がよぎった。 「金と、銀は・・・いちばん最後まで使わない・・・」 自分に言い含めるように、ゆっくりと彼の言葉を反芻する。 手に持った折り紙袋の中には、まだ金も銀も残っている。 それらには手を出さず、目についた紫色の折り紙を手に取った。 彼の学校の、ユニフォームの色だ。 そんな些細な共通点でも、自然と唇が綻んだ。 この紫の折り紙で、何を折ろうか。 菖蒲はもう折ってしまった。 犬を折るには色が奇抜すぎる。 机やイスもまだ折ってはいないが、あまり気が進まなかった。 手に折り紙を持ったまま、うんうんと考える。 「・・・あ。」 ふ、と頭にかかった靄が晴れたような気分になった。 彼の折る手つきを思い出し、辿るように折り始める。 『ここは、こう折って・・・』 まるで彼がこの場所に居るかのようにすら感じられる。 それだけ、記憶が鮮明であるということだ。 折り紙を覚えたい、と言った檜に、無涯は快く承諾した。 最初は簡単なものから始め、徐々に難しいものも折れるようになった。 その時教えてもらった折り紙は、もちろん全て覚えている。 紙を折る無涯の手つきすら思い出せるほどだ。 なぜ、檜が折り紙を覚えたかったのか。 無涯は聞くことはなかったが、恐らく不思議に思っていただろう。 檜もまた、決して言うことはなかったので、無涯は理由を未だに知らない。 無涯と繋がっているような気分になるから――― 「なんて・・・恥ずかしくて絶対に言えないかも・・・」 (檜的には)我侭を言ってまで、折り紙を教えてもらった ――本で覚えることも可能であるのに―― その理由を思い出しながら、檜は頬を赤く染めた。 手の中の折り紙は、いつの間にか紫ではなく薄水色に変わっている。 ゆっくりと丁寧に折ってゆけば、完成も間近だ。 「できた・・・かも」 ふわりと笑って、今しがた完成した折り紙と、 先ほどの紫色の紙で折ったものを机の上に並べた。 机の上に並べたのは、雛人形を模った紫と、水色の折り紙だった。 |