妖精に関する伝承 その1

<ひろ> それでは前にも言ったとおり、今回は本からの紹介ということで・・・
まあ、ちゃんと紹介してからエピソードをあげるって事にしようとは思うんだけどね。
<メアリ> かしこまりました。
それで今回は、どの妖精についてのお話ですか?
<ひろ> やっぱりブラウニーかな?
いい話が結構あるんだよ。まあ前回も紹介はしたんだけどね。
<メアリ> ・・・それではどうぞ。



 ブラウニーは第1章でも述べたように家に住む妖精である。活動範囲が広いことと知名度が高いことで、良く知られている妖精だ。
 見た目は無骨で毛深い小人であり、スコットランドからイングランドにかけて見られる。夜の間に仕事をし、作業をしている姿を見られることや仕事について口を出されることを嫌っている。
 食事を貰っていられる限りは、あるいは決まりを守っている間は人間のために働いてくれるが、気に入らないことをしたり怒らせたり、あるいは衣服を与えたりすると、出ていったきり二度と戻らないと言われているんだ。

 さて。ここでブラウニーの話を一つあげてみよう。

 ジェッドバーグの近くの国境付近の砦に一人のブラウニーが住んでいた。
 彼は、その砦に住んでいた女主人とは特に仲が良く、親切にしていた。
 ある夜、その女主人が突然陣痛を起こしたので、主人は下男に命じて産婆を連れてこさせようとした。
 しかしその日は、あいにくの嵐。水かさも増していたので、下男は行くのを渋ったのだ。
 その下男がのろのろと支度をするのを見て、ブラウニーはいらだった。
 友人である女主人の一大事だというのに、このままこの下男に任せておいたら助からなくなってしまう。
 そう考えたブラウニーは、下男の代わりに自分で馬をとばして産婆を連れてくることにした。
 怖がっていた馬も、ブラウニーが乗ると風のような速さで走り始め、産婆の所へはあっさりとたどりついた。
 そして産婆を呼びだし馬に乗せると、再び風のような速さで砦に戻っていった。
 その間中、産婆は馬から振り落とされないよう、必死でしがみついていなければならなかったが。
 水かさの増した浅瀬に産婆は怯えたが、馬は難なくそれを通過すると無事に砦へとたどり着いた。
 さっそく産婆は女主人のもとへと向かうと、その命を救った。
 ブラウニーはといえば、未だにのろのろと支度をしている最中だった下男を乗馬鞭でひっぱたいた。
 その後もブラウニーはその砦で働いていたが、ある時ブラウニーが「マントが欲しい」と言ったのを主人が聞きつけ、ブラウニーにマントを与えてしまった。
 するとブラウニーは、大喜びしていなくなってしまった。

 この話には別の終わり方をするものもあって、女主人のために働いたブラウニーのことを聞いたキリスト教の神父が聖水をかけたため消えてしまった、というものもあるらしい。
 この話でもわかることだが、気に入った人間の為にブラウニーはよく働くようである。それから、ブラウニーに限らず妖精は、聖水が嫌いなのだ。
 また、まれに悪戯好きのブラウニーは、ボガードという悪い妖精に変化するとも伝えられている。
 ある人間と仲良くなったブラウニーが、その友人が死んでしまったことをきっかけに悪戯ばかりするようになり、身も心もボガードになってしまったという話もある。
 いじめられたり、からかわれたブラウニーが復讐のためにボガードになってしまうこともあり、一度ボガードになってしまったものは悪質で、退散させるにはかなり苦労させられることになる。

 ブラウニーの話はほかにも色々と伝えられてはいるが、だいたいにおいてつき合いやすい妖精のようである。


参考文献:『妖精の国の住人』 K・ブリッグズ 井村君江訳 ちくま文庫


<ひろ> というわけだ。
<メアリ> そうですか・・・ブラウニー様は良い方なのですね?
<ひろ> ・・・まあ食事をあげてるだけで手伝ってくれるんだから、いい妖精なんじゃないの?
<メアリ> 一度お会いしてみたいものです。
<ひろ> ・・・・・・・・・・・・
<メアリ> どうかなさいましたか?
<ひろ> いや・・・まあいい。
次は物語に出てくる妖精を見てみようかな?
<メアリ> はい。お待ち申し上げております。
それでは失礼いたします。

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