私的護衛兵日記2

伯約様の護衛兵になって、何日かが過ぎました。
いくらか、解ったことがあります。
伯約様、戦場では思わず無茶をしがちです。
「いざ参るッ!」
ご愛用の槍を構える姿が、どこか可愛らしく思えるのは、どうやら私だけではない様子。
総勢八人、今日も伯約様をお守りいたします。
「とぉぉぉッ!!」
ちょっぴり高めの可愛らしいお声で、槍を振るっております。
ホントに強いのか?と疑ってすみません。
お強いです。しかも、タフです。
突出しないものの、よく走り回っておられます。
「貴方が噂の姜維伯約殿ですね。知略を戦わせてみたいものです」
「あなたは、陸遜伯言殿!?」
「ふふふ・・・75点ってとこですか。なかなかの高得点ですね」
なんの得点なんでしょう。
どうやら、呉の軍師・陸遜様と遭遇してしまった模様です。
陸遜様も、小柄でとってもプリティー・・・いえ、魅力あふれるお方なのですが。
我が伯約様の魅力には勝てまいッ!!
少年すぎず、大人すぎず・・・これが良いのです!!
「何ですか?」
「いいえ、その様子だと、趙雲将軍もおかわいそうだと」
「大きなお世話ですッ!第一、どこでそれを!!」
なぜか真っ赤になっている伯約様ですが、果敢に言い返しを始めます。
「陸遜殿。そちらこそ甘寧将軍を野放しにして良いとでも?」
「野放しとは言いますね」
「しつけはキチンとしていただきたいですね」
「行動力が魅力ですから」
にーっこりと微笑むお二方。なぜかバックに火花が散っていて、とても恐いです。
何を張り合っているのか、下っ端には見当もつきません。
「呉将・陸遜、蜀将・姜維、覚悟!!」
げッ!!伯約様が陸遜様と火花を散らせていたおかげで、あっさり魏軍に見つかってしまいました。
すぐに包囲され、ほんのりピンチです。
「自重なされよ」
「そちらこそ」
こんな時まで張り合わなくても良いだろうと思うのですが。
敵を倒すことが先決です。
お互いに背を向け、たっと駆け出しますが、いかんせん、数が多すぎます。
陸遜様の護衛とあわせても十八人・・・多勢には勝てません。
こんな妙な張り合いが原因で戦死なんていやだぁぁぁ。
そう思った矢先、とても心強い援軍の登場です。
「伯約ッ!!」
「伯言ッ!!」
伯どうしでちょっと字が被ってる・・・じゃなくて、なんと現れたのは趙雲将軍と甘寧将軍でした。

びっくり。
お二人は、猛烈な勢いで敵を蹴散らして、伯約様と陸遜様に近寄ります。
「無茶をするなと言っただろう!」
「す、すみません・・・」
「なにやってんだよ、お前は!」
「はぁ・・・」
趙雲将軍と甘寧将軍に怒られて、顔を見合わせたお二人でしたが、すぐにそっぽを向いてしまわれます。
「おいおい、訳わかんねぇ」
「すまないな、甘寧将軍」
「いや、こっちこそ。苦労するよな、おたがい」
「まあ、色々な」
苦笑いを浮かべると、趙雲将軍と甘寧将軍は、それぞれ伯約様と陸遜様を伴って、
自軍のあたりに引き戻されたのでした。
自重しろ、とたっぷり叱りながら。
「その・・・・・」
「仮にも、我々と呉は今同盟中だぞ」
「しかし、陸遜殿がッ!・・・・・・
こんな私が相手じゃ趙雲将軍は可哀相だって。」
消え入りそうな声でボソボソと話す仕草も、なんて可愛らしい・・・・ん?
いま、何かトンデモ爆弾発言を聞いた気がしますが?
「はぁ・・・なるほど」
「なんだか、腹が立ってっ・・・」
「そんな顔するな。俺はそんなことちっとも思ってないから」
なんと!!一貫して一人称は「私」だと思っていた趙雲将軍が!!
うっすらと涙を浮かべた伯約様も、なんだかヘンです!
「子竜・・・」
もしや?もしやお二方は?
どうやら、もしかしなくてもお二方はラブラブでいちゃつきの真っ最中。
私はただの出刃亀でしょうか。ええ、いいですよ、どうせ護衛兵ですから。
壁だとでも思って下さいよ。
るーるーるーと涙を流す護衛兵と、砂を吐き出す護衛兵。
ほのかな恋心も、涙と砂に流されてグッバイです。
青い涙はレモンの味です。
私・・・転職した方が良いのでしょうか?