よう、元気にしていたか?
俺は趙雲将軍の護衛兵だ。覚えていたか?
今日は例によって観察日記をつけようと思ったんだが、肝心の趙雲将軍が非番なのでナシにする。
え?何故かって?
イチャついてるのは面白くねぇ
せっかくの休日はそっとしておかないとな。
いつも忙しいお方だからな。
そんなこんなで、俺は暇つぶしをかねて自主トレでもするべく訓練場へと向かった。


「おーおー、皆頑張ってるねぇ」
ぐるりと訓練場を見渡した俺はポリポリと頭を掻いた。
身体を動かすことは嫌いじゃない。
こう見えても、あの趙雲将軍の護衛だからな。
並の体力じゃやってけない。
日々鍛えておかないと大事なときに趙雲将軍のお役に立てなくなってしまう。
とはいえ、趙雲将軍はお一人でも大層お強いのだが・・・。
そんなことを考えながら愛用の槍を手にした俺は、訓練場の一角に円陣が出来ているのに気がついた。
誰かが手合わせでもしているのだろうか、二重にも三重にも人々が輪を作っているため、
中央に誰が居るのか解らない。
俺は好奇心に駆られてその輪をのぞき込んだ。
「たあッ!!」
「勝負有り!!」
のぞき込んだとき、ちょうど払いが決まり勝敗が決したようだった。
鮮やかな動作で相手を払い倒した奴の顔に、俺はしっかり見覚えがあった。
「誰か、挑戦する奴はぁいねぇか!」
周囲にいる野次馬がはやし立てる。
得意そうに槍を掲げるそいつに、ニヤリと笑い、俺は手を挙げた。
「じゃ、俺が」
「あああああああああああーーーーーーーー!!!!!」
名乗りを上げるやいなや、ガバッと振り返ったそいつが絶叫をあげる。
「あ、アンタ!また!」
「よう、一つお手合わせ願おうか?」
「望むところだ!」
ぶんっと槍を振り上げ、ポーズを取るそいつ。
忘れもしない、姜維伯約将軍の護衛兵の一人か。
ウチの上司と姜将軍がデキていることを知らずに、やさぐれていたっけ・・・。
まあ、俺はちゃっかりおいしいところをいただいたので良しとする。
「今日は、この前みたいにはいかないからな!」
「どーだかねぇ」
腕には自信があるのか、鼻息も荒く挑み掛かってくるのは良いんだが・・・。
世の中、そう甘くはないぞ。と。
ふうっと一つため息をついた俺は、まっすぐに槍を構えた。

「そこまで!」
ふわりと体格の良いからだが宙に浮く。
ドサッとしりもちをついて倒れたその表情は、いつにもなく悔しそうだった。
「若いだけじゃ勝てねぇよ?」
「うー・・・」
よほど悔しいのか、子供のように座り込んだまま俺をにらみつけてくる。
まぁ、そんじょそこらの奴には負けやしないだろうが、体力と戦力が必ずしも比例するとは限らない。
ちょっとばかり、頭を使わないとな。
ほら、と俺が手を差し出すと、きゅっと下唇を噛んだが、それでもその手を取った。
「う・・・うわッ!」
そのまま、ひょいと俵を持ち上げるように担いでやると、途端にバタバタとあばれだす。
「なにするんだよ!」
「おや?負けた方は素直に言うことを聞かないとなぁ」
「なにをッ・・・!」
至極にこやかにそう行ってやると、いつぞやの記憶が頭をかすめたのか、背中で必死になって暴れている。
「これが戦場だったら死んでるんだから、ラッキーだな」
「そう言う問題じゃ・・・!!」
「修行し直してやるよ」
たっぷりと、と付け加えると、絶句したような表情になり、それからまた背中を叩いて抗議してくる。
休日ながら今日も良い獲物を得たものだと満足した俺は、背中にそいつをかついだまま、
あっさりと訓練場を後にした。


「子竜、思うのですが」
「ん?」
たまたま訓練場の前を通りかかった姜維は、そこに見知った顔を見つけて趙雲を呼び止めた。
「仲がよいと言いますか、なんと言いますか・・・」
ほう、とため息をつく姜維の視線の先には、休暇中の護衛兵の姿が。
姜維はそれを見て呟いているのだろう。
微笑ましいような光景でもあり、自分たちの鏡であるような気もして恥ずかしかったり・・・。
なるほどな、と納得した趙雲は、「そっとしておけ」と姜維に微笑んだ。
「まぁ・・・今後が楽しみだがな」
「そうですね」
クスッと今日が微笑む。
今後の彼等が気になるところだが、ひとまずはそっと見守ろう。
それが親心という物。
しかし、そんな二人の胸中を、バタバタとにぎやかに去ってゆく彼等が知る由もなかった。


*END*

*はい、なんだか久しぶりな護衛兵君の日記・・・。
 今回は趙雲さんと姜維ちゃんの会話付き〜♪
 そろそろ名前をあげたいんですが・・・・なにか良い案はありませんか?(涙)

蜀的事情〜趙雲編2〜