「趙雲殿!趙雲殿!」
趙雲を呼ぶ声は、先ほどから続いている。
あちらこちらをきょろきょろと探し回っているようだが、姿が見あたらないらしかった。
その様子を眺めていた趙雲は、眼下の姜維に向かって声をかけた。
「姜維!」
「あ・・・趙雲殿!」
木の上から手を振る趙雲に「どこに行っていたんですか」と姜維が上を向いて怒る。
木から飛び降りて姜維を見ると、腰に手を当てて顔をのぞき込まれた。
「全く!探しましたよ!」
「おい、俺は今日非番だぞ・・・」
そんなに怒るな、と苦笑いすると、姜維がキョトンとした顔を見せる。
「そうだったんですか・・・?丞相がサボってるんじゃないかって」
「おい・・・・」
誰がサボってるんだ、と肩を落とす趙雲に姜維はぷぅっと頬を膨らませた。
「だって丞相が・・・」
「・・・・・・」
“丞相”
この言葉に趙雲は少しだけ苦い顔をする。
別に、丞相が嫌いだというわけではない。
姜維は丞相の後継として日々熱心に学んでいる。
師を見習うことは悪いことだとは思わない。
尊敬することも良いことだと思う。
けれど。
心のどこかがもやもやするのだ。
それをどんな言葉で表せばいいか、よく知っているから趙雲は目を背ける。
そんな感情を抱いてしまう自分に驚きもし、恥もする。
姜維の心の大半を占めている存在に、らしくないがムカついちゃってりしてるのだ。
(俺ってヤツは・・・・)
はああーとため息をついた趙雲は、くるりと背を向けて歩き出した。
「趙雲殿・・・?」
「丞相のところに行ってくる」
そっけない返事しか返せないのは悪いとは思っている。
それでも、ここで振り返ると更に悪い方向に進みそうで恐い。
すまないと姜維に心の中で謝り、趙雲はそれ以上なにも言わずに歩いていった。
「そりゃお前が悪いだろ」
「なんでですか!?」
ところかわって、とある飯店。
だんッ!と湯飲みをおいた姜維が馬超に食ってかかる。
対する馬超は苦笑いのまま、当たり障りなく返事を返した。
「お前が丞相丞相って言ってるからだ」
「だって丞相が・・・・」
「それ」
ぴしっと姜維を指さした馬超は、軽くため息をついた。
「丞相丞相ってのも悪かないが・・・あいつがどれだけ頑張ってるか知ってるか?」
「・・・・・?」
首をかしげる姜維に、馬超は仕方ないなと笑う。
そっと姜維に何事か耳打ちをすると、姜維はガタンと椅子を蹴って立ち上がり、一目散に走り去った。
「ホント面白い奴ら・・・・」
姜維が丞相を慕うのは解る。
けれど、そうもいかないことがあるのを姜維は気づいていないのだろうか。
鈍いだけか、それとも趙雲が隠すのが上手いのか。
それは馬超には解らなかったが、当分楽しめそうなことは解り笑みが漏れた。
「・・・・・・」
そっと扉を開けると、奥の机に突っ伏して趙雲が静かな寝息を立てている。
その傍らには読みかけ調書と書きかけの書類。
仕事の途中でうたた寝をしてしまったのだろう。
顔をのぞきこんでも、趙雲は起きる気配がなかった。
「ごめんなさい・・・」
そっと発する言葉は、静かな部屋に吸い込まれて消えてゆく。
毎日の睡眠時間が3時間あまり。
何事もそつなくこなしていく趙雲だから、姜維には解らなかった。
いつも慌てず動じず、穏やかに微笑んでいたから。
丞相を追いかけるあまり、大切な人を見失いかけていたのかと思うと、鼻の奥がツンと痛くなる。
ゆっくりと身をかがめた姜維は趙雲の頬に口づけた。
「・・・・・すき」
「・・・・・・・・」
唇を離すと、急にグッと腕を捕まれる。
驚いて趙雲を見ると、腕をつかんだ趙雲はニヤリと不敵に微笑んでいた。
「なっっ!!」
「今、なんて言った?」
至近距離で見つめながらそう言うのはやめて欲しい。
それだけでもドキドキが止まらないのに、趙雲は更に無茶なことを言ってくる。
「言うまで離さないけど」
「うー・・・」
「言わなかったら、もう一度口づけて欲しいなあ」
「!!」
―――起きてたッ!!
その瞬間、姜維は全てを理解して真っ赤になった。
趙雲は最初から起きていて、自分の言葉や行動を全部知っていたのだ。
知っていて、寝たふりを決め込んでいたに違いない。
そう思うと急に恥ずかしくなってそっぽを向いてしまう。
そんな姜維の反応を楽しむように、趙雲は意地悪く微笑むと耳許で囁いた。
「どっちがいい?」
「・・・・」
どっちも恥ずかしいです、と消え入りそうな声で呟くのが精一杯。
涙目で訴えてみても、趙雲はニヤリと微笑んで離してくれそうもない。
これは、完全に楽しまれている。
そう思ったところで、恥ずかしさが消えるわけでもなく、あっさりとそんな言葉を口に出来るはずもなく・・・・。
「うー・・・・・・」
困り果てた姜維に趙雲がそっと唇を寄せる。
重なる一歩手前で、趙雲は優しく囁いた。
「丞相ばかり見るな・・・」
それは、独占欲の固まりのような台詞。
けれど、たまにはこんなのもいいかと思えてしまうのは何故だろうか。
あんまり意地悪しないで下さい、と付け加えておくが、はたしてこの先どうなることか。
それは、夜空に輝く星たちだけが知っていそうである。
それは、甘い意地悪・・・・。
*END*
☆ごめんなさい!なんだかとってもごめんなさい!!
いやーーーー!(狂い>泣)
どうしてこんなヘボしか書けないんでしょう(涙)
666HITですね、おめでとうございます!
KISS
☆666HIT記念☆