「良い天気だな・・・」
ふと空を仰いだ趙雲は、大きくのびをすると深呼吸をした。
趙雲の足下にはいくつかの衣類がおかれている。
一人庭に出て洗濯をしている最中であった趙雲は、見上げた空のまぶしさに眼を細めた。
将軍職に就く趙雲が、なにも自分で洗濯しなくても良いのでは、
と言うのがもっぱら皆からの意見だったが、それでも趙雲は
「自分のことは自分で」と、こうして晴れた日には洗濯をしている。
趙雲の屋敷には最小限の護衛兵と使用人がいるのだが、
彼等も屋敷の離れに住んで自由に彼等の自宅と行き来していた。
質素だと言われることもあるが、彼等には彼等の生活があるし,
趙雲自身、自宅でまで人に気を遣いたくないと言うのが本音のところ。
だからこうして洗濯をしているという訳なのだが、そういう平穏を趙雲は楽しいと思っている。
「今日は洗濯が速く乾きそうだな」
バサッと上衣を広げて干す。
ここのところ雨天続きだったために随分と洗濯物がたまっていたが、今日中には乾くだろう。
そんなことを考えながら衣類を干していた趙雲の耳に、よく知った声が聞こえてきた。
「趙雲殿ー。趙雲殿ー」
廊下の方に目をやると、自分を捜してきょろきょろと動き回る姿が一つ。
名前を呼んで探してくれるのはいいのだが、有りとあらゆる扉を開けて回るのはいかがなものか。
(俺はタンスには入れないと思うが・・・・)
これでは隠れん坊の鬼のようだな、と微笑んだ趙雲は、
未だにきょろきょろと動き回っている人物に向かって声をかけた。
「伯約!ここだ!」
「趙雲殿〜」
やっと見つけたと走り寄ってくる姜維は、趙雲が洗濯を干している姿を見て驚きに目を丸くした。
「なにしてるんですか?」
「洗濯だが・・・」
「ええーーーーーーーッ!!??」
自分でですか!?と目を丸くする姜維に趙雲は苦笑いを漏らす。
やはり、自分が洗濯をする姿など意外なのだろうか。
「変か?」
「いいえ・・・なんか、主夫だなぁと思いまして」
「しゅッ、主夫!?」
今度は反対に目を丸くした趙雲に、姜維はニコニコと笑って洗濯物をつまみ上げた。
「知ってますか?洗濯物を干すときはしわを伸ばしてから干すんですよ」
そう言ってパンパンと衣類を叩いてしわを伸ばし、慣れた手つきで干してゆく。
どうやら手伝ってくれるつもりらしい。
「ほら!趙雲殿も働く働く!」
「あ、ああ・・・」
主夫発言に立ちくらみを起こしそうな趙雲だったが、姜維に促されるまま洗濯干しを再開させる。
洗濯物の間を吹き抜けてゆく石けんの香り混じりの風が心地良い。
しばらく二人とも無言で作業をしていたが、そのうちにふと思い出したように趙雲が口を開いた。
「そういえば・・・なにか用事があったんじゃないのか?」
「ええ、ありますよ」
今日は休日だろう?と問いかける趙雲に、相変わらず慣れた手つきで洗濯物を干しながら
姜維がのほほんと返事を返す。
「おいしい点心をいただいたんです」
「伯約は肉まん好きだからなぁ」
「今日は桃まんですっ!」
むー、と頬を膨らませて抗議する姜維に微笑んで、趙雲は姜維の頭をなでた。
「じゃあ、干し終えたらお茶にするか」
「・・・・・」
にっこりと微笑む趙雲を、どこか愁いを含んだ瞳で姜維が見つめる。
何か言いたそうな、訴えるような、そんな瞳で。
「どうかしたか?」
「いいえ・・・。あの・・・点心は口実なんです」
「?」
「趙雲殿は、お休みにはどうしているのかなあって思って・・・」
モゴモゴと干しかけの洗濯物で口を隠しながら呟く姜維に、趙雲は不思議そうな顔をする。
「変・・・ですよね、せっかくのお休みなのに、押しかけちゃって」
伏し目気味にそう呟く姜維に、思わず笑いがこぼれる。
「な、なにがおかしいんですか!」
「悪い悪い。つい、な」
ははは、とおなかを抱えて笑う趙雲に、姜維は洗いたての敷き布を趙雲の顔に投げつけた。
「うおッ!」
「笑うからです!」
お仕置きですから、とばかりにそのまま顔に巻き付ける。
洗い立ての石けんの香りと少し冷たい濡れた感覚が妙に清々しい。
顔にまとわりついている部分の布をめくり、趙雲は姜維を抱き寄せると柔らかく口づけた。
「ん・・・・」
爽やかな石けんの香りと、暖かな体温。
少し濡れた布に包まれての口づけは、いつもよりも熱いように感じられる。
「変じゃないと思うぞ」
ぼーっと見つめてくる姜維にそう微笑んで告げる。
「好きなヤツの行動が気になるタイプだろ?」
「!!」
耳許でそう囁くと、みるみるうちに姜維の顔が朱に染まっていく。
耳まで真っ赤に染めた姜維は、布を趙雲に押しつけるとバタバタと部屋の方に走っていった。
「点心を用意しますから、それ干してから来て下さい!」
部屋に入る前に一度くるりと振り返ってそう言う姜維の顔は、まだ真っ赤に染まっている。
そんな姜維の様子を眺めていた趙雲は、ふっと笑みを漏らすと残りの洗濯物を干しにかかかる。
「可愛いヤツ・・・・」
綺麗に干された洗濯物が風にはためく。
まだ照れながらお茶の用意をしている姜維のことを思うと、自然と口元が綻び笑みが漏れた。
「これは取り込みも手伝って貰わないとな」
自分が気になって休日に尋ねてきてくれたのだ。
本当なら疲れた身体を休めていても良いはずなのに。
そんな可愛い人をこのまま帰してしまうのはもったいない。
強がりで、でも寂しがり屋な愛しい人がいつも微笑んでいられるようにしよう。
まぶしい太陽の下に干された洗濯物の間を、爽やかな風が吹き抜ける。
点心を食べながら、自分の休日のことでも話そう。
一人で過ごす休日も良いが、これからは二人で過ごす休日が増えても良いと思う。
今度の休みにはどこか遠出でもしようじゃないか。
そんなことを考えつつ、趙雲はとりあえず点心を食べるため姜維の待つ室内へと足を向けた。
こんな風に二人で過ごす休日が増えることを願いながら・・・・・。

*END*


*ごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・以下エンドレス(泣)
  345ヒット記念です!ご指定は甘い感じの趙雲×姜維。
  甘過ぎだ君たちーーーー!!(絶叫)
  今日は天気が良くて洗濯を2回したときに思いついたお話です・・・。
  春日幸斗様、ありがとうございました〜☆

☆345HIT記念☆

洗濯物