「システムとその功罪(深淵の場合)」

 今回は少し視点を絞って、RPG全体ではなくシステムに関して話をしてみようと思う。
 題名からも一目瞭然ではあるが、深淵についてが今回の話題な訳だ。
 個人的な話になるが『深淵』は僕が多用するシステムの一つである。これには色々な理由があるのだが、実は僕は決して深淵そのものを使用したいと思っているわけでは無い。こんなことを書いてしまうと日本中の優秀な深淵マスターに怒られてしまうかも知れないが、深淵の世界観が僕を充足させてくれていないのも事実である。
 もちろん深淵というシステムは好きであるし深淵そのものを遊ぶことも僕は好きではある。だが、それは僕の中では「ベスト」なシステムであるという意味では無い。「ベター」なシステムであるという意味なのだ。
 まぁおそらくこの問題は、ある程度以上マスターを経験し、自分の表現したいことが見つかり始めたRPGユーザーならば誰にでもある想いなのではないかと思う。マスターとしてシナリオを作りつづけていけば、次第にシナリオ作成はそのシステムの世界の中でのシナリオから自分の中でのシナリオへと変化していくことだろう。そうなれば既存のシステムや世界観の中で表現できないことがテーマになる事だっていつかは起こってしまうだろう。
 だが、これは別に嘆くことではない。たとえ自分がそのシステムを、自分のシナリオでは使えないものだと感じるようになったとしても。
 それは、貴方がマスターとして、既存の世界、つまり他人から与えられた世界、を脱ぎ捨て、本当に自らの必要なものに気付き始めた証である。
 そしてそれはマスターとして大きな成長の一歩であると僕は思うのである。
 さて、「システム」の体現として(そう、システムからは脱却を果たさねばならない)深淵には登場願ったわけであるが、これはとりもなおさず僕が深淵を愛しているからに他ならない。深淵を最も使用するからこそ、そこから抜け出すことが大事であると思っている。
 では、何故僕がそれほど深淵を多用するか。
 これは簡単であると同時に非常に重要なことが原因である。『深淵』と聞けばまず人は「ロールプレイ重視」と連想する。もしくは「ダークファンタジー」だ。(もちろん「数値重視のルール面」とか「運命の有利不利」などと答える者もいるかもしれないが、そういった人には僕の卓で楽しむことは難しいと忠告しておく)
 これは要するに「レッテル」とか「色眼鏡」とかいう奴なのであるが、RPGにおいてこれは非常に重要なのである。なぜならプレイヤーとマスターは、その卓の中で現実には存在しない世界、現実には存在しないストーリーを経験することになる(そりゃ現実世界の、現実に合った話を擬えても構わないが。もちろん破天荒な、という意などでもない)。そうすると、プレイヤー数名とマスターのこれから住むべき世界は、各々の想像の中にしかないことになる。そしてその世界を構築するのがルールブックによる「世界観」という名の解説とマスターの説明しか存在しない。そうなると各々の「世界観」を出来るだけ一致させるためには(何故一致させねばならないかはまたいずれ書くが)、最初から各人の頭の中に創造されるものを同じような形に整えておく必要があるわけである。これに役立つのが先ほど述べた「レッテル」となるわけだ。
 誰もが知っているような、しかも同じようなイメージを喚起させる言葉。これをレッテルとして敢えて貼り付けてやることで、そのシステムに対する「共同幻想」を簡単に作り出すことが出来るというわけである。
 そしてマスターは自分の欲している世界に出来るだけ近いものを持っているシステムを使うことで、プレイヤーに自分なりの「世界観」を伝えやすくなるというわけである。
 僕が深淵を使う理由はここにあるといっても過言ではない。
 さて、貴方の「世界」に近いシステムは見つかっただろうか。

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