●さよならは言わない●  

 ヴン、と聞き慣れたエンジン音に、え?と首を巡らせる。
「夏実…」
乗りにくいのにも構う様子もなく、制服の侭、愛車に跨った夏実が、大きくアクセルを開けている。
美幸の小さな呟きが聞こえたかの様に、ふっと夏実がこちらを向いて。
――――……っ
メット越しに、瞬間、二人の視線が絡み合う。
何もかも、理解った。
夏実がこれから、何処に行こうとしているのか。
言葉すらない、遠く離れた位置からの、ごくごく短かった筈のそれは、けれど、互いの心を伝えるには十分だった。
「ちょっと行って来るーっ」
「…行ってらっしゃい、夏実」
東海林の転出を知った時から、つい先刻まで感じていた違和感が、きれいに消えている事に気付く。
うっすらと口許に笑みを浮かべて、そっと呟いて。
吹っ切れた様な、あんな瞳は、あの時以来久し振りだ。
それは、美幸にとって、何よりも大切な。
「行ってらっしゃい…」
繰り返された微かな呟きが、飛び出して行くバイクのエンジン音に掻き消される。
びゅうと吹き付けた風が、艶やかな黒髪を、嬲って行った。



ぎらりと光る太陽が、今日も暑くなると告げている。
つと廊下に立ち止まり、激しい太陽の自己主張を、眩しげに見詰めていた美幸は、不意に背後から肩を叩かれて、慌てて背後を振り返っていた。
「おっはよ、美幸」
「あら頼子、おはよう」
「ねえねえ、知ってる?」
けれど、きらきらと瞳を輝かして続けれた、何時もの御定まりの科白と共に、向けられた無邪気な笑顔に、美幸はまたか、と溜息を吐いていた。
こんな顔をしている時の頼子は、要注意なのだ。
と言っても、別段、悪い事を考えている訳ではない。
唯、自分の趣味、つまりは噂話と知りたがりに、熱を上げているだけなのである。
だが、ある事ない事、処か、ない事ない事、まるでそれが事実であるかの様に、真実味たっぷりに触れ回るのだ。
此れ迄幾度もその渦中に巻き込まれ、碌な目に合った事のない美幸が、反射的に警戒心を抱いてしまうのは無理からぬ事で。
懲りる事の無い他の面々に、いっそ感心してしまう。
「…今度は、何なの」
心持ち低くなった美幸の声に、けれど、頼子は気付く事はなく、反対に我が意を得たり、と勢い込む。
どちらにしても、一度こうなってしまった以上、誰が如何思おうと、噂の主が真実を開示するまで、彼女を収める事は不可能なのだ。
聞くだけ聞いて、さっさと忘れてしまおうと、半ば投げやりに尋ねた美幸は、けれど、次の瞬間、自分の耳を疑ってしまっていた。
「辞めるって…東海林巡査長が?」
「そ。それで、ヒマラヤ行っちゃうんだって」
「何時!?」
「引継ぎとかあるし、今月一杯はって事らしいけど…」
ついぞ見た事の無い美幸の剣幕にたじろぎ、頼子が一歩後る。
「それ…確かなの?」
「だと思うよ」
本庁にいる、同期の娘に聞いたんだもの。
その娘も急な話でびっくりしてたし…。
何やら並べ立て始めた頼子の言葉は、けれど、一切耳に入って来はしない。
代わりに思い浮かぶのは、此処数日おかしかった、夏実の様子ばかりだった。
『夏実、御代わりは?』
『あ、うん、ありがと』
でも、もう、いいや…。
あれは、そう、東京湾トンネルでの救出作業を、何とか無事に終えた夜。
バイクと食べる事を何よりも楽しみとしている夏実が、事もあろうに夕食を放ってふらりと何処かに姿を消した。
数時間後、疲れ切った様子で戻って来た夏実に、再度温めた食事を出してやりながら、然り気 無く水を向けてみたものの、一向に口を開く様子はなく。
こういった時の夏実は、何があっても口を割らない。
自身で、どうしようもなくなる迄は。
だが、自分から言ってくれる迄待つしかないと思い定めはしたものの、珍しくも長い夏実の沈黙に、そろそろ苛立ち始めていた頃だったのだ。
――――夏実…知って…?
思い当たる節は、ある。
そういえば、用も無いのに、しばしば顔を見せていた東海林が、あの日からふつりと姿を見せなくなった。
そして、勝負勝負と、あれだけ彼に拘っていた夏実も、その事について一言も言及しようとせず、再会してから毎日欠かさず続けていたトレーニングも、ぴたりと止めてしまって。
隠し事が下手な夏実が、表面上、何の変化も無いように見える処が、酷く気になった。
――――若しかしたら、夏実は…
思い至った結論は、恐くて言葉にする事が出来ない。
だが、初めから、理解っていたのかもしれなかった。
夏実が、東海林に惹かれる事を。
再会時、此れ迄見た事が無い程、過剰な反応を夏実が示したその時から。
そして、それは東海林も。
『凄いっすね、彼女』
美幸だけに囁かれたあの一言が、耳にこびり付いて離れない。
だが、それなら、何故東海林は…。
「おっはよー、頼子」
「あっ、おはよ、夏実」
唐突に掛けられた耳慣れた声に、慌てて背後を振り替える。
予想に違わず、其処にはファイルの束を抱えた夏実が、すんなりと佇んでいて。
「こーんな処で、何やってんの?」
もう、チャイム鳴っちゃうわよ。
「え?あ、いっけなーい」
不思議そうに尋ねられて、慌てて腕時計を確認する。
夏実の言う通り、朝礼迄にはもう僅かな時間しか残されておらず。
「頼子、急ぐわよっ」
「あ、待ってよ、美幸ぃ」
ばたばたと室に向かって走りながら、けれど、美幸の頭の中には先刻の疑問が渦巻いた侭だった。



トゥルルル、トゥルルル。
プッシュ回線の乾いた呼び出し音だけが、受話器を当てた耳に空しく響く。
苛たしげに、型の良い爪の先で、無意識の内にこつこつと事務机の表面を叩いていた美幸は、 溜めていた息を大きく一つ吐き出していた。
――――一体、何をやっているのかしら、あの娘…
一向に出ない相手に焦れて、らしくもなく、少しばかり乱暴に受話器を下ろす。
今朝の彼女の態度が、少々、何時もとは異なっていた事が、今更のように気になり出して。
最も、それは、長く一緒にいる美幸だからこそ判る、微妙な違いだったけれど。
『今日…』
『ん?』
『…どうするの?』
眠りが浅いのか、非番の日であるというのに、珍しくも美幸が出署する前に起き出して来ていた夏実の前に、丁度入容れていた珈琲を序でとばかりに置いてやる。
――――そういえば、此処の所、紅茶には御無沙汰してるわね…
礼を言ってカップを取り上げ、香ばしい香りを吸い込んでいる夏実に、ふっと小さく笑みが漏れる。
元々は、かなりの紅茶党であったにも拘らず、夏実と生活し始めてから、すっかり珈琲ばかりを口にする様になってしまった己を自覚して、美幸は気付かれない様こっそりと苦笑していた。
他人(ひと)が出してくれたものには一切文句を言わない夏実だが、一緒に生活していれば、好み位は自然と判る様になる。
とは言うものの、一寸した喫茶店並みに揃えられたフレーバーティーやらティーセットに、同居人の好みを一早く見て取った夏実が、黙って合せてくれていた為に、美幸がその事に気付いたのは、一緒に暮らし始めてから、随分と時間が経過してからであったけれど。
今では、例え一人で居る時であっても、気が付けば珈琲を容れてしまっている様になっていて。
『ん、別に』
躊躇いがちに、けれど、僅かな変化をも見逃すまいと、全身に緊張を走らせて発した疑問は、しかしながら、いともあっさりと往なされていた。
『非番なのに?』
『そうだなあ…掃除かな』
『…そう』
余りに自然で、しかし、だからこそ付き纏う違和感。
感情を押し隠す事を苦手とする夏実が、まるで狙いすました様な、間髪入れぬ突っ込みにも、表面上、何の変化も見せていない事が、逆に無理をしていると思わせる。
けれど、何処と具体的に指摘できぬが故に、それを口にするのも憚られて。
『送別会は?』
『勿論、行くわよ』
『そう…』
即答に、それ以上、口を出すのも憚られて黙り込む。
己の不自然さに、気付いていない事が、却って根が深い様に美幸には思えた。
『…それはそうと、どうするの、朝御飯?』
私はもう、食べちゃったけど。
『ん…後で食べる』
起き抜けの所為か、なんか、食欲わかなくて。
『…そう』
コンビを組んでいる関係上、一緒に取る事の多かった休日を、この日に限って態々別に取ったのは、果たして無意識だったのか。
自分が抱いてしまった感情に、何と名付けるべきか、恐らく彼女は戸惑っているのだろう。
己の心は美幸にあると、此れ迄、疑ってもみなかっただけに。
――――夏実…
これ以上、彼女のかお表情が曇るのを、見たくはなかった。
けれど、自分を、自分だけを見ていて欲しい事もまた、事実で。
自分は一体、彼女にどうして欲しいのか。
それだけが、美幸には理解らなかった。



強兵(つはもの)共が、夢の跡。
数時間前の賑やかさが、まるで夢であるかの様に、森閑とした広い室内。
その一角に陣取って、ひたすらに暗くなった窓外を見詰めていた人間は、背後に近付いて来た者の気配に、ゆるりと振り返っていた。
「済みません。夏実、あの娘…」
来るって言っていたんですが、と続け様とした言葉は、けれど、自信に充ちた瞳に遮られていた。
「もう一寸待ってて良いっすかね」
「え?」
「いや、絶対、来てくれる筈っす」
未だ、勝負、終わってないっすから。
…なんて、思い込みっすかねえ。
きっぱりと言い切って、けれど直に、照れた様に頭を掻く。
その表情に、美幸は昼間聞き損ねた質問の、解答を見た様な気がして、苦笑した東海林に、いいえ、と力強く首を振る。
例えどんなに気が進まぬ事であっても、一度口にした言葉は、夏実は必ず実行する。
そして、それが理解っているからこそ、彼もまた夏実を待ち続けているのだろう。
――――東海林さん…
此れ迄、夏実の事を誰よりも理解っているのは自分だと思っていた。
誰よりも好きでいるのも、そして、大切に思っているのも自分だと。
けれど、この目の前の人間からは、同じ想いが感じられて。
「あの娘は、負けず嫌いだから」
そう、美幸には理解っていた。
夏実は必ず来る。
自分の感情から逃げるような真似は、決してしはしない。
今は唯、慣れない感情に、戸惑っているだけだ。
「そっすね…」
理解っているのかいないのか。
小さく同意を示しながらも、窓外から眼を離そうとはしない。
様々な人に囲まれながら、けれど、夕刻からもうずっと、彼が待っているのは夏実だけなのだろう。
恋敵である筈なのに、それでも、美幸はこの人間を嫌いになる事は出来なかった。
「…済みません、東海林さん」
「え?」
「夏実の事」
「ああ…」
でも、どうして、美幸さんが謝るんですか?
「あの娘の事は、私にも、責任があるように思うので…」
「…一度尋いてみたかったんですが、どうして美幸さん、そんなに俺に気
を遣ってくれるんすか?」
美幸さんからすりゃ、俺って、夏実さんとの間を邪魔する好敵手(ライバル)ですよね。
「…そうですね」
此れ迄、極少数の人間以外、気付かなかった真実をさらりと突かれ、けれど、驚きよりも矢張りという意識が強かった。
どうしてだか、それは美幸自身にも理解らない。
でも、きっと…。
最後迄口には出さず、窓外の空に視線を移す。
――――きっと、それは貴方が夏実の事を、本気で好きな事を理解っているからですね
そして、恐らく、夏実自身も…。
「…帰って来て下さい。必ず、また此処へ」
「良いんすか?好敵手にそんな事言って」
戻って来たら、俺、取っちゃうかもしれませんよ、彼女。
「解ってます」
でも、仕方ないです。
どうしても私、嫌いになれないんです、貴方の事。
恐らくそれは、夏実が好きになった人、だからなのだろう。
彼を好きな夏実が好きだ。
だから…。
闇に染まった窓の外で、門を照らす蛍光燈が、ひとつ、揺れた。



「ああ、夏実さんですか?」
良かった、帰ってらしたんですね。
『あれ、葵ちゃん?どうしたの、珍しいじゃない』
何時もと変わらぬ調子の声に、ほっと胸を撫で下ろしながら、受話器と本体を繋ぐコードにくるりと型の良い指を絡める。
この分なら、夏実の中に蟠っていたものにも、きちんと蹴りが付いたのだろう、と。
「今、美幸さんと飲んでたんですが…ちょっと出て来れませんか?」
『大丈夫だけど…何、何かあったの?』
途端、不安げに曇った声に、心配げな表情が眼に浮かんで、葵は口元にふっと笑みを浮かべていた。
「いえ、実は少し飲ませすぎてしまいまして」
出切れば、迎えに来て貰えないかと。
『解った、場所は?』
「四丁目のカンバス≠チて、御存知ですか?」
『カンバス=H』
って、ああ、そう言えば、一本入った所に、そんな店があった気もする。
でも、だったら、タクシー呼ぶより、走った方が早いか。
さっき、アルコール入れちゃって、バイクは一寸不味いのよ。
「どちらにしても、バイクでは無理だと思います」
美幸さん、眠ってしまってますから。
『…っちゃー』
ま、取り敢えず、急いで行くから、葵ちゃん、それ迄宜しくね。
「解りました、夏実さんも…」
気を付けて、と言い掛けた途端、耳元でがしゃんと音が聞こえる。
最後迄聞く間も惜しんで放り出されたらしい受話器の立てた騒音に、口許にうっすらと苦笑を浮かべ、肩越しに背後を振り返って。
テーブルに突っ伏す様にして眠っている美幸に、声には出さず、葵はひっそりと話し掛けていた。
――――心配しなくても、大丈夫のようですよ、美幸さん
そして、それから十五分も経たぬ内に、息せき切った夏実が、ばたばたと店に駆け込んで来て。
「美幸ぃ!」
「夏実さん、大丈夫ですよ、そんなに焦らなくても」
「葵ちゃん…」
「私が言うべき事ではないですが…理解ってますよね、夏実さん」
美幸さんが、口に出せずにいる事を。
「…うん」
神妙に頷きながらも、美幸に視線を注いだ侭、外そうともしない夏実に、自然、笑みを誘われる。
そう、だからこそ自分は、この二人が好きなのだろう。
正反対の様で、良く似ていて、相手を何より大切に思っている。
それは恐らく、互いが互いの半身であるかのように。
「でもね、葵ちゃん…」
私にも、良く理解んないんだ。
この気持ちが何なのか。
美幸と東海林とを、比べる事なんて出来ない。
大切なのよ、二人とも…。
それ以上言葉を見付けられなくて、口篭もった夏実に葵がふわりと笑い掛ける。
「思っている事を、その侭伝えれば宜しいのではないでしょうか」
美幸さんは、話せば判る方ですから。
「うん…」
そうだね…。
頷いた夏実の瞳は、変わらず、美幸に据えられた侭。
然して広くもない室内に流された静かなジャズが、緩やかに三人を包み込んでいた。



「ん…」
「眼が醒めた、美幸?」
頭上から振ってくる声に、不審げに眉を顰め、辺りを見廻す。
温かな体温と、何時もよりも高い位置で、揺れている視界。
自分が背負われているのだと認識る迄、暫しの間、掛かった。
「…夏実?」
「そ。どうやら、ちゃんと眼醒めたみたいだね」
笑いを含んだ声に、けれど、ぼんやりしている頭の中の霧は、一向に晴れてくれはしない。
ただ、触れている然して広くもない背中と緩やかな振動が、夏実が背負ってくれている事を示していて。
「私…?」
「潰れちゃったんだよ。葵ちゃんと飲んでて」
どう?気持ち悪くない?
「あ、うん、大丈夫…」
実際、気分はそれ程悪くない。
全身がふわふわと浮いている様な感覚は、未だ残っていたけれど。
今は、その浮遊感の中に浸っていたくて、再びその背に頬を押し付ける。
久し振りに二人の間に訪れた、それは、酷く穏やかな沈黙だった。
「…美幸」
「ん?」
「御免ね」
「え…?」
不意に掛けられた短い謝罪に、回らない頭でその意味を考える。
スニーカーの軽い足音だけが、その耳に伝わって来て。
「東海林さんの…事…?」
「うん…」
直ぐに思い当たった一つの名前に、益々頬を擦り付ける。
普段真っ直ぐ人の目を見て話す、夏実のその表情が見えない事が、今だけはとても有り難かった。
「何となく判ってた…美幸が塞いでいたその訳が」
でも、自分なりの結論が出ないうちは、何も言う事が出来なくて。
「出たのね、結論…」
服を握り締める指に、無意識に力が篭る。
声が震えてしまうのだけは、自身にもどうしようもない。
けれど、夏実は美幸のその様子に気付いているのかいないのか、ふるりと一つ首を振って。
「…出ないよ、結論なんて」
「夏実?」
らしくもない、弱々しい声に、肩に伏せていた貌をすいと上げる。
だが、背負われた侭の不自由な体勢と、摂取したアルコールの為、思い通りに動かぬ身体では、その表情を窺う事は不可能だった。
「私には選ぶ事なんか出来ない…比較する事なんか出来ないんだ、二人を」
「………」
「何が愛で、何が恋かなんて、私には解らない」
でも、美幸と私は、何処か深い所で間違いなく繋がっている。
この先私達が物理的に離れる事があっても、多分、私はずっと美幸と生きているんだと思う。
どうして、別々に生まれて来たのか、解らない位に。
美幸には、…知っていて欲しかったんだ、私がそう思っている事を。
「うん…」
言葉を探しながら訥々と話す夏実の声が、触れ合った部分から直接に響いてくる。
それは、確かに恋愛における結論ではないものの、夏実が考えて考えて、出したものなのだろう事が、はっきりと伝わって来て。
――――夏実…
再度、肩に貌を伏せ瞼を閉じると、歩みを進める規則正しい振動だけが、緩やかに二人を包み込む。
夏実のくれた言葉は、美幸が望んでいた結論では、決してない。
それでも、美幸を想う夏実の気持ちが、酷くその胸に染み入っていた。
――――でもね、夏実
別々に生まれてこなければ、こうして貴女を想う事もなかった。
貴女を想う事で、私はこんなにも幸せになれる。
だからもし、何時か、夏実の中でこの結論が出た時、私を選ばなかったとしても。
私はきっと彼への想いごと、貴女を想い続けると思うわ…。
それは、自分の中での、確かな気持ち。
恐らく、ずっと、変えようのない。
――――お休み、夏実…
触れている部分から全身に広がる安堵感に、徐々に身体から力を抜けていく。
再び訪れ始めた睡魔の波に、美幸は久し振りに安らかな眠りの海へと、その意識を揺蕩わせていた。

END