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「暑い〜っ・・・みーゆーきーっ」 そんな声が聞こえたのは美幸がやっと眠りについた頃だった。 連日の暑さにさすがに寝苦しくはあるものの、寝る少し前に部屋を冷やしておき、寝るときはドライなどにして体を冷やしすぎないように気をつけてなるべく快適に眠れるようにしていた。 「夏実・・・?」 眠い目をこすり、ベッドを降りると部屋のドアを開けた。 そこにいたのはやはり夏実だったのだが、様子が少しおかしかった。 「どうしたの?」 「あつい〜クーラー壊れたよぉぉぉぉ」 汗びっしょりでタンクトップの前をだらしなくパタパタやりながら冷やしたペットボトルを額に当て、グッタリした夏実が美幸の部屋にふらりと足を踏み入れた。 「あぁ〜天国〜」 自室の灼熱地獄から美幸の部屋の天国のような快適さに思わず頬が緩む。 「壊れた?リモコンの電池が切れたとかじゃなくて?」 「違うよぉ〜何やってもダメだったもん。あんな蒸し風呂で眠れない!」 「扇風機は?」 「そんなんじゃ無理だよぉ」 うるうると訴えるような瞳で見上げる夏実に、しょうがないわねと美幸が折れるまでにそう時間はかからなかった。 「布団敷く?」 と振り返った時にはすでに夏実は美幸のベッドにごそごそと潜り込もうとしていた。 「夏実?」 「もう遅いしさ、面倒だしいいじゃない?」 「んもう、夏実ったら」 狭いベッドに二人でくっついて寝たらそれこそ暑いんじゃないだろうか?という言葉はとりあえず飲み込んだ。 美幸はピっとリモコンのボタンを操作して、ドライから冷房へと切り変えた。 「いつかみたいに寝ぼけて抱きついたりとかナシね」 「わかってるって」 「夏実のパワーはあたしじゃ太刀打ちできないんだからね」 「はーいはい」 快適環境にすっかりゴキゲンの夏実は、何の保証も出来ないクセに軽はずみな返事を繰り返す。 「大丈夫かなぁ」
「ん・・・んんっ」 「あ・・・つ」 もぞもぞと体を寄せあっているせいで密着度が上がり、ベッドの上の温度・・・というより二人の体温が上がったというか・・・とにかく暑かった。 「暑っ!!!」 ガバっと飛び起きたのは夏実だった。 「ん・・・なつみぃ?今度はなぁに?」 眠そうな目をこすりつつ、夏実のタンクトップの裾を掴んだ。 「エアコン消えてる」 「あぁ、タイマー切れたのね」 「暑いよ美幸ぃ」 ごそごそと美幸の体を乗り越えるようにしてサイドテーブルの上に乗っているリモコンを手に取ると、ピっとボタンを押した。 ひんやりとした空気が部屋に流れ出したのを確認すると、夏実は元の位置に戻った。 「美幸ってエアコンなくても平気なの?」 「そうね、平気ってわけじゃないけど夏実ほど暑がりじゃないかもね」 「寒くない?」 多分いつも美幸が設定してるより数度、温度を下げていることで美幸の体が冷えてるんじゃないかと今更ながら心配になった。 そっと美幸の腕に触れる。 「やっぱり少し冷えてるね」 「そう?」 「ごめんね」 ごそごそと腕を美幸の首の下に通し、きゅっと抱き寄せた。 「これでちょっとはマシでしょ?」 「な、夏実?」 確かに少し冷えていた体から体温が戻って来たような気がする。 「エアコンでガンガン部屋冷やしといて体くっつけて暖取って・・・あたしら何やってんだろね」 自分の行動の矛盾がおかしくてつい笑ってしまう。 それでも暑すぎず寒すぎずな、夏実にとって快適な空間がここにはあった。 そしてそれは美幸にとっても同じことだった。 「そうね、しばらくエアコン修理しなくてもいいんじゃない?」 半ば本気でそう思った。 その想いを伝えるようにきゅっと夏実の腰に腕を回した。 二人で寝ると暑苦しくなるんじゃないかと思ってた空間が、これほど快適ならば何の問題もないんじゃないかと。 「そ、それはちょっと・・・困るかな」 だが、エアコンがないと筋トレどころか着替えをするのも暑苦しいよ、という夏実の訴えも最もだと思う。 「修理お願いします」 「ん、明日・・・見て・・・みる」 意識が落ちかけていた美幸は、そう約束をするとそのままストンと眠りに落ちた。 「ふふっ」 ぽんぽんと美幸の肩をあやすように叩くとチュっと無防備な頬にキスをした。
翌日、ちょっとした修理で治ったエアコンは元気に稼働を始めたが、何故か眠る頃になると夏実が部屋にやってくるという習慣がついてしまったのだった。 エアコン代の節約という理由をつけて・・・。
END
プラネタリウムのテツ様から、相互リンク記念に頂きましたv書かせて頂いて良いですか?とお聞きしたら、逆に頂いてしまいました・・・(ぺこり)。うちでは到底見る事の出来ない、とっても可愛い二人が最高ですvv |