志摩さんは言った。
『俺が現在も生きてる理由を持ちたいだけなんだ』
と。

それは、彼が、今尚自分の存在に疑問を持ち続けている、明確な証。
彼は常に自問し続けているのだろう。
何故、自分だけが生き残ってしまったのか、と。


志摩さんは言った。
『人の喜ぶ顔が直接見られるから。だから俺はこの仕事を選んだんだ』
と。

それは、彼が、己の存在意義を、常に確かめていなければいられない証拠。
彼は探し続けているのだ。
自分を必要としてくれている場所を。


普段の明るい様子からは、思い付けないような過去を持つ彼。
炎を眼にする度、呼吸困難に陥り、身動ぎすらままならなくなる。
けれど、そんな危険な状況にあっても、心だけは必死に抵抗を続けていて。
『畜生、畜生、何で動けないんだよぉ!』
声にならない彼の叫びが、直接胸を揺さ振ってくる。
だが、彼は、思うようにならない自身に苛立ち、己を叱咤する事はあっても、決して他人に頼ろうとはしない。
それが例え、どんな差し迫った状況下であったとしても。
そして、そんな彼を目の当たりにする度に、俺は酷く苛立つ自分を感じるのだ。

――――ねえ、志摩さん
他人に頼らないのは、あんたの長所で、けど、同時に欠点でもあるんだよ。

自分の力だけで何とかしようとする事は、確かに悪い事ではない。
けれど、志摩を見ていると、不安が擡げてくるのを止められないのだ。
突き詰めれば、結局、この人は、誰一人として信用していないのではないか、と。
そう、パートナーである自分でさえも。
もう一度、一人にされる事を怖れる余り、誰一人傍に寄せ付けず。
何もかもを自分で背負い込み、我武者羅に突き進む。
時には、相棒の筈の香(じぶん)の気持ちすらも、無視する形で。

――――人は誰でも一人でなんかいられない
頼むから、志摩さん
早く俺の気持ちに気付いて。

何時でも俺は、あんたの後ろに立っている。
何があっても、俺はあんたを決して裏切りはしないから。
この誓いを口にする事は、多分一生無いだろうけど。
他人の心に敏感なあんたなのに、どうして自分に向けられた気持ちには鈍感なんだかな。

何時になったら俺の気持ちに気付いてくれる?
志摩さん。
後、少しだけで良いから。
俺はあんたに頼って欲しいよ。

俺に欲しいものがあるとすれば。
それはあんたの信頼だけだ。

END