ZMT-SV3G V3ガンダム
V3ガンダムとは、ザンスカールによって接収されたVガンダムを、BESPAの技術陣が改造したモビルスーツである。以下ではこの特異な存在のMSについて解説する。
1.ザンスカールによるVガンダム改造・利用の意義
Vガンダム
Vガンダムとは、リガ・ミリティアが独自に開発したマルチプル・モビルスーツである。ここでのマルチプルとは、機体が複数のパーツで構成され、各パーツが(コアパーツを中心として)単独で運用できることを指す。このような構成を取っているのは、まずゲリラ組織であるリガ・ミリティアには大規模な工場の保有が困難であり、MSの生産を複数の小工場で分散して行う必要があったため。また、実際の戦闘で機体が破損した際に、修理施設が無くともパーツ交換により迅速に機体の戦列復帰が可能であるからである。
結果的に、Vガンダムは汎用性に優れた高性能機として単体としては大きな戦果を挙げたが、ザンスカールのような大規模なMS運用が可能な組織にとってはさほどのメリットは無い機体であると言える。だが、BESPAによる新開発のあるシステムにとって、このVガンダムのマルチプルシステムは極めて好都合だったのである。
ではまず、BESPAがその新型システムに至るまでの技術の経緯を見てみよう。
ビームローター
ザンスカール軍MSはBESPA開発の新技術によって、従来とは一線を画す能力を手に入れている。すなわちMS単体での長時間飛行を可能にした、ビーム・ローターである。ビームローターはビームシールドの派生技術であり、MSの飛行システムとビームシールドを兼用する画期的システムである。
従来の非空力型飛行システムにはミノフスキークラフトがあるが、これはミノフスキー粒子
が形成する立方格子殻に特殊な電磁界を掛けたとき発生する力場(すなわちIフィールド)の上に乗ることで空中を移動する。
図1 ミノフスキークラフト概念図図1はこのシステムの概念図であり、objectが自らが発生させたミノフスキー粒子の立方格子の上に浮かんでいることがわかる。
ただし、MSを飛行させるだけのIフィールドを長時間維持するのは小型のシステムでは不可能(短時間であれば、Vガンダムのコアファイターのように生成も可能)である。
これに対して、ビームローターは極めて小型のシステムでMSを飛行させることが可能である。ビームローターは、ヘリコプターのローターのようにビームフィールドを回転させ、それによって形成させるIフィールドによって自重と相殺するだけの斥力を生むシステムである。
図2 ビームローター概念図図2はビームローターのシステム概念図
である。ビームローターは、ローターの翼端部に立方格子殻を発生させ、ローターの高速回転により次々とローターの下方に形成される格子殻の力場の集合により、斥力(=浮力)を生むのである。ここで、ビームローターのローターはビーム刃により形成され、ビームの奔流により翼端へミノフスキー粒子を送り込み、翼端部に掛けられた電磁界により立方格子殻を生成する。このビームによるミノフスキー粒子搬送機構はビームシールドと機構が類似しているため、ビームローターはビームシールドとして運用することが可能なのだ。
このようにして、ビームローターはミノフスキークラフトに比べ単位時間で生成する立方格子殻の量が極端に少なくて済むため、MSへの搭載が可能である。
しかし、ビームローターにも欠点があった。低出力とはいえ、つねにビームフィールドを発生させながら飛行するため、航続距離を長く取ることが出来ない。一応この欠点は、実体ローターの翼端にIフィールドジェネレータを設置して回転させれば、ビーム刃によるローターと同様の効果が得られることを利用して解消できる。しかし、これでは複数のIフィールドジェネレータが必要となってしまうので、高コスト化及びローターの肥大化を招いてしまう。よってビーム刃の採用は必要不可欠なのである。また、機構上空中での運動性には制限があり、事実上空中での格闘戦は困難であるという問題もあった。
この欠点を解消のために考案されたのがフライトホイールシステム、すなわちアインラッドである。
フライトホイール
アインラッドに代表されるフライトホイールシステム塔載機は、旧来からあるサブフライトシステムの発展形と言える。その飛行システムは、ビームローターをさらに発展させIフィールド同士の反発斥力を利用している。
図3 フライトホイール概念図図3はフライトホイールシステムの概念図である。フライトホイールには赤い点で示すようなA,B二基のIフィールドジェネレータが対角上に装備されており、この二基はホイールの回転により立方格子殻を生成し続ける。ここで、Iフィールドはミノフスキー粒子の立方格子殻に電磁界を付加することで発生することを思い出してもらいたい。フライトホイールは全面にこの電磁界発生器を装備しており、まずAにより生成された立方格子aをIフィールド化し、その直後、手前の電磁界発生器でbをIフィールド化する。こうして生成した二つのIフィールドは反発し、反発軸線上に推力を発生させるのである。この推力を推進方向上の任意点で発生させることで、フライトホイールは飛行が可能になるのである。
このシステムはビームローターと異なり浮力ではなく純粋な推進力を発生させるため、非常に高い機動性を得ることが出来る。また、ビーム刃によるエネルギー消費も無い。また、副次効果として、生成された立方格子をピンポイントでIフィールド化することでビームをはじくこと、すなわちビームシールドと同様の運用が可能なのである。
このフライトホイールは理想的なサブフライトシステムとして瞬く間にザンスカール地上軍に普及しただけでなく、宇宙空間でも運用が可能なシステムとしてザンスカール全軍で広く使用されることとなったのである。
このホイールシステムを見て新たなシステム運用を考案した人物がいた。これが当時ザンスカールヨーロッパ方面軍ガッダール隊隊長であった、ドゥカー・イク大尉である。
モト・モビル
ドゥカー・イク大尉によりフライトホイールの応用として提案されたのがこのモト・モビルである。イク大尉といえば、旧世紀来のいわゆるオートバイへの執着が強いことで有名であり、本人の弁で「地上にバイクの楽園を築くために戦う」との言葉があるほどである。バイクを象った戦艦モトラッド級はイク大尉の嗜好とザンスカールの地上侵攻作戦上のメリットが重なることで生まれた艦艇であり、その特異な形状は当初の予定通りそれを見たものに恐怖を与えた。
このイク大尉が、新たに開発されたフライトホイールシステムに目を付けない通りは無かった。さっそく、大尉はこのホイールシステム二機によって構成されるバイク型機動兵器の開発を提案したのである。この開発案はまた、モビルスーツを乗せた機動戦闘を行うことも想定されたものであり、そのモト・モビル専用カスタムモビルスーツの開発も同時に行われることとなった。
ここで生じた問題は、BESPAの開発ラインはすでにアインラッド及びその専用モビルスーツ・ゲドラフの開発に入っており、余剰な開発力は無かったことである。そもそもモト・モビルはイク大尉の趣味性が強く、コストも高額なことからそれほど大きな開発力は割けなかったのだ。加えて、モト・モビルに搭乗するモビルスーツには股関節に搭乗用の専用機構が必要となり、また地上走行時に発生する異常なまでの振動からコクピットを保護するためにミノフスキークラフトによる緩衝機構が要求されたのである。モト・モビルはバイク型機動兵器ZMT-A03ガリクソンのメインフレーム流用により比較的小さい労力で開発出来たが、先の問題をクリアするモビルスーツはザンスカールには存在しなかった。この状況下で目を付けられたのが、リガ・ミリティアの秘密工場から接収されたVガンダムだったのである。
そしてV3ガンダムへ
Vガンダムはモト・モビル運用にとって極めて好都合な機体だった。まず、ボトムパーツの変形機構により股関節が展開すること。また、コア・ファイターが合体用に搭載していたミノフスキークラフトを転用することで衝撃緩衝機構もクリア。こうして(当初の予定に比べれば)極めて短い時間と労力でモト・モビル専用モビルスーツV3ガンダムが完成したのである。