プレイングノベル 鷹村夢 神帝城脱出


その日、神帝城を見たものがいたとしたら、紫に染まった不思議な空を見たことだろう。
「紫の夜」
逢魔たちの決死の魔皇救出作戦が始動していた。
魔皇を探して、魂の絆を信じて、彼らは神帝城を駆け巡る。
自らの運命の半身と出会えることを願って。
一刻も早く助け出し、脱出しよう。逢魔たちはそう思っていたに違いない。
だが、魔皇たちの多くは素直に脱出しようとはしなかったのだ。
そう、ここにいる魔皇も…。

「なに!情報を集める?本気か?君はさっきまで死にかけていたんだぞ?」
自らの逢魔と名乗った青年の怒声に、怒鳴られた方の少女は耳を押さえて肩をすくめた。
視線が自分の胸元に落ちる。さっきまで、自分は本当に死にかけていた。
剣で胸を切り裂かれ…。彼が現れなければ死んでいただろう。
傷はもう跡形も無く治っているが、破れた服があれは、幻では無いと告げている。
少女は胸元の破れた服を手で押さえる。あの刃の感触は忘れられるものではない。
だが…。
「敵の本拠地に来て、何も得られないで帰るなんてイヤ。何もできずに逃げるのもイヤ!」
首を振って、前を、目の前の彼を見る。
「そうよ。ここは少なくとも私たちの「敵」なの。彼らは私たちを認めないと言ったのだから。
だから、次の何かのために、せめて情報を集めたい。彼らを、知りたいの。」
いくら外からパソコンを駆使しても、「神帝軍」の真実に迫る情報は出ては来なかった。
捕まったとはいえ、今、自分は彼らの本拠地にいる。何かを知れるかもしれない。
夢は思っていた。このチャンスは…逃したくない。

逢魔デューシンスは思っていた。
彼女の気持ちは解るし、理屈にも合っている。だが…危険すぎる。
デューシンスは自らの魔皇を、その瞳を真っ直ぐに見つめた。
夢の胸には本人は意識していないが、魔皇の紋章が浮かんでいる。「直感の白」
自分の信じた道を進もうとする心。
そして、ためらいの無い瞳。逆らえない。デューシンスはそう思うと軽く天を仰いだ。
こうなれば、覚悟を決めよう。
「解った。だが、無茶はするな。できるだけのことをしたら、すぐ脱出だ。」
「解ったわ。」
デューシンスは、自分の黒いジャンパーを脱ぐと夢に向かって放った。
「それを、着たらいい。脱出するまで油断するなよ。」
自分の服の状態を思い出して、夢はそれを素直に羽織った。男物は小柄な彼女には
大きすぎるが、前を閉じれば破れた服は目立たない。
「まずは、この場を離れないと。行くぞ!」
「ええ!」

ゲートや、エレベーターがある以上それを制御する部屋があるのではないか。
そして、コンピューターも。それを見つけ出して情報を入手する。
それが、一番の目的だった。だが、神帝城はあまりにも広かった。
マップも何も無い状態での絨毯爆撃では、コンピュータルームを探すなどとは
難しいことだったのかもしれない。
「あっちに、複数の魔皇の気や、強い何かを感じるが…たぶん、武器庫だな。」
「コンピューターの気は解らない?」
「解るか! ?」
デューシンスは立ち止まると、慌てて夢の手を引いて身を隠した。
コンピューターの気は解らなくても敵の存在くらいなら感じられる。
向こう側の廊下から来る、追うものと追われるものの気。
それは、魔皇と逢魔だった。しかも、自分達よりも若い、子供同士のペアだ。
後ろから追ってくるのは、グレゴールと、ファンタズマ。
一組だけのようだが、彼らは大人のようだった。リーチの差で、少しずつ彼らの間は
詰められてきている。
どうするか?デューシンスが様子を見ながら横を見ると、隣にいたはずの夢が…いない?
「追いかけっこは終わりだ。死ね!」
「うわあああ!」
バシーッ!!
魔皇と逢魔のペアはシャイニングフォースの直撃を喰らうものと目をつぶっていた。
でも、衝撃は、来ない。ゆっくり瞳を開けると、そこには不思議な盾がふわふわと
浮かんでいた。
「夢…」
「とことん、弱いものいじめが好きなの?グレゴールって!」
二人と二人の間に立ちはだかり、啖呵を切って言う。デューシンスは頭を抱えると
飛び出して夢の背後に立った。
「ほざけ!」
「危ない!」
シャイニングフォースの攻撃が、今度は二人に飛んでくるデューシンスは夢を抱える形で
横とびに飛んだ。
「夢、あいつに攻撃を当てるぞ。気持ちを込めるんだ。紋章に、心に…」
「えっ?ええ!」
夢は目を閉じた。天使の羽と、あいつの足にでも攻撃よ。当たれ…。
自分の手に重ねられた、デューシンスの手が、熱い。そこから何か、力が湧きあがってくる。
「三方閃!!」
口から勝手に出た言葉に驚き、さらに手から出た不思議な光にさらに夢は驚いた。
まるで、光線銃のように発射されたそれは、避ける間もなく狙い通り天使の羽とグレゴールの
足に吸い込まれていく。
「うわあ!」
「きゃあ!!!」
落下し倒れる二人に、夢はどこから出したのか手にした不思議な杖で
べキッ!バキッ!ボカッ!ガスッ!
「恨み篭ってなかったか?」
「そう?」
死んではいないだろうが、当分は動けまい。グレゴールとファンタズマは完全に失神していた。
「あ、ありがとうございました。」
「私たちは、ゲートから脱出いたします。あなた方は…」
夢と、デューシンスは顔を見合わせた。彼らと一緒に脱出しても言いが、まだこれといった
情報は得ていない。やることがあるから、と彼らとは別行動をとることにした。

二人は姿が消えるまで感謝していた彼らと別れ、歩き出そうとする。
だが、彼らの姿が見えなくなったとたん、デューシンスの足が止まった。
「どうしたの?」
「…忘れるところだった!どうして、あそこで飛び出したりしたんだ!やられたらどうする?」
力の入った怒鳴り声に、また夢は肩をすくめた。だが、一瞬の後に反撃。
「あの子達、放っておけないでしょ!」
「それは解るが、下手したら自分達もやられるところだったんだぞ。まだ力も武器も
使いこなせていないだろう!!」
「うっ!」
夢は言いよどんだ。盾が出てきたのは結果オーライ。三方閃は、デューシンスの補助が
あったから。返り討ちの可能性は十分あった。
「何かを守って、自分も生き延びるためには力が必要なんだ。今はまだそれは足りない。
無茶をするな。」
「…解ったわ。」
諭すような彼の言葉に、夢は素直に頷いた。落ち込む夢の頭にふわりと手が伸びる。
「でも、俺はお前の考え方は好きだ。間違ってはいないさ。」
優しくなでられた、父のような、兄のような手の感触に、夢は照れたように微笑んだ。

幾つめの部屋を探索しただろう。
そろそろ諦めようか、と思ったときだった。
「?ねえ、何か聞こえない?」
「ああ、何かを造っているような…音だな。」
「こっち!」
二人は音のする方向へと走り出した。扉らしいものを見つけ、そっと中へと忍び込む。
「ここは…工場?」
「あ、あれは!!」
それは、巨大な工廠だった。神帝軍の力の象徴、ネフィリムが数百、いや数千体規模で
生産され、格納庫へと導かれていく。
作業に従事しているのは、一部の指導者以外は、普通の人間のようである。
「ネフィリムって工場で作られているの?」
「ああ、そうらしいな。でも、あの数。半端じゃないぞ。」
壊してもすぐに取替えがきくということか…。やっかいだな。
デューシンスが小さく舌打ちしていると、見回りの兵士が扉の前で呆然としている
二人を発見した。
「侵入者発見!」
(しまった!×2)
けたたましいベルが鳴り響き、警戒警報が鳴り響く。二人は慌てて廊下に出るが
そこには警報を聞きつけたらしいグレゴールたちが数名わらわらと集まってきた。
「?お前は…」
その中の一人が何事か呟いたようだったが、気にしている余裕は二人には無かった。
「夢!殲騎を召還する。しっかりつかまっていろ。」
「えっ?」
何があったか解らぬままに、夢はデューシンスの手をしっかり握り締めた。
デューシンスは小さな声で呪文を唱える。そして、次の瞬間。
「きゃっ!」
彼に抱きかかえられたと思った時、二人は不思議な空間に立っていたのだ。
「ここは?」
まるで、ロボットアニメのコクピットのよう。首を回してあたりを見る夢の手を
ぐいっと引っ張るとコクピットの中央、まるでバイクのような席に座らせたのだ。
前に、夢、後ろにデューシンス。まるでタンデムシートのようで、顔を赤らめる夢の
肩に、デューシンスの手が乗った。
「いいか。これから、殲騎とシンクロする。自分の身体と同じだと思えばいい。
手を伸ばしたいと思えば手は動く、武器を使いたいと思えばそうできる。
願え。俺が補助する。」
「わ、解った。やってみる。」
夢はハンドルらしきものを手に取り、目を閉じた。
(動いて!)
願いどおり、殲騎はゆっくりと、歩を進めた。グレゴールたちも小さく見える。
神殿の高い天井はそれでも余裕があるようだが、手を広げたり、戦えば壁にぶつかりそうだ。
「壁をぶち砕いて脱出しよう。」
「ええ!」
グオン!!
殲騎の握りこぶしが壁に吸い込まれ、巨大な穴が開いた。殲騎で飛びおりることもできそう
だった。
が、その時グレゴールたちが呼び寄せたのだろうか。数対のネフィリムが彼女の機体の
後ろに現れたのだ。
「そういや、ここは工場だったな。ネフィリムはいくらでもある、と言うわけか…。」
この数に一体じゃ、多勢に無勢か。そう思ったとき、夢の力が何かに集中しているのが
解った。ダークフォースの発動か?デューシンスは慌てて夢の手に、自分の手を重ね補助する。
殲騎の手のひらにボール状の力の塊が結晶する。
「撃破弾!!」
夢の殲騎はそれを、集まってきたネフィリムたちの足もとに、スパイクの要領で思いっきり
打ち付けた。力の塊は、地面にぶつかると同時に破裂し、ネフィリムたちの足を奪った。
ほとんどのネフィリムが倒れこみ、衝撃とほこりを周囲に撒き散らす。
「くそっ!奴らはどこだ。」
穴からの空気と風がほこりを散らすまでおそらく数分。
彼らが周囲を見回したとき、魔皇の姿も、白い殲騎の姿も見えなくなっていた。
「追いましょう!」
「いや、外に逃げたのなら追いきれまい。それより他の魔皇の捕獲だ。行くぞ!」
「ハイ!!」
指揮者らしい男の指示に、他のネフィリムも頷き廊下を去っていった。
「あの娘、面白い。何をするのか、見ものだな…」
壁の向こう。彼らが消えた街並みを一瞥したネフィリムもまた数瞬後、先を歩いた
ネフィリムたちの後を追い、合流した。

空を飛びながら殲騎を亜空間に戻し、コアヴィーグルへと変化させる。
コアヴィーグルは地面に着く直前に浮き上がり、そのまま街へと消えた。
ある子供は、その夜、母に語ったという。
「あのね、神帝様の神殿からね、鳥さんがね、降りてきたんだよ。」
聞くものも、信じるものも誰もいなかった。

なんとか生還を果たした二人は、しばらくの後蒼嵐の結界にたどり着き部屋を開いた。
まだ、多くの魔皇たちは脱出していないようだ。今ある部屋は二つだけ。
その中の一つが、不思議な光を放ち始める。
「?夢、何をしているんだ?」
「看板作ったのよ。ここにね。」
「どうして?」
「今度のことで解ったの。一人じゃできることは限られる。だから、仲間と
力をあわせあうことが必要だって。戦いだけじゃなく、生きていくためにも。
だから、一緒に、って看板を立てたのよ。大切なものを、守りたいから…」
魔皇って一人じゃないんでしょ。彼は頭を押さえた。
「確かにかなりいるはずだが、そういう奴ばかりじゃ…」
「でも、いるかもしれない。」
そうだな、デューシンスは小さく笑うと、膝をついた。
「我が主の思うままに…。」

影の中に生まれた小さな結界に蒼い光が導くように輝く。
ここに集う仲間達を静かに待って…。



手前味噌その2
葉書を元にしたプレイングノベルです。
私は、情報収集を選択、成功し、工場の情報を入手。
誰かを救出し、殲騎を召還、撃破弾を効果的に使って脱出したことになっています。
それをノベルにしてみたというわけです。

自分がその時、どうして、そういう行動を取ったか、何を考えていたのか
それを形にしてみたかったのです。
たった一枚の葉書から空想が膨らむ。
アクスディアって楽しいなあ。

でも、次こそは目指せ!Vノベルゲット!

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