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「んっ・・・」 微かな痛みと、それをはるかに上回る快感が智樹の身体を駆け巡る。 身体が熱い。時は4月、まだ肌寒さの残る頃だ。特に今日は春の雨が降っていて、いつもよりも気温は低いはずなのに。 「・・・敏感だね、可愛い」 「ふざけ・・・っ・・・」 目の前の男の言葉が更に智樹の身体に熱を持たせる。こんな奴の言いなりになんかなりたくない。逆らって、今すぐにでも逃げ出したい。 だが身体は言うことを聞いてはくれない。それどころか智樹の理性を嘲笑うかの様に、相手の思うが侭になってしまう。 意識がもうろうとしていて、それでいてやけにはっきりしているような感覚を覚えた。 体中が敏感になっている。触れられただけで感じてしまう。 逆らいたいのにどうしても逆らうことの出来ない、どうにもならない自分の体に腹が立つ。 雨にぬれたその身体を、滑るように隆史の手が這い回る。どこが感じるのか、どうすればいいのかを冷静に考えているようだ。どうもこういうことには慣れているらしい。巧みに行われる愛撫からもそれが分かる。 「・・・やめろっ」 何とか残っている理性で隆史を止めようとする智樹。 「やめて欲しいなら、俺を振り払えばいい。そのぐらいの力、あるだろ?」 隆史の冷静な口調や態度の前で、乱れている自分。羞恥で顔が、身体が更に紅く染まっていく。 本当ならこいつを振り払うぐらいの力くらいあるはずだ。隆史はそれほど力を入れているわけではない。 しかし、悔しいことだが今にも腰を抜かしてしまいそうなほど感じている自分にそんな事が出来るわけがない。 隆史はそのことを知っている。隆史の手によって、今智樹がどれほどまでに感じているのか、その反応を見ていれば手に取るように分かった。 悔しい。こんな男に思うが侭にされ、しかも逆らうことも逃げ出すことも出来ない、いやしようとしない自分の身体が悔しい。 雨の雫が智樹の髪から零れ、頬を伝っていく。それを隆史は舌で受け取るように舐め取った。 ぶつかるほどまでに接近する二人の顔。自信ありげな隆史の瞳を睨み返すことさえ今の智樹には出来ない。 どうすることも出来ない、もうこの男の思うが侭になるしかない。そして自分の体はそれを求めている。 だがそんなこと、誰が認められるものか。 せめてこれ以上の弱みなど見せて溜まるかと、隆史の愛撫に必死に耐えようとする智樹。 それを感じ取って、笑みを浮かべた隆史は智樹の耳元で囁いた。 「ほんとにお前は可愛いね・・・」 誰もいない校庭に建つ、小さなサッカー部の部室。 その狭い部屋の中にいるのは濡れたユニフォーム姿の二人の少年。 校庭には雨に濡れた桜が怪しいまでの美しさを誇りながら咲いていた。 どうしてこんなことになってしまったのだろう。 朦朧とする頭の中で必死に記憶を呼び覚ます。 どうして、俺は、隆史に・・・。 そうだ、部長にここの掃除を頼まれたんだ・・・。 サッカー部では部室の掃除は部員達が定休日に交代で行うことになっている。マネージャーがいないわけではないが、昔からの伝統でそう決まっているのだ。 今日は定休日ではないので本当は掃除をする予定はない。だが生憎の大雨のため、今日の部活は少し練習しただけですぐに終わってしまい、その後運悪く智樹は部長に部室の片付けを命じられてしまったのだ。 隆史はそれを手伝ってくれると言い、智也もそれを喜んで受け入れた。もちろん、隆史にこのような下心があるなど微塵も知らずに。 こんなことになるなんて思っても見なかった。 皆が帰った後、ちょうど片付けをはじめようとしたとき。 隆史は後ろ手で部室にある唯一のドアに鍵をかけた。その口元には微かな笑みを浮かべて。 そうなればさすがの智樹でも何かがおかしいと感づいた。 しかしときは既に遅く、気付いたときには隆史に両腕を押さえつけられ、唇を重ねられてしまっていたのだ。 自分の不注意を、今日の雨を、部長を、こうなってしまった原因のすべてをうらみたくなる。だが今更どうすることも出来ない。今の智樹は立っているのがやっとなくらいだ。 「あっ・・・ん・・・」 出したくなくても、喘ぎ越えが唇から漏れてしまう。肌を這うざらっとした舌の感触になんとも言えない快感を覚え、理性が吸い取られていく。 隆史の唇が首筋を這うたびに身体が震える。 隆史の指が胸のつぼみに触れるたびに身体がはじける。 隆史の舌に喘ぎ声さえも吸い取られていく。 隆史に、狂わされていく・・・。 「もうお前は俺のものだ」 そう言うと隆史は智樹の胸に唇で紅い所有の刻印をつけた。 外はまだ春の雨。 二人の吐息は雨音でかき消されていった。 |