「クローサー・ユー・ゲット」

厳しい自然の中にあっても、静かに変わることなく日々の生活を送っているアイルランドの小さな村。別にこの村に満足しているわけではないけれど、不満を持っているわけでもない村人たち。しかしある時、月に一回映画を上映している教会で、「十戒」と間違えて、ボーデレクの「テン」が送られてきたのがきっかけで、村の若い男たちは、若くて美しい女を求めて、マイアミの地方新聞に新聞広告を出すことにした。我々の村に来ませんか。暮らしに不自由はさせませんよ…と。
アメリカ娘が来るというウワサに、村の男たちはみんな色めき立つ。そして、それまでの村の生活と人間関係が、少しずつ、しかし音をたてて狂っていってしまうのだった。

"Closer You Get"。要するに、「大切なものは近くに」というテーマは最初からわかっているけど、あんまり説教くさくないし、ぜんっぜん展開が読めないのが愉快な映画。フル・モンティのプロデューサーってだけのことはあるかも知れない。けど、フル・モンティのほうが面白い。場面場面は面白いけれども、全体を通してみると、あんまり心に残るものがない。当たり前といえば当たり前の、男と女という題材を、あんまりにも当たり前に扱いすぎたんだと思う。

でも、共感はすごくできる。当たり前のオトコとオンナの心理を描いているから。
来もしないアメリカ娘を夢見て、若い男が突然髪を金髪に染めてしまったり、急に店の外装を変えてみたり…と、色めきたってゆくのが何ともオカシイ。共感できるからこそ笑えるんである。男子校の人間ってこんな感じだったりするよなあと、元・男子校出身の自分などは考えてしまう。……いやまあ、ここまではひどくないけど。

みんな目的は同じなんである。地に足がついているオトコ以外は。この少数派の、現実的な奴ら(主人公含む)があんまり目立ってないのも難点だけど、とにかく目的が一緒で、彼らがきっとろくでもないことをするに違いないという時に言う、神父のセリフがまた面白い。示唆に富んでいるわけではないが、イチバンこの説教がアタマに残っている。

「君たちは、きっと背広を何着も試着するだろう!!」

しかも、ちゃんとこれが伏線になっていて、後で泣かせてくれるのです。

先が読めないし、ラストに至っては、本当に、今まで「この驚愕のラストが…」とか書かれた映画は星の数ほどあったけど、こんなびっくりして、しかも爽やかな終わり方をした映画は初めて見ました。でも、どっちかっつーと「佳作」なので、ビデオが出てからでいいかな。

個人的には、自分もあんな神父になりたいなと思いました。教会を映画館にしたいぜ!