TANA関連の読み物を載せるコーナーです。

すちゃらか舞隊小説。

第一話:「鼓動」Ver1.01

大地には、鉄と火薬と廃れた廃屋の匂いが充満している。
世界大戦の後、多発する紛争、小競り合いで国は滅び、人種が交じり合い人々は
生活するようになっていた。
戦争の影響が色濃く出ているのか、貧富の差は軍事力、力を持つ者が一方的に富を得、
無き者は、明日の食料を得る為に争い、略奪を繰り返す日々を送っている。

莫大な富を抱え込む、複数の財閥が築き上げた一定の法が存在する地がそこにあった。
都市の中心は商業が栄え、他の地域では考えられないほど発展の一途を辿っている。
その為か、安住の地を得ようと世界各地から一角千金を狙おうと、人が集まり
都市の周りに住み着くようになった。

財閥は日々の争いの途絶えた平穏な生活に飽きていた。
もっと人々のいがみ合う所を、
血を流し、争い、奪い合う所を。

そこで生み出されたのが、管理された戦場。
敵を殲滅し、相手の守る本拠地にあるフラグ(旗)を奪った者が賞金を得る、”戦い”。
戦場で名を馳せた歴戦の強者共が自慢の戦車を駆り、名声を賭けて争う。
その戦いの名は「タナラスバトル」。

タナラスバトルに魅了された戦人(イクサビト)が己の利潤の為に組む部隊。
これから綴るのは、とある小さな部隊の日常。

タナラスバトルの世界に生きた人々の記憶に焼き付く、その名。
「すちゃらか舞隊」……


夜も眠らぬ繁栄と、飢えた狼が闊歩する闇の部分を併せ持つ、宝の都「アグネシアン」の夜。
アグネシアンを取り囲むように存在する、名も無きスラム街の外れにある工場跡。
雲一つ無い満天の星空の下、バーナーの火花と鉄を打ちつける音だけがそこにあった。

「おーつーかぁーれーっ!」
蒼く長い髪の作業着姿の女性は、バーナーの音を遮るかのような大きな声で、頭上の男に
声を掛けた。
バーナーの音が止む。
「ユキ、もう寝たんじゃねーのか。夜更かしはお肌に悪いぞ」
無精髭が目立つその顎に手を当てながら大きな体を下にいる女の方に体を向けた。
「御心配なく。それよりフィズ、今日は朝からそこでやってるんでしょ、もう止めたら?」
「何言ってんだよ。この前のバトルで派手にやられたからなぁ、直す所なんていくらでもあるぜ」
男の下には大きな鉄の固まり、もとい軽量級の高機動戦車「ライトニング」が佇んでいる。
光線砲で溶かされ、ペイントの剥げた装甲版をその筋の通った大きな手でいとおしく擦る。
「はい、これ」
下にいるユキからバスケットを投げつけられる。フィズは受け止めると中を開けてみた。
丁寧にラップされたサンドイッチが綺麗に整頓されて並べられている。
「へー気が利くなぁ。お前が作ったのか?」
男は感嘆の声を上げる。
「んな訳ないでしょ。奥さん、さっき事務所来て、それ置いてったわよ」
「うげっ!アイツ来てたのか」
「たまには家に帰ったら〜?都市部なんだからここよか住みやすいんだし」
「ほっとけ、俺には女よかコイツにまたがってた方が落ち着くぜ」
ラップを無造作に剥がすとサントイッチを口に押し込む。
「ねー、あのバカコンビは?」
「あぁ、多分いつも通り娯楽室だろ」
「サンキュ、後でセシルのとこまで行って装備受注しといて」
フィズに手を振ると、ユキは建物の中に入っていった。


部屋に近づくにしたがって声が大きくなっていく。
間違いない、ここに居る。ノックせずにドアを開ける。
「こんガキャー!!イカサマしやがったな!」
「誰がするかよそんなモン。22戦22敗。どー考えたってレッドが下手すぎるんだよ」
「何だとぉぉぉー!」
どうやらさっきまでチェスの勝負をしていたらしい。あたりに駒が散らばっている。
レッドと呼ばれた褐色の肌を持つ黒髪の青年は細身の金髪の少年の胸倉を掴んだ。
少年は手を横に開き腕を掲げ「やれやれ」のポーズを取ってみせる。
「こーなったらマジで勝負だ!俺のレッドファントムでテメェのVANなんざぶっ潰してやる」
「いくらでも受けて立つよ。この前のバトルだって、僕がサポートしなきゃレッドはキル
取れなかったんだから」
「NECO!その生意気な口に俺の光線砲叩き込んでやる!」
2人が出口を目指そうとする眼前に、ユキは腕を組み立っていた。
「修理代…自腹でしょうね?」


コーヒーポットがグツグツと音を立てている。部屋一面に香りが漂う。
「珍しいね、レッドとNECOが仲良く2人揃ってるなんて」
少しほころびた皮張りの椅子に腰掛けた、眼鏡を掛けた知性的な風貌の男−名をセシルという−は
微笑んだ。
「隊長命令だからな」
レッドはムッとしながらもポットを取りカップに注ぐ。
「僕は眼中に無いんだけどね」
それに対し、NECOはコーヒーを冷まそうと息をフーフー吹きかけている。
「てめっ」
レッドが突っかかるのをユキは眼力で制止させる。
「…まったく。2人とも装備受注しといてよねー。装備揃えるのも時間が掛かるんだから」
「最近はそれほど被害が少なくなったからね、経費引いても少しは食えるようにはなってるかも」
端末をいじりながら、そうセシルは答える。
「強いおじ様方がいるからね」
ユキは皮張りのソファに腰掛ける。
「ファルコンにビー?そんなにアイツ等強いかぁ?俺の方がまだかませるぜ」
レッドはそんなユキの賛辞に眉を顰める。
「先の大戦では同盟軍の先鋭特殊攻撃部隊だった人達よ。うちのチームに所属してくれたのが
不思議だけどね…いくらでも大手チームからはオファーがあったのに」
「言っとくけどなー、ウチのチームのエースは俺!アイツ等にデカイ顔させねーからな」
レッドはビシッと前に指を突き出し誇張する。
「被害の方でもエースだけどね」
ボソッとNECOが呟く。
「レッドもフィズも敵見ると見境無いからねー。機体壊れるまで暴れまくるし」
ユキはレッドの肩をバンバン叩く。
「隊長までそんな事言うのかよ〜っ」


工場から数十キロ離れた荒野にその姿はあった。
時速150キロ以上ものスピードで高速で移動する高機動戦車「ライトニング」が一台。
機体には鷹のイラストがマーキングされている。
操縦席で五感を研ぎ澄ますその男、名をファルコンという。
さらに向こうからまさに突っ込んでくる「ライトニング」の姿。
巨大な蜂が機体に描かれている機体、「クイーン・ビー」。
まさにぶつかろうとする瞬間、機体はお互いに外れ、駆け抜けていく。
その後の両方の機体にはペイント弾の溶液が掛かっていた。
「……雑念が混じっているぞファルコン」
ビーは機体のスピードを下げながらヘルメットを外す。長い黒髪が放たれる。
「私よりその男の方が気になるのか?」
ビーがほくそ笑んでいるのが手に取るように分かる。ファルコンは機体を制止させ、息を吐いた。
ハッチを開け、外に顔を出すと、脇にはすでにビーの機体が停止していた。
わずかにペイントの量がファルコン機の方が多い。
「いや、そんな事は無い」
ファルコンはヘルメットを外し、耐衝撃スーツのジッバーを降ろす。心地良い夜風が体を覆う。
肩口まであるブロンドの髪をすきながら、相手の機体を見つめる。
「まさか、あの男がこんな小さなチームで余生を過ごしてるとは思いもよらなかったがね」
「相手にしたいのなら他のチームに行けば良かったのではないか?」
スピーカー越しの声にファルコンは呟く。
「……ただ知りたかったのだ。あの男が何を考え、そこに居るのかを」
「お前らしい」
ビーはハッチを開け、戦車の上に腰を下ろす。黒髪が風に棚引く。
「付き合うよ。どうせ退屈していたのだから」
「だが、これだけは覚えておいてくれ。お前は私が殺す…」


再び、工場跡。
「隊長、次のタナラスバトルの相手チームの一覧が発表されましたね」
ユキは立ち上がるとセシルの机の上にある端末を覗き込む。
「ん…この相手なら問題ないか……」
電子メールに記されている相手チーム名簿をなぞっていく。
「!!」
ふと目に留まったチーム名にユキは驚愕した。
「こりゃ厄介なチームとヤリ合うことになりそうね…」
どれどれ、とレッドも身を乗り出す。NECOはソファで眠りに着いていた。
「プロブレムチャイルド?これって……」
レッドはユキに視線を向ける。
「……ええ、私の所属していたチームよ」


照明の無いその空間はモニターの明かりに照らされ、機械音が永続的に流れている。
中央には一糸纏わぬ少女が椅子に腰掛けていた。体中に配線を絡ませ、頭には仮想空間へと
ダイブするヘッドギアがはめられている。
「首尾はどうだ、セリカ」
黒い衣装を身に纏った、その男は少女に語り掛けた。
「総統、間違イアリマセン。我々ノ勝利ハ確実デス」
小さな口で男に勝利を予告する。
「うひゃひゃひゃ!そうであろう、そうであろう」
男はニヤつきながら少女の肌を擦る。
「裏切り者にはタップリ痛い目を見せてやらんとなぁ…手塩に掛けて育てたセリカの実力、
思い知るがいい!!」


「次回予告」

「すちゃらか舞隊」に迫る来る黒い影。それをよそにタナラスバトルは開催される。
闇より狙う「見えない敵」。隊員は窮地に立たされる!
プロブレムチャイルドの猛襲に成す術はないのか。
機械少女の頬につたう一筋の涙…
「隊長!見ててくれ、俺がエースだという事を!!」

第二話「静戦」お楽しみに♪