ラピスの企み2
(前回のあらすじ)
大切なアキトをおばちゃん(!)ミスマルユリカに奪われてしまったラピス。
《おいおい・・・》
彼女は、ミスマルユリカに天誅を加え、アキトを取り戻すべく立ち上がったが、彼女の作戦はことごとく失敗し、アキトは連れ去られてしまう。
《自業自得じゃないのか?それに、アキトは連れ去られたんじゃ無いと思うんだが・・・》
だが、彼女は負けなかった。
強力な助っ人としてルリの協力を得て、彼女は再びアキトを取り戻すべく立ち上がった。
「アキト、待っててね。私が必ず救い出して上げるから・・・」
《いや、だからそれはね、どんなに頑張ったって無理だと思うんだけど・・・》
“バキッ!”
「うるさいはね。貴方は私の思う通りに書けばいいのよ。まったく使えない作者なんだから!!」
頑張れ、ラピス。アキトは君の助けを待っている!!
《ホントかよ、おい・・・》
アキトがユリカと共に新婚旅行に旅立った翌日、ラピスはアパートの中をウロウロしていた。
(ああ、今ごろアキトはあのおばちゃん悪魔の毒牙に・・・。可哀相なアキト・・・)
彼女は、数歩歩いては立ち止まり、立ち止まっては歩き出すという事を繰り返している。
(アキト・・・。本当は私の側に居たい筈なのに・・・)
「ラピス、少しは落ち着いたらどうなんです?」
そんなラピスに、ルリがキッチンから声を掛ける。
その声にラピスが振り向いた時、不幸が起こった。
“ゴンッ”
その瞬間、ラピスは右足の小指を押さえてうずくまった。
どうも、柱に小指をぶつけたらしい。
「○▲◇■☆●△◆□★・・・」
あまりの痛さに、ラピスは声も出せない。
《これは痛いんだ・・・》
さすがに心配になったのか、ルリがラピスに近寄る。
「大丈夫ですか、ラピス?」
その声に、ラピスは涙を溜めた目でルリを睨み付けた。
《涙目で睨まれても、可愛らしくはあっても恐くはないだろうな》
「ルリがいけないのよ。いきなり声を掛けるから」
暫くして痛みも取れたのか、ラピスが頬を膨らませながら文句を言う。
だが、ルリはどこ吹く風と言った顔でお茶をすすっている。
「貴方がもう少し落ち着けばいいんですよ」
「落ち着ける訳がないじゃない。今ごろアキトがあのおばちゃんに弄ばれてるかと思うと・・・」
《弄ばれるって・・・》
「ともかく、お二人が帰ってくるまではどうしようもないですよ」
ルリがたしなめる様に言うが、ラピスは聞く耳を持っていない様である。
「そんな事言ったって、既成事実を作られちゃったらそれで終わりよ。
あのおばちゃんの事だから、にこにこしながら『もうアキトは私だけのもの』って言いふらすに決まってるわ」
《既成事実って・・・。ラピスちゃんたらなんちゅう事を・・・》
「ユリカさんは、そんな事は前々から言ってますよ、ラピス」
《良かった。ルリちゃんはまともみたいだ》
「今まで以上に言うの!
ルリは我慢出来るの?あのおばちゃんは「あなた達にはアキトは渡さないからね。アッカンベー」って心で思ってるに決まってるんだよ。それに、独占しようとして、私達がアキトと買い物に行くのもきっと許してくれないんだ・・・」
ラピスの言葉に、ルリはちょっと考え込む。
「ラピスの言う事も一理ありますね」
《ちょ、ちょっと、ルリちゃん・・・》
「そうでしょ。だからぁ、おばちゃんが既成事実を作る前に、アキトを助け出さなきゃいけないの!」
ルリの言葉に力を得たのか、ラピスはきっぱりと言い切った。
「それで、どうするのですか?ラピス」
ラピスの言葉に、ルリが問い質す。
「決まってるじゃない。旅行先でおばちゃんに天誅を加えて、アキトを取り戻すの!」
「天誅って、結婚式の時の様な事をするのですか?」
「え?」
「ロケット、地雷、発煙筒、全て失敗でしたね」
「うっ・・・」
「貴方の作戦は、単純なんですよ」
「じゃ、じゃあ、ルリだったらどうするって言うのよ!」
ルリの指摘に、思わず涙ぐみながらラピスは反論する。
「ラピス、落ち着いて考えて下さい。私達には強力なパートナーが居るじゃありませんか」
「パートナー?」
「私にはオモイカネ、貴方にはオモイカネダッシュがついてるんですよ。相談しない手はありませんよ」
「そっか、そうだよね。オモイカネがいたんだ」
暗闇の中で一筋の光明が見つかったかの様に、ラピスの顔が“パッ”と輝いた。
《おいおい、そんな事にオモイカネを使うんかい・・・》
ちなみに、
(ユリカさんと一緒にラピスも排除すれば、アキトさんは私のものですね)
(おばちゃんとルリを一遍に片付けちゃえば、アキトは私のもの)
と、それぞれが考えていたとは、誰も知らない。
その頃、沖縄の海岸沿いにあるホテルの一室・・・
「アキト、ここなら奇麗な夕焼けが見えるね」
「ああ、そうだな」
「でも、火星行きたかったね。アキトとユリカに取っては大切な場所だもんね」
「仕方ないさ。事件の影響がまだ残ってるんだからな。ま、落ち着いたら、ルリちゃんやラピスを連れて一度行こうな」
「うん、そうだね」
「ユリカ、やっと一緒になれたな」
「アキト、これからはずっと一緒だよ」
しっかりと新婚夫婦をやっている二人であった。
翌日の夕方、アキト達が止まっているホテルを見下ろす丘に、二つの人影があった。
「あそこに、アキトが捕らわれてるのね」
「そうですよ、ラピス。私達がアキトさんを救ってあげるんですよ」
「早く行って準備しなきゃ!」
そう言って、ラピスは丘を駆け下り始める。
「あっ、そんなに走ると・・・」
ルリが声を掛けようとするが、ラピスは聞く耳を持っていない。
そして、
“ドタッ”
すでにお約束である。
「あ〜ん、アキトぉ、痛いよぉ、アキトぉ・・・」
「大丈夫ですか、ラピス?」
「グスッ、これも全部あのおばちゃんがいけないんだ・・・」
「そうです。だからこそ、早くアキトさんを助け出さないといけないんですよ」
《ル、ルリちゃん、けしかけちゃ駄目だってば・・・》
「そ、そうね、こうしちゃいられない」
ルリの言葉に起き上がると、ラピスはまたも走り出す。
“ドタッ、ゴロゴロゴロ・・・”
「アキトぉ・・・」
今度は、こけただけでなく、丘を転げていったラピスであった。
翌朝、ラピスとルリは、ホテル近くの林の中に隠れていた。
「ルリ、本当にアキトはここを通るの?」
「オモイカネの情報に間違いはありませんよ。お二人はここに来てから、毎朝この道を散歩しています」
「でも、もう30分も待ってるよ」
「大丈夫ですよ。ほら」
ルリが指差す方向に視線を向けると、そこにはアキトとユリカの姿が見えた。
「もうすぐ、あのおばちゃんに天誅を加えられるのね」
「そうです。あと100m位ですね」
徐々に近づいてくるアキトとユリカ。
その二人を息を飲んで待つラピスとルリ。
だが、アキト達は、ラピス達が隠れている茂みの直前でふいに立ち止まった。
(もう、あと10mなんだからぁ!)
そんな事を考えているラピスの耳に、二人の会話が聞こえてきた。
「どうしたんだ、ユリカ?」
「んー、何か視線を感じるんだよね」
(ギクッ)
「気のせいじゃないのか?」
「そっかなぁ」
「そうさ、新婚旅行なんて初めてだからな。きっと疲れてるんだ」
(アキト、そんな言葉に騙されちゃ駄目だよぉ)
「そっかなぁ」
「もし何だったら、ホテル帰って休むか?」
「でも、折角のお散歩なのにぃ」
「散歩より、ユリカの体の方が大事さ。さ、戻ろう」
(だからぁ、騙されてるんだってばぁ)
そんなラピスの思いも知らず、アキトとユリカは来た道を戻って行った。
二人の立ち去った道の上に、横の茂みの中からラピスとルリが姿を現す。
「失敗、ですね・・・」
「アキトぉ・・・」
「でも、次の作戦も考えてありますから、大丈夫ですよ」
ルリの言葉に、涙目だったラピスは笑顔を取り戻す。
「そ、そうだね。次があるから大丈夫だね」
そう言って、アキト達が歩いて行った方向へ歩き出すラピス。
その瞬間、
“ズボッ”
ラピスの姿は、落とし穴の中に見事に落っこちていた。
その日の夕方、ラピスとルリの姿はホテルの柱の陰にあった。
その場を通る人々が奇異の視線を向けるが、二人はお構い無しである。
「ルリ、今度こそ大丈夫だよね?」
「大丈夫ですよ。お二人がこのホテルに泊まるのも今日が最後です。優しいアキトさんの事ですから、私達への必ずお土産を買いに来ます」
「そのアキトに、あのおばちゃんも付いて来る・・・」
「そうです。そこがねらい目です。ユリカさんは可愛い物に目がありません。必ずやあそこに置いてある人形に手を伸ばす筈です」
「その時が、おばちゃんに天誅が下る時なのね」
ルリの言葉に、ラピスはロビーの一角にあるお土産物屋へと視線を向けた。
「来ましたよ、ラピス」
20分位たった頃、ルリがふいにラピスに声を掛ける。
その声にラピスがエレベーターホールへと視線を移すと、そこに浴衣姿のアキトとユリカの姿があった。
(アキトの浴衣姿って、かっこいい(ポッ))
(それに引き換え、あのおばちゃん、いいかげん歳なんだからそんな格好しないでよね)
(やっぱり、アキトの横が一番似合っているのは私なのよね)
そんなラピスの考えなど露知らず、アキト達はお土産物屋へと入って行った。
そのまま暫く待っているが、お土産物屋には何も変化はない。
(どうしたんだろ。そろそろおばちゃんの悲鳴が聞こえても良い頃なのに・・・)
ラピスがそんな事を考えた時、お土産物屋から出て来るアキトとユリカの姿が目に映った。
二人は何事も無かった様子で、エレベーターへと乗り込んでいく。
「ルリ、あれって一体・・・」
「おかしいですね。ちょっと見に行ってみましょう」
慌ててお土産物屋へと入っていく二人。
「お人形、一つないよ」
「と言う事は、ユリカさんが買って行ったとしか考えられませんね」
「おかしいな。装置がうまく動かなかったのかなぁ」
「どういう起動の仕組みにしたんですか、ラピス?」
「うんとね、ここを持つと・・・」
そう言ってラピスが人形を持った瞬間、
“ビシュッ”
盛大な音と共に、人形の口から吐き出された墨汁がラピスの顔を襲った。
「あのおばちゃん、きっと危険を察知したのね」
真っ黒な顔でラピスが呟いた時、彼女は後ろから声を掛けられた。
「君、何をやってるんだね?」
「え?」
突然の声に振り向いた先に、二人の警官の姿があった。
「何って、別に・・・」
「ホテルから挙動不審な人物がいるって連絡があったものでね。悪いけど、ちょっと交番まで来てくれるかな?」
「な、何で私が挙動不審なのよ。そう思うでしょ、ルリ?って、あれ?ルリは・・・」
「君は何を言ってるんだ。ここには君一人しかいないよ。さ、行こうか」
「ちょ、ちょっと、私は何にもやってないよぉ」
「はいはい。詳しい事は交番で聞くからね」
こうして、ラピスは交番へと連れ去られて行った。
二日後・・・
「たっだいまぁ!」
「お帰りなさい、アキトさんユリカさん。新婚旅行楽しかったですか?」
「うん、すっごく楽しかったよ。あれ、ラピスちゃんは?」
「何か旅行に行って来るって言って出かけましたけど」
「そうなんだ。折角お土産買ってきたのになぁ」
「ルリちゃん、留守番ご苦労さんだったね」
「いえ、たいした事ではありませんから」
そう言って、ルリは“クスリ”と笑った。
(ラピス、まだまだですね)
ルリがそんな事を考えているとは、誰も気が付かなかったのであった。
Fin
あとがき
みなさん、こんにちは。
お久しぶりの仁塩ぴよこです。
えー、この作品は、以前こちらのHPで開催されていたラピラピ夏祭に投稿させて頂いた「ラピスの企み」の続編になります。
あの作品の最後で「アキト救出共同戦線」と書いたところ、続きを読みたいという皆様のリクエストが多かったものですから、今回書いてみました。
しかし、うちのラピスは相変わらず“こけて”ますねぇ。(爆)
ま、“こけて”なんぼ、“企んで”なんぼですからねぇ。
どうも私はギャグ系作品をうまく書けないんですが、いかがでしたでしょうか。
ご意見・ご感想などありましたら、ぴよこまでメールを頂ければ幸いです。
それでは。