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楽園への扉

「トビラ?」
「そう、扉だ」
「それが?」
「わかんねぇやつだな。
 見たことあるかって聞いてんだよ」
「ドアだったら……」
「だから、違うっつってんだろーが。
 そんな普通にあるドアのことを俺は言ってんじゃねぇよ。
 扉だよ、ト・ビ・ラ」
「……少しは口の利き方に気をつけろよ」
「俺は、見たことがあるんだ。
 楽園への扉をよ」
「ら…く……?」
「そう、ありゃ楽園に通じる扉に違いねぇ。
 楽園に行ける扉なんだ」
「そんなもん……」
「俺が最後に扉を見たのは、小学校に行ってたときだ。
 学校からの帰り道、俺が一人で歩いているとよ、こう後ろっからパァッと眩しい光がさしてきてよ。
 俺は最初、昼間なのにライト点けて走ってきた車だと思ったんだ。
 で、振り返ってみるとよ、あったんだよ、そこに」
「扉が、か」
「扉だ。
 でも、眩しくてとてもじゃねぇがまともに見れねぇ。
 金色の光に俺は包まれたんだ。
 あったけぇ光によ。
 だけど、眩しすぎて俺は手で目をおおっちまったんだ」
「そんなんで、よく扉だって解ったな」
「解るんだよ。
 教えてくれたんだ」
「誰が?」
「天使がだよ」
「…………」
「天使が扉の向こうから、笑いかけてくれたんだ。
 扉を開けろ、開けろって言ってくれたんだ。
 あれぞまさしく天使の声だな」
「で、扉を開けたのか?」
「フッ、バカだな」
「なっ」
「開けたらこんなとこにいるわけねぇだろ」
「こんなとこね」
「目をふさいじまった手をどかしてみたら、もうどこにもねぇのよ。
 光も天使もどっかいっちまった。
 消えちまったんだ、きれいさっぱりにな。
 それ以来、俺は扉を見てねぇんだ」
「………」
「だからよ、俺は言っときたいんだ。言いたいんだよ」
「なにを?」
「扉を見つけられたら、迷わず開けろってな。
 これは忠告だ、アドバイスだ。
 お前も見つけられたら、扉を開けて見ろよな」
「………」
「それが、後悔しない秘訣だ」
「………そんな理由で、そんな理由で」
「は?」
「そんな理由でお前は人殺しを続けてきたっていうのか!」
「理由?」
「扉に再び会うためにお前は、追いつめられたお前は、人を殺してきたんだろうが!」
「何言ってんだ。扉は関係ない。何も関係ない」
「じゃあ、今までの話は何だって言うんだ」
「扉がもう目の前にあるからさ」
「は?」
「ほうら、扉は目の前にある。
 だが、それを開けるのか、開けないのかは、自分自身で決めるんだ」
「何を言ってるんだ!」
「聞こえる、聞こえてくる。
 天使のささやきが…………」
「おいっ! おいっ!」
「見える、見えるぞ。
 これこそが楽園に行ける扉なんだ…………」
「おいっっっ!」

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