GO!クラヴィス君
アンジェ&クラヴィス
ポロロ〜ン、、、と、聖地にお昼を告げる鐘が鳴り響く。クラヴィスは、あまり食事というものに
興味がなかったが、今日だけはお昼が待ち遠しくてたまらなかった。
なぜならー愛しいアンジェリークが手作りのお弁当を持って来てくれたのだ。
今朝、顔を赤らめながら彼を訪ねてきて、
「あのっ、私、初めてお料理してみたんです。いつだったかクラヴィス様が私の手料理を
食べてみたい、て仰って下さったので、、、作りました。食べてくださいね?きゃっ!」
と言って、赤いギンガムチェックのハンカチに包まれた小さな箱を、クラヴィスに手渡すと
ダッシュで部屋を飛び出して行った。
「べんとう、、、?」クラヴィスは手渡されたお弁当箱を思わず胸に抱いた。
「さあ、では食べるか、、、。」クラヴィスは期待にむせかえる気持ちを抑えながら
そっとフタを開け、おかずをひとつひとつ、備え付けのフォークで突いては、「ふっ。」と
口の端で笑っていたが、、、何度か同じ行為を続け、やがて、フォークを、
ばんっ!とテーブルに叩きつけると自分を落ち着かせるように深呼吸をした。
そして、水晶球を取り出し、手をかざすと、、、、球の中をのぞき込み、
「、、、家にあるのか。」と、不機嫌そうに眉をしかめて言い、部屋を出ようとした、その時
誰かが「コンコン」と、ドアをノックした。
「誰だ?」クラヴィスは不機嫌そうに言い放つ。
「クラヴィス様。リュミエールです。よかったら、ご一緒にお昼を食べに行きませんか?」
水の守護聖は、穏やかないつもの口調でにっこりと笑った。当然、「一緒に行く」と
いう答を確信していたのだが、クラヴィスは、
「いや、今日はいらぬ。お前一人で行ってくるがよい。」と、冷たく言う。
いつもと違うクラヴィスに、リュミエールは不安気にそれでも、
「どうなされたのですか?クラヴィス様、、、何かあったのですか?」と、喰い下がる。
「お前には関係ない。去れ。」
「そ、そんな、、、この私をそんな風に、、、私はただ、あなたの事が心配で、、、。」
リュミエールの口元が震える。
「ふん、お前は穏やかな優しい顔をして、そうやって心配する様子を見せておいて、実は、
単に他人に起きた不幸を、知りたがり心の中では、優越感に浸るのだろう?」
「クラヴィス様、本気で仰っているのですか?」
「、、、そうだといったらどうする?これに懲りて、もう私の事など気にせぬことだ。」と言って、
リュミエールに背を向けた。
「く、クラヴィスさ、、ま、、、。うっ!」リュミエールは、口元を押さえ、クラヴィスの執務室を
飛び出した。
「よう。水の守護聖殿。んっ?どうした?顔色が悪いぞ。」向こうからやってきたオスカーが、
声をかけてきた。
「お、オスカー、、、うっうっうっ、、、。」リュミエールは思わずオスカーの胸に抱きつき、
さめざめと泣き出した。
「さて、今度こそ。」と、クラヴィスは、ドアの方を向き直すと、リュミエールが開け放っていった
ドアの内側を、コンコンとノックして、光の守護聖がやってきた。
「ちっ。」闇の守護聖は心の中で舌打ちする。
「邪魔するぞ、クラヴィス。」ジュリアスは、久しぶりにクラヴィスの執務室を訪ねた。
相変わらず陰気な部屋だ、、、。
「何の用だ?」クラヴィスはイラついた声で答える。
「リュミエールが、さっきここから、泣きながら飛び出したのが見えたのでな。、、、
何かあったのか?」
「関係ない。」
「なんと?!」クラヴィスの答えにジュリアスは顔をしかめる。
「ふっ。お前には関係ないと言ったのだ。」
「クラヴィス、お前という奴は、、、。」
「なんでも把握していないと気がすまぬようだな?、、、長たる者は、そうおせっかいで
ないと勤まらんものなのか。ふっ。ご苦労なことだ。」
「なっ!ま、待て!クラヴィス、どこへ行く?まだ話は終わっていないぞ。」
「私は忙しい。ここに居たければ好きにするがよい。」
「クラヴィス!」クラヴィスは聞かぬふりして、執務室を出て行った、、、。
クラヴィスは、さまよい歩くように庭園へに出た。庭園には、マルセルとランディが、
マットを広げて、ランチを食べていた。
「あ!クラヴィス様、こんにちわ。あの、よかったら一緒に僕たちとサンドイッチを
食べませんか?おいしいですよ。」と、マルセルが言うと、
「いや、結構だ。」と、クラヴィスが断り、通りすぎようとした時マルセルのお友達、
小鳥のチュピが、クラヴィスの肩の周りを、まるで、「一緒に食べようよ」
と、いわんばかりに飛び回るので、クラヴィスは、空中でチュピに空手チョップをくらわした。
それをうけたチュピは、ふらふらと、マルセルのフードの中へ退散した。
「ひ、ひどいや!クラヴィス様っ!」マルセルは、泣き叫ぶ。
「大丈夫だ、急所は外しておいた。」と、クラヴィスが言うと
「クラヴィス様っ!ひどいじゃないですかっ!」ランディが、クラヴィスに掴みかかろうとする
勢いで、抗議すると、クラヴィスは、袖口から、ぴっ、と、1枚の写真を取り出しランディに
見せながら、耳元で、「これは、学園祭の仮装大会で、1位になった時の写真だそうだ。
、、、やる。」
と言って、写真を後方へ投げた。ランディは、犬のように尾を振り、風に流されてゆく写真
を追った。
「ふう。こんな時に役立つとはな。少々、惜しい気もするがまあ、よかろう。」クラヴィスは
そう言うと、何事もなかったように、また、歩きだした。
ランディは、バニー姿のレイチェルの写真を手にとり、にっこりと笑っていた、、、。
噴水の前を通り過ぎようとすると、後方から、オスカーがクラヴィスを追いかけてきた。
「クラヴィス様っ!」
「どうした?オスカー。私に用か?珍しいな。」また、足を止められ、かなりクラヴィスは、
機嫌が悪くなっていた。
「は、はい。あの、リュミエールと何かあったんですか?」
「、、、リュミエールが、お前に何か言ったのか?」
「いえ、別に。ただ、、、。」オスカーは、口ごもる。
「ふっ。普段は仲の悪いお前達が、私に意見する時は、結束するのか、、、随分と面白い
関係だな。」
と、にやりとクラヴィスは笑う。
「クラヴィス様といえども、そのようなもの言いをなさると、、、。」オスカーは怒り爆発5秒前
くらいだった。
だが、クラヴィスはそういう状態のオスカー置き去りにして?また、歩きだした。
「ち、ちょっと待て!」オスカーは、彼の前に立ちはだかり、衿元を掴んだ。
クラヴィスがオスカーを睨みつけた時、丁度、玉虫色した小さな虫が、オスカーの右頬に
止まった。それは、変な色のほくろのように見え、クラヴィスは可笑しいのをこらえて
いたのだが、思わず「くっ。」と、笑ってしまった。
そのクラヴィスの明るい笑顔を初めて見たオスカーは、思わず胸が高鳴った。
「いつも縦線をしょったような皮肉な笑みを浮かべた笑顔しか見たことがない彼の、
こんな楽しそうに笑っている顔は初めて見る。なんて、、、美しいんだ!可憐な闇夜に咲き
誇る、百合のような、、、。」オスカーは、よろよろと2、3歩退いて、ぼーっとクラヴィスを、
見つめた。
「、、、失礼する。」クラヴィスはそう言い放つと再び歩き始めた。
やっとこさ、クラヴィスはアンジェリークの部屋にたどり着いた。
ぴんぽ〜んと、チャイムを鳴らす。
「はあーい?どちらさまですか?」中から可愛い少女の声が答た。
「私だ。」クラヴィスはついほころぶ口元を引き締めて答える。
「クラヴィス様?!」アンジェの声は1オクターブあがりドアをすぐに開ける。
しばらくの間、ふたりは見つめ合った。
「こ、こんにちわ。クラヴィス様、どうなされたんですか?」
「いや、お前の顔が見たくなってな。それと、、、。」
「それと?」アンジェは首を傾げる。
「あれが、おかずに入ってなかったのだ。」
「あれ?」アンジェは、しばらく考えこんでいたが、やがて、
「あっ!タコさんウィンナーでしょう?ごめんなさい。クラヴィス様にお弁当を届けた後、
お部屋に戻ったら、お皿の上にぽつんとタコさんウィンナーが、残ってて、、、。
ごめんなさい!」と、アンジェがしゅんとして謝ると、彼は、アンジェのおでこに軽くキスをして、
「気にするな。結果として、こうしてお前に会えたし、、、一緒に食べるか?」
と言って微笑むと、アンジェは頬を薔薇色に染め、頷いた。
と、その時、レイチェルが自室を出て来た。クラヴィスは、
彼女を呼び止め、声をかけた。
「はい?なんでしょうか?クラヴィス様。」
クラヴィスの執務室では、まだジュリアスがウロウロと部屋の中をうろつきながら、
クラヴィスの帰りを待っていた。
このままでは、彼のプライドが許さないし、どう説教してやろうかと、ぶつぶつとひとりごち
ていた。
コンコン、、、とノックの音がした。
「クラヴィスか?」ジュリアスがドアを開けるとレイチェル
が、にっこりと笑って立っていた。
「ああよかった!まだいらしたんですねっ!あのう、クラヴィス様からの伝言です。」
「伝言?!」ジュリアスの眉間に縦シワが寄る。
「はい、机の上の物を持ってきて欲しいと、、。」
「机の上の物?」
「はい。では、私はこれで、、、。」レイチェルはそう言うと
スキップをしながら、ランディの執務室へ向かった。
ジュリアスがクラヴィスの机の方を振り向くと、、、かわいらしいピンクのお弁当箱が、
ぽつんと置いてあった。
おしまい
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