変化


ヴィクトール&ティムカ


「ティムカが、居なくなった。」その事に気がついたのは、ヴィクトールだった。彼が毎朝、
一番初めに聖地で会うのは彼を待ち伏せしているティムカだった。両手で、胸に教本を
抱えて、いつもヴィクトールの私室の前で彼が出てくるまでうろうろとしている。あの夜の、
出来事など忘れてしまったかのように、無邪気な、礼儀正しい、いつもの品性の教官を
振る舞っている。しかし、確かにヴィクトールへの好意をあからさまに表すようにはなって
いたが、、、。

おかしなもので、初めのうちは、煩わしい存在だったのだが、段々
と「今朝も待っているだろうか?」と、心の何処かで考えている、、、あの夜の屈辱さえも、
時々、忘れてしまいそうになることがある、、、ティムカがはにかみながら、顔を赤くして
挨拶をしてゆくあの笑顔に、思わず可愛いと思う瞬間が、ある、、、。あの夜の顔と普段
自分にみせる顔、、、同じ少年とは思えない。いや、どちらもきっとティムカなのだ、、、。
ヴィクトールは、とりとめもないことに考えを馳せ、完全にティムカという少年を意識している
ことに気がついていないようだ。そして、惹かれていることも、、、。

今朝も、きっと外で待っているのだろうと私室のドアを開けたが、、、誰もそこには立って
居なかった。冷たい廊下が続いているだけ、、、。

「何を俺は期待していたんだ?ふっ、しっかりしないといかんな。」ヴィクトールは、頭を振る
と執務室へと向かった。

だが、その日の午後、メルとマルセルたちが、あちこちで、ティムカの居所を聞き回っていた。
ヴィクトールの元にも、ふたりは聞きにやってきた。「おかしいなあ、何処へいったんだろう?」
マルセルが、首を捻る。「ティムカさんは、黙ってお茶会に来ないていうことは、今まで
なかったよね?ちゃんと都合がわるい時は、言ってくれてたのに、、、。」メルも心配そうに呟く。
ヴィクトールも今朝からティムカの姿を見ていない。とりあえず、夜まで待ってみようということで、
落ち着いた。
夜になれば、私室に戻って来るだろうと、考えたのだ。しかし、真夜中になっても、ティムカの
私室の明かりがつく事はなかった。


翌朝ティムカの私室を、ヴィクトールは訪ねてみたが、中には誰も居なかった、、、。
丸一日、部屋に戻らないということがあるだろうか?ヴィクトールは胸騒ぎがして、その足で、
聖殿にいるジュリアスの所へと向かった。

早速、女王試験は一旦中断され、ティムカの捜索が始まった。
ティムカの惑星にも、ティムカの両親に気が付かれないように(両親に余計な心配をさせ
ないように、との女王陛下の配慮で)使者が送られティムカが帰っているか、様子を調べさ
せたが、やはり、帰ってはいないようだ。聖地に居る者、、、守護聖達も聖地を探し回ったが、
結局見つからなかった。

ティムカが失踪して、2日目。リュミエールと、彼の側でずっと看病していたオリヴィエが、
久しぶりに聖殿に赴くと、すぐにふたりは女王陛下に呼ばれ、ティムカが失踪したことを
告げられた。それを聞いたオリヴィエは顔色を変え、「もしかしたら、、、。」と、迷いの森
にティムカがいるかもしれないことを、話した、、、。理由はもちろん言えなかったが、、、。

「全く!あそこには近づくなと言っておいたのに!」
「でも、ジュリアス。捜索していないのは、あそこだけだ。
可能性は高い。しかし、あの場所を熟知しているのは、私と、、、。」クラヴィスはしばらく
考えて、「では、熟知している者に何人かついて、探しに行こう!」と、決断した。
「じゃあ、ヴィクトール。私と一緒に探しましょう?」オリヴィエがヴィクトールに言うと、
彼は頷いた。それぞれが、迷いの森へ散って捜索が始まった。あちらこちら
からティムカの名を呼ぶ声がする。
「ヴィクトール!」前方を歩いていたオリヴィエがヴィクトールに手招きした。
「いい?ここに咲いてる黄色い花は、迷いの森では、ここだけにしか咲いてないの。
ここから北へ行けば聖地に着くわ。私は右側を探してみるからあんたは、左を、、、
その方が、効率いいと思わない?」オリヴィエがそう言うと、ヴィクトールは
「そうですね、、、では、俺はこちらの方を探してみます!」と言い、オリヴィエに軽く頭を
下げると左へと進んで行った。

ヴィクトールが進んで行く後ろ姿を見送りながら、オリヴィエは、小さく「頼んだわよ。」と呟き、
もと来た場所へと歩きだした、、、。

昼間でもうっそうとした森の中は暗く、目が慣れるまで時間がかかったが、やっと慣れて
きて少しひらけた場所にでてきた。
薄い木漏れ日が射す中に、ほとんど裸の状態で、褐色の肌をさらしているティムカが
横たわっていた。

ヴィクトールは自分の上着をそっとティムカの上へのせると、
元来た道を歩き出した、、、。


be continue

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このお話を久しぶりいあけてみてびっくり!なんと、下の方の文章が抜けまくって
いました。もし、以前に読まれた方、申し訳ありませんでした!
いよいよ最終話へと、、、もちこみたい。(泣)

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