水色の夢


クラヴィス&栗アン&リュミエール


朝。やわらかな日差しがいっぱいに射し込むクラヴィスの私邸の一室。大きな窓の向こうには、
緑の木々が揺らめき、小鳥たちがさえずる。そんな穏やかな朝をクラヴィスは、まだけだるさを
身体に残しつつ、その感覚を少し楽しみながら給仕が運んできたアイルコーヒーに唇をつけた。
「コツン、カツン、、、。」小さな足音が近づき部屋の外で止まる。ためらいがちにノックの音がする。
「入るがよい、アンジェリーク。」クラヴィスは心を込めて愛する少女の名前を呼んだ。アンジェはゆっくり
とドアを開け、部屋の中にクラヴィスの姿を見つけると優しく微笑みながら彼の元へ小走りして近づく。
「おはようございます!クラヴィス様。」少し栗色の髪がまだほつれているアンジェは、元気よくクラヴィスに
ご挨拶する。小鳥がどこかで一際高く鳴き、小枝が擦れあう音がした。

「おはようアンジェリーク、昨夜はよく眠れたか?」クラヴィスは何気なく言ったつもりなのだが、
「昨夜」という言葉に微妙に反応をして語調が強くなってしまい照れた。それにアンジェも気づき
頬を赤らめながらも、「コクン」と首を縦に振った。
テーブルにつこうとすると、クラヴィスは「待て。」と、彼女に声をかけた。
「お前の席はそこではない、、、ここだ。」そう言うとクラヴィスは、「ぽんっ。」と自分のひざ上、腿の辺りを叩いた。
アンジェはまたまた顔を赤くしながらも、クラヴィスの隣へ移動し戸惑いがちにクラヴィスを見つめる。
「どうした?私が、、、怖いか?嫌ならよい。どこでもお前の好きな所へ座れ。」クラヴィスは知っている、こう
言えばアンジェが自分の言う通りにする事を、、、。アンジェは案の定、真っ赤になりながらもクラヴィスの
ひざ上に乗っかった。厚いロープの上からも彼の体温が伝わり暖かくなってくる。彼の呼吸を耳たぶに感じ
アンジェはどうにかなりそうだった。
「そうだ、お前も何か飲むか?」クラヴィスがすぐ後ろからささやく、、、
「はい。お水を。」アンジェがそう答えると、、、だだだだだっっっ!!とけたたましい足音と共に、何者かが
部屋のドアを「ばすっ!」と蹴破って入って来た 。水色のさらさらとした流れるような髪をほつれさせ
両肩で息を荒々しくしながらも顔には美しい微笑をたたえながら穏やかな口調で、
「おはようございます、アンジェリーク。私の力をお望みですか?」
とリュミエールがふたりの目の前に現れた。ふたりが呆然となってリュミエールを見つめていると、
「おやおや、朝からお二人とも仲がよろしくて、、、よいことっ。」アンジェははっとして、クラヴィスの
ひざ上から離れた。クラヴィスは憮然とした顔になり、立ちあがったアンジェの腰を引き戻し、
また自分の膝の上に座らせた。アンジェが「きゃっ!」と小さく声をあげる。
「朝から何用だ?リュミエール、、、このような無礼をはたらいておいてよく、黙っていられるものだな?」
ぎろり、とクラヴィスはアンジェを膝上に抱いたままリュミエールを睨みつける。
「ああ、これは大変申し訳ないことをしました。しかし、女王候補が水の力を所望なさったので。」
リュミエールの顔はひきつりながらも口元には微笑をキープしている。瞳は全く笑っていない。
「あの、、、。」アンジェリークがリュミエールに声をかけようとすると、「はい?」と、すごい形相でアンジェ
をリュミエールは睨んだ。アンジェはびびりながらも、言葉を続ける。
「あの、、、私、飲む水が欲しい、と言っただけで、、、その、、、水の力ではなく、、、。」
「おや?そうだったのですか?それではこれをどうぞ。」リュミエールはそう言うと「どんっ!!」と、
テーブルの上に水が入ったバケツを置いた。「ちゃぷん」とバケツの水がはねた、、、。
「あ、、、?!」クラヴィスとアンジェはしばしこのテーブルの上に置かれたバケツを唖然として見つめた。
リュミエールは、いつものおだやか〜な微笑を浮かべつつ、
「足りない?足りませんか?アンジェリークっ!!」と叫ぶと、部屋の四方から「どどどどどどどどっ!」と
轟音が鳴り響き、部屋の窓ガラスやドアを破って大量の水が流れ込んできた!

「アンジェ!アンジェリークっ?!」勢いよく流れて入って来た水があっという間に腰の辺りまで浸かり、ふたりを
引き離してしまった。「クラヴィスさまーーっ!」それでも、流れこんでくる水をかきわけながらふたりは
お互いに近づこうとしていた、、、。「ざっぱーん!」突然波が起こり、なぜかアンジェは鳴門の渦潮のような
うず潮に巻き込まれ首だけ水面に出し、「あ〜れ〜ぇ!!」と叫びながらくるくると水の中で回っている。
すでに部屋の中は水に浸りクラヴィスもリュミエールも首だけ水面にだしている状態だ。
部屋の中の家具が目の前をぷかぷかと浮かびつつ外へと押し流されてゆく、、、。
「リュミエールっ!これはどういうことだ?なぜこんなことをするっ?!」
「ふふふ。あなたが悪いのですよ?クラヴィス様、、、あんな小娘にあなたを取られるくらいならいっそ
のこと、、、。」リュミエールは生首のように水面から顔だけだして、微笑みながらクラヴィスに言う。
「何を言っているのだ?とにかく、この水をどうにかしてくれ!私が憎ければ私にだけ向ければよいでは
ないか?頼む!アンジェリークを助けてやってくれ!私はどうなっても、、、あうっ!?」
クラヴィスは身体を水の中へと引き込まれ一瞬にして波間に消えた。
「クラヴィス様?ぶくぶくぶく、、、クラヴィスさまーっ!」アンジェはまだぐるぐると渦巻く水に弄ばれながら
渦潮から顔をだし、必至にクラヴィスの姿を探す。
「ふんっ!お前なんかに私の大切なクラヴィス様を横取りされてなるものかっ!!そのまま、水の泡となって
消えてしまうがいいっ!!」リュミエールが腕を高々とあげると、部屋の半分からサーっと水がひき、
いつのまにかリュミエールの腕には気を失っているらしいクラヴィスが抱き上げられ、ふたりはドアのない
部屋を出て行こうとしていた、、、。
「待って!クラヴィス、、、ブクブクブク、、、助けて、、、ブクブクブク、、、。」アンジェの身体はとうとう渦巻く
水の大蛇に巻きつかれ、水の中へと沈んでいった、、、。

「はあうっ!?」アンジェリークは頭を起こすと、周りを見渡した。
「大丈夫ですか?アンジェリーク、、、随分とうなされていたようですねえ?」
リュミエールは心配そうにアンジェの顔を覗き込んだ。アンジェは思わずリュミエールに気がつくと、
カニのように壁つたいに横歩きをして彼から離れた。リュミエールは不思議そうに首を傾げる。
「あの、どうかしましたか?アンジェリーク?」
「ここは?」
「私の執務室ですよ。あなたは、私がいなかったからしばらくここで、私を待っていて下さったのでは
ないのですか?申し訳ありません。随分とお待たせしたようですね?ぐっすりと眠ってましたよ?」
アンジェは、はっとして自分の服を触る。濡れていないようだ、、、口元は少々濡れていたが、
恐らくこれは自分の、、、。
「ご、ごめんなさい!リュミエールさま、、、私ったらなんてことを、、、。」アンジェは何気なく自分の口元
を拭った。リュミエールは、「くすっ。」と優しく微笑みながら、
「試験や育成でお疲れなのでしょう。もう、今日は遅いですし。お部屋に帰っておやすみなさい。」
と言った。
「はい、そうします!それでは失礼します。」
「気おつけてお帰りなさい。」リュミエールの優しい言葉に、アンジェはぺこりと、深々と頭を下げ部屋を
出て行った。そんなアンジェを見送るリュミエールの背中に回した右手には、濡れたハンカチが
しっかりと握られていた。

THE END

*******************************************************************************************

久しぶりのギャグもので、楽しく書けました。えっと相変わらずつじつまあわん話ですいません。
リュミエールが手にしていたハンカチの使い道なのですが、濡れたハンカチを眠ってるアンジェの
鼻と口に時々当ててたんですね。で、呼吸ができないようにする、、、ちゅうわけですわ。
説明せにゃいかん私の創作て、、、とほほほ。精進せねばっ!!
またよかったら、遊びに来て下さいね♪





戻る


このページは GeoCitiesです 無料ホームページをどうぞ