奥様劇場 「真冬のランナー」 第3話〜愛欲〜
アンジェ美が、最近きれいになった、、、。
朝のラッシュアワーが過ぎた頃、アンジェ美の夫ルヴァは職場へと
向かう電車に揺られながら考え込んでいた。結婚して2年。まだまだ、美しく
若い盛り?の妻だが、特に最近はきれいになり、ルヴァでも「どきっ」
とすることが多くなってきたような気がする。
なんだか最近のアンジェ美の瞳は輝きを増し、顔をほころばせたり
何か考えこんだりしていることが多くなった。
夜はあまり眠れないのか、何度もルヴァの隣で寝返りをうったりしている。
夫婦の営みの方は、かといってご無沙汰であるし、、、まさか、アンジェ美が
他の男と、、、?!
ルヴァはふるふると首を左右に振り、「まさかねえ〜。」と、
悲しげに笑った、、、。
アンジェ美はヴィクトールと食事をした日以来、ヴィクトールに会いたくて
たまらず、何度か彼が勤務する基地前をうろうろと歩いたり、公園で1日
中、彼会いたさに過ごしたりしていた。
「こんなことなら、電話番号を聞いておけばよかった!」と、ひどく後悔して
みたが、「でも、彼の電話番号を知ってどうするのよ?電話で何話すの?
会いたいて?好きですって言うの?私は、、、。」アンジェ美の瞳に、
みるみるうち涙がたまってゆく、、、。
「私は、人妻です。と、いうの?」アンジェ美の胸は張り裂けそうになった。
「出会わなければ良かった!こんな苦しい気持ちになるくらいなら、、、
でも、もう一度だけ会いたい!会って、、、。」
会って、、、ふたりに未来はないとわかっているが、、、その先を期待している
自分にアンジェ美は気がつかないフリをしていた、、、。
ヴィクトールと出会ってしまった金曜日がきた。この日は朝からアンジェ美
は落ち着かず、何度か着替えをしてようやく家をでた。
いつものように、公園の入り口付近にあるベンチに座ろうとすると、、、
後ろからヴィクトールの声が彼女の名前を呼んだ。
ヴィクトールはうれしそうに目を細めてはいるが、顔色が悪かった。
「アンジェ美さん!ああ、よかった。また、会えて、、、ごほっごほっ!」
「ヴィクトールさん?どうしたんですか?!」
「すいません、昨夜から風邪で熱がでてまして、、、ごほっごほっ!」
「まあ!大変だわ。私のことなんか気にせず、お家でお休みになって下されば
よかったのに!大丈夫ですか?」
「はい、、、て、実はかなりつらいんで今日は、大人しく帰って寝ますよ。」
ヴィクトールは大きな体を二つ折りにして咳込む。
「よかったら私、、、何かお手伝いをさせてください!おかゆぐらいだったら
作れますから!」
「、、、いいんですか?そうしてくれると実は、、、ごほごほ、助かりますが。」
「はい、ぜひそうさせて下さい!」アンジェ美ははりきって、ヴィクトールの
片腕に自分の腕を絡ませて少し彼を支えるような形になって、公園を
後にした、、、。
「汚くしていますが、どうぞ。あがってください。」ワンルームマンションの彼の
部屋は、わりときちんと片付けてあり、少々、アンジェ美は気がぬけた。
ただ、部屋の一角にある大きなベットの上は、シーツがめくれていて、
なんだか生々しい男の一人暮らしを感じ、また、胸が高鳴り緊張してきた。
「さ、私のことは気になさらないで!横になって下さい。あ、服を着替えた方が
いいかも、、、。」ハッ!なんということをっ!これじゃあまるで、私の方から
誘ってるようなものじゃない!?アンジェ美は真っ赤になって俯いた。
「そうですね、、、あ、アンジェ美さんどうしましたか?顔が赤いですよ。
、、、どれ?」ヴィクトールは、上半身服を脱いだままアンジェ美の額に自分の
額をつけ、、、そのまま、倒れこんでしまった。
「きゃ〜っ!ちょっと!ヴィクトールさんっ?ヴィクトールさん、しっかりしてぇ!」
ヴィクトールは苦しそうに唸ると、そのまま目をつぶってしまった。
一瞬、アンジェ美は襲われるっ!?と、思ったが高熱でヴィクトールが倒れた
ことに気がつくまでしばらく時間がかかった。
「ふうっ。さ、ちゃんとベットの上で、、、よいしょっと!大丈夫ですか?」
アンジェ美は、なんとかヴィクトールの体をひきずってベットの上へと彼を
寝かせた。
「ああ、すまない。こんなことまでしてもらって。」ヴィクトールの体は高熱のせいか
熱く汗をかいていた。アンジェ美は暖房を入れ、ポットのお湯にタオルを
浸して、背中を拭いてやる。ふたりの間に静かな時間が流れる。
「、、、怖くないのか?」ヴィクトールは、背中越しにアンジェ美に話かけた。
「何が?」アンジェ美の頬もヴィクトールに負けず?赤く上気している。
「その、、、俺の傷が、、、怖くないか?」ヴィクトールの声は沈んでいる。
「私、変だけど、、、ヴィクトールさんの傷て好きです。」
「ははは、傷が好きなんて変わってるな。」
「ううん、、、ヴィクトールさんの傷だから好きなんです。」
「アンジェ美?」ヴィクトールは、アンジェ美の方に体を向き直した。
「アンジェ美、、、と呼んでもいいか?」琥珀色の瞳が切なげに見つめる。
「はい、ヴィクトールさん。」
「お互いまだ知り合って間もないが、俺はお前を昔から知っている
ような錯覚に陥るんだ。自分でもこの気持ちをどうしようもなくて、、、。」
ベットの上で上半身裸の無数に傷のある男は、アンジェ美を抱きしめた。
「離さない、、、と言ったら迷惑だろうか?」ヴィクトールの声がアンジェ美の
心にじんわりと広がってゆく、、、。
アンジェ美は、自然にしっかりと広く逞しい彼の背中に抱きついていた。
それがアンジェ美の答えのように、、、。ごほごほっと、ヴィクトールは咳き込み
アンジェ美から体を離した。
「すまん、風邪をうつしてしまったらいかんな。何か着るものを、、、。」
「ヴィクトールさんの風邪、私にも伝染して!」アンジェ美は、ヴィクトールの
太い首に抱きつき彼の唇に飛びついた。
「はあ、いつの間にか眠ってしまいましたねえ。んー、もうこんな時間ですか。
一体アンジェ美は、何処へ行ったんですかねえ〜?」
ルヴァは、夜中1時を表すデジタル時計を見上げ心配そうにつぶやいた、、、。
次週へつづく
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