頑張れ!ヴィク兄ちゃん!(前編)


いろんな聖地の方々



                                     はじめに・・・登場人物紹介

                                     長男  ヴィクトール
                                     次男  クラヴィス
                                     三男  リュミエール
                                     四男  オスカー
                                     五男  オリヴィエ
                                     六男  ルヴァ
                                     七男  ゼフェル
                                     八男  マルセル


               *マルセルのお友達  ランディ、メル、ティムカ。


              *階下に住むみんなのマドンナ    アンジェリーク=コレット

              *アパートの管理人     アリオス(特別出演)

              以上でお送りしますっ♪はじまりはじまり〜!!


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      「ヴィク兄ちゃん!クラヴィス兄ちゃんがお部屋に閉じこもってて、出てこなーい。」マルセルは、
      がたがたとクラヴィスの部屋の襖戸を開けようとしながら、台所で弁当を作っているヴィクトール
      に向かって叫ぶ。ヴィクトールは、深いため息をついて卵焼きをつめる箸を止め、「いいから、
      早く学校へ行く用意をしろ。いいな?」「はーい。」マルセルは可愛らしい声で返事をすると、
      「ばすっ!」と、クラヴィスの居る襖戸を蹴った。
     
   「ちょっとちょっと〜、ヴィク兄さぁん。私のお気に入りのピンクの靴下知らなぁい?昨夜手洗い
      して干しておいたんだけどぉ。見当たらないんだぁ。おっかしいなあ。」制服のボタンを必要以
      上に上から開け鎖骨をみせたオリヴィエがヴィクトールに聞いてきた。
      ヴィクトールのこめかみが「ぴくり」と動く。
      「、、、あれは、捨てたぞ。お前はどうしてそう女の着たがるようなものばかり身につけたがるっ?
      お前は男だぞ?兄ちゃん、情けないぞ!」
      「ああら☆ヴィク兄さんは美意識てもんが解ってないのねえ?美しいものに男も女もないのよ。
      それにこんなセンスない5足1000円の安物白靴下を、私の美しい足にはけ、て言うの?信じ
      られナーい!」そう言って、オリヴィエは左足を高々とあげて見せる。ヴィクトールは、「はぁ。」
      とため息をつき弁当袋のくちを「きゅきゅ」と縛る。「ヴィク兄、俺の弁当は?」2時間以上、洗面
      台の鏡に向かってドライヤーを髪にあてすっかり赤茶けた頭をしてオスカーが現れた。
      「あんた何汗かいてんのよ?こんな寒い朝に、、、て、あんた何巻いてんのよ!?」オリヴィエは
      オスカーの首を指さし笑った。「いくら、寒いからて、そんなにマフラーまでするほど寒くないで
      しょ?」オリヴィエは、両手を胸の前で組むと笑った。
      「俺のことを愛するおじょうちゃんたちが、俺への愛をこめて手編みのマフラーをこの木枯らしが
      吹き始める今の季節になると、プレゼントしてくれるのさ。おじょうちゃんたちの想いを無駄にさせ
      ちゃあ悪いだろう?だから、毎日ちがうマフラーを2枚ずつ午前と午後に巻くのさ。そうすれば、
      おじょうちゃんたちの想いは報われるだろう?モテる男はつらいのさ。」
      「あ、あの毛糸のごみみたいなの、あんたのだったの?あれ、どうにかしてよねえ〜。もう捨て
      ちゃってよ!部屋が狭くなって困るのよねえ〜。」オリヴィエはどどめ色のごつごつしたオス
      カーの巻いているマフラーらしきものの端をいじりながらオスカーに言った。
      「ふっ。捨てられるわけないだろう?おじょうちゃんたちの乙女心を傷つけるようなことはでき
      ない。愛がこもっているのに、、、。ま、オリヴィエはもらったことがないからわからんだろうがな。」
      「あ〜ら、あんなごつごつした毛糸の雑巾みたいなのいらないわよ!愛がこもってるですって?
      怨念の間違いじゃあないの?ふふふ。」
      「なっ、なに〜ぃ?!待てっ!オリヴィエっっ!!」
      「おいっ!オスカー、弁当忘れてるぞ!」ヴィクトールが弁当箱をほうり投げると、オスカーは
      キャッチして、逃げ去るオリヴィエの後を追って玄関を出た。

      「クラヴィス兄さま、そろそろ学校へ行かないと遅刻しますよ?」リュミエールが優しく襖戸の
      向こうに居るであろうクラヴィスに声をかける。
      「、、、、、、。」中からは返事も、何も音もしない。
      「クラヴィス兄さま、ではお先に行って参りますね?あの、、、遅刻なさってもいいからせめて
      、保健室には顔を出してくださいね?ロザリア先生もクラヴィス兄さまの事を心配なさってまし
      たから、、、ねっ?」
      そう言い終わると、リュミエールはその場をしずしずと立ち去った。
      すると襖戸が少し開いて、また、すぐに閉められた。

      「マールセルくーんっ!がっこ行こーーっ!」
      「はいはい。おはよう、メル君、ランディ君、ティムカ君。」ヴィクトールはエプロンで手をふき
      ふきしながら玄関に出た。玄関前にはずらりと3人が横に並んで待っている。
      「おーい、マルセル!お友達が迎えにきてくれたぞーっ!」
      「あ、あの、ヴィクトールさん!」ランディがもじもじとして恥ずかしそうにしているティムカの横
      から声をかけた。
      「なんだい?ランディ君?」
      「ティムカからヴィクトールさんにプレゼントがあるんです!」
      「プレゼント?」
      「あ、あの、、、これ、よかったらもらって下さい。僕の宝物の幸福の青い鳥の羽根です。
      今日は、ヴィクトールさんの、、、!?」
      どんっっ!!と、玄関を出ようとしたゼフェルがぶつかってきた。
      ティムカは少しよろめき、青い羽根が手からすべり落ちた、、、そしてそれを、ゼフェルが
      、、、踏んだ。
      「ああっ?!ゼフェル!何てことするんだよっ!?早く足あげろよっ!」ランディはゼフェルの
      足元にしゃがみこみ、青い羽根を踏みつけた右足を掴んで、「がばっ」と持ち上げた。
      「う、うわあっ!?」スッテーンと見事に後頭部をしたたかにゼフェルは玄関先で打った。
      「いってーなあっ!何しやがんだてめぇーっ!!いきなり人の足つかんで転ばせておいて
      、、、謝れっ!」
      「す、すまない。ゼフェルがティムカの大事な宝物を踏んだから、、、つい、、、すまない。」
      「青い羽根?これか?おめえの宝物なのか?すまねえな。じゃあ、俺急ぐから、、、。」
      「待ってぇ〜、待ちなさいゼフェルぅ〜っ!誰かゼフェルを捕まえてくださ〜い!」と、
      ルヴァの声が部屋の奥からする。
      「やべぇ、じゃあなっ!」ゼフェルはローラーブレードを履くと、歩きにくそうにアパートの階段
      を降りようとした。
      「待てよ、ルヴァさんが呼んでるぞ?」ランディは、ゼフェルの腕をひょいと掴む。正義感の
      強い彼は何かんじとったようだ。「なにすんだよ、てめぇ!離せよっ!!」ゼフェルがランディ
      の手を振り払おうとした時、ルヴァが玄関ぐちにやって来た。
      「ゼフェル、返して下さい。それは、大事なものなのです。お願いだから、、、。」
      「ちょっと借りるだけだ!来月になったら返すからよ。今日はジャンク屋の大売出し日なんだ。
      ランディ、離せっ!」
      「待って下さい、ゼフェル。そのお金は今月の給食費なんですよ!」ルヴァは、ゼフェルを
      後ろから羽交い締めにした。手足をジタバタするゼフェルの手からランディが給食袋を取り返し
      、ルヴァに「はい、これっ!」と、ゼフェルを羽交い締めして両手が塞がっているルヴァのポケット
      にねじこんだ。
      「ちっ、覚えてろよっ!ランディっ!」ゼフェルは、ぷんぷんしながら玄関を出て行った。
      ヴィクトールは、ひとつため息をつくと「さあさあ、みんなも学校へ行った々!遅れるぞ。
      んっ?!ティムカ君、何してるんだ?」と言った。ティムカは身体をビクっ!とさせてみんなを
      振り返る。ティムカの手には、人型の小さな粘土と片手には銀色のゼフェルの髪の毛らしき
      ものを握り締めていた、、、。
      「ティムカ君、そんな事はやめようね?」ヴィクトールは笑顔が引きつりながらもサッと、彼から
      粘土人形を取り上げた。

      「あっ!クラにいちゃんっ!?」マルセルの声に、何かが「すっ。」と、部屋の奥へ消えた。
      「ヴィク兄ちゃん、今、クラヴィス兄ちゃんが僕たちの事、覗いてたよっ!」マルセルは、また
      家の中へ戻ろうとする。
      「もういいから、お前たちは早く学校へ行け。いいな?」さすがにヴィクトールも、キレそうにな
      りつい、声にドスをきかせてしまうと、弟たちはピューっと家から出て行った。
      「ったく。毎朝、これだもんな。」ヴィクトールは、両手を腰に当てコキカキと首を回して背伸び
      しながらまた、台所へと戻る。

      「、、、ご飯。」ダイニングには、テーブルについてご飯茶碗をヴィクトールに差し出し、箸を
      口にくわえたクラヴィスが待っていた。
      ヴィクトールは、黙ってご飯をよそう。「もう、オカズはないぞ。味噌汁もない。」コトリ、と、
      クラヴィスの目の前にご飯を盛った茶碗を置く。「かまわぬ。」クラヴィスは、ポケモ○ふり
      かけを取り、「ササササ。」とご飯の上でふったが、、、パラパラと、のりのかけらが少ししか
      落ちてこない。クラヴィスは、ずんっ!と、箸を揃えてご飯に突き刺し、ずどどどどと、自分
      の部屋に入り込み、「ぴしゃんっ。」と、また、閉じこもってしまった。
      「、、、分かったよ。買ってくればいいんだろう?」襖の前でヴィクトールが声をかけると、
      スススっと、襖戸が開きクラヴィスが顔だけ出して、下唇をかんで「こくん」と、頷いた。

      「うう、さぶいっ。」ヴィクトールは広い背中を丸めて、冷たい向かい風の中を歩きはじめた。
      母親がえらくしつこく、彼の休暇日数を確認していたのが、わかったのは10日間前。
      辺境警備から久しぶりに我が家へ帰ってきた翌日、いきなり、「ほな、行って来るで!」と
      両親そろって旅行へ行ってしまった。「あんた、2週間も休暇あるんやろ?その間、
      あの子ら頼むわ。」と、言い残しもう10日が過ぎてしまった。久しぶりの休暇で、ゆっくり
      と身体を休めると思い、懐かしい我が家へ帰ってきたというのに、、、。

      我が家に帰ってくる楽しみもこんな状態では、時間がなさすぎて会いに行く暇もない。
      と、思っていると向こうからヴィクトールが楽しみにしていたことが、やって来た!
      いつものスーパーに入り、カゴをカートの上に乗せ押し始めようとした時、
      「あ、ヴィクトールさん。お帰りなさい、お久しぶりです。」スーパーの黄色いカゴを片手に
      階下に住んでいるアンジェリークが優しく微笑みながら近寄ってきた。

      つづく


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