外伝その1 悪霊退散!

自分の名前はコウ・ファーラス。階級は伍長。

新設された特殊部隊「サイアス」に配属されて早二ヶ月が立とうとしていた。

数々の作戦、訓練を経て部隊は一つにまとまってきていた。

これは非番のある一日の出来事である。


朝起きて朝食を取りに食堂に下りると、レナを中心として

人だかりが出来ていた。その表情は千差万別、半信半疑の顔に見えた。

「おはようございます。どうかしたんですか?」

自分は手近な相手・・クリスチャン・ローゼンクロイツ、通称クリスに話しかけた。

「おはよう。出たんだって」

「出た?何が!?」

その一言で一瞬考えてしまう。が、

「そう、出たんですよ!」

レナの大声で途中で考えが吹き飛んでしまった。

「出たって、何がですか?」

『幽霊!』

その場にいる全員が声をそろえて言った。

みんなの話を聞くと、昨日レナは資料室で前回の戦闘結果をまとめて報告書

を作っていたそうだ。午前0時を回ろうとした時に異変があった。

微かの物音があった。気にはなったが構わず作業をしていたら

今度は大きな物音が!さすがに気になってその場所を見たら・・・

「資料を根こそぎあさっている人がいたと・・」

「悲鳴あげたら跡形も無く消えたんだと」

「でも資料は散らかったままだったそうですよ」

「レナ、疲れてたんだよ。今日はゆっくり休んだ方がいいよ」

気が付けばサイアスメンバーほぼ全員がこの話を聞いていた。

「私確かに見たのよ!絶対に!!」

「分かったわ。調べてみるから今日はおやすみなさい。

指令には私から話しておくから」

レナを付き添うようにフィーナはそう言って彼女を部屋に運んでいった。

その後・・幾多にも及ぶ資料室の幽霊の目撃情報が相次ぎ

基地内のちょっとした噂となっていた。

中には倒れた人もいたとか。

「これはほっとけない状況ですわね」

彼女・・・神羅 楓は口をモグモグさせながら呟いた。

自分は朝食を取ろうとした時に誘われたのだ。

「でも自分達ではどうにもならないでしょう」

「早く退治しないと被害者が増える一方です!

フィーナ隊長も被害に合ったんですから!」

「倒れた人っていうのはウェンティッドさんだったのか・・」

「そうなんです。資料を探してる時に襲われてまだ寝込んでるんですよ」

自分はコーヒーを一口飲んでから言った。

「でも自分達だけで動いたらダメだ。大隊長や副指令の許可を貰わないと処罰される」

「じゃあ許可を貰えば・・」

「くれると思うか?あの二人が・・・」

「・・・・・」

・・・一瞬の沈黙・・・

「貰えませんね」

彼女はがっくしと肩を落とした。

軍規に厳しい副指令や多少融通の聞く大隊長でも

『幽霊退治しますので許可を下さい』と言ってくれる訳が無い。

「そんな暇があったら機体の調整でもしてろ!」と言われるのが関の山である。

「さて、どうしたもんか・・」

「ですね・・」

難し顔をしながら(でも食事する手だけは止めずに)考える自分達・・・

「どうしたんですかお二人とも。難しい顔をして・・・何かあったんですか?」

ふと声をかけられたので振り返ると何故か指令のティール少将が

いつもの笑顔で立っていた。

「おはようございます指令。」

「おはようございます」

「おはようございます。お二人とも」

自分達は挨拶をすると指令も挨拶を返す。

どんな相手でも対等の立場で話すのは指令の最も尊敬する所だ。

「どうしたんですかこんな所に?」

自分は率直に聞いてみた。

「用事が終わった後ついでに朝食を取りに来たんですよね?」

「そうです。よく分かりましたね」

横から楓が話しに割りこみあっさり腰を折ってしまった。

一瞬対応に詰まってしまう。

「それでどうしたんです?かなり思い詰まった顔をしてましたが・・・」

指令は席に腰を下ろすとそう聞いてきた。

「ええ、実は・・・」

かくかくしかじかと指令に説明すると・・・

「そうでしたか・・・分かりました、悪霊退治を許可します」

『ほっ本当ですか!!』

思わず同時に叫んで身を乗り出してしまう。

「ええ、この件についての噂は聞いてますが被害者が出てしまっては

早急に対処する必要がありましたからね」

「ありがとうございます指令!」

自分は頭を下げた。

「いいんですよ。ただし条件が一つありますが・・」

「条件?」

「資料室でお払いは極力避けて通路でお願いしますね。

万が一大切な資料に何かあったら

懲罰委員会では済まないかもしれませんから。

通路なら多少の被害は大目に見ますけど」

『わっ分かりました』

何か脅しに似たプレッシャーを感じてどもってしまう。

「それではお願いしますね」

そう言って指令は食堂を出ていった。

「とりあえず・・」

「許可は出ましたわ」

「早速除霊仲間を集めよう!」

「はい!」

自分達は足早に食堂を出て皆の所へ向った。


その日の夜・・PM23:00時、中央棟ロビー・・・

そこには武装した六人の戦士がいた。

忍び装束にクナイ、小太刀で武装した矢神 綺羅。

悪霊を滅するために参戦!

銀弾装填ライフルで武装したクリスチャン・ローゼンクロイツ。

ヒマだったから参戦!

対魔札に十字架で武装したレラ・ギルト・ファイス。

異様な殺気を放ち、フィーナの敵討ちの為に参戦!

最新式デジタルビデオカメラと妖怪大百科で武装したランフィス・ダナ・ノートン。

幽霊とか妖怪に興味があるから参戦!

巫女服で武装した神羅 楓。

何を考えてるが分からないが参戦!

そして刃さんに借りた特別製木刀で武装した自分・・コウ・ファーラス。

場違いな気がするが参戦!

「・・・ってクリス!その銃は一体何なんだ!」

「これ?鈴香ちゃんに貸りたんだよ。なんでも法儀済み銀弾頭が入ってるそうだ。

それと模擬弾入りハンドガン。実弾は必要無いからってこれも貸してくれたんだ」

鈴香・・刃さんの妹でガンマニアだったな。

何で銀弾頭なんか持ってるんだ?

ふとそう思ったが彼女のコレクションの中にあったのだろう。

「こいつを撃つ事は無いと思うけどね」

そういいながら銃を構える。

「綺羅さんは重装備ですね〜」

ランフィス隊長は記録用のカメラを調整しつつ話しかける。

「私はこれ以上悪霊の被害を出さないために行くだけです」

「でも実体の無い悪霊とその武器で戦うのですか?」

「話を聞いてからすぐに全ての武器に銀のコーティングを施しましたから。

これなら大丈夫なはずです」

綺羅はスッと素早くクナイと小太刀を抜いた。

刀身と刃には銀色に輝いていた。

見たのを確認するとまた素早くもとの位置に戻した。

「楓さんは何故に巫女服ですか?」

クリスは肩にライフルを担いで言った。

「悪霊退治といえばこれが正装です。やっぱ形から入らないと」

その場でひらりと一回転する。

似合ってるな・・・

ふとそう思ってしまう。

「みんなの準備が出来たようですし出発しますか!」

木刀で階段を指しながら言った。

『出撃!』

全員で気合の入った声で叫ぶ!

目的地は三階の資料室。

自分達はゆっくりと階段を上がっていった。

三階に着いた時異変があった。

足音が近づいてくる!しかも複数!!

全員に緊張が走った!しかし武器は構えない。

油断せずにゆっくりと歩く。足音も同じ感覚でこちらに向ってくる。

人影が確認出来た。三人。そこに現れた人物は・・・!

「どうした皆揃って・・・なんで武装してるの?」

そこに現れた人物・・・シュウさんとバン、トニーだった。

「シュウさんこそどうしたんですか、こんな所で?」

「資料室で調べ物が残ってたんでな。ライルはまだ残って資料あさってるよ」

「何か変わったことはありましたか?」

ランフィス隊長はカメラを向ける。

「特に無かったけど・・・」

「けど?」

バンのもの言いたげなセリフに聞き返す。

「この季節にしては少し寒かったような・・・

空調効いてたはずなのに」

「まああまり気にする事は無いよ。俺達は明日早いからこれで失礼するよ」

「あ、お疲れ様です」

「おっとそうだ、これを渡しておくよ」

バンはそう言うとポケットから方眼鏡を出してみんなに渡した。

「これは?」

「こんな事があろうかと通販で買っておいた『霊視ゴーグル五個セット!』

買えばもう一つおまけでついてくる!!

以前買ったのはいいけれど使う機会無かったんでな。

話聞いて押し入れの中探し回って見つけたんだ」

「はあ、使わせていただきますね・・・」

通販の商品・・胡散臭さ大爆発な物だが

善意を無碍に断ることはできす、とりあえず借りた。

どうやら気持ちはみんな同じらしく曖昧な顔をしていた。

「それじゃおやすみ〜」

シュウさん達はそう言って自分達の横を通りすぎる。

「何が起こるか分からないから用心しろよ」

そうすれ違いざまにトニーが呟いた。

振り向いたときには既にその姿は無かった・・・

「さて、行きますか」

『おう!』

ランフィス隊長の言葉に皆小さく答えた。


問題の資料室前に到着し装備を点検、確認すると綺羅がゆっくりと音無く扉を開けた。

全員警戒しながら部屋に入る。

見渡すと奥のモニターの前に人が座っていた。ライルだ。まだ資料を確認しているようだ。

「ライルさんご苦労様です。何か変な事はありましたか?」

楓はゆっくりと近づきながら話しかける。

「・・・特に何も無いよ・・」

ライルは顔だけこちらに向けて答えたが・・・

その顔を見て楓は歩みを止める。

無表情で答えた言葉が棒読み。様子が変だ。

顔だけをこちらに向けゆっくりと立ちあがり歩いてくる。

一歩踏み出すごとに楓も一歩後へ下がる。

自分はさっきバンから借りた霊視ゴーグルを掛けてライルを見る。

別段変わった様子は・・・あった!

ライルから白いオーラのようなものが出ていた!

霊視ゴーグルで見えるという事は・・・

「楓!ライルは悪霊に取り憑かれてる!離れろ!!」

自分が叫ぶのと同時にライルが楓に襲いかかる!

繰り出す拳を屈んで避け、左肘鉄を零距離で叩き込む!

ゴスッ!

鈍い音と共にライルが仰け反ると更に追い討ちに掌底を撃ち込む!

ライルは吹き飛ばされ椅子をなぎ倒し壁に激突した。

「楓さん大丈夫?」

クリスはハンドガンを構えながら楓の前面に出る。

「ええ、でもライルさんが・・取り憑かれたとはいえちょっとやり過ぎたかしら」

「そうでもないと思うよ」

「え?」

クリスの言葉に全員が一点を見つめる。

そこには何事も無かったようにゆっくりと立ち上がるライルの姿があった。

「とりあえず部屋の外まで逃げるよ」

「ええ!」

「総員撤退!」

全員が部屋の外に逃げる!ライルが走る!クリスはハンドガンで牽制するが

被弾してもお構い無く突っ込んでくる!

「ライル!」

自分は木刀の横薙ぎを脇腹にまともに食らい倒れ込む。

「サンキュー、コウ!」

「今の内に早く!」

全員が部屋の外に逃げ出したと同時に迎撃態勢を取る。

ちなみにランフィス隊長は安全な所でカメラを回している。

全員霊視ゴーグル着用済みだ。

そしてゆっくりと部屋からライルが姿を現す。

擦り傷打撲など怪我だらけだが痛みを感じないのか無表情だ。

「さて・・・どうやってライルから悪霊を追い出すかだな・・」

クリスはハンドガンを構え苦悶の表情で呟いた。

「私が動きを止めます。そのスキにレラ隊長の対魔札で追い出せませんか?」

「・・・分かったやってみよう。皆は援護を頼む!」

綺羅の発案にレラは少し考えて言った。

『了解!』

全員が答える。

突如ライルが走り距離を詰める!

綺羅が銀クナイを投げる!さすがに危険と判断したか素早く避ける。

クナイはそのまま虚しく床に突き刺さる。

クリスの援護射撃で怯んでいる内に自分と楓は距離を詰める。

木刀を一閃!しかしかわされ左腕の一振りで弾き飛ばされる!

「ガハッ!」

壁に叩きつけられ肺から空気が洩れる!

いくらライルでもこんな馬鹿力は無かったはずだ。

取り憑かれてふだん使わない筋肉まで使って強化されているのか!?

「コウさん!」

楓が心配そうにこちらを見るがすぐにライルの方に向きかえる。

突然横から綺羅がクナイを二本投げるがかわされ壁と床にささる。

かわした隙を突いて楓が肘鉄から裏拳を繰り出す!

半歩後ずさり両手を胸の前で交差させ一気に踏み込む!

「神羅流 双龍掌!」

双拳での掌底。まともに食らい前のめりに倒れ込む。

が、すぐに起きあがり首を掴みそのまま持ち上げる!

「楓!」

自分は何とか立ち上がるがさっきのダメージが抜けていない!まだ足がふらつく。

綺羅がクナイを構えるが楓を盾にされ投げられない!

「ク・・ハッ・・」

楓の呼吸がどんどん浅くなっていく!

「あくりょおおう!」

そこへ全身から怒りのオーラーを纏ってレラさんが走る!

「食らえ!対魔札乱れ撃ち!!」

札というより縦長のカードを投げまくる!

さすがに紙切れは盾にされた楓に当たっても何とも無い。

楓の背中にカードがポスポス当たって地面に落ちる。

チャンスは今!

完全に回復し、ライルの背後から一気に近づく!

「必殺!木刀膝カックン!?」

スライディングしながら木刀で膝裏を狙う!

さすがにバランスを崩し楓と共に倒れる。

自分はすぐに楓の手を引っ張りライルから距離を取る。

「大丈夫か!楓!?」

「だ・・だい・・じょうぶ・・です・・ゴホッ」

息も絶え絶え、咳き込みながら何とか答える。

ドスッ!

床に綺羅が放った六本目のクナイが刺さる。

「行きます!」

掛け声の後にに呪文を唱える。同時に両手で印を組む。

「この世にさ迷えし不浄なる魂よ・・我が力宿りし六つの楔の力持て・・

真の姿を現しその魂束縛せん・・結界!」

突如クナイが光り輝く!ライルを中心にこの配置・・六亡星の結界だ!

ライルが絶叫を上げる。しばらくしたばったりと声が止む。

呆然と立つライルから白いモヤがゆっくりと出てくる。

それは足の無い人型をしていた。

「今です!レラ隊長!」

「OK綺羅、任せろ!止めだ!!」

レラは対魔札を投げる。頭や胸に無数の札が貼りつく。

耳障りな高い音とも声とも分からない音とと共に悪霊は四散した。

姿を消したと同時にライルが床に倒れ込む。

「やった・・・のか?」

自分は何気にそう呟く。

「そのようですね」

「終わったぁ」

そう言ってその場に腰を下ろした。

「ん・・ここは・・・っていってえぇぇ!!

ようやく気がついたライルが建物中に響きわたる絶叫を上げる。

悪霊と戦ったといっても体はライルのだった・・すっかり忘れていた・・

「みんなどうしてここに?全員武装して・・なんで俺は傷だらけなんだ!?」

「とりあえず彼を医療棟に運びましょう」

「了解ですランフィス隊長」

「なあ、一体どうなってんだ?説明してくれ!説明を!?」

「最初からお話しますからまず・・」

自分がライルに肩を貸して、その隣で楓が説明しながら歩いていった。


・・・医療棟での診断結果・・・

擦り傷、全身打撲、精神疲労・・・全治三週間との事だった。

ライルはそのまま入院となった。幸いしばらく作戦は無いのでゆっくり休養できるとの事だ。

「それじゃあそろそろ帰りましょうか」

「そうですわね・・もうこんな時間なんですね」

時計を見ると午前一時を回ろうとしていた。

自分達五人はゆっくりと居住区に向って歩き始めた。

医療棟と居住区のほぼ中間地点に来た時異変は起きた。

楓が急に立ち止まったのだ。その顔は青ざめていた。

「どうしたの楓?」

綺羅は楓の肩に手を置いて聞いてみるが無言で空の一点を指差す。

その指は小刻みに震えていた・・

全員同時に指差された方を見るが何も無い、ただの夜空が広がっているだけだった。

今度は霊視ゴーグルを掛けて見てみると言葉を失った。

夜空を覆い尽くすほどの亡霊の姿があった。

亡霊達はこちらの姿を見ると一斉に襲ってきた!?

「何だあいつらは!」

レラは驚愕の表情で叫ぶ。

「多分私達が倒した悪霊が最後の力で呼んだと思います」

楓は額から一筋の汗が流れる。

「とりあえず迎撃だ!」

クリスはそう叫ぶとライフルを構えて撃ちまくる。

銀銃弾は悪霊に当たると跡形も無く四散する。

しかし数が多い。撃ちもらした悪霊が襲いかかる!

「はぁ!」

気合一閃で小太刀を持った綺羅が悪霊を横一文字に切り裂く!

後から二体襲ってくるが左手でクナイを投げて仕留める。

次々と切り裂くが圧倒的に数が多い。

その時二体同時に正面からの攻撃、小太刀で受け止めるが背後からもう一体

の攻撃をまともに食らい倒れる!

「綺羅!」

クリスのライフルが火を噴き悪霊を全て撃ち抜く。

「早く立つんだ!あまり持たせられない!」

「はっはい!」

綺羅が立つまで援護射撃をし、次なる目標に狙いを定めた時銃声が止んだ。

弾切れ。

急いで空マガジンを外して交換するがその隙を見逃す筈は無く連続で攻撃を食らう。

「グハッ!」

勢いついて背中から倒れる!

上空から4体の悪霊が猛スピ−ドで急降下してくる!

「神羅流 気流拳!」

クリスの体に当たる直前に悪霊が真っ二つに切り裂かれ四散する。

「大丈夫!?」

「ああ、サンキュー。助かった」

「いえいえ、次が来ますよ!」

「ああ、そっちも気をつけろよ!」

返事をしながらマガジンを交換し、チャンバーに弾を込める。

「はい!」

そう言うと別方向に走った。

「くっそ!」

自分は木刀でなんとか攻撃を受け止めていた。

「うおおおおぉぉ!」

気合と共に攻撃を弾き怯んだ隙に木刀を振り下ろす!

頭から真っ二つにされ音が聞こえそうなくらい大きく弾けて消える。

縦薙ぎ、横薙ぎと木刀を振り回し攻撃を受ける前に一撃を加える。

俗に言う「先手必勝!」である。

ちらりとランフィス隊長の方を見るとレラが十字架で結界を張って守っていた。

ランフィス隊長はしっかりとカメラを回していた・・・。


どれくらいの時間が経ったのだろうか・・

全員疲弊しきっていた。

悪霊はまだ沢山夜空を飛び回っている。

しかしこちらには攻撃して来ない。恐らく警戒しているのだろう。

むやみに攻撃してもやられるのはこちらの方だと言う事を。

「これ以上来られたら押さえきれない・・」

息を切らせながら綺羅が呟く。

「確かに・・ライフルの弾もこれが最後のマガジンだ」

クリスもマガジンを交換しながら呟く。

「こっちも対魔札があと一枚しかありません」

とレラ。

楓も自分も汗を拭い、無言で息を整える。

「綺羅さん、あの時の結界で動きを封じ込めませんか?」

ランフィス隊長は真っ直ぐ見つめて言った。

「もうクナイがありません。それにあれだけの数を結界内に

全て入れる事は不可能に近いですよ」

「そうですか・・」

「皆さん見てください!」

息が整った楓が空を指差す。

そこには信じられない光景があった!

空にいた悪霊が一ヶ所に集まり始めたのだ!

「あれってまさか・・・」

自分は一つの想像が頭の中に浮かんだ。

「そのまさかでしょうね・・」

楓も冷や汗をかきながら呟く。

そう、一つの存在になろうとしているのだ!

ほとんど装備の尽きた自分たちは見てるしか出来なかった・・

そしてVR並の大きさの人型になった!

「どっどうする!?」

クリスは何とか立ち上がりライフルを構える。

「逃げれないでしょうね・・となれば!」

綺羅も小太刀を構える。

「ええ、戦うしかないでしょう!」

レラも十字架を手に持つ。

「そして倒すしかありません!」

楓も神羅流独自の構えを取る。

「行くぞ!みんな!!」

自分も木刀を構える。

『オウ!』

全員が巨大悪霊に疾る!

クリスは足を止めライフルを正射。弾丸が当たった所が弾けるが

すぐに元に戻ってしまう。

例えると水面に石を投げても元に戻るように・・

綺羅と自分も足を切りつけるが同じだった!

「紳羅流奥義! 疾風迅雷!!」

楓が独特の構えから放たれた双拳を食らい両足が完全に吹き飛ばされる!!

が、再生が早くすぐに直ってしまう!!

レラも十字架を押し当て、対魔札で切りつけるがこれもすぐに再生してしまう。

巨大悪霊は何事も無かったかのように右腕を大きく横に振った。

まるで台風のような強力な風が起こり全員が吹き飛ばされてしまう!

「うわっ!」

幸い地面には芝が植えてあり倒れても多少衝撃を和らげてくれた。

更に追い討ちに口?から大量の悪霊散弾を撒き散らす!

急いで立ち上がり走りまわって避けるが避けきれず数発食らってしまう。

その場に倒れこみ上体を起こすのが精一杯だった。

全員何とか無事のようだがもう動けないだろう。

もう一回同じのを食らったらおしまいだ!

どうすればいいんだ?どうすれば・・・

その刹那・・木刀を借りた時の刃の言葉を思い出した。

『集中して相手をよく見るんだ。どんな相手にも必ず弱点がある

そこをこの木刀で斬りつければいい。

もしもの時は木刀に秘められた力を解放するんだ。その呪文は・・・』

自分は木刀を杖代わりにして何とか立ち上がり木刀を構える。

心を静め、無心で相手を見る。

胸の中央・・わずかに隆起していた。他の部分はまっ平らなのに・・

おそらく奴の弱点・・核があるのかもしれない。

今度は刃に教えてもらった呪文を口にする。

「剣に眠りし聖なる光よ・・今こそその力を呼び覚まし

全ての魔を切り払え!我は邪を払う剣なり!!」

木刀が突然光り輝き刀身に光が宿る!

「くらえ!飛閃天剣流もどき・・烈閃斬!」

木刀を左肩に当てた構えから上体をひねり右足を前面に出した瞬間に木刀を横に薙ぐ!

刀身に宿った光は衝撃波となり巨大悪霊を捉える!

両腕で防御するがその両腕ごと胸の隆起を真っ二つに切り裂いた!

最初は何も起きなかったが、ゆっくりと巨大悪霊が崩れ始めた・・

その時崩れ落ちる顔から口が開く!

散弾がくる!しかし刀身の光は既に消えていてどうする事も出来ない!

今まさに放たれようとした瞬間口に何かが投げ込まれた。

次の瞬間巨大悪霊の顔は跡形も無く消し飛んだ!

横を見るとレラが投てき体勢のまま固まっていた。

最後の対魔札を投げたのだろう。

しばらくして完全に崩れ落ち姿を消した。辺りには静寂が戻っていた。

「終わった・・・今度こそ・・・」

全ての言葉を言う前に気を失いその場に倒れた。


目を醒ましたら病院のベットの中にいた。

看護士さんの話によると全員その場で気を失って朝になって

仕事に向う途中の整備員に発見されたそうだ。

全員軽傷だが精神疲労が激しくしばらくまともに動けないそうだ。

午後にはティール少将がお見舞いに来てくれた。

お見舞いは嬉しいのだがガラスは割れるは壁や床にクナイは刺さってるわで

修繕費用は給料から引かれる事になったが、

「多少の被害は目を大目に見る」と言った事と悪霊退治した事で

払わなくて済む事となった。

なお、ランフィス隊長が撮ったビデオはテレビで放映され、なかなかの視聴率を

取ってスポンサーからお金が振り込まれたそうだが入院費で全部消えたそうだ。

次の作戦までゆっくりと休養しよう・・と全員が思った・・


次回予告


どうも最後まで読んでくれてありがとうございます。作者のSです。

今回第三話で最も出番が無かったコウ・ファーラス君を主人公とし、

パートナーキャラとして神羅 楓を起用しました。

今後も男女一組として番外編を書きたいと思っています。

余談ですが本編が漢字二字に対し番外編は四字になっています。

考えるの結構大変だったりします。話に関係する漢字を使わないといけないので・・

次回は・・・何を書きましょうかね・・・

ネタとして上がっているのは・・・

1、レラとフィーナの結婚騒動ネタ

2、白瀬 龍一のバレンタインネタ(女性キャラ未定)

3、クリスと御剣 鈴香の料理ネタ

など・・・本編とは違い日常生活をメインとした話しにする予定です。

ネタの中で最も反響のあったものを書きたいと思います。

(何時書くかは未定ですが)

それではまた会いましょう。


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