第四話 反撃・前編『突入』


・・クレイモア基地地下中央発令所・・

その最上部に一人の女性がモニターと手元の書類を確認していた。

サイアス総指令 フェリエ・ティール少将である。

彼女は自分の席で険しい顔で書類を読んでいた。

「これは間違いないんですか?」

そう彼女が背中越しに後の男性・・サイアス副指令

グレン・ディボルバー大佐に聞いた。

「はい、間違いありません。フレッシュ・リフォー経由でレイディスに確認済みです」

「そうですか・・新型VRの件はどうなってます?」

「第三プラント ムーニー・バレーで開発されたベルグ・ボックの先行量産型五機

明日には搬入、来月までには全ての調整作業は終了する予定です」

今度はグレン大佐の横にいたサイアス大隊長 クレイン・ノース少佐が答えた。

「わかりました。少佐、今回の作戦ご苦労様でした。報告書読みましたが

だいぶ被害が減ってきてますね。最初はどうなると思いましたが・・」

「申し訳ありません少将。自分の指揮が未熟なばかりに・・」

「それだけRNAが強大だということで我々が結成されたのだ!

それなりの結果を出してもらわなければ困るのだよ少佐」

「ごもっともです。大佐」

「まあまあお二人とも・・・」

彼女は椅子を「くるり」と回して険悪な雰囲気の二人の会話に割って入る。

「始めての出撃では上手く行かないものです。それでもあれだけの

戦果を上げたのですから。今では対等とまではいかないまでも

十分戦えるまでに成長しているのですから」

「そう言って頂けると助かります。少将」

優しい笑顔で語る少将にノース少佐は軽く頭を下げた。

「話を戻しますがこの情報が確かならば近いうちに大規模な反抗作戦が

立案されるのは時間の問題ですね。私達サイアスも駆り出されるでしょう」

「少佐、先の戦闘で損壊した機体の修復作業はどうなっている?」

「はい、損傷の軽いものは二、三日で完了しますが、特に損傷の酷いアファームド

はベルグ・ボックを参考にしたアタッチメントシステムを導入して

改良を加えています。ライデンの方も整備と調整に手間取ってますが

予測範囲内です。全ての作業は来月五日に終了予定です」

「では全ての作業を今月中に終わらせて下さい。

それとLラインのパイロット選抜と機体の仕様変更を早急に進めてください」

少佐の報告に彼女はすこし考えながら言った。

「私の考えですが来月始めに作戦が開始されると思います。

限定戦争公司や上層部の準備に時間がかかると思いますから」

「了解しました少将!」

敬礼しながら言うとノース少佐は部屋を出ていった。

「それでは私も用事がありますので失礼します」

グレン大佐も部屋を出ていった。

「さて・・・私も下準備した方がいいかしらね・・・・」

彼女は席を立ち上がると自分専用の回線を開く。

「こちら特殊機動VR大隊サイアス総指令のフェリエ・ティール少将です。

特殊支援VR大隊総指令レイ・M・マトリエル准将お願いできるかしら?」

彼女はいつもの口調で言うと相手が出てくるのを静かに待った。


「あれが噂の新型か・・・」

「SAV−302 ベルグ・ボックさ」

俺達サイアスメンバーほぼ全員が格納庫の新型VRを見に来ていた。

「SAV−302ベルグ・ボック。第三プラント「ムーニー・バレー」が開発した

第二世代VR。VOKとよばれる基本フレームに用途に応じてさまざまな武装を

装備できるユニット・スケルトンシステムを採用した機体だ」

「お前・・・その情報どっから持ってきたんだ?」

機体概要を説明した第二部隊所属キース・ローレックにおやっさんが疑問の声をかける。

キースはどんな情報も知っているサイアス随一の事情通だ。

彼の情報網は強力で上層部さえ知らない情報も仕入れてくる事もある。

「それは秘密だよ。おやっさん」

キースは人差し指を左右に振って答えた。

「それじゃあ第二部隊のみんなは俺に着いて来てくれ。

他は自分の機体のチェックでもしておいてくれ」

おやっさんはそう言って奥の管理室に向って歩いていった。

「それじゃ機体チェックでもしますか」

俺は頭を掻きながら言った。

「そうだな」

刃も頷く。

「私はもう終わってますので」

「ランフィス隊長今までほとんど被弾してませんからね・・・」

ランフィスの言葉にバンが溜息混じりに言う。

前回の戦闘で自機がかなり被弾した事を思い出したのだろう。

「私はこれから報告書の続きを書かなくてはいけないので失礼しますね」

レナはそう言って足早に歩いていった。

「それじゃまた後で」

レラはそう言うと自機の方へ向っていった。

俺と刃、アームズは一緒に向った。

同じ部隊で機体も並んでいるからだ。

二、三言葉を交わし自分の機体のコックピットにそれぞれ搭乗する。

起動させ各部チェックを開始する。

整備員と改良点などを話し三十分ほどで機体から降りた。

格納庫を歩いているとLラインと向い合って新型のライデンが整備を受けていた。

前回の作戦から導入された第二世代型ライデンは不完全なチューンで戦闘に参加

したがなかなかの戦果を出した。

今はチューンとその調整にかなりの時間が掛けられている。

ライデンの配備によってLラインは引退したかに思えたが、

戦力低下は避けたいという少将の発言により新たな部隊発足となった。

パイロットは部隊内外問わず選抜された。

その中の一人にレラがいた。志願して部隊転属したのだ。

もちろんLラインの適正など調べた結果、良好と判断され小隊長に抜擢された。

現在Lラインはリチューンしている最中である。

レラはこちらに気づく様子も無く調整していた。

俺は中央棟地下の少し離れた所にある娯楽室へ足を運ぶ。

そこには第四部隊のコウとバンが「バーチャロン」で対戦をしていた。

OMGでは「バーチャロン」は町のゲームセンターに配置され、

ゲーム感覚で実際にVRを遠隔操作してムーンゲートで戦っていたそうだ。

パイロット不足という事もあったが、遠隔操作用以外のVRはシステム汚染され

使用不能になっていたのでパイロットもこの筐体で出撃した。

今ではさすがにそんな事は無いが、ここにある筐体はただのゲームではなく、

俺が実際の戦闘データを元にプログラムした戦闘シュミレーションとなっている。

もちろん少将の許可をもらって運営している・・・有料で。

「やられたー!」

「まだまだ回避が甘いよ、コウくん」

叫びながら筐体から出たコウを冷静な顔で答えた。

「次は俺の番だな・・」

今度はトニーが筐体に座る。

「はいはいちょっとまってくれよ」

俺はそう言いながら近づいた。

「何だシュウ?」

バンが顔だけこちらに向けて言う。

「今からこの前のデータ入れるから少しまっててくれないか?

新型ライデンのもあるからな!」

「何!早くやってくれよ!」

「わかったわかった」

そう言って筐体を動かして裏に回る。

カバーを外し、基盤の中央にある本体というべき記憶装置から

データディスクを取り出して新しいのに入れ換える。

その他細かい所は液晶内蔵キーボードを接続して微調整をする。

キーボードに映し出した画面を見て確認をしたら接続を外しカバーをはめた。

「これでいいぞ。1ゲーム分タダにしてやるからテストしてみてくれ」

「ラッキー!じゃあ早速新型ライデンで・・・」

「俺はアファームドで行く!」

バンとトニーは自機を選択して対戦に入る。

勝負は二本先取。俺はバンのライデンの動きに目をやる。

ダッシュ、攻撃、回避運動・・・特にバグなどの問題無し。

勝負が終わるまで観察し続けた。

ちなみに勝負はバンが勝った。至近距離からのレーザーが直撃したのが

勝負の決め手になった。

「それじゃごゆっくり・・」

『おう!』

全員の返事を聞いて俺は外に出た。

遅めの昼食を取りに食堂に足を運ぶとそこには

お茶を飲んでいるランフィスと白瀬龍一に会った。

俺は挨拶を交わすとおばちゃんに注文してから腰を下ろす。

「調整が済んだのでお茶を飲んでいたら彼が来たので招待したんですよ」

とランフィス。

「ええ、少し小腹が空いたので軽く食事を取りに来たんですよ」

と眼鏡を直しながら龍一が言う。

ふと俺は辺りの視線に気づいた。それは全て龍一に向けられている事、

そしてそれは全員女性である事。

龍一には自覚は無いが女性にモテる。少し羨ましいが・・・

その視線に龍一は気付いていない・・。

彼は無造作にサインドイッチを口に運んでいた。

出来上がった昼食を受け取り、口に運びながら会話した。

「そういえば聞きましたかシュウさん。例の噂」

「実はその事でランフィスさんと話してたんですよ」

ランフィスに続いて龍一が言う。

「いや・・・」

思い当たる事が無いので即答した。

「近々大きな作戦が行われるというんでうよ」

「キースさんから聞いた情報なので信憑性はあります」

「確かにキースの情報は何処から仕入れたのか解らないけど

ガセネタだった事はあまり無いからな・・」

そう言ってスープに口をつけた。

「確かに思い当たる節はあるんです。前回の新型ライデン、今回のベルグボックの配備、

倉庫保管のLラインを新部隊専属機に抜擢・・急遽戦力増強してますから」

「まだ整備と修理が済んでないから来月だな・・」

「そうですね・・恐らく」

俺の考えに龍一は頷いた。

お茶を飲んでいると見知った顔が二人入ってきた。レラとフィーナだ

「すみませんレラ中尉。無理に誘ってしまって」

「いいよ丁度喉が乾いたところだったし。それと今は准尉だよ」

「すみません。でも中尉の方がしっくりくるんです」

「ま、いいけどね。何飲む?」

「私はコーヒーで」

「俺も同じのを頼むよ」

二人はカウンターで注文を取っていた

「あの二人最近よく見かけますね」

「以前からの知り合いらしいですよ」

二人を見ながら龍一とランフィスが言葉を交わす。

「以前上司とトラブルがあってレラがフィーナをかばったそうだよ」

俺は最後のパンを口にしながら言った。

「そうなんですか。でもなんで知ってるんです?」

「以前何度か一緒に戦った事あったしね。この事も本人から聞いたし。

あまり詳しくは聞いてないがそれがきっかけで降格と左遷。

でも二人ともサイアスに入隊するとは・・」

「フィーナさんはあんまり男に免疫無いけどレラさんは平気なんだよね・・」

「そうなんだよね・・?」

「お二人とも、邪魔しちゃいけないから退散しましょうか?」

「そうだな」

「ですね」

俺が丁度食事が終わったタイミングを見計らってランフィスが言った。

俺と龍一は頷いて食堂を出た。

「それでは私達は機体の調整に行くのでここで」

「了解!頑張れよ!」

「失礼します」

ランフィスの言葉に返事し、龍一が一言いって分かれた。

俺も部屋に帰ってプログラム組みなおさないといけないな・・・

構想をまとめながら部屋に帰り、早速組み上げる。

気が付いたら夜十時を回っていた。俺は食堂に降り、

遅い夕食を取ってシャワーを浴びてべってに入る。程なく深い眠りについた。


・・・三週間後・・・


月が変わって始めての月曜日、サイアスメンバー全員に召集がかけられた。

整備班からもおやっさんを始めとする班長クラスが呼ばれていた。

急いで中央棟地下一階のブリーフィングルームに向った。

部屋に着いた俺は手近な椅子に座ると第六部隊のフィン曹長や矢神伍長、クリス軍曹

がわらわらと入ってきた。

全員が来たのを確認して中央にいたティール少将が口を開いた。

「皆さんおはようございます。早速ですがお仕事です。

三日後に端末都市グラスパスにて特殊支援VR大隊『アトラス』と共同で

作戦を遂行します。予定戦闘時間は四日。それまでにRNAを撃破し、

グラスパスを占拠しなければいけません。

作戦の詳しい内容は彼女から聞いてください」

そう言って席を外すと一人の女性がその場所に立った。

「皆さん始めまして。私は特殊支援VR大隊隊長のサーラ・ミラ大尉です。

今回はサイアスの後方支援を担当させていただきます。以後よろしくお願いします」

そう言って大尉は敬礼をした。全員席を立って敬礼すると大尉の言葉で席に付く。

「端末都市グラスパスは現在RNAの拠点の一つとして要塞化しており、

地下はRNAの前線基地となっていると思われます。

作戦一日目は敵戦力及び地下入り口の把握を行い、

二日、三日目は地上部隊の制圧及び地下施設の占拠、

四日目には敵増援が予想されますので迎撃・・

最悪占拠できなくても地上施設の奪回が最低任務となります。

作戦開始時間は三日後の12:00時です。

開始一時間前にブリーフィングを行いますので出席お願いします。

私からは以上です」

そう言って席を少将に譲る。

「それでは各自準備を始めてください。明朝07:00時に出発予定ですので

それまでに全ての作業を終わらせて下さい。以上、解散」

言い終わると同時に席を立ち持ち場に戻った。

俺らパイロットも自機の調整及びチェックに格納庫に向かう。

みんな色々と口にしながら・・・


俺は機体の調整の傍ら今回の作戦地である端末都市グラスパスの資料を見ていた。

『端末都市グラスパス・・付属の地図を見るとここから400キロ離れた

海に面した交易都市だったようだ。電脳暦に入って情報都市に移行してから

今まで以上の発展したが凄まじい速度で加速していく情報量についていけずに

内部崩壊を起こしてしまい機能停止。現在は誰も住まないゴーストタウン

と化している』と渡された資料には書いてあった。

そして上空の衛星写真。以前のと比較写真も添えられており見比べれば

かなりの違いが見れた。最低でもトーチカと対空、対地砲が多数確認出来た。

ここをどうやって攻め込み陥落させるか・・・かなり厄介だな。

俺は頭を掻きながらそう思った。

そしてもう一つ特殊支援VR大隊『アトラス』の事だ。

こっちはサイアスのデータベースにアクセスして情報を引っ張ってきた。

『特殊支援VR大隊アトラス・・サイアスと同時期に新設された部隊。

支援砲撃、援護射撃に至る支援戦闘全般と他部隊への物資補給及び

機体の修理、回収などを扱う二部隊で構成される。

大隊長及び戦闘部隊長はサーラ・ミラ大尉、

補給部隊長は大隊副隊長のエルシア・ムーンガイア中尉、

大隊総指令はレイ・M・マトリエル准将・・・』

顔写真付きの資料を更に詳しく読む。今までの戦闘記録及び補給、回収記録。

実に手際がいい。与えられた仕事は完璧にこなしていた。

損耗率は皆無ではないがそれ以上の戦果を出していた。

「フレイノス曹長!どうですか、調子の方は?」

整備部の青年がコックピットに覗きながら声を上げた。

「ああ、問題は無い。他の方の準備はどうなっているの?」

「はい、各部隊整備が済み次第輸送台に固定し各輸送車に搭載します。

第三、第七部隊の機体は調整に時間がかかるので

大型輸送機クルセイド五機で空輸して現地で調整予定です」

「そうか、ありがと。こっちは細かい作業しか残ってないから他の所を

手伝いに行ってきていいぞ」

「了解しました!」

そう叫ぶと彼はそそくさと降りて向かいのアームズの機体へ向った。

回りは機械の動く音やら雑音で良く聞き取れないが・・・

俺は機体の調整と一部改良も施し終わったら刃の方へ手伝いに行った。

レールガンの出力やらOSやらいじる所は沢山ありおやっさんもつきっきりで

調整していた。刃本人は機体の調整に四苦八苦していた。

それらを手伝うと既に昼をとっくに過ぎていた。

食堂に行って昼食を取り、機体の搬出作業を手伝い、

全ての作業が終わった頃には日が暮れていた。

部屋に帰り着替えなどの身支度を手早く終えると夕食を取り早めに床に着いた。


早朝07:00、予定どうり出発。機体や予備パーツを積んだ大型トレーラーに

部隊の中核をなす指揮車にレーダー搭載車など総数三十台。

目的地まで部隊を三つに分けそれぞれ別ルートで向った。

俺達第一、第二部隊のA班は東ルートを移動していた。

パイロットの俺達は衛生車の一室にいた。

衛生車はけが人や病人を治療する場所だけでなく、宿泊施設も兼ねている。

移動の際は三交代で仮眠や食事をここで取るのだ。

その中の一室の休憩所に俺とアームズ、ダン、クリスが話をしていた。

少佐は個室で仕事していて、刃は調整に時間がかかり現在仮眠を取っている。

キースは部屋にある端末で何か調べていた。

「写真を見る限り出入口らしきものは四つ、その内一つは海に面しているから

実質地上から進入できるのはこの三つだけだ」

テーブルの上に広げられたグラパラスの衛生写真を見ながらダンが出入口らしき場所を指差す。

「その場所の周りには対地、対空トーチカが複数確認できます」

とアームズ。

「間違い無く防衛部隊も配備されるな。D型が複数配備されたら厄介だぞ」

とクリス。

「そこはアトラスの支援砲撃とうちらの機動力で何とかするしかないが・・・

総指令は何か考えがあるんじゃないか?」

と俺。

「とにかく作戦の概要しか聞いていないからな・・・この話しはこれくらいにして

各自休息を取るように」

ダンは話しを切り上げ、仮眠室に向った。

現在11:00時昼食を取るには早すぎ、眠るのには遅すぎる。中途半端な時間だ。

さてどうするか・・・

そう考えているとクリスが部屋のテレビをつけた。

丁度限定戦争公司提供の番組がやっていた。

『明後日謎の組織RNAとDNAの精鋭部隊との大規模な戦闘が開始されます。

期間は4日、端末都市グラスパスが舞台となります』

『戦力はどれくらいなんですか?』

文面を読み上げていた男性に隣の女性が聞いてくる。

『DNA側は対RNA戦に組織された特殊機動VR大隊サイアスと

特殊支援VR大隊アトラスの二つの大隊ですね。

RNA側はアファームド系列と試作型VRを数機実践配備させると公表しています』

「なにー!」

テレビを見ていたクリスが驚きの声を上げる。

「新型だと!?」

「どんな機体なんでしょうね?」

俺とアームズはテレビに『づづいっ』と近づく。

『そうなんですか?どんな機体なんですか?』

『さすがにそこまでは公表してませんね』

「なんだ残念・・・」

肩を落とし少し落胆した声でクリスは呟く。

『それでは時間となりました。また明日この時間で会いましょう』

ナレーターの言葉を最後に番組が終り、CMが流れる。

クリスはテレビの電源を切りると

「メシ食ってくる」

と言い残しその場を後にする。

「自分は少し仮眠を取りますので失礼します」

アームズもそう言って部屋を出る。

この部屋に俺と端末に噛り付いているキースだけが残った。

キースの邪魔をするのは悪いので静かに部屋を出て仮眠室に入る。

中に数人が寝ていたのでここでも静かに置いてあった手荷物から小説を取りだし

ベットに横になって読み出す。

どれくらいたっただろうか?腕時計を見ると既に二時を回っていた。

「そういえば腹減ったな・・・」

そう呟くと食堂へ向かう。

食堂といっても十人も入れない部屋だ。

選べる料理も二種類しかなく俺はAランチを頼む。

少しして食事を受け取ると窓辺の席に座り食事を口に運んだ。

外には複数の車両が編隊を組んで森林地帯を走行している。

景色を眺めながらゆっくりと食べる。

食べ終え、食器を返却して仮眠室へ戻り今度は昼寝をした。


目を覚ますと既に日は落ちかけは暗くなっていた。

時計を見ると午後六時を少し回っていた。

『あと十五分ほどで目標地点に到着します。各員準備願います』

放送が流れると辺りが騒がしくなった。

この仮眠室でも目を擦りながら数人足早に部屋を出て行く。

刃とアームズも目を覚まし俺達は一緒に休憩所に向う。

しばらくして車は止まり俺達は一斉に飛び出し自分の機体が搭載された車両へ走った。

車両の格納庫へ飛び乗り素早くコックピットに滑り込んだ。

すぐにOSを立ち上げ機体をチェックする。

M.S.B.S.とリンクを開始し機体を起動させる。

同時に輸送車を遠隔操作し荷台を立ち上がらせてゆく。

垂直になった所で格納庫の扉を開かせる。星多く輝く夜空の下で人々が

自分の仕事をこなしていた。

「こちらシュウ・フレイノス、ヴァリアント機動、各部問題無し」

「同じく御剣 刃、影縫、問題無し」

次々と問題無しの報告が流れる。

「こちらノースだ。第一、第二部隊の到着及び機体チェックを確認した。

あと十五分ほどでC班が到着する。それまで各員

機体を待機モードに移行し第一指揮車に集合するように。以上」

『了解!!』

俺は返事をして機体を待機モードにし、関節及び荷台のロックを確認してから

機体を降り、第一指揮車に急ぐ。

指揮車前には既に到着していたB班と少佐が立っていた。

次々と集まってくる中部隊順に並び全員が揃うのを待つ。

程なくC班も到着し同じように機体チェックをするとこの場所に集まってくる。

全部隊および作業関係者が揃うと少佐が口を開いた。

「いよいよ明日の12:00に作戦が開始される。

整備班は開始一時間前に全ての作業を終わらせておくように。

作戦開始前までが整備班の戦闘時間だ。気を引き締めて作業に当たってくれ。

パイロットはゆっくり休んで明日に備えてくれたまえ

以上、解散!」

少佐は敬礼をすると全員敬礼して各々の持ち場についた。

俺もやる事も無かったし仮眠を取っていたので

自分の機体の整備の手伝いをする事にした。

どうやらその考えは俺だけではなく、全員が思っていたようで

自分の機体へと乗り込んでいった。


・・・翌朝・・・

・・・時刻11:00時第一指揮者前・・・

サイアス及びアトラス部隊全員が集まっていた。

その数百は超えているだろう。

「皆さんおはようございます」

開口一番の挨拶に敬礼して返す。

「初日の今日はグラパラス突入ではなく外部守備隊及び外壁トーチカ破壊が

最優先となります。では配置ですが・・・」

後の巨大スクリーンにグラパラス周辺の地図が映し出される。

「グラパラスの南側は海に面しているのでそちらからは侵入できません。

北、東、西には搬入用の出入り口があります。

北側はサイアス第一、第二部隊、東側はサイアス第三、第五部隊、

西側は第六、第七部隊が当たってください。

第四部隊は空中からの援護、オペレーターはN010で待機、

各部隊にはアトラスから支援小隊をサポートとして派遣しますので

よろしくおねがいます。次にアトラスの配置ですが

第一、第二、第三砲撃部隊をポイントW010からE010まで扇状に展開、

護衛に第二支援部隊を砲撃部隊の前面に。

第一から第三攻撃中隊はサイアス各部隊の援護、

残りの部隊はNW011とNE011で待機・・・」

彼女はスクリーンを指差しながら説明する。

「皆さんの戦果に期待します。以上、全員搭乗開始!!」

一呼吸して言い放つ。それを聞いて全員自機に向って走り出す。

乗り込みすぐに機動、少佐に報告、全員が報告したのを確認し、

「サイアス出るぞ!!」

「アトラスも遅れないように!」

少佐と大尉の号令で指定ポイントまで走り出した。


『全機作戦位置につきました』

『了解、あと三十秒で作戦時間だ。砲撃部隊の支援の後全部隊一気に外壁まで

突入、トーチカを破壊する。防衛部隊はアトラスが牽制してくれる

その間に出来るだけ撃破するんだ!』

『了解!』

残り十秒・・・・・5・4・3・2・1・・

遥か後方で砲撃部隊の一斉射撃、この音が戦闘開始の合図になった。

『全機発進!』

少佐の命令で最大戦速で突き進んだ。


夕方・・今は小競り合い程度の戦闘が行われている程度で

待機していた部隊が現在戦闘している。

サイアス全機も補給と応急修理が行われている。

ほとんど機体は装甲をやられているが損傷は軽微だ。

俺の機体はトーチカ破壊した刃をいきなり現れたD型の

攻撃からかばって左腕がシールドごと吹き飛んだ。

機体は中破、各部ショックで異常が出た。幸い腕の換装と調整で直るそうだ。

アトラスは第二攻撃中隊が壊滅状態になった。

待機していた第四攻撃中隊が代わりに入る事になった。

他の部隊も少なからず損害が出ており、待機していた部隊や

機体は大破したがパイロットが無事な場合は予備機体に乗り戦線に復帰している。

RNAもトーチカはほぼ全て破壊され、防衛部隊も

二割ほど撃破、損害を与え撤退させている。

ただ、トーチカの代わりにD型を配備し近づく物に集中放火を浴びせている。

今日の戦闘で大体の戦力データが取れたのであすいよいよ本格的な

突入作戦が始まるだろう。


・・・翌日・・・

前日の戦闘データから敵部隊の配置を調べ

比較的警備薄い場所を一点突破する作戦が取られた。

その為各機体には機動性向上の為高機動ブースターユニットを背中と両足に装備。

バイパーUには空中用のブースターを装備。

どちらも長距離を短時間に目的地に移動する為に開発された片道オンリーの

使い捨てブースターユニットだ。

更に被弾しやすい個所には追加装甲と防御用のシールドも装備された。

突入は三ヶ所同時に行われ部隊分けは前日と同じ。

オペレーターのレナは俺達と同行し、

第四部隊は独自に空中から援護しながら突入する。

『全機発進位置に着きました』

『了解した全機その場で待機』

レナの報告で少佐が命令を下す。

『あと一分で支援部隊の援護射撃が開始されたと。

同時に全機最大戦速で突入する。敵VRには構うな。

グラパラスの中に入る事だけを考えろ!』

『了解!!』

俺はモニターの時計を見て時間を計る。

時計が変わると同時に支援部隊のベルグタンクの一斉射撃が始まる。

その音が合図となった。

俺はスロットを全開にしブースターが点火、一気に最大速度に到達する。

加速Gに耐えながらシールドを前面に立てる。

『サイアス全機へ。支援部隊の着弾地点のデータ転送します』

レナの通信のすぐ後に現在地点を表示する地図に赤い点が表示される。

俺達はそれを巧みにかわし接近する。

『距離残り50000』

敵第一防衛ラインに接触、数発着弾しながらも突破。

第二防衛ライン、何とか突破。

第三防衛ラインに近づくと弾幕も激しくなる。

『全機速度落とすな!着弾した爆風に突っ込むぞ!!』

隊長はそう言うと目の前の爆風に突っ込む!!

爆風を隠れ蓑にし、更に接近。一歩間違えば機体に致命的なダメージを負うのを

覚悟で次々に爆風に突っ込む!

『距離3000!』

『全機構え!撃てーっ!!』

各機からの一斉射撃!正面の防御壁を集中砲火で粉砕する!

『このまま一気に突入する!』

敵防衛隊の集中砲火に被弾してもお構い無く突っ込む!

全機防御壁を抜けると俺と刃は速度を落としつつ後ろを向き

突入口の両端を攻撃し穴を塞ぎ追撃を防ぐ。

俺達はゆっくりと速度を落とし高層ビルの物陰に隠れる。

追加装甲とブースター、シールドを強制排除し、機体チェックすると

同時に他の部隊からの突入成功の通信が入る。

機体チェックし終わり周りを見渡すと風化した高層ビルに足元には

木々が伸びアスファルトのヒビの間からは草が一面に生えていた。

味方のVRを見ると爆風ですす汚れ、あちこち被弾していたが追加装甲の

おかげで行動に支障はなさそうだ。

『よし、ここから別行動を取る。俺とアームズ、ランガ、キース、

残りの四人で部隊を組んで行動する。何かあったら随時通信するように。

レナはシュウ達と行動してくれ』

ノース隊長は部隊を二つに分けると散開を命じた。

この突入作戦は大きく二つの目的がある。

一つは外部防衛隊との通信、補給路を寸断し外部守備隊を孤立させる事。

もう一つは地下施設への入り口を見つけ、制圧する事。

俺達A班は主に地下施設の入り口の発見、

第三、第五部隊のB班は通信施設、補給路の破壊、

第六、第七部隊のC班はの対空砲などの防衛施設の破壊、

第四部隊は空中からの各部隊の支援を請け負っている。

俺達はレナから送られている機体識別信号を

地図に重ね、どの部隊も行っていない所に向って走り出した。


次回予告!


グラパラス内に突入に成功したサイアス。

地下基地の突入口を探し走りまわる。

各部隊の前に立ちはだかるRNAの防衛部隊!

RNAの重要拠点だけありまだ見ぬ新型VRがサイアスに襲いかかる!

次回第五話『反撃・後編 掌握』へ向けて発進準備!!


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