第二話 『結成』 全身至る所に包帯を巻いた二人の男が同時に溜息をついた。 前回の戦闘から三日が経ち、治療を終えた俺と刃は格納庫で考え事をしていた。 あの後俺達はファルミール前線基地に連絡、救助された。 あの戦闘での被害は甚大だった。たった九機のアファームドを 倒すのに三十六機がやられたのだ!! それほどまでにVRの性能差は歴然だった。 この戦闘で第203攻撃大隊は事実上壊滅した。第一、二分隊長は戦死、 他の隊員も戦死又は重症。無事なのは俺と刃だけだった。 現在修理可能な機体を回収、現在格納庫で修理中で、 今も大破した自分の機体の前で溜息をついていた。 「お前ら何辛気臭い顔して溜息吐いてんだ?」 俺と刃は振り返ると整備士長のボブ・クロス技術准尉、 通称おやっさんがスパナ片手に立っていた。 「おやっさん、自分の機体がああなったら誰でもこうなりますって!」 俺は自分の機体を指差して言うと、刃は「うんうん」とうなずいている。 おやっさんは『がはは!』と笑ってから 「そりゃそうだ!しっかし二機とも損傷チェックと 装甲撤去に時間掛かっちまった」 おやっさんは残骸と化したテムジンを見てから、俺達に視線を戻し、 「しっかしどんな戦闘すればこうなるんだ?その以前にお前達よく生きてたな」 『ははは・・・』 俺と刃は同時に乾いた笑いを漏らす。 零距離でボムを起爆させたり、リミッター解除して 戦った事はおやっさんには話していない。 言ったら何されるか解からんからな・・・ 「機体はほとんどスクラップ、Vコンバーターは無事だがMSBSや その他ソフトはオシャカだ・・直す身にもなってくれ・・」 『よろしくお願いします。おやっさん!』 俺と刃は声を合わせて言った。 おやっさんほ得意そうに胸を張り、 「バッチシ直してやるよ!そうそう・・・」 胸を張ったと思ったらすぐにコソコソと刃に近づき、小声でボソボソと耳打ちをした。 《そういえば刃、例のブツ。試作五号ができたぞ!》 刃は顔を明るくし、 《ホント!》 やっぱり刃も小声でボソボソ話している 《ああ。これから試射してデータを収集するんだ。お前も来るんだろ?》 《もちろん行きます!》 刃は小さく拳を握りながら言った。 「シュウ!俺用事が出来たからちょっと行ってくるわ!」 話が聞こえなくても今の言動で大体想像が付いた。 「ああ、ほどほどにしとけよ。こっちも仕事やっとくから」 「ああ!」 「ところでな刃、VRに装備するとなるとOSがな・・」 刃とおやっさんは話しながら格納庫の奥へ消えていった・・・。 あの二人共謀して武器製作を趣味としている。 この前レールガン試作四号が暴発し、 滑走路の一部が吹き飛ぶ事故が起こった。 この事故でファルミール前線基地総司令ストーク准将が出てきてしまい、 基地の資材を勝手に使用したことがばれてしまったのだ! 結局おやっさんと刃は厳重注意と減俸処分を受けた。 しかし、条件付きでレールガンの開発自体は続行されることとなった。 製作中のレールガンにストーク准将が興味を持ってしまい、 その開発データは他の武器にフィードバック出来るからだ。 その条件とは基地内でデータ収集、つまり試射しないこと、 基地の資材を使わないこと。 つまり実費で開発することとなった。 しかし必要なパーツは全損したVRの残骸から回収し、 専用OSは俺が開発している。開発資金は必要ないのだ。 なぜ小声で話してるかというと、まだ開発されていると知られれば 整備士全員から止められてしまうからだ。 俺は格納庫から自分の部屋に戻り、 愛用のノートパソコンを立ち上げる。 ケーブルを接続し、基地のメインコンピューターに進入する。 さすがにノートパソコンではFCSはいじれないからだ。 データをロードし、まだいじってない所を探して変更する。 このFCSはテムジンのランチャー専用に簡略したため 他の武器が使用できないのだ。 そのためレールガンのスペックに合わせて変更する必要があるのだ。 おやっさんには発射に最低限必要な未完成のFCSを渡してある。 「ここをこうして・・・」 独り言を言いながら軽快にキーボードを叩く。 どれくらい時間がたっただろうか? そう思ったとき部屋のドアから二回音がした。 「俺だ。刃だ!シュウ居るか?」 妙に慌てた声で刃は言った。 「開いてるぞ」 モニターから目を離さず返事をすると同時に、 刃が慌てて部屋に入ってきた。 「ちょっと待ってくれ・・・もう少しで切りが良いから・・」 俺はキーボードを叩きながら言った。 「さっきの放送聞いたか?」 「放送?何かあったのか?」 モニターを見ながら答えた。 集中すると何も聞こえなくなってしまうのだ。 「お前と俺が総司令室に呼ばれたんだよ」 「なんだって!」 俺はモニターから顔を離し初めて刃の顔を見た。息を少し切らしていた。 「そっ、そうか。ちょっと待ってくれ。セーブするから・・・」 俺は少し動揺したが素早くセーブしてパソコンの電源を切った。 「もしかしたらと思ってここに来てよかったぜ。 お前のことだがら熱中して聞いてないかと思ったからな・・・」 刃は汗を袖口で拭いながら言った。 「これでよし!早く行こう!」 「誰のおかげでこんなに疲れたと思ってんだ・・・」 刃は小声で文句を言うと一緒に走り出した。 「シュウ・フレイノス軍曹並びに御剣 刃軍曹出頭しました」 俺はドアをノックして言った。 「入りたまえ」 中から男性の声がした。 何度か聞いたことがある。ストーク准将の声だ。 「失礼します」 俺はドアを開けて中に入った。 始めて総司令室に入ったがかなり広い。 壁一面に本棚があり、扉の正面には机、その後ろには大きな窓。 机の前には応接用の立派なイス。俺は思わず目を泳がせていた。 正面の机には始めて見るストーク准将が座っていた。 年齢は40後半だろうか?引き締まった顔に鋭い眼光、 ガッチリとした体格を軍服が包んでいる。そして胸には准将の階級章。 俺と刃は机の前で足を止めた。 「二人ともよく来てくれた。早速だが用件とはこれだ」 そう言うと机の上にあった二枚の紙を俺と刃に一枚づつ渡した。 紙にはこう書かれていた。 『第203攻撃大隊第2分隊所属 シュウ・フレイノス軍曹。 貴殿に以下の部隊配属を命ずる。 「特殊機動VR大隊サイアス 第一主力部隊」 サイアス総司令 フェリエ・ティール少将』 『・・・・・・』 俺と刃は目を点にして准将を見ていた。 「どうした二人共?『なぜ?』と顔に書いてあるぞ」 「なぜ自分たちなんですか?」 ようやく我に返った刃が言った。 「私も詳しいことは聞いていないんだが・・・」 准将は腕組みをして考える素振りをした。 「RNAのことは知っているだろう?行動目的、 何故VRを保有しているか、全く謎だらけの組織だ。 こちらとしてもただ手をこまねいている訳ではない。 DNA上層部は奴等に対抗する為に色々な手を打っている。 その中の一つに新たに特殊VR大隊を設立するというのがあった。 部隊は現在編成中でパイロットも選抜中だ。そこにお前達が目に止まったのだ」 そこで准将は話しを一度止め、窓辺まで歩いて外を眺める。 准将は外を見ながら話し始めた。 「とりわけ三日前の戦闘が決定的だった。あの戦闘で 敵VR九機中六機を二人で撃破している。その事が高く評価されたのだ」 准将は振り向き俺達を見た。 「話しを戻すが明後日の12:00時付でサイアスに転属になる。」 明後日0700時のジェット機でサイアスの司令部のある クレイモア基地に行ってもらう事になった」 クレイモア基地って言ったらこの大陸最大の基地だ! 「荷物をまとめて準備しておくように。あと、これを渡しておく」 そう言うと机の引出しから小さなケースを二つ取り出し俺達に渡した。 中を見ると階級章が入っていた。線が一本増えてる、曹長の階級章だ! 「二人は本日付で曹長に昇進する事になった。 私からの話しは以上だ。明日までに基地の仲間に挨拶しておくといい」 『了解しました!失礼します!」 俺達は敬礼して部屋を出て、無言のまま部屋に戻った。 「俺達が特殊部隊へ配属・・・」 「信じられない・・・」 俺はまだ動揺していた。 新設された特殊部隊への配属。 それは自分の腕が認められたということだ。 素直にうれしかった。 それ以上に「やっていけるか?」という不安も大きかった。 俺と刃は荷物をまとめ、床についた。 次の日の朝、俺と刃は基地中の仲間に挨拶に回った。 同僚、先輩、上官、整備士・・・朝から回って結局終わったら夕方になっていた。 しかし、何故かおやっさんだけには会えなかった。 最後に基地の外れの墓地に向かった。 「マーク隊長・・・」 俺と刃は墓前に花を添えた。 「隊長、みんな。明日俺達は特殊部隊に配属されます・・・。 俺達を見守ってて下さい」 俺はそう言うと刃は持っていたブランデーををみんなの墓に振り掛けた。 「ちょっと少ないけどみんなが好きな酒だ。よく味わってくれ」 ブランデーを掛け終わると空瓶を隊長の墓前に置き、手を合わせた。 しばらくして俺と刃は立ち上がった。 「それでは行って来ます」 「みんなの分まで戦ってくるぜ!」 俺達はみんなに敬礼してその場を後にした。
出発の朝、挨拶した刃が俺を顔を見て見透かしように言った。 「そんなに顔に出てるか?」 「ハッキリと出てるぜ」 「そうか・・・」 夜考え事していたのであまり寝てないのだ。 「さて、もうすぐ時間だよな・・・」 俺は腕時計を見ながら言った。 「失礼します。シュウ・フレイノス曹長と御剣刃曹長ですね?」 不意に後ろから若い士官が声をかけてきた。 「はっはい、そうですが・・」 ビックリしたがなんとか平静を保ち、返事をした。 「お待たせしました。お二人をジェット機まで案内します。こちらへどうぞ」 俺と刃は案内されるがまま付いていった。 そうしてジェット機に乗り込み、しばらくして離陸した。 先ほどの士官の話によると目的地まで三時間ほどかかるらしい。 しばらくは窓から空を見ていたが、目を閉じるとそのまま眠ってしまった。
滑走路を走っていた。着地した衝撃で目を覚ましたのだ。 向かいの席の刃を見ると、まだ寝ていた。 刃は一回寝るとそう簡単には起きないのだ。 「おーい刃、起きろー!」 俺は軽く体を揺さぶった。 「・・・・・・くーー・・・・・」 起きない。 俺はチョップを三発ほど額に食らわせた。 「ん・・・シュウか。おはよう」 何事も無かったかのように挨拶する刃。 「おはようって・・・目的地に着いたぞ」 「もう着いたのか。もう少し眠りたかったのだが・・・」 刃は大あくび1つして目を擦る。 「もう少ししたら呼びに来るだろう。 ジェット機と昇降口がドッキングすると、先ほどの士官が呼びに来た。 「目的地に到着しました。総司令室まで案内します。こちらへどうぞ」 俺と刃はまた案内されるがままついていった。 ジェット機を降りるとそこは格納庫だった。 隣にも同型のジェット機があった。 どうやら乗り降りするためだけの場所のようだ。 格納庫から車に乗り離れた建物の前で降り、ロビーを抜けて そこからエレベーターに乗り、四階で止まる。 その正面のドアの前で止まり、ノックする。 「シュウ・フレイノス曹長並びに御剣刃曹長をお連れしました」 「ご苦労様です。どうぞ中へ」 士官はドアを開け中へ入る。俺達も中へ入る。 「私はこれで失礼します」 士官は敬礼し部屋を出た。 俺達は正面のイスに座っている女性を見た。 この人がフェリエ・ティール少将なのだろう。 年齢は自分達と同じ位に見える。黒髪に長い三つ編み、襟には少将の階級章。 少将はにっこりと柔らかい笑顔で出迎えてくれた。 「二人ともよくきて下さいました。私がフェリエ・ティール少将です。 お二人の着任を確認しました。ようこそ、サイアスへ。」 笑顔で話す少将につい見取れてしまった。 しかしすぐに硬い表情になった。 「簡単に部隊について説明します。 サイアスはRNAに対抗するために結成された部隊です。 そのためRNAと互角以上に戦うため、RNAと実戦経験があり、 優秀なパイロットが選抜されてここに配属になります。 機体はパイロットの特性に合わせチューンしたものを使用します。 貴方達の機体も準備させていますので後で格納庫にいる整備士長と 打ち合わせをおねがいしますね。 サイアスは一部隊四人編成。五部隊で編成されます。 まだ全ての部隊の準備を一ヶ月以内に終わらせる予定です。 あと、詳しいことはこのファイルを呼んで下さい。 規律その他のことが書かれています。 あと、貴方達のICカードです。何かと必要になりますから常時持っていてください」 ICカードを少将から受け取り胸ポケットにしまった。 話し終えるとそれまでの表情から一変してまた笑顔になった。 「事務的な話は終わりました。そんなに硬くならなくていいですよ」 そう言われてもつい硬くなってしまう俺達二人。 少将は机のボタンを押して話し掛ける。 「はい」 「ファーティンさんを呼んでくれますか?」 「解りました」 少しして後ろのドアからノックされた。 「どうぞ」 ドアが開けられ一人の女性が入ってきた。 年は俺より下だろうか。青い髪にポニーテール、 緑の瞳で顔立ちはすっきりとしている。なかなかの美人だ。 「お二人とも紹介します。サイアス専属オペレーターの レナ・ファーティンさんです」 「始めまして、レナ・ファーティン伍長です。 これからよろしくお願いします!」 「シュウ・フレイノス曹長です。こちらこそよろしく」 「御剣刃曹長です。よろしく」 俺達は挨拶をしながら握手を交わした。 「それではファーティンさん、お二人に基地の案内してくれますか?」 准将はにこやかな笑顔で話し掛ける。 「解りました。それでは失礼します」 「あっ、御剣さん、一つ言い忘れてました」 部屋を出ようとした俺達を准将が呼びとめる。 「?、何でしょうか?」 何故呼ばれたか解らず困惑した顔で返事をした。 「多少の事なら目を瞑りますけど、 あまりあの人とオモチャを作りすぎないで下さいね」 これまでの柔らかな笑顔とは打って変わって 何故か少し殺気の混じった微笑で言った。 「はっはい!!」 その殺気を感じ取ったのか、少しどもりながら返事をする刃。 准将の笑顔に見送られ、今度こそ部屋を出た。 「ファーティンさん、准将はいつも笑顔で話すのかい?」 部屋を出て少し歩いてから俺は声をかけた。 「ええ。どんな時でも笑顔を絶やさないんです。 怒ってるときも笑顔なんでそこが怖いんです」 彼女は『くすっ』と笑いながら言った。 『確かに・・』 さっきの事を思い出しながら声をハモらせる俺達。 「それから、私のことは『レナ』って呼んでください。 みんなにそう呼ばれてますから」 「それじゃ俺のことは『シュウ』って呼んでくれ。 『フレイノス曹長』って呼びにくいからね」 「俺は『刃』でいいぜ!呼びやすいだろ?」 「わかりました。シュウさん、刃さん」 レナはにっこりと笑いながら話した。 その笑顔につい見とれてしまった。 「?、どうしました?シュウさん」 「い、いえ、何も」 俺は我に帰りどもりながら返事をした。 「それでレナさん、何処から案内してくれるんだい?」 不意に後ろから刃が声を上げた。 「そうですね・・食堂から行きましょうか?ここから一番近いですから」 そう言うと近くのエレベーターに乗り二階で降りた。 降りて右に曲がると食堂に出た。 ちょうど昼時のためか大勢の人で賑わっていた。 「ここが食堂です。十時から二十時まで営業してます。 メニューも豊富にそろっていて、なにより美味しいんです!!」 「そうなんだ・・・俺達のいた基地もけっこう美味しいんだけど、 種類が少なくってね・・・・」 「なあ、ちょうどハラ減っったからついでに食べて行こうぜ!」 「そうですね。食べて行きましょう!」 「それじゃ早く行こうぜ!!席が無くなっちゃうぜ!」 俺とレナは刃に押されて中に入った。 食券を買って料理を受け取り、開いている席を探した。 どうやらこの食堂。この階の半分のスペースを使っているらしくかなり広い。 これだけの規模の基地だから当然かもしれないが、本当に広い・・・・。 「席開いてないな・・・」 「料理が冷めちゃいますね・・」 手に持った料理からのいい匂いをかぎなが言った。 「レナさん!?どうしたんですか?」 俺達は振り返るとテーブル席に座っている人を見た。 歳は俺達と同じか少し上だろうか?金髪に青い目、隙無く着込んだ軍服。 手にはティーカップと小説を持っていた。 「あっ、ランフィスさん!ちょっと空いてる席を探してるんです」 「それならこの席へどうぞ。今空いたばかりですから」 「ありがとうございます。ご一緒させてもらいますね」 そういって俺達は席に座った。 「シュウさん、刃さんご紹介しますね。サイアス第四空戦部隊長の ランフィス・ダナ・ノートン特務曹長です」 「サイアス第一部隊に配属されたのシュウ・フレイノス曹長です」 「同じく御剣刃曹長です」 俺達はその場で敬礼した。 「ランフィス・ダナ・ノートンです。よろしく。」 ランフィス特務曹長は軽く会釈して答えた。 「それから私の事はランフィスで構いません。サイアスでは階級は有って 無いような物ですから。普段通りの言葉使いで喋ってもらって結構ですよ」 そう言うと紅茶を一口飲んだ。 「もう食事は済んだんですか?」 俺は食事の手を休めて聞いてみた。 「ええ、今自分専用機体の最終調整中でして、早めに食事を取ったんです。 早く行かないと席が無くなってしまいますから」 彼は紅茶を飲み干し、カップを受け皿に置き、小説をポケットにしまって席を立った。 「それでは私はこれで失礼します。ごゆっくりどうぞ」 ランフィスはティーカップを持って食器の返却口へと向かった。 「冷静な方ですね」 俺は率直な感想を言った。 「ええ、いつもあんな感じなんです。どんな相手でも敬語で話しますし、 真面目で優しい方なんですよ」 「ぷはーー!ごっそさん!」 口をナフキンで拭きながら言った。 「・・・・・・」 レナはぽかんと口が空いたまま硬直していた。 「?どうした??」 訳がわからずのレナの顔を見た。 そうだった。忘れていた。 「こいつは食事中絶対に喋らないんですよ」 テーブルを見ると刃の皿の食事は既に空になっていた。 「お前今の話聞いてなかっただろ?」 俺はジト目め言った 「全然聞いてなかった」 胸を張って言い放つ。 『そんなことで胸を張るなよな・・』と思いつつ俺は料理を口にした。 十分後、食事を終えて再び基地内の案内を再開した。 二階は食堂とバー、一階にはホール、そして地下三階フロアに来た。 レナはポケットから出したICカードでドアを開け、中に入った。 「ここがこの基地の中枢部、中央発令所です。 この基地の全ての施設を統括、管理しています。 また、現在の戦闘状況や部隊からの通信がリアルタイムで入ってきます。 それらに応じてこちらは的確な指示や補給物資等を送るんです」 そこは盛大な眺めだった。三階ほど筒抜けていて高い天井。 正面には三つの巨大ディスプレイ。 その下では五十以上の端末、奥の方を見ると二段高くなっている。 一番奥の高い所はたぶん総司令のティール少将が座るのだろう。 二番目に高い所に今は四人座って何か作業している。 「ディスプレイの右の方は主にこの基地の管理システムで、 左の方は現在の戦闘状況を把握しています。中央は通信専用端末や 情報処理の端末です」 レナは発令所を歩きながら説明してくれた。 「地下一階にはブリーフィングルームと通信室、地下二階には第一、第二会議室 地下三階にはシェルターがあります。通常この発令所に入るには 地下三階から入ることになっていますから気をつけてくださいね」 レナは微笑みながら言った。 「わかった」 「OK」 俺達もすぐに返事をする。 「じゃあ次に行きましょう。東棟に行きますね」 発令所から出てエレベータに乗り、一階へ戻る。そこから東棟へ向かう道路 を歩きながら説明を受けていた。 「この基地は大きく分けて四つのエロアに分類されます 1つはさっきまでいたメインエリア、二つ目は今から行く東エリア、ここはVRの格納庫に なっています。滑走路は東エリアの隣にあります 三つ目は北エリア、医療ブロックです。最後に西エリア居住ブロックです。 お二人の荷物も届いているハズですので最後に案内します」 レナは話し終えると車に乗って東エリアに向かって走り出した。 俺はふと右を見た。広大な草原が広がっていた。 ここは丘の上なのだろう。下り坂で見えなくなっている。 そして遥か向こうに高い塀が見えた。 しばらくすると東棟の近くまで来ていた。 東棟と言っても五つの大きな建物が滑走路に沿って並んでいる。 反対側にも同じ数の格納庫が見える。 「ここが東エリアの格納庫郡です。第四格納庫がサイアス専用となっています 地下にも格納庫があって一つの格納庫で最大五十機まで格納できるんです ちなみにこの基地では常時四百機のVRが配備されています」 『ほぉー』 「第四格納庫はこちらです」 レナはすぐ前の格納庫に入っていった。 入るとすぐに大きな機械音と大声が耳に入ってきた。 『胸部装甲の換送終わりました!』 『よーし、次は六番装甲だ!俺は脚部の整備に入る!』 『バッテリー交換とジェネレーターの整備急げ!』 『MSBSの最新バージョンインストールします!』 様々な所から大声で声を掛け合いながら、 何機ものVRが作業台に固定されて整備を受けていた。 見渡していると一つの機体に目がくぎ付けになった! 「ふぇ、フェイ・イェン!なんでこの機体がここに?始めてみたよ・・俺・・・」 俺は驚愕の声を上げた。フェイーイェンは特殊なVRで生産数も少なく、 配備されている部隊もごく僅かだと聞いている。それほど希少性がある機体なのだ。 しかもこの機体はカラーリングが赤に変更されて武装まで強化されてる。 だれか専用のパイロットの為にチューンしているのだろう。 「ああ、これは私の機体ですよ」 『はい!?』 レナの一言で俺達は思わず声を上げてしまった。 「レナってオペレーターでしょ?」 「はい」 「オペレーターってのは基地内で情報を部隊に伝達するんじゃないのか?」 「いいえ、VRに乗って戦闘区域から直接情報伝達します」 これには驚いた!通常オペレーターは前線基地内から状況を分析、戦況を把握し、 各部隊に必要な情報、命令を伝達する。 どうやらこの部隊は特殊でVRに搭乗し、前線から直接情報伝達するというのだ! たしかにこのフェイ−イェンは現行のVRの中では最高の情報収集、解析機能を有している。 加えて機動力の高さもあり、この能力を使えば戦況を大きく変えるだろう。 隅々まで見た後、エレベベータ−で地下格納庫に向かった。 「この地下格納庫は配備されたばかりで調整整備専用に使われています」 周りを見るとテムジン、アファームド、バイパーUが見える。 その中に二機種、見慣れない機体があった。 「レナ、この機体は?テムジンに似てるが・・?」 俺が聞こうとする前に刃がレナに聞いていた。 「あれは10/80です。第8プラント「フレッシュ・リフォー」が 第三プラント「ムーニー・バレー」にテムジンのライセンスを貸与して開発した OEM版だと聞いています」 「OEM・・・簡易量産型ねぇ・・」 「俺が見る限りではかなりの所で簡略化していて、テムジンと比べると 性能的には見劣りしているな。改修すればもっと良くなると思うな」 俺は10/80を見ながら率直な感想を言った。 「シュウさん鋭いですね。ちょうど今その改修をやっている所なんです。 隊長機専用に通信機能を増設し、機体全体と武装を強化しています。 名前は10/80CC(コマンダーカスタム)にすると整備士長が言ってました」 整備士長?そういえばおやっさんにも 新開発した兵器に名前を付ける習慣があったな・・ 一体今何処に居るのやら・・・ 「奥にあるあの機体は?見たこと無い機種だけど・・」 両肩に二連レーザー砲を装備した重装甲のVRだ。 「あれはライト・ライデン、通称『Lライン』です。SHBVDに配備されている HBV−05『ライデン』を元に開発された量産試作型VRで、 元々SHBVDに配備予定だったんですけど、第二世代VRが配備が決定 した為にサイアスに配備されたそうです」 「ライデンの量産型か・・かなり武装が変わってるな」 刃はLラインを見ながら言った。 大きな変更点は両肩の二連レーザー砲と右手に固定された大型チェーンガンだ。 「機体も小型化されて機動性もオリジナルに比べて向上してるハズだ。 他の性能は実際に乗ってみない事には解らないな」 整備用のハンガーには四機のLラインが並んでいて、この内三機が整備を受けていた。 残りの一機はおそらくパーツ取り用の予備機体だろう。 予備機体なら乗せてもらえるだろうか? そんな事を考えていたら、 「くぉらぁ!そこ違うだろう!その配線は51番回路に接続してから そっちの34番回路を切断するんだ!感電するぞ!!」 どっかで聞いたような怒鳴り声が耳に届いた。 どうやら刃にも聞こえたらしく、顔を俺の方へ向けた。 「今の声・・・どっかで聞いた事あるような・・・!?」 「ああ・・・しかし、でもなんでここに居るんだ?」 「昨日会いに行った時居なかったよな・・?」 「試射実験の後にここに来たという事か・・」 「とりあえずこの目で確かめに行こうぜ!!」 「OK!」 声の聞こえた方角・・・Lラインの奥、金色のバイパーUの方に向かった。
「ええ、良い調子です。これなら問題は無いでしょう。 ところで武装の方はどうなってます?」 「ダンナの希望どうりの奴がちょうどあったよ。 既に初期設定は終わっているから後はFCSの設定を変えるだけだ。 なあに、今日中に終わらせ明日試射出来るまで持っていって見せるよ!」 「よろしくお願いします」 眩しいくらいに光り輝く金色のバイパーUのコックピットに二人の姿が見えた。 コックピットに座っているのはさっき食堂で会ったランフィス特務曹長と もう一人は・・・・あの見慣れた後姿・・・あれは・・・・ 『おやっさん!!』 バイパーUの足元で俺達は同時に大声を上げた。 コックピットの昇降用足場にいたおやっさんはこちらを向き、 「よう!刃、シュウ。ようやく来たか!」 おやっさんは大声で叫んだ。 「あのお二人はお知り合いで?」 「ああ、前の基地に居た時に一緒の部隊に居たんでね。 あの二人の機体の整備もしてたんだ」 ランフィスの質問におやっさんは即答した。 「あの人は今度サイアス整備部に整備士長として配属されたんです」 『何ですと!!』 レナの一言に驚愕した! 「ようやくって、おやっさん俺達がここに配属されること知ってたのか!?」 「ああ、ストーク准将に転属届を渡された時に教えてもらったんだ。 整備やその他準備の関係上一日早くこっちに来てな、 お前達を驚かそうと思って言わなかったんだが・・・。驚いたか?」 『驚いた!!』 声をハモらせて言った。 おやっさんはランフィスと二、三話しをしてから、エレベーターで降りて来た。 「まさかおやっさんがここに来てたとは・・・道理で探してもいないはずだ」 「しかもサイアスの整備部とはねぇ・・・」 「はっはっは、悪かったよ。まさかこんなに早く見つかるとは思わなかったがな」 あやっさんは笑いながら俺と刃の肩をバンバン叩きながら言った。 「あたたたたたたっ!!」 「痛い!痛い!痛い!痛い痛い痛い」 遠慮無しで肩を叩くおやっさんに俺と刃は悲鳴を上げた。 「おっレナちゃんどうしたんだいこんな所に? 機体の調整ならもう終わっているハズだけなんだが・・・」 何事も無かったかのように後ろに立っていたレナに話し掛けた。 「いえ、今は基地内を案内しているんです。」 「そうか。そういえば、刃、シュウ。お前達の機体なんだが・・」 言いかけて格納庫の最深部を指差す。 叩かれた患部を摩りながら差された方を見た。 そこには二機のテムジンがあった。ここからは良く見えないが、 見慣れたカラーリングに肩に俺の機体ナンバー221が見えた! 「おい!あれって!!」 刃にも見えたらしく驚きの声を上げる。 「そういうことだ。付いて来い!」 はやる気持ちを押さえ、おやっさんの後に続く。 「これって俺の機体・・・」 「ああ、俺の機体だ・・・」 自分の機体の前で見上げながら呟いた。 「前の機体は修理には時間が掛かるんでな。新機体にお前達のバックアップデータを入れて カラーリングを変えたんだ。機体の改良はこれからやることだ。 詳しい改良個所は明日聞かせてくれ。今日は少し忙しいんでな」 そう言うおやっさんではあるが、忙しそうには見えない・・・。 「おやっさん。ちょっとお願いがあるんだけど・・・」 「なんだ?シュウ?出来る事なら聞いてやるが・・・」 「ここに着たとき見たけど、Lラインが五機の内一機は予備機体でしょ? 乗せて欲しいんだけど・・」 「Lラインに?確かに一機は予備機体だ。動かない事は無いが・・・」 「ダメ?」 「うーん・・・・」 俺のお願いにおやっさんは腕組みして考えた。 「よし!いいだろう!丁度Lラインのスペックを取りたいと思っていたとこだ。 ただし!ちゃんと測定に協力しろよ」 「やった!測定にはちゃんと協力しますよ」 拳を握り締め小さくガッツポーズを取った。 「じゃあ、少将と話して許可もらってくるから少し待っててくれ。 少将は話が解る人だから問題無いハズだ。」 おやっさんはそう言うと奥の部屋に入っていった。 「乗せて欲しいと言ったけど、まさか乗せてもらえるとは・・・」 俺は本音を言った。そうそう乗せてもらえるとは考えてなかったからだ。 「いいなー、シュウ。俺も乗りたいぜ!」 「私も乗ってみたいです」 刃とレナも口を揃えて言った。 その時誰か奥の部屋から出てきた。 「あのう、失礼ですがシュウ・フレイノス曹長ですか?」 近づいてきた男性は刃にそう言った。 「シュウならこいつだ」 刃がそう言うと俺に指差した。 「あなたがシュウ曹長でしたか」 「ああ、そうだけど・・・」 年の頃は18才位か?黒の短髪に少し幼い顔立ち。 襟には伍長の階級章。 「自分と付き合ってくれませんか?」 『はい!?』 俺と刃、レナが伍長の思わない一言に驚愕の声を上げた。 「俺にそんな趣味は無いぞ!!」 「自分も有りません!!」 俺は即答したら、伍長もすぐさま即答した。 「そうじゃなくて、自分の機体の機動試験に付き合って 欲しいと言おうとしたんです。今日自分の機体の機動試験ですけど、 さっきおやっさんからLラインのスペック取りをすると聞いたんで提案したんです。 『Lラインと合同でスペック取りすること』にしないかって。」 「合同でスペック取りって・・摸擬戦か・・・・?」 俺は少し考えて言った。 「そうです。先日の戦闘でRNA部隊と互角以上に闘った貴方と一度 闘ってみたかったんです!」 あの戦闘の事を知っているのはこの基地でおやっさんと准将だけのハズだ。 どうやらおやっさんから話を聞いたようだ。 伍長は何かを思い出したかのように敬礼した。 「申し遅れました!自分はサイアス第四空戦部隊所属 コウ・ファーラス伍長です!!」 それにつられ自分も敬礼して、 「サイアス第一主力部隊所属シュウ・フレイノス曹長です」 「同じく御剣刃曹長だ。よろしくな!」 「貴方が御剣曹長でしたか!フレイノス曹長と同じくおやっさんから よくお話は聞いています」 「おやっさんから?どんな話を聞いてるんだ?」 刃は好奇心旺盛な目で言った。 「あの若さで部隊トップクラスの腕前で、特に御剣曹長は格闘戦に、 フレイノス曹長は中距離からの射撃に目を見張るものがあると聞きました」 「おやっさんがそんなこと言ってたのかあ・・」 俺は少し感激した。 「それと、部隊内では一番機体を壊して帰ってくるとも言ってました」 刃は「ガクッ」と肩を落とした。 「おやっさーん!後で一言言ってやるぅ!」 刃がそう叫んでいると、おやっさん本人が帰ってきた。 「おう!機動試験の許可取れたぞ!それと場所が空いてないから 新型パイパーUと模擬戦する事になったからな!!」 「その事にならファーラス伍長にもう聞いたよ」 俺はそうおやっさんに答えた。 「そうか。十五分後に始めるからパイロットスーツに着替えてLラインの前に来てくれ。 コウも着替えて自分の機体に乗っててくれ」 「了解!」 ファーラス伍長は入り口の方へ歩いて行った。 「おやっさーん!ファーラス伍長に何吹き込んだんだぁー!!」 刃はおやっさんの後ろに音も無く近づき、耳元で叫んだ。 「なっ何って事実に決まってるじゃねえか!!」 「俺はそんなに壊してないぞ!!」 おやっさんはすぐさまその場を離れるが、 刃はそれ以上の速さで後ろに回り、首を締め始めた。 「それはお前が・・・知らないだけだ!!特に両腕と足回りが・・・酷いんだ!!」 おやっさんが息も絶え絶えにそう言うと刃は首から腕を離した。 はー、はーとおやっさんは息を整え、 「お前は剣術をやっているだろう?VRは自分の思うよう動かせるが 所詮機械だ。どうしても負担がかかる。 お前の剣術は特に両腕と腰、足回りに負担をかけているんだ!」 確かにおやっさんは遅くまで刃の機体を整備しているのを何度も見たことある。 「そこまで負担かけてるなんて知らんかった」 「存分に感謝しろよ。シュウ、お前もパイロットスーツに着替えてここに来い。 レナちゃん、こいつに更衣室まで案内してくれないか?俺は先に準備しているから」 「解りました。シュウさんこちらです」 レナは喋り終わったら入り口の方へ歩き始めた。 「刃、こっちも準備に入るぞ!」 「OK!」 おやっさんと刃は俺達と反対側へ歩いて行った。 レナに案内されて更衣室に入り、パイロットスーツに着替えてからLライン前に来た。 「それじゃあ、Lラインに乗って起動させてください。後はこちらで指示しますから」 「了解!」 俺はレナに返事をしながエレベーターに乗り、上り終えてからコックピットに乗った。 ハッチを閉め、ベルトを着け、メインシステムを起動させる。 各部システム、機体チェック、問題無し。M.S.B.S.ver3.72起動、 コンタクト開始・・・・・問題無し。Lライン起動完了! 「こちらシュウ。Lライン起動完了」 俺は外部スピーカーを入れて足元にいたレナに話し掛けた。 「了解!こちらサイアス所属レナ・ファーティン伍長、中央管制室どうぞ。」 レナは携帯型無線機を取り出し、中央管制室に連絡を入れた。 「こちら第四格納庫地下です。Lライン380号機のデータ収集の為に 第二起動演習場に輸送願います」 「了解!Lライン380号機を第二起動演習場に輸送します。 進路確保・・・オールグリーン!全ロック解除!」 Lラインの後ろの壁が音を立てて開き始めた。 「輸送開始します。十秒前」 レナはこちらに向かって走り、整備台の台座に乗った。 「3・・・2・・・1・・・0!」 カウントが終わるとLラインを乗せた整備台ごとゆっくりと下に動き始めた! Lラインが完全に下に潜ると天井が閉められ光が消える。 やがて赤色灯だけのトンネルを降り終えると、作業台が左へ九十度回った。 回り終えると作業台はゆっくりと前進した。 整備台はどんどん加速し地下を疾走する!レナは台座にあったイスに座っている。 ストレートがしばらく続き、右にカーブし、またストレートが続く。 二十秒ほどして加速が緩み、しばらくして止まった。 また左へ九十度回って今度は上へ向かって動き始めた。 三重上部ハッチが開き、眩い光と機体を包む。 そしてLラインが整備台ごと地上へ出た。 眩しさのあまり目を閉じていたが、ゆっくりと開き始めた。 そこには大小幾つもの障害物があるだけの荒野だった。 「シュウさん機体の安全ロックを解除します。 解除したら機体を前へ歩かせてください」 「了解!」 「全安全ロック解除!」 ロックの役割を果たしていた作業台が左右へゆっくりと開いた。 「ロック解除を確認!Lライン発進します!」 俺はゆっくりと機体を前へ歩かせた。整備台を降りてその場で立つ。 すると整備台は地下へゆっくりと戻って行った。 レナは側にあった障害物の中へと入っていった。 しばらくしてLライン正面地面のシャッターが開き、 バイパーUがゆっくりと上がってきた。 色は濃い蒼に塗られ、背中の自律放熱バインダープレートが四枚に増え、 右手にはバイパーUにしては大型のランチャーを持っていた。 『あぁー、あぁー、こちらボブ。二人とも聞こえるか?』 目の前の機体を観察していると、おやっさんから無線が掛かってきた。 「こちらシュウ、聞こえるよ」 「こちらも聞こえます」 「よし、それじゃあ簡単に摸擬戦の説明をするぞ。 今回は実際に動いかして戦闘してももらうが、 火器は誤射防止の為撃てないようにしてある。 コックピット内では合成画像で実際に撃ってる様に見えるがな。 それと被弾した所は程度にもよるが、回線が切られて動かないようになる。 より実戦に近い状況で闘えるようになっている。 説明は以上だ。質問は?」 「有りません」 「無いよ」 「解った。戦闘準備に入ってくれ。開始は一分後だ」 そう言って回線が切られた。開始まであと五十秒・・・ 目の前のバイパーUがランチャーを構えて戦闘態勢に入った!! その頃おやっさん達のいる地下管制室・・・
おやっさんが中央のコンソールを見ながら聞いた。 「ああ、全方位カメラ準備OK!自動追尾装置作動確認!!」 そう言うと部屋内の画像は全てバイパーUとLラインを写した。 「レナちゃんは?」 「両機体のシステム問題無し!両機体のメインカメラの画像をサブスクリーンに回します!」 すると両脇の画像が変わり、バイパーUとLラインの正面画像に変わる。 「セラフィは?」 「画像データ及び機体性能データの記録準備完了! 全ての最終確認終了まであと五秒、 チェックリストの項目をリアルタイムで確認します!」 「OKだ!戦闘開始まであと十秒!」 おやっさんは画面の時計を見ながら答えた。 「カウントダウン入ります! 五・・・四・・・三・・・二・・・一・・・記録開始します!」 レナがカウントを数え終わると同時に二機の機体が動いた! カウントダウンが終わると同時に二機のVRが動いた! バイパーUは左に、Lラインは右に高速移動した。 まずは相手の動きと自機の機体特性を把握する事を優先にした。 機動性能はテムジンより劣るがさほど悪くなかった。 俺はバイパーUをロックし、チェーンガンを両手で構えて発砲した。 モニターでは弾が出ているが、発砲時の機体振動が無い。 おやっさんの説明どうり弾が入っていないのだ。 チェーンガンの弾はジャンプでアッサリかわされ、逆にレーザーバルカンを放つ! こちらは右高速機動から後方へ方向転換して弾幕をかわす。 さすがにそう簡単には当たらないか・・・ そう思いながら二、三ランチャーを打ち合ってはかわす小競り合いが続いた。 そろそろ機体性能が解ってきた。先に仕掛けるか! 俺はLラインを停止させ、両肩の二連レーザー砲を構える! 相手の動きを計算、予測してバイパーUより右へ二百ほどずらしてロックする。 そしてすぐに発射! バイパーUは予想どうり右側に移動してきたが、予想以上に速度が速く、 通り過ぎたすぐ後をレーザーが通過した。 「少し遅かったか・・・」 そう呟き急ぎ態勢を立て直す。 ゆっくりと機体が動き始める。 思ったより立て直しが遅い! この隙を逃さずバイパーUは空中でランチャーを両手で構え、一条の光を放った! こちらはまだ態勢が立ち直っていない! かわせない! 「かわせないなら!!」 俺は右肩のレーザー砲を光に向けて発射した。 無理な態勢で発射したためバランスを崩し尻餅をつく。 二つの光は互いにぶつかり、相殺した。 俺は機体をゆっくりと立ち上がらせた。 バイパーUはゆっくり降下して着地した。 互いの機体を見合わせた刹那、二つの機体は前方へ高速移動で急接近した! 「戦闘時間八十秒経過しました」 レナはタイマーを見ながら言った。 「セラフィ、そっちの方はどうだ?」 「順調です。全ての機器は正常に稼動中。 チェックリストも順調に埋まっています」 おやっさんにに聞かれセラフィ整備士は真面目な顔で答える。 「わかった。そのまま続けてくれ」 おやっさんがそう言った時に後ろのドアがノックされ、少したって開いた。 「失礼します。どうですか、調子は?」 そこにはランフィス特務曹長が立っていた。 「どうしたんです?ダンナ?」 「いえ、シュウさんとコウさんがデータ収集を兼ねて模擬戦してると聞いたんで 気になって来てみたんですけど・・・邪魔でしたか?」 「邪魔だなんて!二人の戦いを見て行ってください」 「すみません、無理言って。それでは失礼して・・」 そう言っておやっさんの隣の席に座った。 「ほい、どうぞ」 そう言って暇になった刃は二人に紅茶を差し出した。 「おっ刃、気が利くじゃないか!サンキュー」 「ありがとうございます。良い香りですね」 「少し煎れ方にうるさい奴が近くにいるんでね。そいつの影響かな?」 刃は苦笑しながら答え、レナとセラフィに紅茶を渡した。 「で、どうだい?二人の戦いは?」 ランフィスは二人の戦いをじっくりと観察した。 「二人とも機体に振り回されていますがさすがですね。 もう感覚を覚え始めていますよ」 「さすがに初めて乗った機体だからしょうがないか・・」 「コウさんはバイパーUの特性を知っているので飲み込みが早いですが、シュウさん は搭乗機体はテムジンでしょう?今日始めて乗ったLラインの特性をこの短時間で 覚え始めています。あそこまで飲み込みが早いのはすごいですね・・」 ランフィスはモニターから目を離さずに言った。 「あいつはシュミレーターでだが現行のVR全て乗っているんだ。 それで飲み込みが早いんだよ」 「それでですか・・・。」 ランフィスは納得したように頷き、紅茶に口をつける。 「おやっさん、一つ聞きたいんだけど・・・」 刃が紅茶のカップを手に持ち、おさっさんの隣に立った。 「何だ?刃」 「あそこにいる女性は誰なんだ?紹介してくれ!!」 「ああ、セラフィのことか。本名セラフィ・クロス、サイアス整備部第三班所属」 「クロスってことは・・」 刃はぷるぷると震えた指でおやっさんを指差す。 「そうだ。わしの娘だ。どうだ?わしに似て美人だろ?」 『似てない似てない』 おやっさん以外の全員がそう言いながら手を横に振る。 「刃、手を出すなよ」 そう言っておやっさんは刃を睨む。 「戦闘時間百八十秒経過しました!」 「チェックリストほぼ埋まりました。両者機体ダメージ共に軽微」 レナ、セラフィが現状報告する。 「そろそろ決着が着くかな・・・」 ランフィスはボソリと言った。 二つの機体は前方へ高速移動で急接近した!距離六百!! 俺はLラインの全火器の照準をバイパーUにロック、一斉射撃を開始する! 急接近するバイパーUはレーザーをジャンプでかわし、更に距離を詰めてくる! 俺はチェーンガンで追撃するが左腕に直撃するが構わず突っ込んでくる!! パイパーUはランチャーからビームソードを展開、空中からビームソードを下に向け、 機体の中心より左側を狙ってくる! 距離二百!かわせる距離ではない!! 俺は無理やりに機体を右に向けるが間に合わない! すれ違うと同時にLラインの左肩口からザックリと切られた! 実際には切られてはいないのだが、左腕は動かない。 ダメージを受けた部分の回線が切られて動かないようにしているのだ。 バイパーUはすぐに着地しレーザーを放つ! こちらも急停止、反転しチェーンガンで応戦する! チェーンガンの弾は右肩に直撃!しかしバイパーUのレーザーは両足を直撃した! 「くっ!!」 俺は呻き声を上げ、Lラインは自重に耐え切れずその場で頓挫する。 バイパーUはビームソードを展開し、こちらへ急接近する。 止めを刺すつもりだ。 「あと距離五百・・・クッ、ここまでか・・・」 そのとき頓挫した衝撃がコックピットを襲った! 衝撃に耐えるため全身に力を込める。 その時照準も定めていない右肩のレーザー砲が発射された。 急接近するバイパーUはそのレーザーをかわしきれずに直撃、そのまま機能停止し 加速したまま地面に倒れ、地面をえぐりながら惰性で進み、Lラインの直前で停止した。 「模擬戦終了!機体の全機能回復します!!」 レナの声がコックピットに響いた。 俺はあっけに取られた。手を見ると何時の間にかトリガーを引いていた。 「ファーラス伍長大丈夫か!?」 俺はすぐに回線を開き話し掛けた。 あれだけの衝撃が彼を襲ったのだ。無事だと良いが・・・。 「こちらファーラス伍長。ちょっと頭がクラクラするが大丈夫です」 しっかりとした返事が返ってきた。 「それでは台座を上げますので機体を固定してください」 『了解!!』 俺達はレナに返事をして機体を台座に向かって歩かせた。 バイパーUの足取りは少しフラフラしているように見えた。 俺はLラインを台座の上に乗せると左右の作業台兼安産装置がゆっくりと閉まる。 「ロック確認!Lライン輸送開始!!」 Lラインはゆっくりと下がって行く。バイパーUは一足早く輸送されたようだ。 下降し終わると格納庫へ向けて加速し始めた。 「ふぅー・・・」 俺はベルトを外し一息ついた。 「疲れた・・・」 ぼそりと独り言を言った。 VRの戦闘は異常に精神力を消耗する。 特にM.S.B.Sの制御は負担が大きいのだ。 今回は短時間の模擬戦闘ながら必要以上に疲れていた。 少しシートを浅く掛け、目をつぶった。 突如襲った振動に目が覚めた。どうやら少し眠っていたらしい。 モニターを見ると既に格納庫に到着していた。 俺はハッチを開け、Lラインから降り始めた。 「よっ!お疲れさん!!」 Lラインから降りた所に待っていた刃が話し掛けてきた。 「なんか妙に疲れた。ところでデータはちゃんと取れたのか?」 「ああ、それはバッチリだ!」 刃の後ろからおやっさんが言った。 「少々足りないが予定していた量のデータは取れた。すまなかったな。付き合わせちまって」 「いいよおやっさん。こっちもLラインに乗ってみたかったし。 感謝したいのは俺の方なんだし」 配備されたばかりの新型機にいきなり「乗せてくれ」と言って乗せてくれたのだ。 だからこれくらいの事は当然と思っていた。 「それじゃあシュウさん着替えてきてください。基地内の案内を再開しますから」 レナがにっこりと微笑みながら言った。 「わかった。少し待っててくれ」 俺は更衣室に向かって走った。
更衣室から出てくると三人の他にファーラス伍長とランフィス特務曹長がいた。 「あっシュウ曹長、お疲れ様でした。」 ファーラス伍長が駆け寄って言った。 「そっちもお疲れさん。良い腕だな。あそこまで追い詰められるとは・・・」 「そちらこそ。まさかあそこでロックもしないでレーザーを撃つなんて・・・ かわし切れなかったですよ」 「ははは・・・」 俺は言葉に詰まって笑った。偶然撃って当たったとは言えなかったからだ。 「お疲れ様でしたシュウさん」 今度はランフィスさんが話し掛けてきた。 「初めて乗る機体をあの短時間でよく特性を掴みましたね。 後半はすごく良い動きをしてましたよ」 「いえ、そんな事は・・・」 思わない誉め言葉に言葉が詰まる。 「でも、最後のレーザーは狙って撃ったとは思えなかったんですけど・・・ まあ、聞かないでおきますね」 「ありがとうございます」 ランフィスさんの心遣いに素直に感謝した。 「それじゃあ行きましょうか?」 レナがそう言った時、二人の男が近づいてきた。 一人はサングラスを掛けた中年の男性。もう一人は俺より年上だろう。銀髪の男性だ。 「ボブ!探したよ。十四時に俺と会う約束だっただろ?」 「すまんすまん。後で一杯おごるからさ」 おやっさんは中年の男性男と話し始めた。名前を呼んだという事は友人だろうか? それにこの声・・・どこかで聞いた事あるような・・・? 顔はサングラスで見えないが頭の中でなにか引っかかる。 男はこちらへ振り向き、 「刃、シュウ、久しぶりだな。」 そう言いながらサングラスを外した。そこから現れた顔を見て・・・ 『く、クレイン・ノース教官!!』 俺と刃は思わず声を上げた! クレイン・ノース大尉、DNA入隊当初の教官だった人で、徹底的に扱かれた。 そのおかげで今の自分が有る訳だが、今思い出すだけでも寒気がしてくる。 どうやら刃も同じ思いらしく、顔が真っ青で脂汗をかいていた。 「何で教官がここに居るんです?所属はレミントン基地のハズでしょ?」 「聞いてないのか?俺がサイアス第一部隊長兼大隊長だ!」 『うそおおおぉぉぉ!!』 俺と刃は驚愕の声を上げた。 「本当だ!それにここでは教官ではなくて隊長か少佐と呼べよ」 教官時代の階級は大尉だったのだが、昇格したのか・・・ これから地獄を見そうだな・・・。 俺は頭の中でいろいろと想像していた。 「こいつも紹介しておこう。同じ第一部隊のアームズ・グレイス曹長だ」 教官・・・じゃなくて、隊長の声で現実に戻る。 「始めまして。サイアス第一部隊所属アームズ・グレイス曹長です」 隙の無い構えから敬礼をする。 「自分はシュウ・フレイノス曹長です。こっちは御剣刃曹長です。」 「よろしく!」 俺と刃は握手を求め、グレイス曹長はそれに答えた。 「それじゃあ俺とボブは用事があるからこれで失礼する。 レナ伍長、グレイスもこの基地を案内してやってくれ」 「了解しました。お任せ下さい」 レナは敬礼して答える。 さすがに八階級上のノース少佐相手に少し緊張した表情だ。 「それじゃあ失礼するよ」 「じゃあな、シュウ、刃明日ここに来てくれ。機体の調整の事を聞かせてくれ」 ノース少佐とおやっさんはそういって奥のエレベーターへ向かった。 「それじゃあ次行きましょう!!」 「次は何処に行くんですか?」 「北エリア・・・医療ブロックです」 歩き出したレナに続いて、刃、俺、グレイス、ファーラス、ランフィスの順で付いて行く。 俺達はエレベーターで一階へ戻り、格納庫を出た。 止めてあった車に戻り、北へ向かって走り始めた。 途中雑談で盛り上がった。 「ところでどうしてランフィスさんも付いて来るんです?」 「いや、ヒマなもので・・・。 丁度今日の仕事が終わった所で予定が何も無かったんですよ」 「は、はぁ」 俺の問いに答えたランフィスさんに曖昧な答えを返す。 そんな事を話しているとすぐに二つの大きな建物に到着した。 「ここが医療施設です。戦闘で負傷した時はすぐさまここに運ばれます。 右の建物は主に重軽傷者の検査、手術、治療する施設で、 左の建物は入院患者の病室になっています。こちらへどうぞ」 レナは建物の外で説明をしてから中へ入った。 一階はロビーになっていた。受付もあるし、薬を出す窓口もある。 基地の医療施設と言うよりは病院がそのまま中に入っている感じだ。 「一階はロビーと緊急処置室、二階は手術室が四つと内科、外科などの各科、 三階は手術室が三つとモニター室と資料室四階は会議室二つと院長室があり、 地下一階はレントゲンなどの検査施設と霊安室があります。 左棟の病室は五階建てで五百人を収容できます」 『ほおおおぉぉ』 それほどまでの施設がここにあるのか。さすがは大陸最大の基地だ! 「診察される方はICカードを窓口に持って行って、手続きをして各科へ行って下さい」 そう言って窓口を指差す。機械任せでは無く、人が座っている。 「シュウ、今俺の名前呼ばなかったか?」 少し離れた所にいた刃は問い掛けてきた。 「いや、呼んでないが?」 「そうか・・・気のせいかな?」 そう言いながら辺りをキョロキョロと見渡す刃。 「また聞こえた!誰か呼んでる!!」 「自分には何も聞こえませんが・・・」 「私もです」 刃の言葉にグレイスとランフィスが同様の答えを返す。 刃の耳は俺達より良い。俺は常人の二倍くらいあるんじゃないかと思ったくらいだ。 「じ・・さ・・・」 「何か聞こえた!」 「本当だ!」 俺とファーラスにも聞こえた! 「刃さままぁぁ!!」 叫びながら走ってきた看護婦が刃に抱きついた!! 突然の事に全員が硬直した! 「お、お連さん!!どうしてここに!?」 「私(わたくし)刃様を追ってここまで来ましたの!」 「あ、あのさ、お連さん。みんな見てるからさ、離してもらえるかな?」 刃のその言葉に『ハッ』となり、 「私なんというはしたない事を!!」 正気に戻って刃から離れる。その顔は真っ赤になっていた。 「いや、ちょっとビックリしたけど、気にしてないから・・・」 刃は苦笑しながら言う。 「あ、あのー」 「はい、なんでございましょうか?」 ファーラスの問いにキョトンとした顔で答える。 「あなたは・・・?」 「私とした事が!申し遅れました。この度サイアス第三重戦闘部隊に配属されました 御鏡 連と申します。不束者ですが、よろしくお願いいたします」 そう言ってゆっくりと丁寧にお辞儀をする。 ようやく正気に戻り、彼女を見た。 年歳はレナと同じか少し上だろうか?大人しい印象を受ける。 小さい顔に大きい瞳、腰まで届く長い黒髪の先端だけをリボンで結んでいる。 刃とは知り合いらしいが少なくとも聞かされてはいない。 「御剣曹長とはどんな関係なのですか?」 観察していると今度はグレイスが質問する。 「私は刃様の許婚ですわ!」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 『いいぬぁずぅけええぇぇ!!』 一瞬の間を置き、建物中に響く大声を全員が叫んだ! その声は反響してエコーがかかってしばらくの間消えなかった。 ロビーや建物内外の人が一斉にこっちに目線を向け、立ち止まる。 「病院内は静かにしてください!!」 『すっすみません!!』 看護婦さんの一言に全員同時に頭を下げてあやまる。 「じ、刃。お前許婚がいるなんて初耳だぞ!」 「それは、親同士が勝手に決めた事で・・」 「刃様。私は貴方様を愛していますわ!」 『おおおおぉぉぉ!!』 彼女の爆弾発言にどよめきが起こる。 しかし、その声は小さかった。大声出すとまた怒られるからだ。 「お、俺はまだ結婚する気は無いし、それにまだ修行不足で・・・」 刃は額に脂汗を滲ませうろたえる。 「そんな事ありませんわ。私もまだ修行中の身ですし、 刃様さえ良かったらすぐにでも結婚してよいと叔父様達も了承して下さいましたの」 「そっそれは・・・」 言葉を詰まらせる刃。 「俺まだ行く所あるから今日はこれで!」 そう言うと疾風の如き速さで走り去った! 「おっおい、刃!!」 俺は呼び止めようとしたが、既に建物の外へ出てここからでは既に見えなくなっていた。 逃げたな・・・・刃・・・・ 「御鏡さん、俺達これで失礼します。刃待てよ!!」 俺は呆然とた佇む彼女に敬礼して刃の後を追った。 これまでの出来事に呆然としていた皆も我に帰り俺の後に続く。 俺は建物の外で刃を探した。見渡すと遥か地平線の片隅に急速に遠ざかる物体を見つけた。 「レナ、あの方向には何があるんだ?」 「あっちは西エリア、居住ブロックです」 「追い掛けよう!」 彼女は頷き、車に乗って追いかけた。 すぐに追い付くと思ったが、なかなか追い付かない。 刃の姿を見つけたのは居住ブロックの一歩手前だった。 全速力で走ったのか力尽きて座り息を整えていた。 「刃、ここまで走ってきたのか!」 「ここまで約二キロ。車でも追い着けないなんて・・・」 「すごい脚力・・・」 俺、ランフィス、ファーラスの順で言った。 「大丈夫ですか?御剣曹長。水をどうぞ」 グレイスは水の入ったカップを差し出す。 刃はカップを受け取り一気に飲み干す。そしてまた息を整える。 「サンキュー。大分楽になった」 そう言って刃は立ち上がる。まだ少し息が荒いが大丈夫なようだ。 「刃、聞きたい事が山ほどあるがちゃんと話せよ」 「解った。落ち着いたら話すよ」 俺の言葉に頷く刃。 「レナ、ここだね。今日から俺達が住む所は」 「ハイ、この住宅郡の一つがサイアス専用に割り当てられています。 C−110棟です」 刃を車に乗せ走り出す。いくつもの建物を間をすり抜け、一つの建物の駐車場に入った。 そこは1フロアに部屋が十の八階建ての白一色の建物だった。 車を降り、建物の前に集まった。 「それじゃあ部屋に案内しますね。ランフィスさんとコウさんは解りますね?」 「ええ、私は103号室です。何かあったら遠慮無しに来てください」 「俺は404号室。ヒマだったら遊びに来てくれな!」 「それでは私はこれで失礼します」 「それじゃ!」 そう言ってライフィスとファーラスは建物の中へ消えていった。 「シュウさんの部屋は307号室、刃さんは308号室、アームズさんは309号室です。 ちなみに私は206号室、ノース大隊長は104号室です。 カギはICカードですので無くさないで下さいね。それじゃ行きましょう」 建物に入り、右側にあるエレベータに乗り三階で下りる。 そして左側へ向かい歩き始め、すぐに部屋の前に着いた。 「今日はご苦労様でした。ゆっくりと休んでくださいね」 「こちらこそ案内ありがとう」 「また解らない事があったら聞きにいくな」 「今日はありがとうございました」 俺、刃、グレイスが順に言う。 「それでは失礼しますね」 お辞儀をするとレナはエレベーターで自分の部屋へと戻っていった。 俺はICカードを取り出し、スロットに通す。 カチッっと軽い音と共にカギが外れる。 部屋を見てみると結構広い部屋だった。 二人で住んでも十分なくらいだ。 「それじゃあな!」 「おう!」 「失礼します」 俺が言うと刃とグレイスが返事をし、部屋に入っていった。 部屋に入り、少し休憩をしてから、運ばれた自分の荷物を片付け始めた。 それから二時間後・・・・・ ようやく全ての荷物を片付け、ベットに横になっていた。 時間は十七時を少し過ぎたところだ。だが外はまだ明るい。 疲れて少し眠たいが基地の探索ついでに散歩しようと思い、 ベットから体を起こし、すぐに部屋を出て、エレベータで一階に下り、歩き始めた。 とりあえずここからメインブロックの道順の確認をする事にした。 何かと足を運ぶ機会が多いと思ったからだ。 ここからでもあの大きな建物が見えるのですぐにわかった。 中央棟に到着した時にここまでかかった時間を確認し、次の目的地に向かった。 ここから格納庫へ行く途中にあった草原だ。 中央棟から歩き始めて十分とたたずに目的の草原に着いた。 綺麗な光景だった。夕日で草原一帯朱色に染まっていたのだ。 その場で寝転び大きく息を吸う。 心地よい疲労感に柔らかく暖かい草の絨毯、澄んだ空気。 少ししただけで睡魔が襲ってくる。 「シュウさん、どうしたんですか?こんな所で」 ウトウトと眠りかけた時にその声で目が覚める。 顔を上げるとそこにはレナが立っていた。 「レナこそどうしてここに?」 「ここは私のお気に入りの場所なんですよ。隣いいですか?」 「ああ、いいよ」 そう答えるとレナはゆっくりと隣に座った。 「さっきの質問だけど、基地内を案内されている時に少し気になってね。 探索ついでに少し来てみたんだ」 「そうでしたか。私はここから見る夕日が大好きなんです。 だから散歩した時は必ず来るようにしてるんです」 レナは夕日を眺めながら言った。 俺はそんな彼女の横顔を眺めていた。夕日に照らされて赤く染まった顔が綺麗だった。 「さて、そろそろ戻るか」 「そうですね。もう夕食の時間ですね」 「そういえば夕食は何処で取るんだい?あそこの食堂か?」 「いえ、宿舎の地下に食堂がありますから」 「そうか。それじゃあ早く戻ろう!今日は色々あってお腹ペコペコだ!」 レナはクスクスと笑い、 「はい!」 俺とレナは雑談しながら宿舎へ向かって歩き始めた。 宿舎に着いたのは十九時を既にまわっていた。 食堂に入ると席はほとんど空いていた。 埋まっていた席にはランフィス、ファーラス、そしてグレイスが座って食事を取っていた。 少し離れた席には刃と連が深刻な顔をして何か話していた。 とりあえず夕食を受け取りランフィスの隣の席に腰掛けた。 「どうしたんです?あの二人」 「俗に言う修羅場ってヤツじゃないですか?」 俺の問いかけに答えたのはファーラスだった。 「ここから聞こえた限りでは実家に帰って結婚するしないとか聞こえたけど・・・」 「刃さんはどうして結婚しないんですかね?」 「何か結婚したくない理由があるとか?」 「おしとやかで美人、昔で言葉で言う大和撫子ってやつですね」 「私が男だったら結婚しても良いと考えちゃいますね」 四人が刃達を話のネタにしているのを聞きながら俺は夕食を口に運ぶ。 んー、コンソメスープがうまい!!と思いつつも刃達に目をやる。 刃は困った顔をしながら何か話しているがここからは聞こえない。 連はあくまで表情を崩さずに話している。 「結婚したくない理由か・・・」 「人前では優しいが実は物凄く怖いとか?」 「既に好きな人がいて、でもそれは許されない恋とか?」 「その相手は実の妹!!それはマズイでしょ!!」 「刃さんの不潔!!」 本人達を置いて話が違う方向にエスカレートしてきている・・・ 「刃には妹はいないハズですよ。確か兄が一人いるとか・・・」 俺はようやく口を開いた。 「シュウさん彼女の事何か聞いてますか?」 食後のお茶を口にしながらランフィスは問い掛ける。 「いや、全く聞いてないんですよ」 俺も食後のお茶を口に運ぶ。 「後で刃に聞いておきますよ」 『是非お願いします!』 全員が口をそろえて言った。みんなこの話題に興味津々のようだ。 「しかし御剣曹長も隅に置けませんね」 「許婚とはいえあんな女性がいるなんて・・・」 「俺も彼女が欲しい!」 「こんな所だと浮いた話有りませんからね」 それぞれ話し終えてから全員同時に溜息をついた。 この反応から全員彼氏、彼女はいないらしい。自分もだが・・・ この時刃達のテーブルに動きがあった。 二人は立ち上がり真っ直ぐ食堂を出ていった。 それを俺達は目で追っていた。 少ししてから食器を持って立ち上がった。 「フレイノス曹長お願いしますね」 「了解!」 アームズに返事をし、食器を返して食堂を出た。 今日は疲れて刃に聞く気分では無かったので真っ直ぐ自分の部屋に戻る事にした。 エレベーターから降りると自分の部屋の前で誰かがノックをしていた。 「あの、自分に何かご用ですか?」 俺は近づいて話し掛けた。 年は三十代始めだろうか?身長は高く引き締まった顔に鋭い眼光。 隙の無い動きでこちらを向いた。 「シュウ・フレイノス曹長ですか?」 「はい、貴方は?」 「自分はサイアス第二支援部隊隊長ダン・グァン中尉です。 あの時のお礼を言いに来たんです」 「あの時?」 俺は考えるが初対面でお礼を言われる事をした覚えは無かった。 「覚えありませんか?まあ無理も無いでしょう。 四日前の戦闘で貴方が助けたベルグドルのパイロットですよ」 「ああ!思い出した!アファームドに接近戦闘をしていたあの!!」 俺は手を『ポンッ』と叩きながら答えた。 確かにあの時格闘していたベルグドルを後方から支援射撃をしたんだった。 まさかサイアスに配属になっていたとは・・・ 「おかげで助かりました。ありがとう」 「いえ、当然の事をしただけですから」 「これから同じ部隊同士です。仲良くやりましょう」 「こちらこそお願いします」 「それではこれで失礼します。お休みなさい」 「お休みなさい」 そう言うとダンさんはエレベーターではなく奥の階段へ向かって行った。 それを見届けてから部屋に入った。 すぐにシャワーを浴び、着替えて備え付けの冷蔵庫から缶ジュースを取り出した。 飲みながら窓の外を眺める。幾つもの光が夜空を照らし彩っていた。 明日は刃に彼女の事を聞いて、おやっさんに会って機体の事について色々と話して、 みんなに彼女の事を報告して・・・・明日も忙しくなりそうだ。 今まだ二十一時・・・少し早いが寝よう・・・ ベットに潜り込み目を閉じる。 全ては・・・・・これからだ!!
隊員も揃い、機体も仕上がり、ようやく本格的に活動し始めた。 機体の最終チェックを終えた時に総司令フェリエ・ティール少将から 一つの作戦が言い渡される。それはRNAの追撃戦だった。 次回第三話『出撃・前編』へ向けて発進準備!! |